名もなき男のうた

板倉恭司

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ライガーマスクのうた

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 吉井一也ヨシイ カズヤは、田舎の村でひとり暮らしをしている中年男だ。年齢を考えれば、老人と言っても差し支えないかもしれない。数年前に妻が病死し、都会を離れ田舎へと引っ越して来た。以来、ずっと田舎暮らしをしている。
 既に六十歳を過ぎているが、それでも体はよく動く。今も週三日、三キロほどの山道をジョギングしているほど元気である。体つきも引き締まっており、見た目だけなら四十代だと言っても通じるだろう。
 そんな吉井の日課は、近所に住む子供に勉強や遊びを教えることであった。既に仕事をリタイアした身である彼にとって、子供たちとの触れ合いこそが唯一の生き甲斐である。
 その日も、吉井の家には近所の子供が来るはずであった。
 しかし、家を訪れたのは別のものだった。

 吉井は異変を感じ、外に出て辺りを見回す。既に日は沈み、しんと静まりかえっている。虫の声ひとつ聞こえない。
 虫の声がしないということは、何か危険なものが潜んでいるからだ。吉井は、その場を離れようとした。
 次の瞬間、木の上から何者かが落ちてくる。黒い革のコート、肩まである髪。病的なまでに白い肌を持つその若者は、じっと吉井を見つめていた。

「よう、三十年ぶりだな。俺の顔、忘れちまったのかい?」

 言いながら、海斗はゆっくりと近づいて行く。
 すると、吉井の顔が歪んだ。

「君は誰だ? なぜここに?」

 その問いには答えず、海斗はずんずん近づいて行った。
 吉井の目の前に立ち、ニヤリと笑う。

「吉井さんよう……何で、あんな騒ぎを起こしたんだ?」

 だが、吉井は怯えた表情で首を振る。

「な、何を言っているんだ? 私は、君なんか知らない」

 その途端、海斗の表情が変わった。

「とぼけんじゃねえ!」

 怒鳴ると同時に、海斗の手が伸び吉井の手を掴んだ。
 直後、一瞬で握り潰す──
 悲鳴を上げる吉井。彼の右手の骨は、完全に砕けてしまっている。
 しかし、海斗は容赦しない。さらに左手も掴む。

「吉井さん、あんた三十年前は崎村達也って名乗ってたな。食品会社の営業マンだ、とも言ってた。だが、全て嘘だったんだな。あんたは、二つのヤクザの間に戦争の火種を撒いた。とぼけるなら、こっちの手もへし折るぜ」

 言いながら、海斗は手に力を込める。すると、吉井は叫び声を上げた。

「やめてくれ! わ、私は──」

「崎村達也と名乗り、二つのヤクザの間に抗争の火種を撒いた。それに間違いないな?」

「そ、そうだぁ!」

 吉井は、涙を流しながら答える。その右手は、完全に砕けていた。左手はまだ動くようだが、それでも手の形は変形している。

「あんたは、俺の愛していた町にトラブルの種を撒き散らした。まずは、その理由を聞かせてくれよ。言わないなら、指を一本ずつへし折る」

「わかったよ! 言うからやめてくれ!」

 叫びながら、額を床に擦り付ける。吉井はこれまで、様々な訓練を受けてきた。銃器の扱いや格闘技、さらには交渉術も。だが目の前の者には、それらのスキルが一切役に立たないことを悟った。
 目の前にいる者は、人間ではないのだ。

「だったら、早く言え」

 海斗の言葉に気圧され、吉井は震えながら口を開いた。

「当時、私はある任務のために真幌市に送り込まれた。ヤクザたちを煽り、戦争をさせること。それが私の任務だったんだ」

「任務だと? どういう事だ?」

「あの頃、時代は変化していた。ヤクザが必要悪だった時代は、既に終わっていた。そんな時、二つの暴力団が抗争を始めた。そこで、公安の上層部は決断した。抗争を煽り、両団体を一気に弱体化させてしまおうと──」

