兄がΩ 〜うっかり兄弟で番いましたが、今日も楽しく暮らしています。〜

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◯これはいらない。

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 風呂上がり、鏡の前で首に貼ってた絆創膏を剥がした。やっぱり知玄とものりに咬まれた痕がちょと残っている。元から薄かった髭とか腕毛とかが更に薄くなったような。つがいができた影響? それとも気にしすぎ? これ以上Ω化が進んだらやだなーと思う。
「おーにーいーさぁーん」
 うっせぇな、何だよ。二階に上がったら知玄の馬鹿がいて、俺が無視して部屋に入ろうとしたら、あとをついてきた。で、今、ドアの隙間からジトーッとした目でこっちを覗いている。外では愛想良いのに、家ん中では暗いんだよなぁ、こいつ。
 正真正銘、血の繋がった兄弟なのに、俺と知玄コイツは全然違う。かたや不良、かたや優等生。顔もちっとも似てねぇし。つい最近までずっと、知玄は俺を避けていた。なのに急にこんな、仲良い兄弟みたいに絡んでくるとか。
「入りたきゃ入れよ」
「えっ、いいんですか! うほほーい、じゃあ失礼しますっと」
 何か用があるのかと聞くと、別にないという。知玄はただ、正座でこっちをガン見している。待ち合わせの時間があるから、ほっといて着替えた。先輩と夜遊び。飯食ったら多分キャバクラに行くから、しゃんとした格好しないと。お気に入りの黒いシャツに白のチノパン。着替えている間じゅう、知玄のねっとりとした視線を感じた。
 ヘッドボードの抽斗を出して、ピアスを着け、指輪を嵌めて、それから……。金色の鎖の端と端をつまみ上げて、思った。これもう要らなくね? 
 ぶっとい鎖のチョーカー。首をガードするためのものだが、もうこの首を守ることはないんだった。だって、もうつがいの証は刻まれている。まぁ、こんなもんで貞操が守れるなんて、思ったことはねぇけども。
「ノリ」
「はいっ、何でしょう!」
 呼べば知玄はピンと背筋を伸ばしてハキハキと言った。
「やるよ」
 チョーカーをぽいっと投げたら、知玄は軽く腰を上げて、難なく両手でキャッチした。犬みたいだ。だが犬みたいに喜ぶかと思ったら、
「えーっ」
 何でそんな不満そうなんだ。
「要らねぇのかよ」
 知玄が着けて似合うようなものではないと、俺も思うが、さっきから変態的に俺の着替えをガン見しているヤツだから、俺の身に付けていたものを貰えば変態的に喜ぶのかなと思ったら、違った。
「だってこれ、お兄さんによく似合います。僕はこれを着けているお兄さんが好きだな。すごくセクシーですよ」
 褒めてんのか。褒めてるんだよな。貶し要素がないし、真顔で言ったし。
「お兄さん、これ僕が着けてあげたいです。いいでしょ?」
 俺が応える前に、知玄は素早くベッドに上がり、俺の背後に回り込んだ。鎖が後ろから喉仏の下にまわされる。鎖骨の上にずっしりとした重みが乗る。肩が凝りそう、と、初めてこれを着けた時に思ったのを思い出す。
「出来ました。傷痕にこの鎖……よく映えますね」
「キモいこと言うなよ」
「でも肩が凝りそうです」
 肩をわっしわっしと強めに揉まれた。なに、このシチュエーション。
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