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暗闇で踊る綾人
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父との面会が終わり、綾人は独房に戻る。その口元には、笑みが浮かんでいた。だが、それは父と再会できた喜びではない。
綾人が逮捕された直後、見知らぬ弁護士が彼を訪ねて来た。弁護士は、西村陽一からの手紙を渡す。勾留中の被疑者への手紙は全て、警察によって中身をチェックされる。しかし、弁護士からの手紙はチェックされず、そのまま読むことが出来る。
綾人は不思議に思いながら、その手紙を読んだ。だが、読み終わった後に愕然となる。
そこに書かれていたのは、ルイスの生い立ちと事件の全貌だった。
ルイスがラエム教の教祖である猪狩寛水によって、殺人マシンにされていたこと。
ヤクザによって監禁されていたが、偶然の為せる業により逃げ出したこと。
親代わりだった猪狩寛水は、最悪の場合ルイスを殺すよう指示していたこと。
つまり猪狩寛水は、ルイスの人生を滅茶苦茶にした挙げ句、殺すよう指示していたのだ。
手紙の最後には、死体が見つからなければ、ただの行方不明だ……と書かれていた。
そこまで読んだ時、綾人はようやく理解した。陽一は、自分をあちら側の世界に誘導しようとしている。
その後、母と中村雄介を殺した件に関しては口をつぐんだまま、警察の取り調べを受けた。今後、母と中村を殺した件について調べられたら……しらを切り、誤魔化し抜くつもりだ。ひとり殺せば有期刑ですむ。だが三人殺したとなれば、未成年の時の犯行といえど、死刑の可能性大だ。自分にはまだ、やらねばならないことがある。こんな所で死ぬわけにはいかない。
この先、仮に母と中村を殺した件が明るみに出たら……最悪の場合、脱獄するつもりだ。ルイスが死んだ今、罪を償って真人間になる必要はない。悪に染まってでも生き延びる。
裁判の判決は、もう間もなくだ。弁護士の話によると、未成年の時の犯行であること、被害者の劉が中国人マフィアと深く関わっていたこと、友人のルイスを拳銃で射殺されたこと、身を守るために殺してしまったこと、などの要因が考慮され、五年から七年くらいの懲役刑になるであろうとのことだ。
綾人は、神妙な面持ちで頷いていた。だが、内心ではほくそ笑んでいた。想像していたより、ずっと早く出られそうだ。
そして今日、父が身元引受人になってくれた。これで、仮釈放の可能性も見えてきた。
あとは、出来るだけ早く刑務所を出る。出所後には、父に生命保険をかけて臓器売買のブローカーに叩き売るのだ。これで軍資金が作れる。
父が蒸発したせいで、母と自分はしなくてもいい苦労をしたのだ。父には自身の命で償ってもらう。
奴にも、己の罪を償ってもらう。
綾人の目に、不気味な光が宿っていた。彼は一心不乱に勉強を続け、毒物や爆発物に関する知識を吸収していく。まるで、悪魔にでも取り憑かれているかのように。
独房の隅の方には、ラエム教の機関誌があった。綾人がわざわざ取り寄せてもらっている機関誌だ。表紙には、猪狩寛水が穏やかに微笑む写真が掲載されている。
だが、その機関誌にはボールペンが突き刺さっていた。
表紙の猪狩寛水の写真……その額に、深々と刺さっていた。
綾人が逮捕された直後、見知らぬ弁護士が彼を訪ねて来た。弁護士は、西村陽一からの手紙を渡す。勾留中の被疑者への手紙は全て、警察によって中身をチェックされる。しかし、弁護士からの手紙はチェックされず、そのまま読むことが出来る。
綾人は不思議に思いながら、その手紙を読んだ。だが、読み終わった後に愕然となる。
そこに書かれていたのは、ルイスの生い立ちと事件の全貌だった。
ルイスがラエム教の教祖である猪狩寛水によって、殺人マシンにされていたこと。
ヤクザによって監禁されていたが、偶然の為せる業により逃げ出したこと。
親代わりだった猪狩寛水は、最悪の場合ルイスを殺すよう指示していたこと。
つまり猪狩寛水は、ルイスの人生を滅茶苦茶にした挙げ句、殺すよう指示していたのだ。
手紙の最後には、死体が見つからなければ、ただの行方不明だ……と書かれていた。
そこまで読んだ時、綾人はようやく理解した。陽一は、自分をあちら側の世界に誘導しようとしている。
その後、母と中村雄介を殺した件に関しては口をつぐんだまま、警察の取り調べを受けた。今後、母と中村を殺した件について調べられたら……しらを切り、誤魔化し抜くつもりだ。ひとり殺せば有期刑ですむ。だが三人殺したとなれば、未成年の時の犯行といえど、死刑の可能性大だ。自分にはまだ、やらねばならないことがある。こんな所で死ぬわけにはいかない。
この先、仮に母と中村を殺した件が明るみに出たら……最悪の場合、脱獄するつもりだ。ルイスが死んだ今、罪を償って真人間になる必要はない。悪に染まってでも生き延びる。
裁判の判決は、もう間もなくだ。弁護士の話によると、未成年の時の犯行であること、被害者の劉が中国人マフィアと深く関わっていたこと、友人のルイスを拳銃で射殺されたこと、身を守るために殺してしまったこと、などの要因が考慮され、五年から七年くらいの懲役刑になるであろうとのことだ。
綾人は、神妙な面持ちで頷いていた。だが、内心ではほくそ笑んでいた。想像していたより、ずっと早く出られそうだ。
そして今日、父が身元引受人になってくれた。これで、仮釈放の可能性も見えてきた。
あとは、出来るだけ早く刑務所を出る。出所後には、父に生命保険をかけて臓器売買のブローカーに叩き売るのだ。これで軍資金が作れる。
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奴にも、己の罪を償ってもらう。
綾人の目に、不気味な光が宿っていた。彼は一心不乱に勉強を続け、毒物や爆発物に関する知識を吸収していく。まるで、悪魔にでも取り憑かれているかのように。
独房の隅の方には、ラエム教の機関誌があった。綾人がわざわざ取り寄せてもらっている機関誌だ。表紙には、猪狩寛水が穏やかに微笑む写真が掲載されている。
だが、その機関誌にはボールペンが突き刺さっていた。
表紙の猪狩寛水の写真……その額に、深々と刺さっていた。
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