クラス転移で追放された俺はスキル『ぎじんか』を使って楽園を造りあげる!!え?魔王討伐?そんなの知るか!!

蒼色ノ狐

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第3話 仲間は増えたが何かを失った気がする。

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 ―テクテク。

 二人目の仲間となったフェンリルのリルとリントと共に『神獣の森』の深部に向かっている与人。
 何でもリント曰く。

 「仲間になると都合のいい種族が森の深部にいる。」

 との事なので拒絶する理由もないため三人一緒に向かっている。

 ―テクテクテク。
 「なぁ二人とも。一つ聞いてもいいかな?」
 「ん?なんだ?」
 「何か質問?ご主人。」
 「…なんで二人とも俺の手をつないで歩くの?」

 そう現在与人の両腕は右はリント左はリルによって塞がれている状況である。
 両手に花状態なのは別に構わないけれど森だと危険だからせめて片手は空けさせて欲しいところである与人であった。

 「…ご主人は僕と手をつなぐの嫌?」
 「え!?い、いやそう言う訳じゃなくて!」

 リルが潤んだ目で与人を見るため罪悪感で胸を痛める彼にリントが追い打ちをかける。

 「悪い主だな小僧は。無理やり(人間に)しといて責任(手をつなぐ)事すら嫌がるとは。全くこれから先が不安になるな。」
 「言葉のチョイスが何かおかしい気がするぞリント!!それはそれとして罪悪感がより突き刺さる!!」
 「赤いの…ご主人、悪い人じゃない。」
 「そうだな。すまんすまん。」

 罪悪感に悶える与人を見てリルがリントを睨みつけるがリントをそれを軽く受け流す。

 「さて主のからかいが済んだところで少し真面目な話をしようか。」
 「真面目な…話?」
 「はぁ…それって俺の手を塞ぐ理由に関係する話か?」
 「勿論。むしろそれこそが本題だ。」

 一旦足を止めて与人に近くにあった大きな石に腰を掛けさせる。
 無論二人に手が握られた状態で。

 「ハッキリ言えば手を握っているのは主の『スキル』が暴発しないようにするためだ。」
 「暴発?」

 与人の返しに頷くと空いてる手で小さな石を握る。

 「そうだ。主の『スキル』の発動条件は完全には不明だが今のところ触れた存在を人間にするらしい事は確かだ。だからこの小さな石でさえ人間にする可能性がある。」
 「あ~。やたらめったらに増やさないように手を握ってた訳か。」

 そう納得する与人であったがリルが疑問を投げかける。

 「けど…仲間増えるのはいいこと。」
 「それで主に問題がなければな。」

 そうバッサリ切るとリントは二人に言い聞かせるように説明をする。

 「『スキル』も万能じゃない。何かしら制限があるはずだ、本来の力が出せない以外にもな。例えば人数制限があるとか、従者が受けた傷が主にもいく。とかな。」
 「…(ゴクッ)。」
 「赤いの…僕、強い。怪我しない。」
 「それは私も同じだ。だがもし今後従者が増えたらそうも言ってられん。」

 そう言いながらリントは握った石を二人の目の前に晒す。

 「主がこの石を人間にしたとする。だが戦闘中にこうなるとすれば…。」

 リントが石に少し力を込めると石は砕けてバラバラになってしまう。

 「この傷が主に向かう可能性だってあり得ない事ではない。」
 「…怖いな。」

 そう短くしか言えない与人。
 体がバラバラになるような傷を受けた事が無いためその位しか言えなかったのである。
 するとリルが握っている手の力を強める。

 「ご主人。…僕、守る。」
 「そうか。…ありがとなリル。」

 そう言って与人はリルの頭を撫でるとリルは気持ちよさそうにしている。

 「…。」

 それをどうとも言えない表情で見つめるリントはしばらくしてから咳ばらいをする。

 「コホン。…主、そろそろ続きいいか?」
 「あ、ごめんリント。…リル、続きはまたな。」
 「…約束。」

 もっと撫でて欲しそうだったリルであったが素直に応じる。

 「私もフェンリルと同じ考えではある。だが、主の『スキル』の詳細が不明な以上は無駄なリスクは避けるべきだ。」
 「例えば仲間にするのを限定する…とか?」
 「具体的にはそうだな。『スキル』については今後も調べないといけないが…ちょうどいい実験体が自ら来たようだな。」

 リントはそう言うと鋭い目つきで草むらを睨みつける。
 するとガサガサと音を立てて緑色のモンスターが三匹現れる。

 「ご、ゴブリン!?」

 そうその姿はゲームで、あるいは薄い本などで有名なモンスターであるゴブリンそのものであった。

 「よく知っているな主。確かにあれはゴブリンで狙いは私たちのようだな。」

 リントの言う通りゴブリンは笑いながらこちらに近寄って来る。

 「はぁ…。人間の姿とはいえ力の差が分からないとは。まあそもそも私が出る幕は無さそうだが。」
 「はい?」

 リントの言う意味が分からず聞き直す与人であるが突如何かしらの液体が顔に散った感覚がした。

 ゴブゥゥゥ!!

