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国籍
しおりを挟むつかまってしまった転移者でも、ある程度異世界についての知識があるものは、前話のように、時代が昔すぎるということで、いやではあるが、それでも納得は少しはしていた。
しかし、このせかいにくわしくないものたちにとっては、なぜ自分が捕まっているのかもわからず、そして、この後どうなるかについても分からないのだ。
(こ、これからどうなってしまうんだ…)
一応、元軍人として、口は割らない訓練もしているし、弱音を吐かない訓練もしているが、それでも、実際に自分が捕まってしまうと、怖くなってしまう。
しかも、今回はギルドに登録をしただけでつかまったが、タイミング的に、ギルドに登録したことが犯罪ではなさそうだ。
タイミング的にはギルドで行った国籍登録のほうが関係ある気がする。
(もしも、そうだとしたら、この国の法律がどうなっているかはわからないが、それでも、国籍を持ったことによって捕まえられるようになったとしよう。
…………
何が原因なんだ?)
ギルドで登録をしたことによってつかまったというわけではないことまでは、わかったのだが、なぜつかまっているのかはわからない。
(とりあえずは、待つしかないか。)
そういって、その男は考えることをやめた。
「とりあえず、残りの2人はどうなるのか…」
実は、帝都から抜け出すのには、国籍はいらない。
問題はほかの町に入るときに必要となるのだ。
しかし、帝国内でも、国籍無しでは入れる街もある。
いくつか種類があるが、一番楽なのは、小さな村だろう。
この帝国内にもいくつかの村というのは存在している。
それは、ここ最近の帝国かが嫌で、田舎でのんびり暮らしたいと思っている人用に、あえて残している村なのだが、その村に関しては、村長が国籍を必要とするかを決めることができる。
というより、帝国内の街に関しては、基本的にはそこの支配者が国籍の有無を決めることができる。
しかし、国籍がない物に関しては、帝国内での犯罪を国の法ではさばかないし、もしも国籍のない物が問題を起こした場合は、その者がいた領主が政府のほうから責任を追及されることになっている。
国籍を持っていれば、政府側も、普通の犯罪として対処して、そこの領主にもとても大きな重大犯罪でなければ、おとがめはない。
「うまくやったな。」
アインがそういったのは、今回の転移者のうち1人はその小さな村に入ることができたらしい。
(別に起こっていないから、開放してもいいんだが、こんなことをしてしまうと、権威が失われるからな…)
もしも、ここで彼らを解放すれば、優しき王としてほめたたえられることもあるかもしれないが、それ以上に反抗の意思を持っている人たちに、べつに王に対して何か問題を起こしても、そこまで重い罪に問われないと調子に乗られてしまう可能性があるのだ。
そして、まだ未来が見えないのは、残り1人となったのだった。
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