23 / 37
ボリス編
ショウゲン、会議を開く
しおりを挟む
「ボリス、俺がいない間に何かあったのか?」
ニコライは、静かな口調で尋ねた。
先ほど、彼は店に戻って来たのだが、ボリスの様子がおかしいのだ。普段なら、外から帰って来ると何かしら話しかけて来た。だが今は、黙り込んだまま本を読んでいるだけだ。いや、読んでいるというより、本に視線を落としているようにしか見えない。
「は、はい? な、何もありませんよ?」
ビクリとなり、顔を上げるボリス。この男は、本当に嘘をつくのが下手だ……と、ニコライは思った。ボリスの心を悩ませる何かが起きたのは、間違いない。
だが、今はそれどころではなかった。このままだと、二つの巨大な組織が潰し合うことになるのだ。それだけは、止めなくてはならない。
こうなったら、明日は自分なりのやり方で調べてみよう。
「ボリス、明日も店を頼むよ。俺は、あちこち行かなきゃならなくなった」
・・・
トライブの本部は、ものものしい雰囲気に包まれていた。大勢の男たちが、会議室にて椅子に座っている。その中心にいるのは、言うまでもなくショウゲンだ。
「既に知っている者もいるとは思うが、昨日ビリーが襲われた……それも、ユーラックの構成員にな。薬で、頭がおかしくなっていたようではあるが……」
皆の顔を見回しながら、ショウゲンは重々しい口調で言った。彼の前にいるのは、全員がトライブの幹部である。彼らは夜更けに急遽集められ、緊急会議を開いていた。ディンゴやビリーやライザといった面々に加え、年輩の幹部たちもいる。
「ビリー、皆の前で確認しておく。お前を襲ったのは、ユーラックの構成員で間違いないのだな?」
ショウゲンの問いに、ビリーは頷いた。
「はい。調べたところ、ユーラックのメンバーでした。数人の人間から言質を取りましたし、間違いありません」
その言葉に、ショウゲンの表情がさらに険しくなった。
「奴らは、トライブの出方を見ているのか? それとも薬でおかしくなった下っ端のバカが、勝手に動いただけなのか? あるいは、別の何者かが糸を引いているのか? いずれにしても、このままだと戦争になりかねん」
「そうですねえ。これは、非常に由々しき問題ですな。その襲撃者を、生きたまま捕らえられれば良かったんですがね」
ロームという名の幹部が、聞こえよがしに言った。その言葉に反応し、ビリーの表情が険しくなる。
「それは僕に言っているんですか、ロームさん?」
「いいや、そうじゃねえよ。ただ、そのバカの口さえ割らせれば、いちいち面突き合わせて会議する必要もなかったんじゃねえのか、と思ってな」
そう言って、ロームはにやりと笑う。彼は四十近い年齢であり、かつては武闘派として知られていた。今も、気に入らないことがあれば力で潰す……という性格は変わっていない。
ムッとしたビリーが言い返そうとした時、別の者が口を開いた。
「なあ、ショウゲン。これは、むしろチャンスなんじゃないのか? 真相がどうであれ、トライブの幹部がユーラックの人間に襲われたのは事実だ」
言ったのは、パチーノという名の幹部だ。五十歳の古株であり、組織内の発言力も大きい。
「どういう意味だ?」
ショウゲンは鋭い目つきでパチーノを見るが、彼に怯む気配はない。
「向こうの真意が何だろうと、そんなことはどうでもいい。ユーラックを潰すための、格好の口実が出来たわけだからな。俺も若い連中から、ユーラックのガキ共に対する不満や愚痴をさんざん聞かされている。あんたさえその気になれば、ウチの連中は今すぐにでも飛ぶぞ」
しかし、ショウゲンの態度はにべもない。
「まだ早い。今はその時ではない。皆も、軽はずみに動かぬよう部下に言っておけ」
