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「お前ら、行くぞ」
片岡隆司は、背後に控えている男たちに声をかけた。直後、肩をいからせて大股で進んでいく。
彼の目の前には、塀に囲まれた白く巨大な建物がそびえていた。もっとも、壁には得体の知れない汚れが大量に付着しており、敷地内には雑草が伸び放題だ。その上、入口付近にはロープが張られ、立入禁止と書かれた立て札が地面に刺さっている。
ここは、かつて病院だった。規模は大きく、一時は数十人の医師や看護師が出入りしていたのだ。しかし、医療ミスによる死亡事故をきっかけに、セクハラやパワハラ、さらには放漫経営といったスキャンダルがマスコミによって暴かれた。結果、病院の経営は破綻する。今では、取り壊しを待つだけだ。
暗闇の中にそびえる荒廃した病院はあまりにも不気味で、近所の人間も寄りつかないような場所だ。さすがの片岡も、入ることがためらわれた。
しかし、ここが指定の場所である以上、行かないわけにはいかない。片岡は、病院の敷地内へと入っていく。
この片岡は、日本でも屈指の広域指定暴力団『士想会』の幹部である。構成員の中でも、名の知れた武闘派だ。他の組織でも、彼の名前を知る者は多い。また武勇伝も多い。
そんな彼は数人のボディーガードを引き連れ、廃墟と化した徳川病院の敷地内を進んでいた。
現在の時刻は、午後十一時である。当然ながら、周囲は闇に覆われており、月明かりと街灯の僅かな光だけが頼りである。足元には伸び放題の雑草が生い茂り、歩きづらくて仕方ない。
しかも病院の周辺には、得体の知れない水溜まりのようなものがあちこちにできている。さらに、廃墟からは異様な匂いが漂ってきている。片岡とボディーガードたちは悪態をつきながら、水溜まりを避けて歩いていた。
やがて片岡は立ち止まり、廃墟に向かって呼び掛ける。
「おいコラ! ちゃんと来てやったぞ! 早く出てこい! どうせ隠れて聞いてんだろうが!」
片岡は吠えた。しかし、誰も返事をしない。
一週間ほど前、士想会の事務所が襲撃を受けた。三人の組員が殺害され、現金や拳銃などが奪われる。
こんなことをされて、黙っているわけにはいかない。士想会は、独自のルートを使い犯人を捜していた。そんな中、片岡のいる事務所に奇妙な封筒が届く。
封筒の中には、殺された組員の私物と名刺が入っていた。さらに、地図と便箋も──
(この三人の組員を殺した人間を知っています。その情報を、百万円で売りますよ。もしその気があるのでしたら、徳川病院の跡地に午後十一時にいらしてください)
便箋には、そう書かれていた。
同封されていた地図によれば、建物の裏側には患者専用の庭がある。そこが、待ち合わせ場所のはずだった。
ところが、指定された時間になっても、手紙の主が現れる気配はない。片岡は苛立っていた。
「おい、どうせ隠れて見てんだろうが! 早く出てこい!」
片岡は、独特のダミ声でもう一度吠えた。控えてきるボディーガードたちは、拳銃の安全装置を外した。いつでも撃てるよう準備をしている。
その時、どこからともなく声が聞こえてきた。
「なあ、あんたら薔薇十字団のケツモチなんだってな」
声から察するに、まだ若い。十代後半から二十代前半だろう。そんな若造が、士想会に喧嘩を売るとは思えない。となると、純粋に情報を売るためだけに呼び出したのか。
だが、薔薇十字団の名前が出るとは意外だった。
「やっぱりいやがったのか。さっさと出てきて、話を聞かせろ」
「まあ待てよ。その前に、ひとつ話をさせてくれ」
とぼけた口調で、相手は語りだした。