「ざけんじゃねえよ! その結果、まったく関係のない二人の人間が死んだんだよ! その上層部とやらの思惑のせいでな!」

 言いながら、海斗は吉井の首を掴む。片手でグイと持ち上げた。
 吉井は必死でもがいたが、海斗は手を放さない。その瞳は、不気味に紅く光っていた。

「いいか、てめえはただじゃあ死なさねえ。両手両足を引きちぎってから殺してやる。徹底的に苦しめてやる。今日子の苦しみを思い知らせてやるぜ!」

 海斗はニタリと笑った。だが、その時に想定外の事態が起きる──

「な、何してるの?」

 不意に、後ろから声が聞こえてきた。
 海斗は、思わず舌打ちする。他の人間が来ていたのだ。まさか、ここまで接近されるまで気づかなかったとは。迂闊、としか言い様がない。
 だが自分の目的の邪魔になるようなら、誰であろうと殺す。残忍な表情を浮かべ、海斗は振り返った。
 しかし、そこに居たのは幼い女の子だった。明日菜と、同じくらいの年頃だろうか。

「お、お前は……」

 そう言ったきり、海斗の動きは止まった。手の力が抜け、吉井の体はどさりと床に落ちる。
 海斗は顔を歪め、訪問者を見つめる。髪は長く、いかにも女の子らしい印象を受ける。男の子のような雰囲気の明日菜とは、似ても似つかない。
 しかし海斗の脳裏には、明日菜の姿が浮かび上がっていた。
 それと同時に、彼女の言葉も思い出す。

(海斗は大きくなったら、何になるの?)

 今の自分に、なりたいものなど無い。しかし、なりたくないものは有る。
 その、なりたくないものとは……かつて自分を殺しかけたヤクザの庄野や、それに代表されるようなクズ共だ。無関係な人間を犠牲にしておきながら、振り返りもせずに進んで行く、そんな連中には死んでもなりたくない──
 さらに、明日菜のもうひとつの言葉も甦る。

(海斗はいつか、ライガーマスクみたいになれる……カッコいい正義のヒーローに。あたしは、そう思うの)

 思わず動きを止める海斗。その時、吉井が動いた。

「逃げろおぉ! 早く逃げるんだ!」

 叫びながら、砕けているはずの腕で海斗の足にしがみつく。すると、女の子は血相を変えて外に飛び出して行った。
 一方、海斗は顔を歪めながら、吉井の襟首を掴み引き寄せる。彼は息も絶え絶えになりながらも、必死の形相で声を出した。

「頼む。あの娘だけは助けてくれ……」

 その言葉を聞いた瞬間、海斗の胸に様々な感情が湧き上がった。
 だが、それら全てを押し殺し、声を絞り出す。

「忘れるな。お前のやらかしたことのせいで、全く無関係の人間が二人死んだんだよ。俺が心から愛した者たちが、無惨な姿で死んでいったんだ。俺は、お前だけは絶対に許さない。いいか……お前の体に、決して癒える事のない傷を残してやる! その傷を見る度に、てめえの罪を思い出せ!」

 叫ぶと同時に、海斗は吉井の膝を砕いた──



 翌日、天田士郎は真幌公園のベンチに座っていた。あたりは既に暗くなっている。夜空を見上げながら、士郎はなぜ呼び出されたのかについて考えていた。いったい何が目的なのだろう。

 士郎がそんなことを考えていた時、音も無く目の前に現れた者がいた。言うまでもなく、海斗である。

「ったく、相変わらず神出鬼没な野郎だな。頼まれたものは、ちゃんと持ってきたぜ」

 言いながら、士郎は大きな紙袋を差し出した。海斗は受け取り、ベンチに座る。

「士郎さん……あの吉井って男は結局、何者だったんだよ?」

「正直いうと、俺もよくは知らん。だが、どうやら公安に関係していたらしい。要は、政府の汚れ仕事を引き受けていたんだよ。あいつも、しょせんは歯車のひとつだったわけだな」

