灰色のエッセイ

板倉恭司

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酒についての話

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 これを書いているのは二〇二二年の四月ですが、ひとまず都内の繁華街は落ち着きを取り戻しそうです。これから、皆で集まり酒を飲む機会も増えるでしょうね。
 酒を飲む、これ自体は何ら悪いことではありません(二十歳になってから、というのは言うまでもないですが)。友人や知人や同僚などと一緒に酒を飲むことにより、人間関係がさらに深まるようになりますね。また、知り合ったばかりの人と一緒に酒を飲むことにより、打ち解けることが出来る……これは、素晴らしい効果ですね。さらに、酒には血行を良くして疲労を回復させ、心身ともにリラックスさせる効果もあります。
 しかし同時に、酒には様々な弊害もあります。私は酒の強い方ではなく、我を忘れるまで飲んだという記憶はありません。酒で失敗した、という記憶もありません。ただ、周りでは酒が原因で失敗した……いや、それどころか人生の道そのものを踏み外してしまった人を知っています。また私は、酒好きな人から多大な迷惑を被ってきました。
 そこで私は、酒というものの怖い一面を若い方たちにお伝えしたいと思い、この章を書いた次第です。ひとりでも多くの方の目に留まっていただければ幸いですね。



 二十代の頃に付き合いのあった知人は、酔うと暴言が多くなるタイプの人間でした。しかも、気が大きくなるのでしょうか……大きな夢を語り出すこともありまして、その夢に私を引きこもうとしたこともあります。一緒に事業を起こそう、などと誘われたりしたこともありました。
 しかし、翌日になると……。

「えっ? 俺そんなこと言ったっけ? ぜんぜん覚えてないよ」

 私の偏見かもしれませんが……酒が好きな人の三人にひとりくらいは、都合が悪くなると「覚えていない」と言うような気がします。実際に覚えていないのか、あるいは覚えていない振りをしているだけなのかは不明ですが、随分と都合のいい記憶だとは思いますね。
 しかも日本の社会は、それを許容する部分があります。「酒の席の話だから仕方ない」と言って大目に見てしまう……これは正直、納得いかない部分ではありますね。自分の発言に対し、「酔っぱらっていて覚えていない」などと言って謝りもしない。それは、本当に卑怯な態度だと思います。ただ、そういう人が少なからず存在するのも確かですね。
 そういえば、酔っぱらった挙げ句にツイッターに差別的な暴言を書き込んだ元議員さんもいました。これを読んでいる皆さんは、くれぐれも酔っぱらった挙げ句、他人に暴言を吐いたり不快な思いをさせるようなことをSNSに書きこまないように気をつけましょう。
 蛇足かもしれませんが……私は前述の知人とは現在、縁を切っております。



 酒好きな人たちの間では、酒が強いイコール偉いという価値観があります。それについては、とやかく言う気はありません。ただ、そういう人たちは「飲めば強くなるから」などと言って強引に飲ませようとします。これは、はっきり言って迷惑以外の何物でもないですね。別に酒に強くならなくていいから、放っておいてくれ……という気分なんですよ。
 かといって、そこで断ったりすると……あとは書かなくても分かりますね。一応、酒を飲んだことのない若い人のために説明しますと「俺の酒が飲めねえのか」「ノリが悪い」「場の雰囲気を壊すな」などと言われます。しかも酒の席のルールでは、こうした時には飲まない方が悪い……とされてしまうケースが多いですね。本当に参ります。
 まあ、今はそういった思いをすることも少なくなりましたが……しかし、未だにそういった価値観を持っているオッサンは少なくありません。くれぐれも気をつけてください。
 ちなみに私が過去に参加した忘年会では、たびたび若い人が救急車で運ばれております。先輩にガンガン飲まされたのが原因でした。いつになったら、この悪しき風習はなくなるのでしょうね。



 酔っぱらうと、当然ながら理性が働きにくくなります。飲酒運転による事故は、最近でこそ厳罰が課せられるようになりました。しかし、それでも未だに無くなりません。
 飲酒運転とはケースが違いますが、私の同級生には酒乱の男がいました。普段はおとなしいのですが、酒が入ると何のためらいもなく人を殴るようになります。酒乱などと言うと、笑い話のネタで終わりそうですが……この男は酒の席での喧嘩で何度か逮捕された挙げ句、最後には実刑判決を受けて刑務所に行きました。
 そして刑務所の中で酒害教育というカリキュラムを受け、数年後に出所してきたのです。
 犯罪者を集める刑務所の中で、酒害教育というカリキュラムが存在する。これが何を意味するか、それは私などが言うまでもないことでしょう。酒の害というものを、決して甘く見てはいけません。
 しかし酒飲みの中には、酒の害というものをあまりにも軽く見ている人がいます。また、「酒の席でのことだから」という一言で全てを許してしまう部分もありますね。一昔前の演歌や歌謡曲でも、酒を飲むことや酔うことを是認するようなものもあります。
 さらに、映画やドラマなどでベロベロに酔っぱらうシーンをコミカルに描く作品も少なくありません。しかし、ベロベロに酔っぱらった挙げ句、事故や犯罪の被害者もしくは加害者となるケースは後を絶たないのですが……そこまでいかなくとも、周りには確実に迷惑をかけることになります。
 もっとも、これは日本に限った話ではないですが……。



 いろいろ書いてきましたが、これはあくまでも「一部」の迷惑な酒飲みに関するものです。酒は適度に飲む分には、とてもいいものだと思いますし。飲む時は、ほどほどに楽しんでくださいね。ありきたりな結論で申し訳ないですが。
 酒の害について、もっと詳しく知りたい人は……故・中島らもさんの著書『今夜、すべてのバーで』など読んでみるといいかもしれません。




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