「昔、ある所にふたりの男の子と、ひとりの女の子がいました。三人は修学旅行に行き、そこで大勢の人間を殺しました。向こうから襲ってきたため、身を守るために殺したのです。そう、彼らは修学旅行に行くつもりが、修羅学旅行に行っていたのですよ。彼らはそこで、修羅場での行動を学びました」
昔話でも語るかのようである。怯えている様子はない。片岡は、思わず首を捻る。
ひょっとしたら、ガキのいたずらだろうか。いや、そんなはずはない。
「おい、ふざけてるとケガするぞ。早く出てこい」
片岡は凄んだが、声の主が出てくる気配はない。その上、語りが止まる気配もない。
「その後、三人はとある道の十字路に立っていました。ひとりは、暗い闇に包まれた道を怯えながら進んでいきました。ひとりは、明るい光に照らされた道を楽しそうに進んでいきました。最後のひとりは、血塗られた阿修羅の道を行くことにしました」
淡々と語る声。片岡は、不意に拳銃を抜いた。
直後、空に向けてぶっ放す──
「いい加減にしろ。俺たちはな、暇じゃねえんだ」
言った時だった。燃え上がる何かが、どこからか飛んでくる。その何かは、片岡らの足元の水溜まりへと投げ込まれた。
次の瞬間、水溜まりが一斉に燃え上がる。一瞬にして火柱と化した──
そこに溜まっていたものは水でなく、灯油だったのである。片岡たちは、あっという間に炎に囲まれる。しかも、囲まれただけでは済まなかった。
瞬きする間もなく、片岡とボディーガードたちの服に火が燃え移る。彼ら自身もまた、火柱と化したのだ。片岡たちは、悲鳴をあげながら転げ回り、体についた火を消そうとする。もはや、周囲への警戒心などない。
その時、廃墟の中から現れた者がいる。黒いパーカーを着た少年だ。彼は、士想会の事務所から奪った拳銃を構えている。
直後、銃声が響いた──
弾丸は、片岡の体を貫く。殺すのが目的なら、撃つ必要などなかっただろう。その場にいた者は全員、放っておいても炎により絶命していたはずだ。
にもかかわらず、少年は発砲を止めない。のたうち回っているヤクザたちの体めがけ、さらにトリガーを引く。動かなくなった者たちにも、さらに発砲を続ける。殺すだけでは飽き足らない、強烈な憎しみに突き動かされている──
数分も経たぬうちに、全員が死体と化していた。
消火器で火を消した後、少年は死体と化したヤクザの体を調べた。金目の物や現金、武器やスマホなどを奪っていく。炎で焼けてしまった物もあったが、まだ使える物もある。ヤクザという人種は、高価な装飾品を身に付けている者が多い。それらを金に替えれば、当座の軍資金には困らないだろう。
その後、少年は死体を担ぎ上げる。廃墟の中へと運んでいった。重いはずの死体を、軽々と運んでいく。
廃墟の中で、異様な音が響き渡る──
少年が牛刀やハンマーなどを用いて、肉を切り裂き骨を砕く音だ。まずは死体を裸にして、両腕と両足を関節部分から切り離す。首も切断し、胴体は細かく刻む。初めのうちは苦労したが、今は慣れたものだ。廃墟の中で、彼は手際よく死体を解体していく。
やがて、バラバラになった死体をビニール袋に詰めていった。口をきつく縛り、さらにビニール袋をセメント用の紙袋に入れた。これなら、傍目には建築資材としか思われないだろう。しばらくの間は、見つかることはない。
だが、出来るだけ早いうちに焼くなり溶かすなりして、死体を跡形もなく消し去らなくてはならない。
死体がなければ、ただの行方不明だ──
薔薇十字団のひとりがそう言っていたのを、今もはっきり覚えている。
最後に、薬品を撒いた。血の匂いを消すためだ。野良猫や鼠や鴉といった動物は、とにかく鼻が利く。肉の匂いを嗅ぎ付けたられたら終わりだ。始末するまでは、こまめに薬を撒いて匂いを消さなくてはならない。
