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第1章
仲直り
しおりを挟む「.........」
「.........」
なにこの気まずい空間...
夕食後、話をしようと佐倉と佐々井の部屋へ来た。ドアを叩くと、無言で鍵だけが開けられ、中に入ってみるとこちらを見向きもしない佐倉がベッドの上で雑誌を読んでいた。
「......佐々井は?」
「風呂行った」
正直、佐々井の存在をかなり当てにしてきていた。佐倉と二人ではまた言い争いになりそうだ。まぁでも黙って居座るわけにもいかないし、仕方ないだろう。
「佐倉あのさ...」
「俺は謝らねぇからな」
佐倉は雑誌を傍らに置いて、上半身を起こして拓斗をみる。
仲直りのための会話の第一声としては最悪だったが、不思議と腹は立たなかった。ついさっき、言われて当然という真生の言葉を否定できなかった自分に腹を立てる資格はないように思える。なにより、佐倉のあまりの率直さに苦笑いの方が先にたった。
「うん、まぁ俺に謝られても困るしね」
床に座り、佐倉を見上げる。
「でも、俺も謝んないよ。好きな人の悪口は聞き流せませんー」
「お前はそれでいい。颯に、俺らが真生先輩のことちゃんと知らないのは事実だろって言われた。だから、俺の思う真生先輩と、タクの思う真生先輩が違うのは仕方なくて...なんつーか...」
「これから知っていけたらいいね、って?」
「......ちょい違うけどそれでいいか」
佐倉と目が合って笑った。予想外にあっさりと元の空気が戻ってきた。真生とは違うが、佐倉も佐々井も大事な友達だ。実は思った以上にここにくるまで緊張していたようで、安心して肩の力が一気に抜けた。
「あ」
佐倉が間抜けな声をあげる。
「お前、好きな人っていったよな...」
思わず吹き出してしまった。
「おそっ、いまさら突っ込むの!?」
「いや、あまりにもサラッと言うからつい聞き流した」
「ふっ...変なの。そうだよ、俺はあの人が好き」
ちょうどそのときドアを開けた佐々井が持っていた荷物を全部落とした。
「あ、佐々井おかえり」
「えぇぇーーーー!ちょっ...なに和やかに談笑してんの!?お前ら、今日一日空気最悪だったじゃん!ていうかタク、好きってなに、好きって!」
「颯落ち着けよ」
「いや、だってっ...あーー、もうっ」
落とした荷物を急いで広い集めた佐々井はそれをベッドに投げると拓斗の隣に座った。
「とりあえず仲直りおめでと」
「ん。気遣わせてごめん」
「ほんとだよ。俺の緊張返して...それよりさっきのなに!好きってどういうこと!?」
佐々井に勢いよく床に押し倒される。なんでいつもこんな強引なんだ、と思いつつ口を開く。
「真生先輩が好きだよって話」
「だれが」
「俺が」
ポカンとする佐々井の手を押し返し、身体を起こす。佐々井は佐倉と拓斗の顔を交互に見ていた。ふいに佐倉が吹き出す。
「なんでお前が赤くなってんだよ」
「え、いや、だって普通そんなサラッと言わないでしょ...」
「まぁそれは俺も思った。てかタク、男好きなの?」
「んー、そういう訳じゃないと思う。今まで付き合ったの女の子だったし」
まぁ、どれもそんなに好きで付き合ったわけじゃないけど...
これまでは来るもの拒まず去るもの追わずを貫いてきていた。真生ほどに欲しいと思うものはこれまでなかったように思う。
「たぶん真生先輩が男でも女でも関係ないんだと思う。あの人ならいい」
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