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プロローグ
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それは、異様な光景であった。
山の中、周囲に木が生い茂る洞窟の奥深くにて、ふたりの赤ん坊が楽しそうに笑っているのだ。どちらも、何も着ていない。
今は十月である。冬が近づき、寒さも増してきている。しかも、この辺りの気温は低い。洞窟の中の気温は、十度を下回るだろう。
にもかかわらず、ふたりは一糸まとわぬ姿でニコニコしているのだ。寒さなど感じていないかのようである。時おり互いに見つめ合い、楽しそうにキャッキャッ笑い合う。
その時、赤ん坊の横を小動物が駆け抜ける。闇に覆われた暗い洞窟の中である。人間の肉眼では、見ることすらかなわぬはずだった。
ところが、赤ん坊は反応する。その手は、異常な速さで動いた。駆け抜けようとした何かを、一瞬で捕らえた。瞬時に握り潰す──
グシャッ、という音がした。だが、ふたりはお構いなしだ。潰したものを分け合い、口へと運んでいく。バリバリという音が洞窟内に響いた。そんなふたりの周りには、白骨が転がっている。中には、人間のものと思われる骨も混じっていた。
その時、微かな物音がした。次いで、何かが洞窟の中に入って来る。どうやら、四つ足の動物らしい。それも二匹。
ふたりの赤ん坊は、嬉しそうに入ってきたものを見つめる。その瞳は、右が赤く左が緑だった。
山の中、周囲に木が生い茂る洞窟の奥深くにて、ふたりの赤ん坊が楽しそうに笑っているのだ。どちらも、何も着ていない。
今は十月である。冬が近づき、寒さも増してきている。しかも、この辺りの気温は低い。洞窟の中の気温は、十度を下回るだろう。
にもかかわらず、ふたりは一糸まとわぬ姿でニコニコしているのだ。寒さなど感じていないかのようである。時おり互いに見つめ合い、楽しそうにキャッキャッ笑い合う。
その時、赤ん坊の横を小動物が駆け抜ける。闇に覆われた暗い洞窟の中である。人間の肉眼では、見ることすらかなわぬはずだった。
ところが、赤ん坊は反応する。その手は、異常な速さで動いた。駆け抜けようとした何かを、一瞬で捕らえた。瞬時に握り潰す──
グシャッ、という音がした。だが、ふたりはお構いなしだ。潰したものを分け合い、口へと運んでいく。バリバリという音が洞窟内に響いた。そんなふたりの周りには、白骨が転がっている。中には、人間のものと思われる骨も混じっていた。
その時、微かな物音がした。次いで、何かが洞窟の中に入って来る。どうやら、四つ足の動物らしい。それも二匹。
ふたりの赤ん坊は、嬉しそうに入ってきたものを見つめる。その瞳は、右が赤く左が緑だった。
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