「そうか。歯車のひとつだったのか」

 そう言うと、海斗はため息をついた。

「俺は、吉井を殺せなかったよ」

「知ってるよ。ま、いいんじゃねえのか。殺すも殺さないも、お前の自由だ」

 軽い口調で、言葉を返す。しかし、海斗は神妙な顔つきで、なおも喋り続ける。

「あんたは、俺のことをどう思う?」

 いきなりの問いに、士郎は戸惑うような表情を向けた。

「いや、どう思うって言われてもな……」

「俺は、いつまで経ってもチンピラなのかな」

 海斗の声は、妙に沈んでいた。

「何を言ってるんだよ。お前はチンピラなんてレベルじゃないだろうが──」

「庄野が言ってたんだよ。俺は、どっちつかずのチンピラだと。確かに、俺はどっちつかずだよな。あれだけ大勢の人間を殺しておきながら、おっさんひとりを見逃した……いや、殺せなかったんだ。あのおっさんが、全ての原因を作ったのにな。やってることが、全て中途半端だよ」

 海斗のその言葉を聞き、士郎は真剣な顔つきで口を開いた。

「俺には、お前の気持ちはわからねえよ。でもな、ひとつだけわかることがある。お前が殺さなくていいと判断したなら、それはそれでいいんじゃねえか。もとより、お前の気持ちの問題なんだしよ。復讐は、最後までやらなきゃならないわけじゃない。お前の気が済んだなら、そこで終わり。それでいいんじゃねえのかな」

 その言葉に、海斗は何も言えず下を向く。すると、士郎は笑みを浮かべた。

「難しく考えることはねえさ。そもそも、誰かに命令されたわけじゃない。お前が自分の意思で始めたことだ。終わらせるのも、自分の意思だよ。俺は、そこに手を貸しただけさ」

 その言葉を聞き、海斗は顔を上げた。

「だったら、あいつらはどうなるんだ」

「あいつら?」

 訝しげな表情を向ける士郎。

「死んじまった小林さんや、今日子はどうなるんだ?」

「そうだなあ……月並みなセリフで申し訳ないが、あの二人はお前に復讐してもらうことを望むかな?」

 その言葉を聞いた瞬間、海斗の顔が歪む。彼は再び下を向いた。まるで、こみ上げる何かに耐えているかのようだった。
 一方、士郎は優しく微笑んだ。

「もう、いいんじゃねえかな。お前のやったことの是非を問う気はない。ただ、あの事件に、少しでも関わった人間をどんどん殺していったらキリがないぜ。ここまででいいんじゃねえか。まあ、決めるのはお前だけどな」

 そう言った直後、士郎は小さな人影を発見した。中学生くらいにしか見えない少女だ。長い黒髪と、ぞっとするような肌の白さが特徴的である。大きめのコートに身を包み、十メートルほど離れた位置で士郎をじっと見つめている。
 すると士郎は軽く会釈し、少女に右手を振って見せた。

「やあ、あんたが大月瑠璃子ちゃんか──」

「ガキみたいな呼び方、しないで欲しいんだけど。こう見えても、あたしはあんたよりずっと歳上なんだよ」

 瑠璃子の口調は冷たい。明らかに、士郎を拒絶しているような意図が感じられる。士郎は思わず苦笑していた。

「なんか、嫌われちまったみたいだな。ま、いいや。海斗、もし何か困ったことがあったら連絡しろ。こう見えても、俺はあちこちに顔が利くんでな」

 そう言って、士郎は立ち上がる。そのまま、振り返りもせず歩いて行った。

「ねえ海斗、あいつ信用できるの?」

 いかにも不快そうな表情を浮かべながら、瑠璃子は尋ねた。彼女は、士郎のことが気に入らないらしい。

「さあな。ただ、あいつは他の人間とは違う」

「でも、あいつは海斗を利用する気だよ」

「わかってるよ。向こうがその気なら、こっちも利用させてもらうだけさ」

 軽さの感じられる海斗の言葉に、瑠璃子は眉間に皺を寄せた。

「大丈夫かなあ。あいつ、なんか油断できないよ。もし海斗の気が進まないなら、あたしが士郎を殺すからさ」

「殺さなくていい。これ以上、誰にも死んで欲しくないんだよ……なるべくなら、な」

 そう言うと、海斗は空を見上げた。満月が浮かんでいる。さらに、幾つもの星が輝いている。
 不思議な気分だった。太陽もまた、星のひとつのはずだ。なのに、今はもう見ることが出来ない。
 もし、また太陽を見る時……それは、自分がもう一度死ぬ時なのだ。
 そういえば昔、瑠璃子も似たようなことを言っていた。

