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奈越刑務所
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「あんたも、変な人だなあ。今さら、何を知りたいって言うんだ?」
市原圭吾は、不思議そうな顔つきで今川を見た。この男は三十八歳で、額はだいぶ後退してきている。全体的にふっくらした体つきであり、顔立ちは柔和そうだ。元々の優しい性格が、顔から現れている……そんな印象を受ける。
もっとも、彼の過去を知れば大抵の人間は評価を変えるだろう。市原はかつて覚醒剤を常用しており、警察に二度逮捕されている。一度目は執行猶予で終わったが、二度目は実刑判決を受けた。そして奈越刑務所で三年間の懲役生活を送り、二ヶ月前に仮釈放で出所したばかりである。
しかも、彼が出所したのは島田義人が脱獄した直後のことであった。
「あなたは以前、あの奈越刑務所にいたんですよね?」
今川は、恐る恐る尋ねてみた。
「ああ、いたよ。あそこは、本当にひでえ所だった。特に、俺のいた五工場はとんでもなかったよ」
平然とした顔で答える市原。ここはカラオケボックスの一室であり、室内には二人の他には誰もいない。
「とんでもない、というと……何があったんですか?」
「あそこじゃ、担当の刑務官がやりたい放題だった。受刑者は、刑務官のご機嫌次第で天国から地獄へ変わっちまうんだよ。でもな、本当に酷かったのは花岡と堀江だよ」
いかにも不快そうな様子で、市原は言った。言葉遣いは乱暴だが、元々の人のよさのせいか暴力的な雰囲気は感じさせない。前科があるということを知らなければ、口は悪いが気のいい下町のオッサンという印象だ。
「花岡さんと堀江さん、ですか。その二人は、刑務官ですか?」
「違う。花岡も堀江も受刑者だ。その二人は、半グレの大物なんだよ」
「半グレ、ですか」
半グレ、つまりはヤクザでないプロの犯罪者集団である。最近でこそ広く知られるようになったが、実のところ今に始まった現象ではない。プロの犯罪者集団は、それこそ昭和の時代からあちこちで暗躍していたのだ。
「そう。ヤクザの構成員と判断された人間は、奈越には入れない。あそこは、初犯専用の刑務所だからな。でも半グレなら、そんなの関係ない。だから、あの二人は初犯の人間しかいない刑務所で、好き勝手にやっていられたんたよ」
「その半グレの二人は、何をやって捕まったんですか?」
「よく覚えてないんだが、確か花岡の方は詐欺だったと思うよ。で、堀江はシャブ。どっちも、かなりの大物だったらしい。特に花岡は、刑務所の中からシャバにいる部下にいろいろ指示してたって話だ」
その話が本当だとすると、花岡という男は確かに大物である。もっとも、嘘である可能性も低くはないが。犯罪者というのは、基本的に嘘つきが多い。自分を大きく見せるための嘘を、当たり前のように撒き散らす。
ただ花岡の場合、二人の刑務官を抱き込んでいたのだ。塀の外にも、かなりの影響力があるのは間違いないだろう。
「なるほど。ところで、島田義人についてですが……彼は工場で、どんな風に過ごしてました?」
「島田? あいつは、受刑者の中でもおとなしい方だったよ。花岡や堀江とも、うまくやってたからな。誰かと揉めたって話は聞いてないよ」
上手くやっていた、ときた。なら、なぜ脱獄したのだろうか。
「しかし、脱獄しましたよね」
「ああ。あれには驚いたよ。翌日は、刑務所中が大騒ぎになってた。俺も、気が気じゃなかったよ。もしかして、仮釈放が取り消しになるんじゃないかと思ってさ」
言いながら、市原は苦笑した。当時の記憶は、未だに鮮明なようだ。
「それは災難でしたね」
「いや、災難なんてもんじゃないよ。刑務官が大慌てで、あちこちチェックしてたんだ。しかも、同じ工場だった連中は、全員が取り調べを受けたらしい。俺は当時、釈前房にいたから大丈夫だったけどな」
