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苦悩

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「人が…来ない。」

まるで、世紀末のような状態でゼアークは言っているのだが、昨日のことを考えれば、当たり前だった。

「な、何が問題だったんだ?
もしかして、宝が足りなかったのか?」

前は、戦闘シーンばかりを特集していたが、調査団に関しては、しっかりと宝についても回収をしていっている。

なので結構レア度の高い宝が出ることは伝わっているのだが、それ以上の危険度ということで、今のところ、行かせてもらえないのだ。

「ふ~。一回落ち着こう。」

この独り言も、すでに5回目なので、全然落ち着けていなのだが、それでも、さっきまでよりは落ち着きを取り戻し始めていた。

「このダンジョンに関しては、別に人間が来なくてもやっていける。
しかし、人間が来ないと、ダンジョンで待っている楽しみがないから、ダンジョンに人を呼び込もうとしているだけだ。
大丈夫、ダンジョンの運営だけに関していえば、別に人間が来なくったって…」

しかし、ゼアークが焦る要素はほかにもあった。

それは、前に吸血鬼に任せたほうのダンジョンなのだが、そちらのほうも、人間に見つかって、階層は多いが、それでも比較的すべての階層がそこまでレベルが高くないということで、そちらのダンジョンに関しては、多くの人間が集中しているらしい。

まぁ、向こうのほうが立地がいいというのもあるが、会社で言ってしまえば、本店よりも、視点のほうが稼いでいるような状態になっているのだ。

「まぁ、ダンジョンモンスターに関しては、俺の命令に逆らえないだろうが、それでも、部下のダンジョンのほうが、来る人間が多いというのは、まずいよな…」

そんなことを考えていても、これに関しては、人間の方の決まりで動いてしまうので、ダンジョン側が無理やり人間を連れてくるくらいしか、人間を入れる方法はない。

しかし、そんな方法をとってしまえば、自主的に来る人間の数に関しては、圧倒的に減るだろう。

「放蕩にどうしたらいいのだろうか…」

しかし、深刻に考えているのは、ダンジョン側だけでもなかった。

~人間サイド~

「新しく見つかったという、ダンジョンに関してはどうするのだ!」 

「確かに危険というのは、わかっているが、それでも、何の問題もなく進んでいたところを、イレギュラーな存在に、やられただけだろう!
つまり、その生物に遭遇しなければ、何の問題もないではないか!」

「そんなことを言って、死者が出たらどうするのだ!
ダンジョンが大丈夫だからと言って、ダンジョンに行ったら、死んでしまったとなっては、その家族や、その冒険者を押していた面々から何を言われるか…」

「そんなもの、死を覚悟している冒険者に言うのは愚の骨頂ではないのか?
そもそも、上位ランクの冒険者によって、安全を保障されている状態で、冒険することは、果たして本当の冒険と言えるのか?
この冒険者ギルドができたころなんか、死を恐れなく、それ以上の名誉を求める本当の冒険者であふれていたというのに、今となっては、まともに就職ができなかったものが、バイトのようにやる仕事になっているんだぞ!」

「今は、それが通じない世間なのだ!
今の世界は、平和ボケしている。
それは、先の時代を生きてきた者たちからすれば、安全すぎるし、努力をしてないようにも見えるかもしれないが、それでも、今の時代、死というのは、最も避けるべき行為になっているのだ。」

このように、冒険者ギルド側もあのダンジョンの処遇をどうするかを、言い争っていたのだった。
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