皆に言った後、ショウゲンはビリーの方を向いた。
「ビリー、悪いが、ユーラックのアジトまで行って来てくれ。今回の件について、グレンに直接問いただして来るのだ」
「わかりました」
ビリーは即答した。だが、ディンゴが片手を上げて制する。
「おいおいショウゲン、ビリーに行かせたらまずいだろう」
穏やかな口調で言うと、ディンゴはロームの方を向いた。
「ローム、お前が行け。いいか、今のお前はトライブの代表も同然だ。お前に対する態度は、トライブに対するものだと心得ておけ」
「はい。今すぐに行きます」
返事と同時に、ロームは立ち上がる。険しい表情を浮かべ、足早に部屋を出て行った。
その途端、ビリーがディンゴを睨みつける。
「なぜです? なぜ、僕ではなくロームに行かせたのですか?」
「第一に、襲われた当事者のお前を行かせるのは、上手い選択とは思えん。第二に、お前には他にやってもらわなくてはならん仕事がある。適材適所だ。何も、お前よりロームの方が上だと言っているわけではない」
そう言うと、ディンゴはショウゲンの方を向く。
「ショウゲン、お前はどう思う? 違う意見があるなら、奴を呼び戻す」
「いや、ない。確かに、お前の言う通りだ」
言った後、ショウゲンは誰にともなく呟いた。
「こんなやり方は、グレンらしくない。あいつなら、もっと上手い手を使うはずだが……」
その後のロームの行動は早かった。部下の中でも選りすぐりの者を四人集め、すぐさまユーラックの縄張りへと向かう。彼は、久しぶりの大役に興奮を隠せなかった。なんといっても、若手の中でも勢いのあるビリーを差し置いて抜擢されたのだ。
「ビリーの野郎、上の連中に気に入られてるからって、調子に乗りすぎなんだよ」
目をぎらつかせながら、ロームは言った。彼は、ビリーのことを好いてはいない。もっとも、トライブの三十代から四十代の中堅幹部は、ほとんどがビリーを嫌っている。若くして出世したとなると、当然ながら敵も多くなる。
「まあ、ディンゴさんはわかっているんだよ。いざという時、頼りになるのはどういう人間か……経験の浅いガキじゃあ、こういう大役は務まらねえのさ。やっと俺にも、チャンスが巡ってきたというわけだな」
ロームは部下に向かい、大声で喋り続けていた。彼の言葉に、部下が下品な笑い声で答える。夜の街に、彼らの声が響き渡っていた。
そんな雰囲気を、一変させる者が現れた。大柄な体格を黒いローブで覆い、フードを目深に被っている。男は脇道から不意に姿を現し、道端で無言のまま立ち止まり、ロームたちをじっと見つめている。両者の距離は、十メートルにも満たない。
「なんだあいつ、俺たちに用ですかね?」
部下のひとりが、腰の刀に手を伸ばす。だが、ロームが制した。
「ほっとけ。どうせ、ただのチンピラだろう」
直後、ロームは吹っ飛んだ──
ロームと部下が言葉を交わした、その僅かな時間に大男は動いた。一気に間合いを詰め、巨大な拳を叩き込む。たった一発のパンチで、ロームの体は宙を舞った。
部下たちは皆、何が起きたのかわからず硬直している。だが、大男の動きは止まらない。手を伸ばし、近くにいた部下の頭をわしづかみにする。
そのまま、ぐいと持ち上げた。
直後、頭が破裂する──
その光景を見て、ようやく部下たちは現状を理解した。見たこともない怪物が現れ、一瞬にして二人を破壊したのだ。
数々の修羅場をくぐってきたはずの彼ら……だが、その心は一瞬にして恐怖に支配された。
「ば、化け物だ!」
ひとりが叫んだ。それが引き金になり、皆が逃げ出す。彼らは今、本能だけで動いていた。恐怖の源から少しでも離れようと、三人とも同じ方向に走っていたのだ。