釈前房とは、もうじき出所する人間を収容する部屋である。彼らは、そこで様々な教育を受ける。特に仮釈放で出所する人間は、検察で手続きしたり保護司と会わなくてはならないのだ。そういった説明を一通り受けた後、晴れて出所する。
「なるほど、それは災難でしたね。ところで、その半グレの二人ですが……刑務所の中でどんな存在だったのか、具体的に教えてください」
「受刑者の中で、あの二人に逆らえる奴は誰もいなかったよ。花岡は工場の掃夫で、堀江は計算工だったんだがな……あいつらは、本当に自由だったよ」
二人を語る時の市原の表情は、本当に不快そうだった。花岡と堀江がどんな人格の持ち主だったのかは、これ以上聞かなくても大体のところはわかる。
だが、今の市原の言葉には、耳慣れない単語があった。そこの部分だけは、聞いてみないとわからない。
「すみません、その掃夫や計算工ってのは何なんですか?」
「あんた、何も知らねえんだな。刑務所の工場には、必ず掃夫と計算工ってのがいる。そいつらは、工場の中で刑務官の次に偉い役職なんだ。いわば、刑務官の補佐みたいなもんだ」
いやいや、そんなの刑務所に入ったことのある人間じゃなきゃ知らないよ……と内心で呟いた。だが、そんな思いはおくびにも出さない。
「受刑者が補佐ですか。知りませんでした」
「ああ。普通の受刑者は、作業中は勝手に歩くことも出来ない。ずっと座って、手元を見ながら作業しなきゃならないんだよ。何か物を落とした時も、いちいち刑務官に許可をもらわなきゃならないんだ。勝手に席を離れて拾ったりしたら、場合によっては懲罰だよ」
聞いていて、今川は頭が痛くなってきた。なんと理不尽かつ無駄の多いシステムなのだろうか。そんな場所にいて、更生など出来るはずがない。かつて、今の日本の刑務所は単なる隔離施設である……という話を聞いたことがあるが、それは真実のようだ。
そんな今川の思いをよそに、市原の話は続く。
「ところが、掃夫や計算工は別だ。いちいち許可なんかもらわなくても、工場内をあちこち歩ける。場合によっては、刑務官の代わりに受刑者に指示を出すこともあるんだよ」
「そうなんですか。いやあ、知らなかったです」
「なら、覚えておきな。刑務所ってのは、入ってみなきゃわからない部分がたくさんある。掃夫と計算工は、どこの刑務所にもいる特別な役職なんだよ。でもな、あれは異常だった」
確かに、どこの世界にも体験してみなくてはわからない部分がある。もっとも、刑務所にだけは絶対に入りたくないが。
しかし、異常とはどういうことだろうか。
「異常、ですか」
「ああ。何たって、花岡と堀江はタバコも吸えたしジュースも飲めた。その上、飯の量も好きなように調整できる。あんなの、受刑者じゃねえよ」
なぜかは不明だが、犯罪者は喫煙率が高い。今川が、今まで見てきた犯罪者の大半が喫煙者であった。もっとも、本格的なアンケートを取ったわけではない。あくまで、今川の経験に基づくものだが。
言うまでもなく、喫煙は刑務所では禁止されている。刑務所では、一日三回出される食事以外のものは食べられないし、タバコのような嗜好品も禁じられている。そもそも、手に入れること自体が出来ないが。
つまり、刑務官の協力なくしては、喫煙は不可能なのだ。今川はそれを知っていたが、あえて質問してみた。
「タバコですか? 刑務所の中では、吸えないはずですよね?」
「そうだよ。でも、花岡と堀江は吸ってた。あいつら、ときどき刑務官と一緒に工場を出て行ってたんだよ。で、戻って来ると、タバコの匂いをぷんぷんさせてた。あれは、誰でもわかるよ」
それはわかる。非喫煙者は、タバコの匂いに敏感だ。特に、刑務所のような閉ざされた環境では、ちょっとした匂いの変化に敏感になるだろう。
「そんなことが、許されるんですか?」
「許されるわけねえだろ……普通の刑務所なら、な。けどな、あの工場ではそれが普通だった。五工場の担当刑務官だった熊井と副担当の横田は、奴らの言いなりだ。俺みたいな普通の受刑者は、何も言えないよ」
