43 / 52
第1章
もう会わない
しおりを挟む「だからね、保護者の人来てくれないと帰してあげられないの」
裸のまま毛布にくるまれて交番の中に座っていた。警官に見つけられ、保護されたところまでは良かったのだが、未成年だと思われているようで帰してもらえない。
「俺、成人してるから...」
「身分証もないんだから信じたくても信じてあげられないよ」
始めから決めつけてるくせによく言う。さっきから一ミリも進展しない会話に警官の方がイライラしているようだ。
困った...迎えに来てくれる人なんか一人も知らない。マスターの連絡先くらい聞いておくべきだった。
苛立ちを隠そうともしない警官を尻目に、途方にくれていると、ふとあることを思い出した。
あれ...もしかして......
袋にまとめて入れられたバラバラに裂かれた服をあさり、ジーンズのポケットを探り当てる。
ほんとにあった......
了の手の中にあるのは熱を出したときにもらった、水無瀬の携帯の番号が書かれたメモ。何度か洗濯され、ボロボロになってはいるが、読めないほどではない。
だけど、この番号に連絡すれば、水無瀬に何があったのかを知られる。今更なのはわかっているが、これ以上水無瀬に自分が汚れていると知られたくなかった。
でも、このままじゃ解放してもらえないよな...
どれだけ考えを巡らせたところで、結局今の了がすがれるのは手の中にあるメモだけだ。迷ったあげくに、諦めて警官にそのメモを渡した。
三十分ほどで水無瀬は交番に迎えに来てくれた。水無瀬が警官と何か話している間に持ってきてくれた服を着る。
「了くん、帰ろうか」
穏やかな声でそう言った水無瀬は返事をしない了の手を掴んで歩き出した。
しばらくはお互い無言だった。繋がれた手が温かくて、泣きそうになる。
駅に向かって半分ほど歩いたところで立ち止まると、水無瀬が振り向いた。
「もういいよ。ありがとう」
「家まで送るよ」
「迷惑かけてごめんなさい。でも、もう関わらないから安心して」
するりと抜けていこうとする了の手を水無瀬の手は逃がさずにきつく掴む。
「なに言ってるんだ...?」
「何って、そのまんまの意味だよ。もう会わない。もう迷惑もかけない。ただそれだけ」
0
お気に入りに追加
19
あなたにおすすめの小説
イケメン彼氏は年上消防士!鍛え上げられた体は、夜の体力まで別物!?
すずなり。
恋愛
私が働く食堂にやってくる消防士さんたち。
翔馬「俺、チャーハン。」
宏斗「俺もー。」
航平「俺、から揚げつけてー。」
優弥「俺はスープ付き。」
みんなガタイがよく、男前。
ひなた「はーいっ。ちょっと待ってくださいねーっ。」
慌ただしい昼時を過ぎると、私の仕事は終わる。
終わった後、私は行かなきゃいけないところがある。
ひなた「すみませーん、子供のお迎えにきましたー。」
保育園に迎えに行かなきゃいけない子、『太陽』。
私は子供と一緒に・・・暮らしてる。
ーーーーーーーーーーーーーーーー
翔馬「おいおい嘘だろ?」
宏斗「子供・・・いたんだ・・。」
航平「いくつん時の子だよ・・・・。」
優弥「マジか・・・。」
消防署で開かれたお祭りに連れて行った太陽。
太陽の存在を知った一人の消防士さんが・・・私に言った。
「俺は太陽がいてもいい。・・・太陽の『パパ』になる。」
「俺はひなたが好きだ。・・・絶対振り向かせるから覚悟しとけよ?」
※お話に出てくる内容は、全て想像の世界です。現実世界とは何ら関係ありません。
※感想やコメントは受け付けることができません。
メンタルが薄氷なもので・・・すみません。
言葉も足りませんが読んでいただけたら幸いです。
楽しんでいただけたら嬉しく思います。
百合ランジェリーカフェにようこそ!
楠富 つかさ
青春
主人公、下条藍はバイトを探すちょっと胸が大きい普通の女子大生。ある日、同じサークルの先輩からバイト先を紹介してもらうのだが、そこは男子禁制のカフェ併設ランジェリーショップで!?
ちょっとハレンチなお仕事カフェライフ、始まります!!
※この物語はフィクションであり実在の人物・団体・法律とは一切関係ありません。
表紙画像はAIイラストです。下着が生成できないのでビキニで代用しています。
小さなことから〜露出〜えみ〜
サイコロ
恋愛
私の露出…
毎日更新していこうと思います
よろしくおねがいします
感想等お待ちしております
取り入れて欲しい内容なども
書いてくださいね
よりみなさんにお近く
考えやすく
ちょっと大人な体験談はこちらです
神崎未緒里
恋愛
本当にあった!?かもしれない
ちょっと大人な体験談です。
日常に突然訪れる刺激的な体験。
少し非日常を覗いてみませんか?
あなたにもこんな瞬間が訪れるかもしれませんよ?
※本作品ではPixai.artで作成した生成AI画像ならびに
Pixabay並びにUnsplshのロイヤリティフリーの画像を使用しています。
※不定期更新です。
※文章中の人物名・地名・年代・建物名・商品名・設定などはすべて架空のものです。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる