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自滅
しおりを挟む光速で飛んできている剣を、吸血鬼は魔力で何とか探知した。
しかし、体の限界があるため、どう頑張ってもよけることはできない。
(ならば!)
吸血鬼は、全力で顔に魔力を込めた。
しかし、それでも顔には刺さって、致命傷ではないが、血が出てきてしまった。
「なるほど…こんな戦い方をする奴には初めて会ったよ。」
吸血鬼が焦ったのは一瞬で、すぐに回復魔法で、顔を直していった。
「吸血鬼なのに、回復魔法を習得しているのか。」
基本的に、吸血鬼のような回復力のある魔族は、回復魔法を習得することは少ない。
なぜなら、回復魔法を習得する必要がないし、回復力のある魔族というのは基本的に強いからである。
だからこそ、自身が傷を負うことを前提にしている回復魔法を習得している強い魔族は少ないのだ。
「まぁ、僕の場合は邪神から力をもらうまでは弱かったからね。」
実際には、彼は吸血鬼の中では弱い部類だった。
しかし、それでもほかの種族に比べたら十分使った。
「回復魔法を使うことは想定外だったな。」
アインも、回復魔法を使うとは思っていなかったので、小さな攻撃でちまちまダメージを与えていくという作戦ができなくなってしまった。
(それでも、相手の心を折るには、できるだけ動かないほうがいいし。)
そう考えたアインは、魔法でどうにかすることにした。
(今は、光の壁によって外に攻撃が行くようなことは絶対にありえない。
だから、少しだけ無茶をするか。)
そしてアインは、仮初の体の魔力をすべて胸の部分に集中した。
「何をやっている。」
吸血鬼も、さっきまで剣で攻撃してきたアインがいきなり体内の魔力を一転に集中させ始めたことに違和感を感じた。
しかし、体中の魔力を一点に集中するメリットというのはそこまでない。
なぜなら、魔法というのは、体の魔力機関から発動するところまでを魔力でつないで、そこで魔法を発動するというものだ。
魔力を一点に集中するということは、魔法発動のための魔力も、魔法の発動打点を決める魔力もなくなってしまうということだ。
そして、アインは一転に集中した魔力を魔法に変え始めた。
しかし、発動打点を決める魔力がないので、今魔法を発動させてしまえば、自身の体の中からは法が発動するということだ。
「まさか…お前自爆をするつもりか!」
実際、アインは自滅をしようとしていた。
しかし、それは吸血鬼にとってはつらくてもアインにとっては何もつらいことではなかった。
まず、回復能力が高くても木っ端みじんになってしまえば、流体上の魔物でなければ、回復はできない。
そして、回復魔法も回復魔法を使う体がなければ何もできない。
しかし、アインに関しては今の体は仮初の体。
神の体という点では、本体なのではと思うかもしれないが、そんなことはなく、アインにとっては、神の体も量産可能なのだ。
「安心しろ、君にはまだ生きてもらう。
今の状態であの装備をばらまかれても困るのでな。」
そう言って、アインは自身の魔力をすべて爆裂魔法に変えた。
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