その二人の名前は知っている。受刑者から賄賂を受け取り、様々な便宜を図っていた……と、マスコミが大々的に報道していたのだ。芸能人の相次ぐスキャンダル騒動がなければ、今も報道されていたかもしれない。
「その熊井さんと横田さんは、刑務官でありながら賄賂を受け取っていたんですよね。二人の口座には、不可解な入金の記録がいくつもあったとか」
「そう。しかも、マスコミは報道してないが……うちの工場では、いじめが横行してた。花岡たちに逆らったら、ターゲットにされちまう。そしたら、地獄だよ」
今度は、いじめときた。まあ、有り得る話だ。社会のルールを破るような者たちを閉鎖された空間に集めておけば、トラブルが起きるのは必然だろう。そのしわ寄せは、弱者へと向かう。
「そのいじめですが、具体的な内容を教えていただけますか?」
「例えばの話だが、工場で花岡たちに逆らったバカがいたとする。そしたら、同じ雑居房にいる全員が敵になるのさ。そのバカが八人部屋にいたとしたら、自分以外の七人が敵に回るんだよ。そっから、陰湿ないじめが始まる。みんなに無視されたり、夜中に寝ているところを大勢から踏ん付けられたり、飯の中にゴミを入れられたり、使っていた歯ブラシを折られたり石鹸を捨てられたり……そんなのが延々と続くんだよ」
受刑者は、雑居房で生活し工場で作業をする。したがって、同じ雑居房にいる者は寝起きを共にする間柄である。その人間たちが敵に回ったとなれば、ただでは済まない
「それは酷いですね」
そう言わざるを得なかった。シャバの世界のいじめならば、まだ逃げ場はある。最悪の場合、学校ならば不登校、会社なら辞めてしまえばいいだけだ。しかし、刑務所となるとそうはいかない。二十四時間、周囲をいじめっ子に囲まれている生活……これは、もはや地獄だろう。
「ああ、本当に酷い話だよ」
顔をしかめながら、市原は頷いた。ひょっとしたら、この男もいじめのターゲットになった経験があるのだろうか……などと思ったが、あえて口にはしなかった。
「恐ろしい話ですね。これは、確実に犯罪の抑止力になりますよ」
冗談めいた口調で言ったが、市原はにこりともしない。真剣な表情で、話を続ける。
「中には、いじめられ続けておかしくなっちまった挙げ句、運動の時間に首を吊った奴までいたんだよ。もう、大騒ぎでさ……そいつは、八王子の医療刑務所に送られたらしいよ」
「それは初耳ですね」
「だろうな。そんなの見せられたら、誰だってあいつらには逆らえなくなる。どっかのアクション映画みたいな話だけど、それが奈越刑務所の現実だったのさ」
「他の刑務官や上を統括する人たちは、それに気づいてなかったんですかね」
「薄々は感づいてたと思うよ。でも、見て見ぬふりだ。あいつらも下手に騒ぎ立てて、同僚を敵に回したくなかったんじゃないかな」
有りがちな話だ。企業内の隠蔽は、見て見ぬふりから始まる。まして、刑務所のような特殊な空間では、歪んだ仲間意識も生まれやすい。彼らを告発すれば、自分の首を絞めることにもなりかねないのだ。
「いやあ、知りませんでした。貴重な情報をありがとうございます、ところで、脱獄した島田義人に話を戻しますが……刑務所内では、皆と上手くやっていたんですよね?」
「ああ。あいつは、上手くやってたよ。花岡たちにも逆らわなかったし、問題も起こさなかった。むしろ、気に入られていた方だったな」
「でも、脱獄したんですよね」
「そうなんだよ。挙げ句に、あんなとんでもない事件を起こしたわけだろ……俺には、未だに理解できないよ。むしろ、俺の方が聞きたいくらいだ」
そう語る市原には、未だ納得いかない思いがあるらしい。彼も、島田には好感を持っていたのだろうか。
そういえば、あの住友もそうだった。
「あなたは、島田とは仲が良かったのですか?」
聞いてみると、市原は懐かしそうな表情を浮かべる。
「まあ、特別に仲いいってわけじゃなかった。でも、たまに喋ったりすることはあったよ。感じのいい男だった。他の連中と違って、イキがったり偉そうな態度も取らなかったしな。島田を悪く言う奴は、五工場ではいなかったんじゃないかな」