だが、それは大きな過ちであった。大男は、走る速度も尋常ではない。あっという間に三人に追いつき、手を伸ばす──
それは、残酷であると同時に滑稽でもあった。大男が走りながら、部下たちの頭を掴む。軽々と持ち上げ、力任せに放り投げる。まるで、子供がボールで遊んでいるかのように。
だが、遊ばれているのはボールではなく人間だ。部下は、凄まじい勢いで地面に叩きつけられた。直後、グシャッという音が響き、血を吐き痙攣し息絶える。
それが、三回繰り返された。
大男は立ち止まり、死体となった者たちを見下ろす。
やがて、死体から流れる血を手ですくい、塀に文字を書き始めた──
・・・
「すみません、お届けものですよ」
外から声が聞こえてきた。ボリスは立ち上がり、用心しつつ扉を開ける。
そこには、二人の女が立っていた。どちらも革の鎧を着ており、腰からは短剣をぶら下げている。ボリスを見る目には、嫌悪感があった。
ボリスは、この二人が何者か知っている。クイン率いるアマゾネスの構成員であり、ゴーダムでの物の配達を請け負っている。どちらも若いが、彼女たちを甘く見て下手な真似をしようものなら、喉を切り裂かれるのがオチだ。
「こちらです。差出人は、フランチェンさんです」
言いながら、女は黒い木製の箱を差し出す。
だが、ボリスは唖然となっていた。フランチェンといえば、彼の創造主の名前ではないか……既に他界したはずの人間が、自分に何か贈ってきたのか? しかし、そんなはずはない。
その時、ボリスの頭にひとりの男の姿が浮かぶ。
あいつ、か?
「すみません、よろしいでしょうか?」
女の声を聞き、ボリスは我に返る。ペこりと頭を下げると、箱を受け取った。
奥の部屋に行くと、ボリスは箱を開けた。中には、羊皮紙の巻物が入っている。
巻物を広げると、そこには地図が書かれていた。この街の、どこかの区画だ。ひとつだけ、赤く塗られた場所がある。
さらに、地図の下には文が書かれていた。
俺が誰だか、わかっているな。
今、俺はこの場所に住んでいる。協力する気が無くても構わないから、いつでも会いに来てくれ。お前なら大歓迎だ。
読み終えたボリスは、ため息を吐く。この赤く塗られた場所に、モンスターは住んでいるのだろう。
しかし、奴に会ったらどうなるか。
「私は、どうすればよいのだ?」
ニコライは、静かな口調で尋ねた。
先ほど、彼は店に戻って来たのだが、ボリスの様子がおかしいのだ。普段なら、外から帰って来ると何かしら話しかけて来た。だが今は、黙り込んだまま本を読んでいるだけだ。いや、読んでいるというより、本に視線を落としているようにしか見えない。
「は、はい? な、何もありませんよ?」
ビクリとなり、顔を上げるボリス。この男は、本当に嘘をつくのが下手だ……と、ニコライは思った。ボリスの心を悩ませる何かが起きたのは、間違いない。
だが、今はそれどころではなかった。このままだと、二つの巨大な組織が潰し合うことになるのだ。それだけは、止めなくてはならない。
こうなったら、明日は自分なりのやり方で調べてみよう。
「ボリス、明日も店を頼むよ。俺は、あちこち行かなきゃならなくなった」
・・・
トライブの本部は、ものものしい雰囲気に包まれていた。大勢の男たちが、会議室にて椅子に座っている。その中心にいるのは、言うまでもなくショウゲンだ。
「既に知っている者もいるとは思うが、昨日ビリーが襲われた……それも、ユーラックの構成員にな。薬で、頭がおかしくなっていたようではあるが……」
皆の顔を見回しながら、ショウゲンは重々しい口調で言った。彼の前にいるのは、全員がトライブの幹部である。彼らは夜更けに急遽集められ、緊急会議を開いていた。ディンゴやビリーやライザといった面々に加え、年輩の幹部たちもいる。
「ビリー、皆の前で確認しておく。お前を襲ったのは、ユーラックの構成員で間違いないのだな?」
ショウゲンの問いに、ビリーは頷いた。
「はい。調べたところ、ユーラックのメンバーでした。数人の人間から言質を取りましたし、間違いありません」
その言葉に、ショウゲンの表情がさらに険しくなった。
「奴らは、トライブの出方を見ているのか? それとも薬でおかしくなった下っ端のバカが、勝手に動いただけなのか? あるいは、別の何者かが糸を引いているのか? いずれにしても、このままだと戦争になりかねん」
「そうですねえ。これは、非常に由々しき問題ですな。その襲撃者を、生きたまま捕らえられれば良かったんですがね」
ロームという名の幹部が、聞こえよがしに言った。その言葉に反応し、ビリーの表情が険しくなる。
「それは僕に言っているんですか、ロームさん?」
「いいや、そうじゃねえよ。ただ、そのバカの口さえ割らせれば、いちいち面突き合わせて会議する必要もなかったんじゃねえのか、と思ってな」
そう言って、ロームはにやりと笑う。彼は四十近い年齢であり、かつては武闘派として知られていた。今も、気に入らないことがあれば力で潰す……という性格は変わっていない。
ムッとしたビリーが言い返そうとした時、別の者が口を開いた。
「なあ、ショウゲン。これは、むしろチャンスなんじゃないのか? 真相がどうであれ、トライブの幹部がユーラックの人間に襲われたのは事実だ」
言ったのは、パチーノという名の幹部だ。五十歳の古株であり、組織内の発言力も大きい。
「どういう意味だ?」
ショウゲンは鋭い目つきでパチーノを見るが、彼に怯む気配はない。
「向こうの真意が何だろうと、そんなことはどうでもいい。ユーラックを潰すための、格好の口実が出来たわけだからな。俺も若い連中から、ユーラックのガキ共に対する不満や愚痴をさんざん聞かされている。あんたさえその気になれば、ウチの連中は今すぐにでも飛ぶぞ」
しかし、ショウゲンの態度はにべもない。
「まだ早い。今はその時ではない。皆も、軽はずみに動かぬよう部下に言っておけ」
皆に言った後、ショウゲンはビリーの方を向いた。
「ビリー、悪いが、ユーラックのアジトまで行って来てくれ。今回の件について、グレンに直接問いただして来るのだ」
「わかりました」
ビリーは即答した。だが、ディンゴが片手を上げて制する。
「おいおいショウゲン、ビリーに行かせたらまずいだろう」
穏やかな口調で言うと、ディンゴはロームの方を向いた。
「ローム、お前が行け。いいか、今のお前はトライブの代表も同然だ。お前に対する態度は、トライブに対するものだと心得ておけ」
「はい。今すぐに行きます」
返事と同時に、ロームは立ち上がる。険しい表情を浮かべ、足早に部屋を出て行った。
その途端、ビリーがディンゴを睨みつける。
「なぜです? なぜ、僕ではなくロームに行かせたのですか?」
「第一に、襲われた当事者のお前を行かせるのは、上手い選択とは思えん。第二に、お前には他にやってもらわなくてはならん仕事がある。適材適所だ。何も、お前よりロームの方が上だと言っているわけではない」
そう言うと、ディンゴはショウゲンの方を向く。
「ショウゲン、お前はどう思う? 違う意見があるなら、奴を呼び戻す」
「いや、ない。確かに、お前の言う通りだ」
言った後、ショウゲンは誰にともなく呟いた。
「こんなやり方は、グレンらしくない。あいつなら、もっと上手い手を使うはずだが……」
その後のロームの行動は早かった。部下の中でも選りすぐりの者を四人集め、すぐさまユーラックの縄張りへと向かう。彼は、久しぶりの大役に興奮を隠せなかった。なんといっても、若手の中でも勢いのあるビリーを差し置いて抜擢されたのだ。
