世にも異様な物語

板倉恭司

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呪いのビデオ

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「なあ、呪いのビデオって聞いたことあるか?」

「えっ、何それ?」

「都市伝説なんだけど、見ると死ぬらしいよ。怖くね?」

「何が怖いの?」

「だってよ、見たら死ぬんだよ。怖いだろうが」

「そうかなあ。死んじゃえば、怖いとか怖くないとか、そういう感覚もないじゃん。死人になっちゃえば、本人は怖くないよ」

「なるほど。言われてみれば、その通りだな」

「そんなのより、ノロイのビデオの方が怖いよ」 

「ノロイのビデオ? ああ、そりゃ怖いな。あの伝説の白イタチの映像だろ。あんなの、イタチじゃなくて怪獣の域に達してるもんな。それは怖い。怖いに決まってるよ」

「あとさ、トロイのビデオ」

「ああ、トロイのビデオ。トロイ戦争の映像が映ってたってアレか。不思議だよなあ、あのトロイ戦争をどうやって録画したんだろう。それ以前に、電気すら使われていなかった時代に、どうやってビデオに録画したんだろうな。もはやオーパーツだよ。マジ怖いね」

「それと、鎧のビデオ」

「うんうん、あのビデオは怖いな。鎧着た奴がずらっと並んでて、司会者が銃で一発ずつ撃っていくんだよ。たまに鎧を貫通して、バタリと倒れる奴とかいるから。しかも、最終的には機関銃で撃ってたからな。機関銃が相手だと、鎧なんか関係ないんだよ。撃たれた部分が、ちぎれて飛んでいってたからな。あれは怖かった」

「あとね、五類のビデオ」

「うわあ、あれは怖いよ。有名な医師の先生が、五類に分類される病気をひとつずつ説明していくんだけど、その先生が全裸なんだよな。スッポンポンのおっさんが、真面目な顔で白板にマジックで病名とか症状を書いていく姿は、めちゃくちゃ怖かったぜ。しかも、アシスタントのお姉さんはなぜか柔道着を着てるんだよ。あの謎のセンスも怖かった」

「それとね、野呂井野ビデオ」

「おうおう、見たよ見たよ。アイドルグループ『AKR四十七士』のメンバーの野呂と井野のふたりが、四七・一九五キロをマラソンしたあと歌うって奴だろ。あれはヤバいよな。特に人気があるわけでもないふたりが、なんでそんなことしなきゃならないんだ。いったい何のために、あんなものを撮ったのか謎だよ。製作者の基本コンセプトがどこにあったのか、全くわからない。あれも怖いよ」

「それと、野茂の英雄」

「ああ、野茂の英雄は怖い、なんたって、日本人メジャーリーガーのパイオニアだもんな。野茂がいなかったら、日本とアメリカの野球界はだいぶ変わってたと思うぜ。アメリカ人もビビッたろうな。サムライスシゲイシャの国から来た訳のわからない東洋人が、変なフォームでものすごい球投げてバッタバッタと三振とるんだぜ。怖すぎるだろ」

「それから、野口の英世」

「野口の英世も怖いな。紙幣にまでなっちまった偉人だけど、借金癖と浪費癖が凄かったらしいよ。恩師や友人から借金しては、あっちこっちで遊び歩いていたそうだからなあ。しまいには、研究所の蔵書まて叩き売って遊び回っていたって話だろ。にもかかわらず、金を貸す人が周囲にいた……これは本当に怖い話だよ」

「あとねあとねあとね、ノートンの腕も」

「お前、なんで知ってんだよ。超竜スコット・ノートンは怖かったらしいぜ。なんつっても、腕周りが六十センチ超えてたそうだからな。俺の足より太いんだぜ。しかも、アームレスリングの世界チャンピオンだからな。その後にプロレスラーになったけど、ペンチプレスで三百キロを挙げてたそうだよ。あんなの、夜道で出くわしたら小便チビるくらい怖いぜ」

「それとね……」





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