84 / 86
その後の兄と弟。
☆ピザ。
しおりを挟む
※2003年秋頃の話。
生コン屋の朝は早いが、そのぶん終業時間も早いのが、良いところだ。残業だってほとんどない。だから、夕方の五時にはもうひとっ風呂浴びて飯を食って、六時には夜遊びに繰り出す。開店直後の居酒屋やスナックに顔を出して、ちょっと呑んですぐに帰る。生コン屋の遊び方はきれいだって評判だ。
といっても以前は、俺は毎晩体力の続く限り遊んでたけどさ。近頃はあんまりぶらぶらしていると知玄がいじけちゃうから、自然と夜は外に出なくなった。
夜は遊ぶかわりに、俺の部屋で知玄とだらだら過ごす。知玄は何か難しい本を読んで、俺は煙草を吸ったり漫画を読んだり。あとは、ちょっとしたゲームをしてみたり。まるで小学生みたいだな。
「お兄さん」
「なに?」
「ピザって十回言ってください」
あぁ、それな。ガキの頃にダチとよくやったやつ。俺は漫画本を閉じて、よっこらせと起き上がった。知玄は床に正座して、大きな目をキラキラさせて俺を見ている。前髪を頭のてっぺんに結んでるのもあって、「待て」の最中の犬みたいだ。
「それってあれだろ、肘か膝か間違えさせるやつ」
俺、それ結構強いよ。しかし知玄ってこういう、しょうもない遊びが好きな。
「よぉし、兄ちゃんが付き合ってやらあ」
「やったー!」
知玄は張り切って腕捲くりをした。これは、肘狙い……と見せかけて膝かな。
「じゃあいくぞ。ピザピザピザピザピザ」
肘でも膝でもどっちでも来いっ!
「ピザピザピザピザピザ」
「じゃあここは?」
よっしゃ。予想通り、ベタに肘を指しやがった。それっ、
「ぴじっ!」
生コン屋の朝は早いが、そのぶん終業時間も早いのが、良いところだ。残業だってほとんどない。だから、夕方の五時にはもうひとっ風呂浴びて飯を食って、六時には夜遊びに繰り出す。開店直後の居酒屋やスナックに顔を出して、ちょっと呑んですぐに帰る。生コン屋の遊び方はきれいだって評判だ。
といっても以前は、俺は毎晩体力の続く限り遊んでたけどさ。近頃はあんまりぶらぶらしていると知玄がいじけちゃうから、自然と夜は外に出なくなった。
夜は遊ぶかわりに、俺の部屋で知玄とだらだら過ごす。知玄は何か難しい本を読んで、俺は煙草を吸ったり漫画を読んだり。あとは、ちょっとしたゲームをしてみたり。まるで小学生みたいだな。
「お兄さん」
「なに?」
「ピザって十回言ってください」
あぁ、それな。ガキの頃にダチとよくやったやつ。俺は漫画本を閉じて、よっこらせと起き上がった。知玄は床に正座して、大きな目をキラキラさせて俺を見ている。前髪を頭のてっぺんに結んでるのもあって、「待て」の最中の犬みたいだ。
「それってあれだろ、肘か膝か間違えさせるやつ」
俺、それ結構強いよ。しかし知玄ってこういう、しょうもない遊びが好きな。
「よぉし、兄ちゃんが付き合ってやらあ」
「やったー!」
知玄は張り切って腕捲くりをした。これは、肘狙い……と見せかけて膝かな。
「じゃあいくぞ。ピザピザピザピザピザ」
肘でも膝でもどっちでも来いっ!
「ピザピザピザピザピザ」
「じゃあここは?」
よっしゃ。予想通り、ベタに肘を指しやがった。それっ、
「ぴじっ!」
0
お気に入りに追加
71
あなたにおすすめの小説
![](https://www.alphapolis.co.jp/v2/img/books/no_image/novel/bl.png?id=5317a656ee4aa7159975)
別れようと彼氏に言ったら泣いて懇願された挙げ句めっちゃ尽くされた
翡翠飾
BL
「い、いやだ、いや……。捨てないでっ、お願いぃ……。な、何でも!何でもするっ!金なら出すしっ、えっと、あ、ぱ、パシリになるから!」
そう言って涙を流しながら足元にすがり付くαである彼氏、霜月慧弥。ノリで告白されノリで了承したこの付き合いに、βである榊原伊織は頃合いかと別れを切り出したが、慧弥は何故か未練があるらしい。
チャライケメンα(尽くし体質)×物静かβ(尽くされ体質)の話。
サンタクロースが寝ている間にやってくる、本当の理由
フルーツパフェ
大衆娯楽
クリスマスイブの聖夜、子供達が寝静まった頃。
トナカイに牽かせたそりと共に、サンタクロースは町中の子供達の家を訪れる。
いかなる家庭の子供も平等に、そしてプレゼントを無償で渡すこの老人はしかしなぜ、子供達が寝静まった頃に現れるのだろうか。
考えてみれば、サンタクロースが何者かを説明できる大人はどれだけいるだろう。
赤い服に白髭、トナカイのそり――知っていることと言えば、せいぜいその程度の外見的特徴だろう。
言い換えればそれに当てはまる存在は全て、サンタクロースということになる。
たとえ、その心の奥底に邪心を孕んでいたとしても。
![](https://www.alphapolis.co.jp/v2/img/books/no_image/novel/bl.png?id=5317a656ee4aa7159975)
悩める文官のひとりごと
きりか
BL
幼い頃から憧れていた騎士団に入りたくても、小柄でひ弱なリュカ・アルマンは、学校を卒業と同時に、文官として騎士団に入団する。方向音痴なリュカは、マルーン副団長の部屋と間違え、イザーク団長の部屋に入り込む。
そこでは、惚れ薬を口にした団長がいて…。
エチシーンが書けなくて、朝チュンとなりました。
ムーンライト様にも掲載しております。
![](https://www.alphapolis.co.jp/v2/img/books/no_image/novel/bl.png?id=5317a656ee4aa7159975)
【完結】ぎゅって抱っこして
かずえ
BL
幼児教育学科の短大に通う村瀬一太。訳あって普通の高校に通えなかったため、働いて貯めたお金で二年間だけでもと大学に入学してみたが、学費と生活費を稼ぎつつ学校に通うのは、考えていたよりも厳しい……。
でも、頼れる者は誰もいない。
自分で頑張らなきゃ。
本気なら何でもできるはず。
でも、ある日、金持ちの坊っちゃんと心の中で呼んでいた松島晃に苦手なピアノの課題で助けてもらってから、どうにも自分の心がコントロールできなくなって……。
あなたの隣で初めての恋を知る
ななもりあや
BL
5歳のときバス事故で両親を失った四季。足に大怪我を負い車椅子での生活を余儀なくされる。しらさぎが丘養護施設で育ち、高校卒業後、施設を出て一人暮らしをはじめる。
その日暮らしの苦しい生活でも決して明るさを失わない四季。
そんなある日、突然の雷雨に身の危険を感じ、雨宿りするためにあるマンションの駐車場に避難する四季。そこで、運命の出会いをすることに。
一回りも年上の彼に一目惚れされ溺愛される四季。
初めての恋に戸惑いつつも四季は、やがて彼を愛するようになる。
表紙絵は絵師のkaworineさんに描いていただきました。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる