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異相の若者
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物事ってのは、時としておかしな方向に転がっていくことがあるもんだよ。どっかの大名は、戦に負け領地を追われた。ところが、蜘蛛が度重なる障害にも負けず巣を張り直すのを見て奮起し、やがて領地を取り返したらしい。
お京、あんたの復讐は個人的なものだろうよ。だがな、あんたらは目立ち過ぎた。光が強けりゃ、影も濃くなる。あんたのやってることが、知らん間におかしな連中の興味をそそることもあるかもしれねえ。
前にも言ったが、この江戸にほとんでもねえ化け物が潜んでいるんだよ。あんたにゃ、想像もつかねえような奴がな。藪をつついて蛇を出すって言葉があるが、あんたは沼をつついて龍を出しちまったのかもしれねえぜ。
・・・
無人街の通りは、今日も得体の知れぬ者たちが徘徊していた。年齢も服装も風貌もばらばらな者たちが、あっちへうろうろ、こっちへふらふら……という感じで、昼間から好き勝手に動き回っていた。
そんな中を、足取りも軽く進んでいく若者がいる。捨丸だ。江戸中のろくでなしを掃き集めた魔窟を歩いているというのに、妙に嬉しそうである。
うきうきした顔で歩く捨丸だったが、途中で足を止めた。奇怪な格好をした老人が、目の前にぬっと現れたのだ。小柄で痩せており、上半身は何も着ていない。長いぼろ布を腰に巻き付けており、手には鍋と棒を持っていた。この奇怪な老人が誰かは知っている。勘々爺と呼ばれており、奇人ぞろいの無人街でも極めつけの変人だ。
その勘々爺は、じろりと捨丸を睨み口を開いた。
「お前は、誰かと思えば……ええっと、その──」
「捨丸だよ。忘れたのかい」
捨丸が口を挟む。この勘々爺とは顔馴染みのはずなのだが、未だに名前を覚えられていないらしい。悲しい話である。
一方、勘々爺は何を思ったか棒で鍋を叩く。かーん、という音が響いた。
「そうだそうだ、捨三じゃねえかよう。この野郎、さかりのついた猫みてえな浮かれた面しやがって、何しに来た?」
「捨三じゃないよ、捨丸だってば。何しに来たって、決まってんじゃん。べっぴんさんに会いに来たのさ」
「べっぴんさんだあぁ? どこにそんなもんがいるんだよう。見せてみろ」
言ったかと思うと、またしても鍋を打ち鳴らす。かーん、という音が響いた。
捨丸は今までの付き合いで、この老人との会話の仕方を知っている。この鍋をかーんと打ち鳴らす仕草には、何の意味もない。自分で自分に合いの手を入れている、そんな感じなのだ。
「いるんだよ。そのうち連れて来てやるから」
そう言うと、老人の脇をすり抜け進んでいく。すると、勘々爺が鍋を叩く。またな、という別れの挨拶のつもりだろうか。捨丸は、くすりと笑った。
やがて、目指す場所に到着した。お京らの住む掘っ立て小屋である。捨丸は、そっと声をかけた。
「ちょっとー、誰かいる?」
「ああ、いるよ」
声と共に顔を出したのは、お七であった。捨丸の顔を見て、嬉しそうに微笑む。と、捨丸の方もでれっとした表情になった。
その顔を見て、お七は溜息を吐く。
「あんたは、相変わらず締まりのない顔だね。少しは、しゃきっとしなよ」
「えっ……しゃきっとするって、こんな顔かな」
そう言うと、険しい表情を作って見せた。しかし、何とも間の抜けた顔である。お七は、ぷっと吹き出した。
「なんだいそりゃあ。やっぱり、あんたは普段通りの方がいいよ」
言われた捨丸は、照れたように頭を掻いた。
「それもそうだね」
「で、今日は何しに来たんだい?」
「ああ、こないだの仕事料を持ってきたんだよ。それと、桃助の居場所がわかったから」
「えっ、本当かい」
「うん。ここに簡単な地図が書いてあるからさ」
言いながら、紙包みを渡す。お七は、複雑な表情でそれを受け取った。
すると、捨丸の口からこんな言葉が出る。
「ねえ、暇? これからさ、うどんでも食いに行かない?」
「えっ?」
きょとんとなるお七だったが、次の瞬間に苦笑しかぶりを振る。
「悪いけど、これからやらなきゃいけないことがある。まずは、ふたりと打ち合わせさ」
言いながら、紙包みを指し示す。彼女たちは、今から桃助を仕留める計画を練らなくてはならないのだ。
すると、捨丸はうんうん頷いた。