「そうでしたか。彼と一番仲の良かった受刑者は誰ですか?」
「うーん、誰かなあ……あいつは、みんなと仲良くしてたよ。確か、江崎って奴と、ちょくちょく話しているのを見た気はする」
「江崎、ですか。下の名前はわかりますか?」
「いや、わからないな。だいたい、五工場には百人近い人間がいたんだぜ。自分と関係ない奴のフルネームなんて、いちいち覚えていられないよ」
その言葉に、今川は苦笑した。
「それもそうですね。すみません」
「とにかく、島田が何であんなことしたのか、俺には未だにわからないよ。俺も刑務所で、いろんな奴を見てきた。でも、あいつは犯罪者の中では、かなりマシな男だった」
しみじみと語る市原に、今川は以前から考えていたことをぶつけてみた。
「これはあくまで仮定の話ですが、島田が脱獄して刑務所をチェックされなかったら、どうなっていたでしょう? その二人が今も工場を仕切り、悪さは続いていたんでしょうか?」
「たぶん、そうだろうな」
市原は頷いた。だが、直後に顔色が変わる。
「ちょっと待て。まさか、島田はそれが目的で脱獄したのか? 刑務所を調べさせるために脱獄したと……あんたは、そう思ってるのか?」
眉間に皺を寄せ、市原は聞いてきた。だが、今川は口元を歪めて首を横に振る。
「どうでしょうねえ。脱獄した後の行動を考えると、その可能性は薄いような気がします」
「そうなんだよな。何度も言うけど、島田が何であんなことしたのか、未だにわからないよ。なあ、あんたはどう思うんだ?」
いきなりの問いに、今川は面食らう。
「えっ、何がですか?」
「島田は、何であんな事件を起こしたんだ?」
市原は、逆に質問してきた。その表情は、真剣そのものである。だが、今川に答えられるはずがなかった。
「僕にはわかりません。ですから、調べてるんですよ」
「それもそうだな」
取材が終わり、市原は去って行った。
もう、刑務所は懲り懲りだ……別れ際、市原はそう言った。今は、覚醒剤依存症のリハビリ施設に通いつつ、仕事を探しているという。
彼が今後、どうなるかはわからない。また覚醒剤を始めてしまい、逮捕され刑務所に逆戻りするのかもしれない。あるいは、己の過去を封印して、この社会で真人間として何とかやっていくのかも知れない。
四十歳近い市原が、この社会で上手く立ち直ることが出来るかどうか……それは、神のみぞ知ることだろう。ただ、今川は彼を嫌いにはなれなかった。かつては覚醒剤に溺れ、刑務所にまで行った男。それでも、松村広志よりは遥かにマシな人間に思えた。
次に今川は、島田のことを考えてみた。
あの男は、刑務所でも評判は悪くなかった。さらに、刑務所の中でも上手くやっていたようだ。
そんな島田が、なぜ脱獄したのだろうか。
市原の話によれば、奈越刑務所の第五工場はとても酷い場所だったらしい。事実、島田が脱獄した直後……奈越刑務所には法務省からの厳しいチェックが入った。結果、様々な悪事が明るみに出たのである。刑務官の熊井と横田は今、警察の取り調べを受けているという話だ。花岡と堀江も事件送致にされ、警察による取り調べを受けている。
島田が脱獄しなければ、ふたりの悪行は今も続いていたはずだ。もしも島田が、刑務所で横行している悪事を告発するために脱獄したのだとすれば……。
考えられない話ではない。あの男は中学生の時、同じ施設の女の子たちをレイプしていた石川に対し、単身で話をつけに行ったのだ。もともと正義感の強い性格だったし、その可能性はある。
となると、ひとつの疑問が生まれる。仮に告発のために脱獄したのだとしたら、その後の行動がわからない。数十キロ離れた松村邸に押し入り、広志を撲殺し夏帆と栞を拉致し連れ出した。
しかも最後には、警官隊に向かい猟銃を乱射した挙げ句に射殺である。
これは、完全なる自殺行為だ。刑務所の悪行を告発するために脱獄するような男が、こんなバカげた最期を迎えるだろうか。