 と同時に何やら特徴的な悲鳴が聞こえその方向を見てみれば三匹のゴブリンの内の一匹が腹を裂かれ叫んでいる。
 その奥を見てみれば冷たい目をしたリルがその手をゴブリンの血で染めていた。
 リルがダッシュの構えを取るとその姿は消え今度は別のゴブリンの頭が消えた。
 しばらく与人が状況を理解出来ないでいると上からそのゴブリンの頭が落ちた。

 「…。」

 どうやらゴブリンの方もどうなったのか分からず死んだようでその顔が与人の目にこびりつく。
 既に最初のゴブリンも息を絶えており一匹となったゴブリンは逃げようと背中を向けるが。

 「まあ待て。ここまで来たんだ少し付き合え。」

 といつの間にか移動していたリントによって捕まる。
 しっかりと頭を掴まれ抵抗するゴブリンであったが通じるはずもなくリントは与人の近くに移動する。

 「主、こいつを触ってみろ。」
 「…。」
 「…小僧。大丈夫か。」
 「え?ああ。だ、大丈夫!触ればいいんだな!」
 「…ああ。」

 何か言いたげなリントであったが何も言わずゴブリンを触らせる。
 ゴブリンは抵抗を諦め怯えた目で与人を見ている。
 その怯えた目を受けて一瞬手が止まるが意を決してゴブリンに触れる。
 だが幾ら待とうと『スキル』が発動する兆候は見られない。

 「リント、これって?」
 「…仮説だが人に近い種族は『ぎじんか』の対象にはならないようだな。」
 「なるほど。」

 確かに二人は元々ドラゴンとフェンリル。
 明らかに人とは違った種族であったのに対しゴブリンは肌の色が違うとはいえ元から人間に近いと言えるだろう。

 「さて、実験も終わったが…。ここで楽にする方がいいだろ。」

 そう言ってリントはゴブリンの命を取ろうとするがそれに与人が待ったをかける。

 「ま、待ってくれ!!」
 「…主。何が言いたいか分かるがそれは無駄な感情だ。モンスターあいてに情はいらない。そんな考えだとこの先苦しいだけだぞ。」
 「…分かってる。けど一回、一回でいいから見逃してくれ。頼む。」

 そう言って頭を下げる与人をずっと見つめるリントであったが最終的には折れた。

 「主はお前だからな。だがまた襲われても知らんぞ。」
 「こいつ仕留めない?」
 「だそうだ。まったくわがままな主だ。」

 そう言ってゴブリンから離れて行くリントとリル。
 ゴブリンは何が何だか分からないようであったが見逃されるのを理解したのか茂みに歩いていく。
 一度だけ与人をジィと見るとそのまま姿を消した。

 「…。」
 「ご主人?大丈夫?」
 「ああ、ああ。大丈夫だよリル。ありがとう。」

 与人は再びリルの頭を撫でるがその視線はゴブリンの血で濡れた手を見ていた。

 「ちょっとお手洗いしてくるよ。…少し離れてもいいかな。」
 「…声が届く範囲にはいろよ。」

 念のため先ほどのゴブリンとは反対の方向の茂みに向かう与人にリントが声を掛ける。

 「主。言うまでもない事だが主が住んでいた世界とこの『ルーンベル』は別物だ。違いを受け入れた方が楽になる。」
 「…分かってるよリント。」

 そう言って与人は茂みに消えていった。

 「…全く。素直じゃない奴だ。」
 「赤いの。…ご主人、大丈夫?」

 そう心配した様子でリルはリントに聞く。

 「多分な。だがあの様子だとこれから先も苦しいだろうな。」
 「…僕に何か出来る?」
 「お前は本当に主が好きだな。」
 「うん。…ご主人、心澄んでる。だから好き。」
 「…だな。私もそこは気にいってるよ。だからこそ気づいていない振りをしてやれ。」

 リントがそう言う間にも茂みから嗚咽や何かを吐くような音が聞こえる。

 「これは小僧が答えを出すべき問題だ。私やお前が幾ら口で言ってもどうにもならない。」
 「…人間って難しい。」
 「ああ、全くだな。」

 二人はその音が止むまで喋り続けるのであった。


 「ゼェゼェ…。」
 「全く。これ位の距離で息が上がるとは。」
 「ご主人…ひ弱?」
 「ウッ!…帰宅部なもので。」

 しばらくして戻って来た与人を加え再び森の深部に向かう三人であったが体力の無い与人がバテてしまいそのスピードは非常に遅いものであった。

 「まあもう少しで目的地だ。目標を捕まえたらいくらでも休憩するさ。」
 「さっきから疑問だったんだけどさ。一体どんな仲間を求めてる訳?」
 「見れば納得する。…この茂みの奥だ、そっと覗いてみろ。」

 言われるがままに与人とリルは茂みを掻き分けその奥を覗く。
 そこに見えたのは一面の花園と大きめの池であった。
 まるでおとぎ話のような風景の中で一匹の白馬が池の水を飲んでいる。
 だがその馬をよく見てみると額に大きな角が生えている。

 「…ユニコーン?」
 「そうだ。あとあまり声を上げるな気づかれる。」

 ファンタジーに疎い人間でも一度ぐらいは聞いたことがあるであろう存在。
 その姿を見て思わず与人は見惚れてしまった。
 そのくらい本当に幻想的で美しい光景であった。

 「…あいつを倒せばいいの?」
 「…倒してどうする。話を聞いてなかったのか?」

 そう物騒な発言をするリルに軽くズッコケながらリントは作戦を説明をする。

 「私とフェンリルが向こうからこちらに追い込む。だから主は近寄って来たユニコーンに触れろ。」
 「分かった。」
 「い、いいのかな。ユニコーン相手に。」

 作戦を受け入れたリルが隠れて移動するが与人は少し渋る。

 「神聖だろうと清らかだろうとモンスターはモンスターだ、気負う事はない。それに奴がいれば色々と都合が良くなる。」
 「はぁ…。」
 「そろそろ私も動く。チャンスを物にして見せろよ主。」

 そう言ってリントも茂みの中を移動していく。
 しばらく時間が経ちユニコーンが反対側の茂みに歩いて去ろうとした所で作戦は決行された。
 向かっていた茂みからリントが飛び出し驚いたユニコーンは方向を転換させ逃げようとするがその先にはリルが待ち構えていた。
 そしてついに与人がいる茂みの方にユニコーンが向かってくる。
 余りの勢いに押しつぶされるのではと不安になる与人であったが覚悟を決める。

 (ええい!どうにでもなれ!)

 そう思いながら与人は茂みを飛び出し触れようとする。
 幸運であったのはユニコーンが与人に驚き急ブレーキをかけた事により派手な衝突にはならなかった事であろう。
 与人が伸ばした手は首に当たりユニコーンは光に包まれる。
 そして現れたのはウェディングドレスのような服装に身を包んだ穏やかな目をした女性であった。

 「あら?私は一体?」

 そう言いながらその女性は周りを見渡し、やがて視界が普段と違う事に気付く。

 「え?人間になって?え?え?」
 「無事に成功したようだな。」
 「…ブイ。」
 「あ、ああ。何とかなったよ。」

 そう言いながら二人が与人に近づくがどうにも反応が薄い。

 「?どうした主。」
 「べ、別に何でもないけど?」
 「…赤いの。ご主人、足を庇ってる。」
 (ピクッ!)

 そうリルに言われ思わず与人は反応してしまう。

 「はぁ…小僧。そういう事は素直に言え。」
 「ご、ごめん。」
 「すみません。少し見させてもらってもよろしいですか?」
 「え?あ、はい。どうぞ。」

 女性は返事を最後まで聞かず与人のズボンを捲る。
 そして足首を見れば若干青くなってるのが分かる。
 女性は足首に手を近づけると。
 『ホーリーエイド』と唱える。
 すると柔らかな光が足首を覆い徐々に青さが引いていく。

 「おお!痛く無くなった!」
 「フフ、それは良かったです。」

 足を地面につけて喜ぶ与人を見て柔らかな笑みを見せる女性。
 だがその顔を少し曇らせる。
 
 「それであの…これは一体どういった状況なのでしょうか?」
 「それは私が説明しよう。実はな…。」
 「…。」
 「…。」
 「なるほど。旅をするために仲間を集めてる訳ですね。でもなぜ私…と言うよりユニコーンを?自慢になりませんが戦闘力は…。」
 「だが回復の魔法に長けていると聞いたぞ。寧ろその方が我々…というより主に必要だからな。」

 そこでようやく与人は納得する。
 確かに完全な人間である与人には回復役は必須かも知れない。

 「…ユニコーンさん。いきなりで済みませんが一緒に行動してもらいたいのですが。」
 「ええ。構いませんよ。」
 「決断はや!!…いいんですか簡単に頷いて。」
 「構いません、ここにずっといるよりは有意義に過ごせそうですし。…ですが一つこちらからも条件を出しても?」
 「な、なんでしょうか?」

 思わず身構えてしまう与人に笑みを返す女性。

 「大した条件ではないですよ。少し私の角に触ってください。」
 「角に?こ、こうですか?」

 与人が言われた通りに額から伸びてる角に触ると何かが女性に流れていく感覚がする。

 「はい。もういいですよ与人さん。」
 「え、ああはい。…アレ?名前名乗りましたっけ?」
 「フフ。驚かせてごめんなさい。ユニコーンの角は触った相手の本質を見ることが出来るのです。これで悪人だったら私は命を絶たなけらば行けませんでした。」
 「さ、さらっと凄いですね。」
 「ユニコーンであれば当然です。あなたは善人ですから問題ありません。何より童貞なのが気に入りました。」

 その瞬間与人は全てが硬直した感覚がした。

 「あ、あのユニコーンさん?」
 「近頃の若者は乱れていますからね。全く男女ともに貞淑さを忘れてはいけません。その点与人さんは100%清らかです。花丸です。」
 「フフ。だ、そうだぞ童貞主。」
 「ご主人。童貞って何?」
 「…勘弁して。」

 心強い三人目の仲間が出来たが与人の心はズタズタであった。
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