「あっ、そうだよね。んじゃ、また今度にするよ」
そう言って、くるりと向きを変える。と、今度はお七が声をかける。
「ちょっとお待ちよ」
「ん、何?」
「あのさ、火薬と弾丸の調達を頼みたいんだよ。いいかい?」
「お安い御用だよ。明後日には、持って来るからさ」
「頼んだよ」
答えると、捨丸はにこにこしながら手を振り去っていく。その後ろ姿を、お七は微笑みながら見送った。
しかし、そんな笑顔もすぐに吹っ飛んだ。地図を見るなり、お京はこんなことを言い出したのだ。
「明日、桃助を殺しに行くよ」
途端に、お七は慌てて止めた。
「ちょっと待ちなよ! まず、鉄砲を直してからにしな!」
彼女の言う鉄砲とは、もちろん本物ではない。竹を繋ぎ合わせて作り、車の横に付けたものだ。もっとも、竹製であるため一発撃てば銃身は破裂してしまう。そのため、発砲するたびに再び一から作り直さねばならないのだ。
雉間正厳と戦った時は、鉄砲の作成が間に合わなかった。今回も、まだ間に合っていない。お京とお花の腕なら問題はないと思うが、万一ということもある。
しかし、お京は聞く耳を持たなかった。
「冗談じゃない! そんなの、待ってられないよ!」
言い返してきた彼女の顔には、一瞬たりとも待っていられない……という思いがあらわになっている。こうなると、お京はてこでも引かない。
お七は、ふうと溜息を吐いた。
「わかったよ。好きにしな」
・・・・
そこは、異様な場所だった──
人通りの少ない寂れた一角に、大きな蔵が建っていた。周囲に民家はなく、人通りも少ない。入口は固く閉ざされており、頑丈な錠前付きだ。人の出入りする気配はなかった。
しかし、夜になると雰囲気はがらりと変わる。けばけばしい格好の若者たちがどこからともなく集まり、次々と中に入っていく。無人街とほ、また違う混沌を感じさせた。
中に入ってみれば、奇妙な格好の者たちが集まり酒盛りを開いているのだ。みな若く、けばけばしい色の着物を身にまとっている。肌もあらわな若い女たちが色とりどりの扇子を振り回して踊り狂い、見ている男たちが囃し立てる。室内には奇妙な香りがたちこめており、騒いでいる若者たちの表情もまともとは思えないものだ。その異様さは、酒に酔っていることだけが原因ではないように見えた。
中でも、ひときわ目立つのは輪の中心であぐらをかいている若者だ。年齢は、二十歳前後だろうか。肌は異様なまでに白く、髪は後ろに撫でつけた総髪である。南蛮人のような風貌で、男女どちらでも通じる中性的な顔立ちだ。手足は長く、しなやかな筋肉に覆われている。上半身は裸で、股引きのものを履いていた。
この奇妙な若者は、最近になって江戸を騒がせている狂気の傾奇者・天河狂獣郎である。金色の煙管を片手に、物憂げな様子で煙を宙に吐き出していた。
そんな狂獣郎の前で、ひとりの若者がひざまずいていた。髷を結っており、横には二本の刀が置かれていた。身なりも、他の者たちと違いきっちりしていふ。一見すると、身分の高い侍のようだが、狂獣郎の前で何やら訴えている姿には、威厳など欠片ほども感じられない。
この男こそ、お京が狙う最後の仇・桃助である。桃助は狂獣郎に向かい、身振り手振りを交えつつ必死でまくし立てていた。
「先刻から言っていますが、猿蔵、犬飼、それに雉間も殺られました……次は、俺の番ですよ!」
すると、狂獣郎は目を開けた。ようやく口を開く。
「はあぁ? だから何ぃ?」
「いや、ですから次は俺の番かと……」
「うん、そうなるよねえぇ。でもさぁ、そいつは面白いなあぁ」
「お、面白い?」
「だってさぁ、そいつ足ないのに江戸まで来ちゃったんでしょ? んでさぁ、猿ちゃんぶっ殺してぇ、犬飼三兄弟ぶっ殺してぇ、ついでに雉間ちゃんまで殺っちゃったんでしょ? こりゃあもう、いとをかしだねえぇ」
そう言うと、いきなり笑い出した。ひゃっひゃっひゃっひゃ……という奇怪な笑い声だ。膝を叩きながら、狂ったように笑っている。合わせるかのように、周囲にいる者たちも笑い出した。
しかし、桃助はにこりともしていない。それどころか、泣きそうな顔で喚き出した。
「笑ってる場合じゃないんですよ! 次は俺の番なんです! 何とかしてください!」
その瞬間、狂獣郎の足が伸びる。桃助は蹴飛ばされ、仰向けに倒れた。
咄嗟のことに、桃助は何が起きたかすらわかっていないようだ。そんな彼を、狂獣郎は見ようともしていない。焦点の合わない目は、宙を向いていた。
「はあぁ? 何言っちゃってんのよぅ? んなもん、俺が知るわけないでしょうがぁ」
両手のひらをゆらゆら動かしつつ、とぼけた口調で言った。が、直後に鋭い表情で桃助を見下ろす。
「いい? 今度来る時はぁ、その何とかちゃんの首を持って来てよぅ。でないとぉ、君が打ち首だかんねぇ」
お京、あんたの復讐は個人的なものだろうよ。だがな、あんたらは目立ち過ぎた。光が強けりゃ、影も濃くなる。あんたのやってることが、知らん間におかしな連中の興味をそそることもあるかもしれねえ。
前にも言ったが、この江戸にほとんでもねえ化け物が潜んでいるんだよ。あんたにゃ、想像もつかねえような奴がな。藪をつついて蛇を出すって言葉があるが、あんたは沼をつついて龍を出しちまったのかもしれねえぜ。
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無人街の通りは、今日も得体の知れぬ者たちが徘徊していた。年齢も服装も風貌もばらばらな者たちが、あっちへうろうろ、こっちへふらふら……という感じで、昼間から好き勝手に動き回っていた。
そんな中を、足取りも軽く進んでいく若者がいる。捨丸だ。江戸中のろくでなしを掃き集めた魔窟を歩いているというのに、妙に嬉しそうである。
うきうきした顔で歩く捨丸だったが、途中で足を止めた。奇怪な格好をした老人が、目の前にぬっと現れたのだ。小柄で痩せており、上半身は何も着ていない。長いぼろ布を腰に巻き付けており、手には鍋と棒を持っていた。この奇怪な老人が誰かは知っている。勘々爺と呼ばれており、奇人ぞろいの無人街でも極めつけの変人だ。
その勘々爺は、じろりと捨丸を睨み口を開いた。
「お前は、誰かと思えば……ええっと、その──」
「捨丸だよ。忘れたのかい」
捨丸が口を挟む。この勘々爺とは顔馴染みのはずなのだが、未だに名前を覚えられていないらしい。悲しい話である。
一方、勘々爺は何を思ったか棒で鍋を叩く。かーん、という音が響いた。
「そうだそうだ、捨三じゃねえかよう。この野郎、さかりのついた猫みてえな浮かれた面しやがって、何しに来た?」
「捨三じゃないよ、捨丸だってば。何しに来たって、決まってんじゃん。べっぴんさんに会いに来たのさ」
「べっぴんさんだあぁ? どこにそんなもんがいるんだよう。見せてみろ」
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捨丸は今までの付き合いで、この老人との会話の仕方を知っている。この鍋をかーんと打ち鳴らす仕草には、何の意味もない。自分で自分に合いの手を入れている、そんな感じなのだ。
「いるんだよ。そのうち連れて来てやるから」
そう言うと、老人の脇をすり抜け進んでいく。すると、勘々爺が鍋を叩く。またな、という別れの挨拶のつもりだろうか。捨丸は、くすりと笑った。
やがて、目指す場所に到着した。お京らの住む掘っ立て小屋である。捨丸は、そっと声をかけた。
「ちょっとー、誰かいる?」
「ああ、いるよ」
声と共に顔を出したのは、お七であった。捨丸の顔を見て、嬉しそうに微笑む。と、捨丸の方もでれっとした表情になった。
その顔を見て、お七は溜息を吐く。
「あんたは、相変わらず締まりのない顔だね。少しは、しゃきっとしなよ」
「えっ……しゃきっとするって、こんな顔かな」
そう言うと、険しい表情を作って見せた。しかし、何とも間の抜けた顔である。お七は、ぷっと吹き出した。
「なんだいそりゃあ。やっぱり、あんたは普段通りの方がいいよ」
言われた捨丸は、照れたように頭を掻いた。
「それもそうだね」
「で、今日は何しに来たんだい?」
「ああ、こないだの仕事料を持ってきたんだよ。それと、桃助の居場所がわかったから」
「えっ、本当かい」
「うん。ここに簡単な地図が書いてあるからさ」
言いながら、紙包みを渡す。お七は、複雑な表情でそれを受け取った。
すると、捨丸の口からこんな言葉が出る。
「ねえ、暇? これからさ、うどんでも食いに行かない?」
「えっ?」
きょとんとなるお七だったが、次の瞬間に苦笑しかぶりを振る。
「悪いけど、これからやらなきゃいけないことがある。まずは、ふたりと打ち合わせさ」
言いながら、紙包みを指し示す。彼女たちは、今から桃助を仕留める計画を練らなくてはならないのだ。
すると、捨丸はうんうん頷いた。