「義人……お前は、何がしたかったんだ?」
誰もいないカラオケボックスの一室で、今川はひとり呟いた。
市原圭吾は、不思議そうな顔つきで今川を見た。この男は三十八歳で、額はだいぶ後退してきている。全体的にふっくらした体つきであり、顔立ちは柔和そうだ。元々の優しい性格が、顔から現れている……そんな印象を受ける。
もっとも、彼の過去を知れば大抵の人間は評価を変えるだろう。市原はかつて覚醒剤を常用しており、警察に二度逮捕されている。一度目は執行猶予で終わったが、二度目は実刑判決を受けた。そして奈越刑務所で三年間の懲役生活を送り、二ヶ月前に仮釈放で出所したばかりである。
しかも、彼が出所したのは島田義人が脱獄した直後のことであった。
「あなたは以前、あの奈越刑務所にいたんですよね?」
今川は、恐る恐る尋ねてみた。
「ああ、いたよ。あそこは、本当にひでえ所だった。特に、俺のいた五工場はとんでもなかったよ」
平然とした顔で答える市原。ここはカラオケボックスの一室であり、室内には二人の他には誰もいない。
「とんでもない、というと……何があったんですか?」
「あそこじゃ、担当の刑務官がやりたい放題だった。受刑者は、刑務官のご機嫌次第で天国から地獄へ変わっちまうんだよ。でもな、本当に酷かったのは花岡と堀江だよ」
いかにも不快そうな様子で、市原は言った。言葉遣いは乱暴だが、元々の人のよさのせいか暴力的な雰囲気は感じさせない。前科があるということを知らなければ、口は悪いが気のいい下町のオッサンという印象だ。
「花岡さんと堀江さん、ですか。その二人は、刑務官ですか?」
「違う。花岡も堀江も受刑者だ。その二人は、半グレの大物なんだよ」
「半グレ、ですか」
半グレ、つまりはヤクザでないプロの犯罪者集団である。最近でこそ広く知られるようになったが、実のところ今に始まった現象ではない。プロの犯罪者集団は、それこそ昭和の時代からあちこちで暗躍していたのだ。
「そう。ヤクザの構成員と判断された人間は、奈越には入れない。あそこは、初犯専用の刑務所だからな。でも半グレなら、そんなの関係ない。だから、あの二人は初犯の人間しかいない刑務所で、好き勝手にやっていられたんたよ」
「その半グレの二人は、何をやって捕まったんですか?」
「よく覚えてないんだが、確か花岡の方は詐欺だったと思うよ。で、堀江はシャブ。どっちも、かなりの大物だったらしい。特に花岡は、刑務所の中からシャバにいる部下にいろいろ指示してたって話だ」
その話が本当だとすると、花岡という男は確かに大物である。もっとも、嘘である可能性も低くはないが。犯罪者というのは、基本的に嘘つきが多い。自分を大きく見せるための嘘を、当たり前のように撒き散らす。
ただ花岡の場合、二人の刑務官を抱き込んでいたのだ。塀の外にも、かなりの影響力があるのは間違いないだろう。
「なるほど。ところで、島田義人についてですが……彼は工場で、どんな風に過ごしてました?」
「島田? あいつは、受刑者の中でもおとなしい方だったよ。花岡や堀江とも、うまくやってたからな。誰かと揉めたって話は聞いてないよ」
上手くやっていた、ときた。なら、なぜ脱獄したのだろうか。
「しかし、脱獄しましたよね」
「ああ。あれには驚いたよ。翌日は、刑務所中が大騒ぎになってた。俺も、気が気じゃなかったよ。もしかして、仮釈放が取り消しになるんじゃないかと思ってさ」
言いながら、市原は苦笑した。当時の記憶は、未だに鮮明なようだ。
「それは災難でしたね」
「いや、災難なんてもんじゃないよ。刑務官が大慌てで、あちこちチェックしてたんだ。しかも、同じ工場だった連中は、全員が取り調べを受けたらしい。俺は当時、釈前房にいたから大丈夫だったけどな」
釈前房とは、もうじき出所する人間を収容する部屋である。彼らは、そこで様々な教育を受ける。特に仮釈放で出所する人間は、検察で手続きしたり保護司と会わなくてはならないのだ。そういった説明を一通り受けた後、晴れて出所する。
