兄がΩ 〜うっかり兄弟で番いましたが、今日も楽しく暮らしています。〜

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●深酒と危険な香り。

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『天体観測会中止のお知らせ』
 天文サークルの一斉送信メールに起こされた朝、カーテンを開ければ外はしんしんと雪が降り積もっていた。それでも当然ながら、なぎさちゃんの結婚式は中止にはならない。
「これでオッケー。二次会頑張って。新しい彼女ゲットしてきなよ」
 母は兄のネクタイを直し、バシッと肩を叩いた。
「うっせーなー。こんな田舎の結婚式だぞ。顔見知りしか来ねえって」
 僕は階段を駆け下りる兄に着いていって、玄関先まで見送った。
「気をつけていってらっしゃい」
「おう、いってきます」
 いってらっしゃいのキスをしたいけど、すぐそこに兄の友人の車が待っている。雪はまだ止みそうにない。どうか無事帰って来れますようにと、僕は祈るしかない。
 
「はぁ……」
 兄の脱ぎ散らかした服をかき集めて畳む。もしも天体観測会が中止でなかったら、兄は朝まで外に放置されていたのかも。
 もうすぐ日付が変わる。三十分ほど前に、兄は帰宅した。一人で立てないほど泥酔した兄の姿に僕は驚いたけれど、兄の仲間達もかなり困惑した様子で、
「悪ぃ、調子に乗って呑ませ過ぎた」
 と一言謝ると、兄と兄のコートを僕に押し付け、逃げるように去っていった。
 二階に上げる前にトイレに連れていき、胃の中のものを全て吐かせた。それでも部屋中に、強烈な酒気が充満する。
 兄が苦しげに呻くので、僕は腰を上げた。すっかり掛け布団を蹴飛ばしている。裸同然の格好で何も掛けずに寝ては、風邪を引いてしまう。寝ている間に具合が悪くなっても苦しくないよう体位を整えてやり、布団をかけ直す。と、兄が僕の手首を掴んだ。
「何、逃げてんだよ」
「逃げてません」
 僕は嘘を吐いた。本当は、今すぐこの部屋から出て行きたい。室内に充満しているのは酒気だけじゃない。夕焼け色の桜の匂い、僕を狂わせた兄の匂いが、眩暈がするほどに香っている。だが泥酔者を独りにしておくのは危険だという思いと、早く逃げないとそれはそれで危険だという思いが、せめぎ合う。
 何が危険なんだろう? 後で兄に怒られること? 違う。身体の奥底から本能が警告してくるのだ。
 強く手を引かれ、兄の上に倒れ込んだ。日常的に自身の体重よりも重い物を持ち運びする兄に、腕力ではかなわない。ましてや今は、酒のせいで理性のたがが外れてしまっている。たちまちベッドに転がされる。足が壁に当たり、鈍い音がした。
「わ、お兄さ……っ」
 抗議しようとした口を、兄の唇が荒々しく塞ぐ。その間にも、兄の手は僕の身体をまさぐる。僕の意に反して、身体は昂ってしまう。ちゅ、ちゅ、と湿った音が鼓膜を打つごとに下半身に身体中の血が集まり、痛いほどだ。兄の手が僕の服の中に侵入してそれを見つけ、引っ張り出した。乱暴に数回扱き、導こうとする。腰に回された腕が僕を強く抱き寄せる。
「ダメ、ダメです、お兄さんやめて!」
 僕の先端が兄の熱い肉の中に埋まり、すぐに根本まで覆い尽くされる。
「嫌だこんなの! お兄さんだって、こういうの好きじゃないでしょう!?」
 早く動けとばかりに兄は腰を突き上げ、駄々っ子のように喚く。
「お前、俺に胸貸してくれるって、言ったじゃん!」
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