それらの作業が終わると、少年は次なる獲物の品定めをするため、奪ったばかりのスマホをチェックし始める。スマホは、個人情報の宝庫だ。かなりの情報が得られた。そろそろ、薔薇十字団の中枢部にも迫れるだろう。士想会も、いずれ壊滅させてやる。
その時だった。外の天候が、いきなり変わった。雹ではないかと誤解するような、大粒の強い雨が降り始める。土砂降りの雨、という言葉すら生温いものだ。さらに雷が鳴り響き、強い風が吹き付ける。周囲の木や、廃墟と化した建物を揺らした。まるで、台風が直撃したかのようである。
あまりにも異常な光景であった。悪魔が少年の凶行を祝福しているかのような、異様な天候である。石原高校の修学旅行バス転落事故の日と、全く同じであった。
少年は冷静な表情のまま、外に出て行った。雨に濡れるのも無視して、空をじっと見上げる。
次の瞬間、ニヤリと笑った──
相手の流した血に染まり、真っ赤な顔で雨に打たれながらも、不気味な笑みを浮かべ闇夜に立ち尽くす少年。その様は、人間とは思えない。見た者がいれば、恐怖に駆られ逃げ出すことだろう。
まさに、悪鬼羅刹そのものであった。
・・・
俺は、戦い続ける。
薔薇十字団を叩き潰すためだ。所属している全てのメンバーを殺す。その家族も皆殺しだ。薔薇十字団と関わりのある者は、全て殺してやる。女だろうが赤ん坊だろうが、容赦はしない。
あの日に死んでいった奴らの仇を討つために、奴らに誓った約束を果たすために、ひとりたりとも逃さない。
いや、嘘はよそう。
俺の本当の目的は、殺すことだ。人を殺したくて仕方ない。殺人の快楽と充実感とを、もっと味わいたい。
もっともっと、大勢の人間を殺したい。だから、この命が尽きるまで戦い、殺す。薔薇十字団がなくなっても、俺は殺し続ける。
たぶん、俺は狂っているのだろう。でも、構わない。
もう、まともな人間には戻れない。また、戻りたくもない。
そう……俺は、人間をやめて怪物になりたい。
明のような怪物になりたい──
片岡隆司は、背後に控えている男たちに声をかけた。直後、肩をいからせて大股で進んでいく。
彼の目の前には、塀に囲まれた白く巨大な建物がそびえていた。もっとも、壁には得体の知れない汚れが大量に付着しており、敷地内には雑草が伸び放題だ。その上、入口付近にはロープが張られ、立入禁止と書かれた立て札が地面に刺さっている。
ここは、かつて病院だった。規模は大きく、一時は数十人の医師や看護師が出入りしていたのだ。しかし、医療ミスによる死亡事故をきっかけに、セクハラやパワハラ、さらには放漫経営といったスキャンダルがマスコミによって暴かれた。結果、病院の経営は破綻する。今では、取り壊しを待つだけだ。
暗闇の中にそびえる荒廃した病院はあまりにも不気味で、近所の人間も寄りつかないような場所だ。さすがの片岡も、入ることがためらわれた。
しかし、ここが指定の場所である以上、行かないわけにはいかない。片岡は、病院の敷地内へと入っていく。
この片岡は、日本でも屈指の広域指定暴力団『士想会』の幹部である。構成員の中でも、名の知れた武闘派だ。他の組織でも、彼の名前を知る者は多い。また武勇伝も多い。
そんな彼は数人のボディーガードを引き連れ、廃墟と化した徳川病院の敷地内を進んでいた。
現在の時刻は、午後十一時である。当然ながら、周囲は闇に覆われており、月明かりと街灯の僅かな光だけが頼りである。足元には伸び放題の雑草が生い茂り、歩きづらくて仕方ない。
しかも病院の周辺には、得体の知れない水溜まりのようなものがあちこちにできている。さらに、廃墟からは異様な匂いが漂ってきている。片岡とボディーガードたちは悪態をつきながら、水溜まりを避けて歩いていた。
やがて片岡は立ち止まり、廃墟に向かって呼び掛ける。
「おいコラ! ちゃんと来てやったぞ! 早く出てこい! どうせ隠れて聞いてんだろうが!」
片岡は吠えた。しかし、誰も返事をしない。
一週間ほど前、士想会の事務所が襲撃を受けた。三人の組員が殺害され、現金や拳銃などが奪われる。
こんなことをされて、黙っているわけにはいかない。士想会は、独自のルートを使い犯人を捜していた。そんな中、片岡のいる事務所に奇妙な封筒が届く。
封筒の中には、殺された組員の私物と名刺が入っていた。さらに、地図と便箋も──
(この三人の組員を殺した人間を知っています。その情報を、百万円で売りますよ。もしその気があるのでしたら、徳川病院の跡地に午後十一時にいらしてください)
便箋には、そう書かれていた。
同封されていた地図によれば、建物の裏側には患者専用の庭がある。そこが、待ち合わせ場所のはずだった。
ところが、指定された時間になっても、手紙の主が現れる気配はない。片岡は苛立っていた。
「おい、どうせ隠れて見てんだろうが! 早く出てこい!」
片岡は、独特のダミ声でもう一度吠えた。控えてきるボディーガードたちは、拳銃の安全装置を外した。いつでも撃てるよう準備をしている。
その時、どこからともなく声が聞こえてきた。
「なあ、あんたら薔薇十字団のケツモチなんだってな」
声から察するに、まだ若い。十代後半から二十代前半だろう。そんな若造が、士想会に喧嘩を売るとは思えない。となると、純粋に情報を売るためだけに呼び出したのか。
だが、薔薇十字団の名前が出るとは意外だった。
「やっぱりいやがったのか。さっさと出てきて、話を聞かせろ」
「まあ待てよ。その前に、ひとつ話をさせてくれ」
とぼけた口調で、相手は語りだした。
「昔、ある所にふたりの男の子と、ひとりの女の子がいました。三人は修学旅行に行き、そこで大勢の人間を殺しました。向こうから襲ってきたため、身を守るために殺したのです。そう、彼らは修学旅行に行くつもりが、修羅学旅行に行っていたのですよ。彼らはそこで、修羅場での行動を学びました」
昔話でも語るかのようである。怯えている様子はない。片岡は、思わず首を捻る。
ひょっとしたら、ガキのいたずらだろうか。いや、そんなはずはない。
「おい、ふざけてるとケガするぞ。早く出てこい」
片岡は凄んだが、声の主が出てくる気配はない。その上、語りが止まる気配もない。
「その後、三人はとある道の十字路に立っていました。ひとりは、暗い闇に包まれた道を怯えながら進んでいきました。ひとりは、明るい光に照らされた道を楽しそうに進んでいきました。最後のひとりは、血塗られた阿修羅の道を行くことにしました」
淡々と語る声。片岡は、不意に拳銃を抜いた。
直後、空に向けてぶっ放す──
「いい加減にしろ。俺たちはな、暇じゃねえんだ」
言った時だった。燃え上がる何かが、どこからか飛んでくる。その何かは、片岡らの足元の水溜まりへと投げ込まれた。
次の瞬間、水溜まりが一斉に燃え上がる。一瞬にして火柱と化した──
そこに溜まっていたものは水でなく、灯油だったのである。片岡たちは、あっという間に炎に囲まれる。しかも、囲まれただけでは済まなかった。
瞬きする間もなく、片岡とボディーガードたちの服に火が燃え移る。彼ら自身もまた、火柱と化したのだ。片岡たちは、悲鳴をあげながら転げ回り、体についた火を消そうとする。もはや、周囲への警戒心などない。
その時、廃墟の中から現れた者がいる。黒いパーカーを着た少年だ。彼は、士想会の事務所から奪った拳銃を構えている。
直後、銃声が響いた──
弾丸は、片岡の体を貫く。殺すのが目的なら、撃つ必要などなかっただろう。その場にいた者は全員、放っておいても炎により絶命していたはずだ。
にもかかわらず、少年は発砲を止めない。のたうち回っているヤクザたちの体めがけ、さらにトリガーを引く。動かなくなった者たちにも、さらに発砲を続ける。殺すだけでは飽き足らない、強烈な憎しみに突き動かされている──
