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目標
しおりを挟むメイドも、主人がまさか世界全部の知識を聞いているとは思っておらず、このダンジョンに関しての、現状しか教えてくれなかったが、このダンジョンに関しての情報だけでも、彼にとってはここがゲーム内の世界だと分かった。
(それにしても、本当にゲームの世界に転移なんてものがあったのか。)
この世界では、彼の名はゼアークと言う。
この名前に関しては、特に何も考えずにつけた名前だが、まさかこの世界での自分の名前になってしまうとは…
「どうかしましたか?」
「い、いや、何でもない。」
それに、この世界がゲームと同じ世界だとしても、彼女らは確実に自分たちの意思を持って動いている。
なぜなら、今、ゼアークは自分しか入れないはずの部屋にいるのに、彼女はしっかりとここにいる。
つまり、前までのゲームの世界とは違うってことだろう。
「そうだ。私に考えがある。
ここのダンジョン周辺の地上の地図を持ってきてくれ。」
実際には何も考えなんかないのだが、まさか
『実は記憶消失になってしまって…助けて。』
なんか言えるわけもなく、こういった、回りくどい言い方になってしまうのだ。
しかし、それでもしっかりと、命令を守ってくれて、地図を持ってきてくれた。
「ありがとう。」
そして、ゼアークは地図を見た。
(やっぱりゲームと一緒だな。)
ゲーム世界では、魔王も地上に出て、人間の町を攻めたりすることができた。
しかし、それができるのは配下のモンスターであって、魔王本人はできなかった。
それでも、部下の魔物に命令を与えるために、地上の地図に関しては、しっかりと作ってあった。
それに、ゲーム通りなら…
「地上の管理に関しては、どうなっている?」
「はい。ゼアーク様が言ったように、しっかりと、人間たちに人間の国よりも、ダンジョンの魔王に管理されたほうがいいと思わせるようにしております。」
彼は、無理やり人間を従えさせるのもいいが、できるだけ最高効率で活用したいと思っていた。
このゲームには、支配下の者たちに環境によって、彼らの生産効率なんかも変わってくるようになっている。
そして、ゼアークは、この世界で地道に人間を味方にしていって、そのうち、人間によって、人間を無理やり魔族の一味にすることにすることが目標だった。
しかし、ゲーム内の世界では、勇者がいるため絶対にできないような内容だったのだが、それでもこの世界では、勇者はいない。
もしかしたら、勇者がいるのかもしれないが、この世界ではさすがにコンティニューはできないだろう。
つまり、この世界に勇者が誕生していたとしても、1人1人殺していって、すべての勇者を倒してば、その目標も夢ではなかった。
しかし、今まではゲームの使用上、自分のダンジョンからあまり離れた場所には、部下の魔物や人間でも移動ができないようだった。
しかし、リアルとなったこの世界ではそんなものもないだろう。
(とりあえず、第一目標は、近隣の国を1つ支配だな。)
もともと、人間だったころに、世界統一(ゲーム内)なんて言うものを目指していたので、リアルで可能性が出てきては、目指したくなってくる。
まぁ、心がこの世界になじみ始めたのかもしれない。
「ゼ、ゼアーク様。どうしましたか?」
「いや…しかし、私…我はここで、1つの目標を立てた。」
「な、なんでしょうか…」
「このダンジョンは、これから先、地上の者たちの支配に移る。
殺しあうのではない。支配だ。
一瞬にして彼らの心を折って、我がダンジョンの生産力としてしまうのだ!」
大きな部屋の中に、そんな言葉が響き渡ったのだ。
「さて、それでは、このことをせめて、幹部全員には伝えてくれ。」
そして、ゼアークはまた、地図を見直して、現実的にどの国とどんな関係を組むのかを考え始めたのだった。
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