「あっ、そうだよね。んじゃ、また今度にするよ」
そう言って、くるりと向きを変える。と、今度はお七が声をかける。
「ちょっとお待ちよ」
「ん、何?」
「あのさ、火薬と弾丸の調達を頼みたいんだよ。いいかい?」
「お安い御用だよ。明後日には、持って来るからさ」
「頼んだよ」
答えると、捨丸はにこにこしながら手を振り去っていく。その後ろ姿を、お七は微笑みながら見送った。
しかし、そんな笑顔もすぐに吹っ飛んだ。地図を見るなり、お京はこんなことを言い出したのだ。
「明日、桃助を殺しに行くよ」
途端に、お七は慌てて止めた。
「ちょっと待ちなよ! まず、鉄砲を直してからにしな!」
彼女の言う鉄砲とは、もちろん本物ではない。竹を繋ぎ合わせて作り、車の横に付けたものだ。もっとも、竹製であるため一発撃てば銃身は破裂してしまう。そのため、発砲するたびに再び一から作り直さねばならないのだ。
雉間正厳と戦った時は、鉄砲の作成が間に合わなかった。今回も、まだ間に合っていない。お京とお花の腕なら問題はないと思うが、万一ということもある。
しかし、お京は聞く耳を持たなかった。
「冗談じゃない! そんなの、待ってられないよ!」
言い返してきた彼女の顔には、一瞬たりとも待っていられない……という思いがあらわになっている。こうなると、お京はてこでも引かない。
お七は、ふうと溜息を吐いた。
「わかったよ。好きにしな」
・・・・
そこは、異様な場所だった──
人通りの少ない寂れた一角に、大きな蔵が建っていた。周囲に民家はなく、人通りも少ない。入口は固く閉ざされており、頑丈な錠前付きだ。人の出入りする気配はなかった。
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中でも、ひときわ目立つのは輪の中心であぐらをかいている若者だ。年齢は、二十歳前後だろうか。肌は異様なまでに白く、髪は後ろに撫でつけた総髪である。南蛮人のような風貌で、男女どちらでも通じる中性的な顔立ちだ。手足は長く、しなやかな筋肉に覆われている。上半身は裸で、股引きのものを履いていた。
この奇妙な若者は、最近になって江戸を騒がせている狂気の傾奇者・天河狂獣郎である。金色の煙管を片手に、物憂げな様子で煙を宙に吐き出していた。
そんな狂獣郎の前で、ひとりの若者がひざまずいていた。髷を結っており、横には二本の刀が置かれていた。身なりも、他の者たちと違いきっちりしていふ。一見すると、身分の高い侍のようだが、狂獣郎の前で何やら訴えている姿には、威厳など欠片ほども感じられない。
この男こそ、お京が狙う最後の仇・桃助である。桃助は狂獣郎に向かい、身振り手振りを交えつつ必死でまくし立てていた。
「先刻から言っていますが、猿蔵、犬飼、それに雉間も殺られました……次は、俺の番ですよ!」
すると、狂獣郎は目を開けた。ようやく口を開く。
「はあぁ? だから何ぃ?」
「いや、ですから次は俺の番かと……」
「うん、そうなるよねえぇ。でもさぁ、そいつは面白いなあぁ」
「お、面白い?」
「だってさぁ、そいつ足ないのに江戸まで来ちゃったんでしょ? んでさぁ、猿ちゃんぶっ殺してぇ、犬飼三兄弟ぶっ殺してぇ、ついでに雉間ちゃんまで殺っちゃったんでしょ? こりゃあもう、いとをかしだねえぇ」
そう言うと、いきなり笑い出した。ひゃっひゃっひゃっひゃ……という奇怪な笑い声だ。膝を叩きながら、狂ったように笑っている。合わせるかのように、周囲にいる者たちも笑い出した。
しかし、桃助はにこりともしていない。それどころか、泣きそうな顔で喚き出した。
「笑ってる場合じゃないんですよ! 次は俺の番なんです! 何とかしてください!」
その瞬間、狂獣郎の足が伸びる。桃助は蹴飛ばされ、仰向けに倒れた。
咄嗟のことに、桃助は何が起きたかすらわかっていないようだ。そんな彼を、狂獣郎は見ようともしていない。焦点の合わない目は、宙を向いていた。
「はあぁ? 何言っちゃってんのよぅ? んなもん、俺が知るわけないでしょうがぁ」
両手のひらをゆらゆら動かしつつ、とぼけた口調で言った。が、直後に鋭い表情で桃助を見下ろす。
「いい? 今度来る時はぁ、その何とかちゃんの首を持って来てよぅ。でないとぉ、君が打ち首だかんねぇ」
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