「なるほど、それは災難でしたね。ところで、その半グレの二人ですが……刑務所の中でどんな存在だったのか、具体的に教えてください」
「受刑者の中で、あの二人に逆らえる奴は誰もいなかったよ。花岡は工場の掃夫で、堀江は計算工だったんだがな……あいつらは、本当に自由だったよ」
二人を語る時の市原の表情は、本当に不快そうだった。花岡と堀江がどんな人格の持ち主だったのかは、これ以上聞かなくても大体のところはわかる。
だが、今の市原の言葉には、耳慣れない単語があった。そこの部分だけは、聞いてみないとわからない。
「すみません、その掃夫や計算工ってのは何なんですか?」
「あんた、何も知らねえんだな。刑務所の工場には、必ず掃夫と計算工ってのがいる。そいつらは、工場の中で刑務官の次に偉い役職なんだ。いわば、刑務官の補佐みたいなもんだ」
いやいや、そんなの刑務所に入ったことのある人間じゃなきゃ知らないよ……と内心で呟いた。だが、そんな思いはおくびにも出さない。
「受刑者が補佐ですか。知りませんでした」
「ああ。普通の受刑者は、作業中は勝手に歩くことも出来ない。ずっと座って、手元を見ながら作業しなきゃならないんだよ。何か物を落とした時も、いちいち刑務官に許可をもらわなきゃならないんだ。勝手に席を離れて拾ったりしたら、場合によっては懲罰だよ」
聞いていて、今川は頭が痛くなってきた。なんと理不尽かつ無駄の多いシステムなのだろうか。そんな場所にいて、更生など出来るはずがない。かつて、今の日本の刑務所は単なる隔離施設である……という話を聞いたことがあるが、それは真実のようだ。
そんな今川の思いをよそに、市原の話は続く。
「ところが、掃夫や計算工は別だ。いちいち許可なんかもらわなくても、工場内をあちこち歩ける。場合によっては、刑務官の代わりに受刑者に指示を出すこともあるんだよ」
「そうなんですか。いやあ、知らなかったです」
「なら、覚えておきな。刑務所ってのは、入ってみなきゃわからない部分がたくさんある。掃夫と計算工は、どこの刑務所にもいる特別な役職なんだよ。でもな、あれは異常だった」
確かに、どこの世界にも体験してみなくてはわからない部分がある。もっとも、刑務所にだけは絶対に入りたくないが。
しかし、異常とはどういうことだろうか。
「異常、ですか」
「ああ。何たって、花岡と堀江はタバコも吸えたしジュースも飲めた。その上、飯の量も好きなように調整できる。あんなの、受刑者じゃねえよ」
なぜかは不明だが、犯罪者は喫煙率が高い。今川が、今まで見てきた犯罪者の大半が喫煙者であった。もっとも、本格的なアンケートを取ったわけではない。あくまで、今川の経験に基づくものだが。
言うまでもなく、喫煙は刑務所では禁止されている。刑務所では、一日三回出される食事以外のものは食べられないし、タバコのような嗜好品も禁じられている。そもそも、手に入れること自体が出来ないが。
つまり、刑務官の協力なくしては、喫煙は不可能なのだ。今川はそれを知っていたが、あえて質問してみた。
「タバコですか? 刑務所の中では、吸えないはずですよね?」
「そうだよ。でも、花岡と堀江は吸ってた。あいつら、ときどき刑務官と一緒に工場を出て行ってたんだよ。で、戻って来ると、タバコの匂いをぷんぷんさせてた。あれは、誰でもわかるよ」
それはわかる。非喫煙者は、タバコの匂いに敏感だ。特に、刑務所のような閉ざされた環境では、ちょっとした匂いの変化に敏感になるだろう。
「そんなことが、許されるんですか?」
「許されるわけねえだろ……普通の刑務所なら、な。けどな、あの工場ではそれが普通だった。五工場の担当刑務官だった熊井と副担当の横田は、奴らの言いなりだ。俺みたいな普通の受刑者は、何も言えないよ」
その二人の名前は知っている。受刑者から賄賂を受け取り、様々な便宜を図っていた……と、マスコミが大々的に報道していたのだ。芸能人の相次ぐスキャンダル騒動がなければ、今も報道されていたかもしれない。
