灰色のエッセイ

板倉恭司

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詐欺師の手口の話

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 少し前のことですが、こんな記事を見ました。

「仮に、ブラジリアン柔術黒帯のヘビー級選手が刃物を持って室内に潜入してきたとする。そんな人間が相手では、素手の武術や護身術では太刀打ちできない。そういう時には、催涙スプレーで撃退するしかないだろう」

 一応、説明します。ブラジリアン柔術は日本の柔術から発展したブラジルの格闘技です。黒帯を取るには、少なくとも十年以上のキャリアと試合で好成績をあげることなどが必要条件なようです。ブラジリアン柔術のヘビー級とは、九十四キロまでの階級のようです(あくまでブラジリアン柔術内での階級でありボクシングとは分け方が違います)。だいたい九十キロ強の体格でしょうか。
 まあ、こんな人が刃物を持ち、本気の殺意を抱いて襲いかかってきたら……こちらが素手だった場合は、もはや詰みとしか言いようがないですね。とりあえず泣き土下座でもして、何とか命だけは……とお願いするしかないでしょう。

 ただ、ここで立ち止まって考えて欲しいのですよ。この前提、明らかにおかしいですよね、
 まず、ブラジリアン柔術黒帯の日本人ですが……そもそもブラジリアン柔術で黒帯を取得するのは、かなり難しいです。以前、格闘技のエッセイにて自称・黒帯について書きましたが、ブラジリアン柔術はそうしたものとは違います。先ほども書いた通り、十年以上のキャリアと試合での好成績が必要なんですよ(例外はあるかもしれません)。
 詳しい人数は知りませんが、ブラジリアン柔術黒帯の日本人は、今のところ五百人もいないようです。
 しかも、例として登場するのはヘビー級です。日本人盧平均体重は、六十キロから七十キロでしょうか。ヘビー級ともなると、その数はかなり少ないですよね。日本全国で、百人もいないのではないでしょうか。
 まあ百歩譲って、日本に百人いたとしましょう。前提として書かれている状況は「その百人のうちのひとりが刃物を持ち、あなたを殺害せんと部屋に侵入してきた」です。全く見知らぬ赤の他人同士で、こうした状況になる……まず、ありえないことでしょうね
 となると、まずはブラジリアン柔術黒帯ヘビー級と知り合っていなければなりません。これで、さらにハードルが高くなりますね。
 もうひとつ言っておきますが、ブラジリアン柔術で黒帯を取得するということは……ひとつのことに十年以上もの年月をかけて打ち込み、きちんと結果を出せているのです。スポーツジムでの筋トレすら、一年続く人は全体の三%程度と言われているのですよ。柔術の黒帯取得者は、基本的に真面目で勤勉な人間だということです。
 そんな人物に、殺意を抱かせるほど恨まれた挙げ句、殺害計画を実行に移させてしまう……あなたは、そんな人間でしょうか。

 前置きが長くなりましたが、詐欺師もしくは詐欺に近い手口で物を売りつけようとする人間は、こういった極論を用いてきます。

「これからの時代、○○は終わりだ! だから、こいつを買っておけ!」

「もし○○な状況になったらどうします? そんな時にはこれ!」

 確かに、間違いではないのかもしれません。が、まずは立ち止まり、前提条件となっているものについて考えて欲しいのです。はたして、それはあなたの人生に必要でしょうか。
 ちなみに、前も書いた通り催涙スプレーを所持していて警察に職質を受け、見つかった場合は取り調べを受けます。おそらく、没収された上に注意で終わりでしょうが……そんな不快な思いをしてまで、催涙スプレーが必要でしょうか。あなたの人生は、そこまで危険に満ちているのでしょうか。そこの部分を、もう少し考えてみてください。


 


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