数分も経たぬうちに、全員が死体と化していた。
消火器で火を消した後、少年は死体と化したヤクザの体を調べた。金目の物や現金、武器やスマホなどを奪っていく。炎で焼けてしまった物もあったが、まだ使える物もある。ヤクザという人種は、高価な装飾品を身に付けている者が多い。それらを金に替えれば、当座の軍資金には困らないだろう。
その後、少年は死体を担ぎ上げる。廃墟の中へと運んでいった。重いはずの死体を、軽々と運んでいく。
廃墟の中で、異様な音が響き渡る──
少年が牛刀やハンマーなどを用いて、肉を切り裂き骨を砕く音だ。まずは死体を裸にして、両腕と両足を関節部分から切り離す。首も切断し、胴体は細かく刻む。初めのうちは苦労したが、今は慣れたものだ。廃墟の中で、彼は手際よく死体を解体していく。
やがて、バラバラになった死体をビニール袋に詰めていった。口をきつく縛り、さらにビニール袋をセメント用の紙袋に入れた。これなら、傍目には建築資材としか思われないだろう。しばらくの間は、見つかることはない。
だが、出来るだけ早いうちに焼くなり溶かすなりして、死体を跡形もなく消し去らなくてはならない。
死体がなければ、ただの行方不明だ──
薔薇十字団のひとりがそう言っていたのを、今もはっきり覚えている。
最後に、薬品を撒いた。血の匂いを消すためだ。野良猫や鼠や鴉といった動物は、とにかく鼻が利く。肉の匂いを嗅ぎ付けたられたら終わりだ。始末するまでは、こまめに薬を撒いて匂いを消さなくてはならない。
それらの作業が終わると、少年は次なる獲物の品定めをするため、奪ったばかりのスマホをチェックし始める。スマホは、個人情報の宝庫だ。かなりの情報が得られた。そろそろ、薔薇十字団の中枢部にも迫れるだろう。士想会も、いずれ壊滅させてやる。
その時だった。外の天候が、いきなり変わった。雹ではないかと誤解するような、大粒の強い雨が降り始める。土砂降りの雨、という言葉すら生温いものだ。さらに雷が鳴り響き、強い風が吹き付ける。周囲の木や、廃墟と化した建物を揺らした。まるで、台風が直撃したかのようである。
あまりにも異常な光景であった。悪魔が少年の凶行を祝福しているかのような、異様な天候である。石原高校の修学旅行バス転落事故の日と、全く同じであった。
少年は冷静な表情のまま、外に出て行った。雨に濡れるのも無視して、空をじっと見上げる。
次の瞬間、ニヤリと笑った──
相手の流した血に染まり、真っ赤な顔で雨に打たれながらも、不気味な笑みを浮かべ闇夜に立ち尽くす少年。その様は、人間とは思えない。見た者がいれば、恐怖に駆られ逃げ出すことだろう。
まさに、悪鬼羅刹そのものであった。
・・・
俺は、戦い続ける。
薔薇十字団を叩き潰すためだ。所属している全てのメンバーを殺す。その家族も皆殺しだ。薔薇十字団と関わりのある者は、全て殺してやる。女だろうが赤ん坊だろうが、容赦はしない。
あの日に死んでいった奴らの仇を討つために、奴らに誓った約束を果たすために、ひとりたりとも逃さない。
いや、嘘はよそう。
俺の本当の目的は、殺すことだ。人を殺したくて仕方ない。殺人の快楽と充実感とを、もっと味わいたい。
もっともっと、大勢の人間を殺したい。だから、この命が尽きるまで戦い、殺す。薔薇十字団がなくなっても、俺は殺し続ける。
たぶん、俺は狂っているのだろう。でも、構わない。
もう、まともな人間には戻れない。また、戻りたくもない。
そう……俺は、人間をやめて怪物になりたい。
明のような怪物になりたい──
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