「その熊井さんと横田さんは、刑務官でありながら賄賂を受け取っていたんですよね。二人の口座には、不可解な入金の記録がいくつもあったとか」
「そう。しかも、マスコミは報道してないが……うちの工場では、いじめが横行してた。花岡たちに逆らったら、ターゲットにされちまう。そしたら、地獄だよ」
今度は、いじめときた。まあ、有り得る話だ。社会のルールを破るような者たちを閉鎖された空間に集めておけば、トラブルが起きるのは必然だろう。そのしわ寄せは、弱者へと向かう。
「そのいじめですが、具体的な内容を教えていただけますか?」
「例えばの話だが、工場で花岡たちに逆らったバカがいたとする。そしたら、同じ雑居房にいる全員が敵になるのさ。そのバカが八人部屋にいたとしたら、自分以外の七人が敵に回るんだよ。そっから、陰湿ないじめが始まる。みんなに無視されたり、夜中に寝ているところを大勢から踏ん付けられたり、飯の中にゴミを入れられたり、使っていた歯ブラシを折られたり石鹸を捨てられたり……そんなのが延々と続くんだよ」
受刑者は、雑居房で生活し工場で作業をする。したがって、同じ雑居房にいる者は寝起きを共にする間柄である。その人間たちが敵に回ったとなれば、ただでは済まない
「それは酷いですね」
そう言わざるを得なかった。シャバの世界のいじめならば、まだ逃げ場はある。最悪の場合、学校ならば不登校、会社なら辞めてしまえばいいだけだ。しかし、刑務所となるとそうはいかない。二十四時間、周囲をいじめっ子に囲まれている生活……これは、もはや地獄だろう。
「ああ、本当に酷い話だよ」
顔をしかめながら、市原は頷いた。ひょっとしたら、この男もいじめのターゲットになった経験があるのだろうか……などと思ったが、あえて口にはしなかった。
「恐ろしい話ですね。これは、確実に犯罪の抑止力になりますよ」
冗談めいた口調で言ったが、市原はにこりともしない。真剣な表情で、話を続ける。
「中には、いじめられ続けておかしくなっちまった挙げ句、運動の時間に首を吊った奴までいたんだよ。もう、大騒ぎでさ……そいつは、八王子の医療刑務所に送られたらしいよ」
「それは初耳ですね」
「だろうな。そんなの見せられたら、誰だってあいつらには逆らえなくなる。どっかのアクション映画みたいな話だけど、それが奈越刑務所の現実だったのさ」
「他の刑務官や上を統括する人たちは、それに気づいてなかったんですかね」
「薄々は感づいてたと思うよ。でも、見て見ぬふりだ。あいつらも下手に騒ぎ立てて、同僚を敵に回したくなかったんじゃないかな」
有りがちな話だ。企業内の隠蔽は、見て見ぬふりから始まる。まして、刑務所のような特殊な空間では、歪んだ仲間意識も生まれやすい。彼らを告発すれば、自分の首を絞めることにもなりかねないのだ。
「いやあ、知りませんでした。貴重な情報をありがとうございます、ところで、脱獄した島田義人に話を戻しますが……刑務所内では、皆と上手くやっていたんですよね?」
「ああ。あいつは、上手くやってたよ。花岡たちにも逆らわなかったし、問題も起こさなかった。むしろ、気に入られていた方だったな」
「でも、脱獄したんですよね」
「そうなんだよ。挙げ句に、あんなとんでもない事件を起こしたわけだろ……俺には、未だに理解できないよ。むしろ、俺の方が聞きたいくらいだ」
そう語る市原には、未だ納得いかない思いがあるらしい。彼も、島田には好感を持っていたのだろうか。
そういえば、あの住友もそうだった。
「あなたは、島田とは仲が良かったのですか?」
聞いてみると、市原は懐かしそうな表情を浮かべる。
「まあ、特別に仲いいってわけじゃなかった。でも、たまに喋ったりすることはあったよ。感じのいい男だった。他の連中と違って、イキがったり偉そうな態度も取らなかったしな。島田を悪く言う奴は、五工場ではいなかったんじゃないかな」
「そうでしたか。彼と一番仲の良かった受刑者は誰ですか?」
「うーん、誰かなあ……あいつは、みんなと仲良くしてたよ。確か、江崎って奴と、ちょくちょく話しているのを見た気はする」
