灰色のエッセイ

板倉恭司

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涙の話

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 古い話で申し訳ないですが、オリンピックにて某柔道選手の態度が話題となりました。私は、この選手についてとやかく言うつもりはありません。が、この選手を擁護する意見の中に、こんなものが目についたんですよね。

「彼女を批判する人は、泣くほど何かに打ち込んだ経験のない人間ばかりだ」

 この意見、やたら目立っていた気がします。しまいには、テレビのコメンテーターまで同じことを言っていました。
 はっきり言います。これ勘違いですからね。本当に悲しい時やつらい時、人間は涙なんか出ません。実際、心理学的にも「悲しみやストレスがあまりにも大きすぎる時、人は泣けない」と言われているそうです。
 さらに……泣くという行為に関しては、故・上岡龍太郎さんが素晴らしい意見を述べておられます。この意見さえ書けば、私ごときご何も言う必要はないでしょう。

「道路で泣き喚いている子供がいたとしましょう。その子供を、ひとりぼっちで誰もいない山の中に放り出したらどうなると思います? 子供はしばらくひとりで泣きますが、誰もいないことを知ると、立ち上がって歩いて行きます」

 つまり、泣くということは受け止める相手がいて、見ている誰かがいるから成立する行為なんですね。
 さらに、上岡龍太郎さんはこんなことも言っておられました。

「あのな、涙ちゅうもんは鼻水と成分がほぼ同じなんだよ。君は、人前で鼻水をダラーと垂れ流してる人を見て感動するのか?」






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