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異世界はチートとともに

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 どうも、私です。神です。絶世の美女です。
 さて、チーレムはどうしているのでしょうか。
 早速、覗いてみましょう。

「腹空いたな……」

 居ました。彼です。チーレムです。
 なんだか頬がこけていますね。どうやら空腹が来たみたいです。
 思えば、この世界に来てから何も口にしていないですもんね。
 アリスさんもエイラさんも、適当を言っただけで何も食料はくれませんでしたし。
 そう思うと、少しばかり彼女達は酷い人間に感じれます。

「というかまだ街には着かないのか?」

 まだ、というか一生着きませんよ。
 何故なら、そんな街は存在しませんから。
 なんでしたっけ? ポイント? まあ、そんな名前の街はこの世界にはありません。
 アリスさんの脳内に存在する架空の街です。
 可哀相に。そこを目的地にする限り、チーレムの冒険は終わりません。
 終わりよければ全て良しとは言いますが、彼には終わりがないので良しにはなりませんね。

「もしかして道を間違えているとか……?」

 おっ、やっと気が付きましたか!
 いやー、随分と遅いですが良かったです。
 もうかれこれ森の中を九時間は歩き続けていますからね。
 辺りも既に真っ暗です。夕日は沈み、静寂と闇が支配する刻。
 そんな中、果ての見えない道には流石に疑問点があったのでしょうね。

「まあ、いいか。明日には着くだろ」

 もう、馬鹿かと。何がいいのか皆目見当もつきません。
 彼はあれですね。結構と言いますか、適当な性格ですよね。
 まあ、そんな性格だから虚偽に踊らされているのですが。
 それにしても、疲れないのでしょうか?
 中途半端に体力があるせいで、ずっと歩きっぱなしですよ。
 正直、これほど森を自由に歩けると森に住んでますと言われても納得します。

「そういえば、俺ってどんな力を神様に貰ったんだろう? あのコピー能力以外にもありそうだよな」

 おや、不意にチーレムが足を止めましたね。
 いくら体力お化けでも、気晴らしがないと疲れるのでしょうか。
 でも、確かに私が授与した能力があの程度で終わるわけないと思うので、きっと他にもありますよ。
 まあ、概要は記憶にありませんが。五十年経っているわけですし。
 適当に与えた力なんて覚えていませんよ、はい。

「……」

 どうしたのでしょうか? 右手で地に落ちている枝を拾いました。
 いったい何をするのでしょうか?

「――『汝の剣は我にあり』」

 ひえっ。変な言葉を呟いたと思ったら枝が、なんか凄い剣になりましたよ!
 神々しく光を纏わせていますが、あの剣はなんなのでしょうか……。

「よしっ。やっぱり、俺の予想通りだな。考えたことを現実にする。それが俺の本当の魔法か」

 つまりどういうことだってばよ。
 えっと、要するにあれですか? 思ったことを実現するてきな?
 いや、でもそれは流石に違いますよね。
 だってそれだと最早、全能じゃないですか!
 それはやばいですよ。やばたにえんですよ。

「でも、今はこれが限界か。流石になんでも実現はできないな。だとすれば、どんな事象を現実として使えるか、それを理解することが重要か」

 いや、本当にとんでもない力ですね。チートじゃないですか! ズルだ! 卑怯だ!
 ……いや、待ってください。
 彼の能力って思ったことを実現させるのですよね?
 えっ、それってちょっとまずくないですか?
 だって、彼って今、自分は勇者だと思って、魔神と邪王を倒すと思っているのですよね?
 つまりですよ? 彼の力が完全に開花したら――。

「な、その剣はまさか!?」
「ん、誰だ? 黒い羽根……悪魔とかか?」
「く、遂に聖剣を手にした者が現れるなんて――!?」

 うわあああああああ! 止めて! これ以上、彼に虚偽の妄想話を教えないで!
 なっちゃうから! 近いうちに現実になるから! だから止めてえええええ!!!!
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