「江崎、ですか。下の名前はわかりますか?」
「いや、わからないな。だいたい、五工場には百人近い人間がいたんだぜ。自分と関係ない奴のフルネームなんて、いちいち覚えていられないよ」
その言葉に、今川は苦笑した。
「それもそうですね。すみません」
「とにかく、島田が何であんなことしたのか、俺には未だにわからないよ。俺も刑務所で、いろんな奴を見てきた。でも、あいつは犯罪者の中では、かなりマシな男だった」
しみじみと語る市原に、今川は以前から考えていたことをぶつけてみた。
「これはあくまで仮定の話ですが、島田が脱獄して刑務所をチェックされなかったら、どうなっていたでしょう? その二人が今も工場を仕切り、悪さは続いていたんでしょうか?」
「たぶん、そうだろうな」
市原は頷いた。だが、直後に顔色が変わる。
「ちょっと待て。まさか、島田はそれが目的で脱獄したのか? 刑務所を調べさせるために脱獄したと……あんたは、そう思ってるのか?」
眉間に皺を寄せ、市原は聞いてきた。だが、今川は口元を歪めて首を横に振る。
「どうでしょうねえ。脱獄した後の行動を考えると、その可能性は薄いような気がします」
「そうなんだよな。何度も言うけど、島田が何であんなことしたのか、未だにわからないよ。なあ、あんたはどう思うんだ?」
いきなりの問いに、今川は面食らう。
「えっ、何がですか?」
「島田は、何であんな事件を起こしたんだ?」
市原は、逆に質問してきた。その表情は、真剣そのものである。だが、今川に答えられるはずがなかった。
「僕にはわかりません。ですから、調べてるんですよ」
「それもそうだな」
取材が終わり、市原は去って行った。
もう、刑務所は懲り懲りだ……別れ際、市原はそう言った。今は、覚醒剤依存症のリハビリ施設に通いつつ、仕事を探しているという。
彼が今後、どうなるかはわからない。また覚醒剤を始めてしまい、逮捕され刑務所に逆戻りするのかもしれない。あるいは、己の過去を封印して、この社会で真人間として何とかやっていくのかも知れない。
四十歳近い市原が、この社会で上手く立ち直ることが出来るかどうか……それは、神のみぞ知ることだろう。ただ、今川は彼を嫌いにはなれなかった。かつては覚醒剤に溺れ、刑務所にまで行った男。それでも、松村広志よりは遥かにマシな人間に思えた。
次に今川は、島田のことを考えてみた。
あの男は、刑務所でも評判は悪くなかった。さらに、刑務所の中でも上手くやっていたようだ。
そんな島田が、なぜ脱獄したのだろうか。
市原の話によれば、奈越刑務所の第五工場はとても酷い場所だったらしい。事実、島田が脱獄した直後……奈越刑務所には法務省からの厳しいチェックが入った。結果、様々な悪事が明るみに出たのである。刑務官の熊井と横田は今、警察の取り調べを受けているという話だ。花岡と堀江も事件送致にされ、警察による取り調べを受けている。
島田が脱獄しなければ、ふたりの悪行は今も続いていたはずだ。もしも島田が、刑務所で横行している悪事を告発するために脱獄したのだとすれば……。
考えられない話ではない。あの男は中学生の時、同じ施設の女の子たちをレイプしていた石川に対し、単身で話をつけに行ったのだ。もともと正義感の強い性格だったし、その可能性はある。
となると、ひとつの疑問が生まれる。仮に告発のために脱獄したのだとしたら、その後の行動がわからない。数十キロ離れた松村邸に押し入り、広志を撲殺し夏帆と栞を拉致し連れ出した。
しかも最後には、警官隊に向かい猟銃を乱射した挙げ句に射殺である。
これは、完全なる自殺行為だ。刑務所の悪行を告発するために脱獄するような男が、こんなバカげた最期を迎えるだろうか。
「義人……お前は、何がしたかったんだ?」
誰もいないカラオケボックスの一室で、今川はひとり呟いた。
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