「ビリーの野郎、上の連中に気に入られてるからって、調子に乗りすぎなんだよ」
目をぎらつかせながら、ロームは言った。彼は、ビリーのことを好いてはいない。もっとも、トライブの三十代から四十代の中堅幹部は、ほとんどがビリーを嫌っている。若くして出世したとなると、当然ながら敵も多くなる。
「まあ、ディンゴさんはわかっているんだよ。いざという時、頼りになるのはどういう人間か……経験の浅いガキじゃあ、こういう大役は務まらねえのさ。やっと俺にも、チャンスが巡ってきたというわけだな」
ロームは部下に向かい、大声で喋り続けていた。彼の言葉に、部下が下品な笑い声で答える。夜の街に、彼らの声が響き渡っていた。
そんな雰囲気を、一変させる者が現れた。大柄な体格を黒いローブで覆い、フードを目深に被っている。男は脇道から不意に姿を現し、道端で無言のまま立ち止まり、ロームたちをじっと見つめている。両者の距離は、十メートルにも満たない。
「なんだあいつ、俺たちに用ですかね?」
部下のひとりが、腰の刀に手を伸ばす。だが、ロームが制した。
「ほっとけ。どうせ、ただのチンピラだろう」
直後、ロームは吹っ飛んだ──
ロームと部下が言葉を交わした、その僅かな時間に大男は動いた。一気に間合いを詰め、巨大な拳を叩き込む。たった一発のパンチで、ロームの体は宙を舞った。
部下たちは皆、何が起きたのかわからず硬直している。だが、大男の動きは止まらない。手を伸ばし、近くにいた部下の頭をわしづかみにする。
そのまま、ぐいと持ち上げた。
直後、頭が破裂する──
その光景を見て、ようやく部下たちは現状を理解した。見たこともない怪物が現れ、一瞬にして二人を破壊したのだ。
数々の修羅場をくぐってきたはずの彼ら……だが、その心は一瞬にして恐怖に支配された。
「ば、化け物だ!」
ひとりが叫んだ。それが引き金になり、皆が逃げ出す。彼らは今、本能だけで動いていた。恐怖の源から少しでも離れようと、三人とも同じ方向に走っていたのだ。
だが、それは大きな過ちであった。大男は、走る速度も尋常ではない。あっという間に三人に追いつき、手を伸ばす──
それは、残酷であると同時に滑稽でもあった。大男が走りながら、部下たちの頭を掴む。軽々と持ち上げ、力任せに放り投げる。まるで、子供がボールで遊んでいるかのように。
だが、遊ばれているのはボールではなく人間だ。部下は、凄まじい勢いで地面に叩きつけられた。直後、グシャッという音が響き、血を吐き痙攣し息絶える。
それが、三回繰り返された。
大男は立ち止まり、死体となった者たちを見下ろす。
やがて、死体から流れる血を手ですくい、塀に文字を書き始めた──
・・・
「すみません、お届けものですよ」
外から声が聞こえてきた。ボリスは立ち上がり、用心しつつ扉を開ける。
そこには、二人の女が立っていた。どちらも革の鎧を着ており、腰からは短剣をぶら下げている。ボリスを見る目には、嫌悪感があった。
ボリスは、この二人が何者か知っている。クイン率いるアマゾネスの構成員であり、ゴーダムでの物の配達を請け負っている。どちらも若いが、彼女たちを甘く見て下手な真似をしようものなら、喉を切り裂かれるのがオチだ。
「こちらです。差出人は、フランチェンさんです」
言いながら、女は黒い木製の箱を差し出す。
だが、ボリスは唖然となっていた。フランチェンといえば、彼の創造主の名前ではないか……既に他界したはずの人間が、自分に何か贈ってきたのか? しかし、そんなはずはない。
その時、ボリスの頭にひとりの男の姿が浮かぶ。
あいつ、か?
「すみません、よろしいでしょうか?」
女の声を聞き、ボリスは我に返る。ペこりと頭を下げると、箱を受け取った。
奥の部屋に行くと、ボリスは箱を開けた。中には、羊皮紙の巻物が入っている。
巻物を広げると、そこには地図が書かれていた。この街の、どこかの区画だ。ひとつだけ、赤く塗られた場所がある。
さらに、地図の下には文が書かれていた。
俺が誰だか、わかっているな。
今、俺はこの場所に住んでいる。協力する気が無くても構わないから、いつでも会いに来てくれ。お前なら大歓迎だ。
読み終えたボリスは、ため息を吐く。この赤く塗られた場所に、モンスターは住んでいるのだろう。
しかし、奴に会ったらどうなるか。
「私は、どうすればよいのだ?」
0
お気に入りに追加
29
あなたにおすすめの小説
愚者による愚行と愚策の結果……《完結》
アーエル
ファンタジー
その愚者は無知だった。
それが転落の始まり……ではなかった。
本当の愚者は誰だったのか。
誰を相手にしていたのか。
後悔は……してもし足りない。
全13話
☆他社でも公開します
![](https://www.alphapolis.co.jp/v2/img/books/no_image/novel/fantasy.png?id=6ceb1e9b892a4a252212)
ある横柄な上官を持った直属下士官の上官並びにその妻観察日記
karon
ファンタジー
色男で女性関係にだらしのない政略結婚なら最悪パターンといわれる上官が電撃結婚。それも十六歳の少女と。下士官ジャックはふとしたことからその少女と知り合い、思いもかけない顔を見る。そして徐々にトラブルの深みにはまっていくが気がついた時には遅かった。
![](https://www.alphapolis.co.jp/v2/img/books/no_image/novel/love.png?id=38b9f51b5677c41b0416)
地獄の業火に焚べるのは……
緑谷めい
恋愛
伯爵家令嬢アネットは、17歳の時に2つ年上のボルテール侯爵家の長男ジェルマンに嫁いだ。親の決めた政略結婚ではあったが、小さい頃から婚約者だった二人は仲の良い幼馴染だった。表面上は何の問題もなく穏やかな結婚生活が始まる――けれど、ジェルマンには秘密の愛人がいた。学生時代からの平民の恋人サラとの関係が続いていたのである。
やがてアネットは男女の双子を出産した。「ディオン」と名付けられた男児はジェルマンそっくりで、「マドレーヌ」と名付けられた女児はアネットによく似ていた。
※ 全5話完結予定
![](https://www.alphapolis.co.jp/v2/img/books/no_image/novel/fantasy.png?id=6ceb1e9b892a4a252212)
因果応報以上の罰を
下菊みこと
ファンタジー
ざまぁというか行き過ぎた報復があります、ご注意下さい。
どこを取っても救いのない話。
ご都合主義の…バッドエンド?ビターエンド?
小説家になろう様でも投稿しています。
![](https://www.alphapolis.co.jp/v2/img/books/no_image/novel/fantasy.png?id=6ceb1e9b892a4a252212)
異世界成り上がり物語~転生したけど男?!どう言う事!?~
繭
ファンタジー
高梨洋子(25)は帰り道で車に撥ねられた瞬間、意識は一瞬で別の場所へ…。
見覚えの無い部屋で目が覚め「アレク?!気付いたのか!?」との声に
え?ちょっと待て…さっきまで日本に居たのに…。
確か「死んだ」筈・・・アレクって誰!?
ズキン・・・と頭に痛みが走ると現在と過去の記憶が一気に流れ込み・・・
気付けば異世界のイケメンに転生した彼女。
誰も知らない・・・いや彼の母しか知らない秘密が有った!?
女性の記憶に翻弄されながらも成り上がって行く男性の話
保険でR15
タイトル変更の可能性あり
封魔の城塞アルデガン
ふしじろ もひと
ファンタジー
二百年の昔、高僧アールダが大陸全土の魔物を封じた洞窟の真上に建立した城塞都市アルデガン。だが人の世の乱れが城塞都市の礎を揺るがせ、いまや塔には落日の翳りが射していた。これは城塞都市最後の日々の中、運命を捻じ曲げられた少年と少女の物語。
![](https://www.alphapolis.co.jp/v2/img/books/no_image/novel/love.png?id=38b9f51b5677c41b0416)
【完結】竜人が番と出会ったのに、誰も幸せにならなかった
凛蓮月
恋愛
【感想をお寄せ頂きありがとうございました(*^^*)】
竜人のスオウと、酒場の看板娘のリーゼは仲睦まじい恋人同士だった。
竜人には一生かけて出会えるか分からないとされる番がいるが、二人は番では無かった。
だがそんな事関係無いくらいに誰から見ても愛し合う二人だったのだ。
──ある日、スオウに番が現れるまでは。
全8話。
※他サイトで同時公開しています。
※カクヨム版より若干加筆修正し、ラストを変更しています。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる