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第1章
帰したくない
しおりを挟む(水無瀬side)
レストランに着くと、店の中央の席に案内された。
「なに食べたい?」
「俺こういうの決めらんないんだよね。選んで」
「嫌いなもんとかねーの?」
「なんでも食べるよ」
結局店員のオススメを2つ頼んだ。最近知ったが、了は食べるとき黙る。話しかけない限り、一言もしゃべらない。とりあえず一口食べて、おいしいと呟いていたから安心できたものの、あまり了のことを知らない人なら料理がまずいのかと心配するだろう。
気がつくと了がじっとこちらを見つめていた。
「どうした?」
「なんか...水無瀬さん、こういう店似合うなって」
「はぁ?」
何を言っているのかわからない。どちらかというと女性受けしそうな店だ。男2人で来ている客は他にはいない。
「いつも会うのマスターの店じゃん。あそこ一応ゲイバーだから...」
「え?そうなの?」
普通に知らなかった。でもよく考えると、了はあの店で男を引っかけていたわけだから当然だろう。
「あんた、あの店似合ってないもん。こういう明るいおしゃれなとこのがイメージ合ってる」
「おじさんに言うことじゃねぇな」
「...それとこれとは違う」
食べ終わってから一時間ほど話をして店を出た。
夜道を歩くとき、了はよく上を向いて星を探しながら歩く。以前、危ないから止めろと言ったら、笑ってかわされた。
今もそんな風に歩く了の顔にオレンジ色の街灯が当たる。眩しそうに細めた目。緊張感なく微かに開いた口。少し暑いのかピンク色に上気した頬。そのすべてが儚く綺麗で愛おしいものとして水無瀬の目に映る。
このまま帰したくねぇな...
話しかけようと口を開いたとき、目の前の交差点を黄色信号に突っ込んできた大型トラックが猛スピードで通過していった。あぶねぇな、マナー悪い、などと近くにいた人達が口にするのが聞こえる。
それに混ざって、隣からひゅうっと変な空気音がした。
「了くん?...おいっ、大丈夫かっ...!」
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