「ねえ、後悔してる?」

 不意に、瑠璃子が聞いてきた。彼女は海斗の隣に腰掛け、星空を眺めている。

「何が?」

 聞き返すと、瑠璃子は寂しげな瞳で海斗を見つめた。

「吸血鬼になって、後悔してない?」

 瑠璃子の声は、ひどく哀しげだった。

「後悔なんか、する訳ないだろ。お前が吸血鬼に変えてくれたお陰で、俺は生きることが出来た。それに、この方が手っ取り早いじゃないか。お前を人間に戻すより、俺が吸血鬼になる方が簡単だよ。ずっと一緒にいられるしな」

 そう言って、海斗は微笑んで見せた。だが、瑠璃子は口元を歪める。

「不思議なんだよね。生まれてから、もう五十年が経った。五十年て凄く長いはずなのに、あっという間に過ぎた気がする」

「そりゃあ、過ぎちまえばあっという間さ」

 努めて軽い口調で、言葉を返す。だが、瑠璃子の表情は暗い。士郎との接触により、昔を思い出してしまったのだろうか。
 ややあって、彼女は再び口を開いた。

「五十年の間に、色んなものが消えていったんだよ」

「はぁ? お前、何を言ってるんだよ?」

 とぼけた口調で聞き返す。だが、瑠璃子は空を見上げたままだ。

「あたしの中から、少しずつ色んなものが消えていくんだよ。あたしは昔、人間だったはずなのに……今じゃあ、昔からずっと吸血鬼だったような気がするんだよね。このまま、あたしは身も心も化け物になっていくのかな」

「おい瑠璃子、ちょっと待てよ」

 どこか虚ろな瑠璃子の表情に、海斗は不安を感じて声をかける。
 しかし、彼女は力なく微笑むだけだった。

「人間だった時の思い出が、消えていくんだよ。お父さん、お母さん、弟、妹……みんな記憶には残っている。でも、今では何も感じないんだよ。家族がいた頃の楽しかった気持ちも、家族が死んだ時の悲しい気持ちも。あたしは家族のことを、思い出しもしなくなった。いつか、あたしは家族がいたことすら忘れるのかな……それどころか、あたしは自分が人間だったことも忘れるのかもしれない」

 そう言うと、瑠璃子は自嘲の笑みを浮かべた。

「どっちが幸せだったのかな。あの時、家族と一緒に人間として殺されていたのと……たったひとりで、化け物として永遠に生き続けるのと……」

「もちろん、生き続ける方だよ。考えるまでもないだろうが。それに、お前はひとりじゃない」

 言いながら、瑠璃子を抱き寄せる海斗。瑠璃子は無言で、されるがままになっていた。
 海斗は耳元で、そっと囁く。

「瑠璃子……俺には、お前の辛さは分からない。でも、せめて俺の幸せのために生きてくれよ。俺は、お前が生きていてくれれば幸せだからさ」

「何それ? すっごいワガママなんだけど」

 そう言った時だった。新たな人影が現れる。とても小さい。子供のようだ。
 小さな人影は、とことこと歩いて来る。二人のそばに来ると、拗ねたような表情で口を開いた。

「また二人だけでイチャイチャしてるの。いやらしいの」

「違うって。ちょっと、大人の話をしてたんだよ」

 言いながら、海斗は立ち上がる。しかし、少女はぷいと横を向いた。
 海斗は苦笑し、少女の頭を撫でる。

「機嫌直してくれよ。一緒にライガーマスク観ようぜ。ほら、DVDボックス手に入れたからよ」

 言いながら、紙袋を高く掲げる。

「本当!?」

 少女は、パッとこちらを向いた。同時に、海斗の手を引いていく。

「早く行こ。帰って、ライガーマスク見るの」

「おう、そうしようぜ」



「なあ、俺はライガーマスクみたいなヒーローになれるかな?」

「なれるよ。海斗はいつか、ライガーマスクみたいになれる……カッコいい正義のヒーローにね」



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