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甘すぎる女子会
しおりを挟むセシルさんとの話を終えてアイラとミミルちゃんがいる控え室へと向かう。その道中でセシルさんが私より一つ上ということが分かって、気付けばお互いタメ口で話していた。
「やっぱり三十が近づくと憂鬱になるよね」
「そうなの。子どもの頃は楽しみだった誕生日が今は凄く悲しくて。考えてみれば昔は三十なんておばさんだったのよね。はぁ」
「うんうん。分かるよセシル」
そんな話をしながら私は心の中で感動の涙を流していた。そうそう! こういう会話がしたかった! 男性のエリアスさんにはこんな愚痴は話せないしアイラにするには歳下すぎる。
その点セシルは歳も近くて話すにはピッタリだ。近くに居酒屋とかないかな? この話を肴に来たる運命の日を二人で嘆きたい。
「おっ。やっと来た」
「みてみて! アイラちゃんが凄いの! こんなに沢山お菓子を出してくれたんだよ!」
従業員用の控え室に行くと目をキラキラとさせたミミルちゃんに出迎えられる。私とセシルの手を引いて、見てと指差すのは皿に乗った大量の砂糖菓子だった。
「うわっ。凄い量だね」
「ふっふっふ。こんなこともあろうかと買っておいたんだ。これで女子会しよ!」
「女子会ってなーに?」
「いい質問だねミミルちゃん! 女子会とは女だけで美味しいお菓子と飲み物を楽しむ会なのだ!」
アイラの雑な説明にミミルちゃんの顔がにぱーっと輝きだす。分かるよミミルちゃん。私も小さい頃はお菓子と飲み物があるだけで幸せな気持ちになれたから。
お母さんとママ友の話がどんなに退屈でもお菓子とジュースがあればそれで良かった。でも今は素直に喜べないかもしれない。主にカロリー的な意味で。
「ねえねえアイラちゃん! ミミルもお菓子食べていいの!?」
「勿論だよ。沢山食べてね」
「待ちなさいミミル。砂糖菓子はとても高価なものです。いただくなら一つにしておきなさい」
どれにしようかと迷っているミミルちゃんに対してセシルが待ったをかけた。目の前にある沢山のお菓子を前にして一つだけと言われたミミルちゃんの顔が曇っていく。
「えー。ミミルもっと食べたいよ」
「まぁまぁ良いじゃないセシルさん。わたしも買ったはいいけどこんなに食べれないからさ。悪くするのもあれだし四人でパーっと食べようよ。ほらミミルちゃん好きなの取って!」
「ありがとうアイラちゃん!」
「こら! もうミミルったら。ありがとうございますアイラさん」
鳥を模した砂糖菓子を選んだミミルちゃんを叱りつつも微笑ましそうな顔をセシルはしている。
砂糖菓子は高価なものと言っていたので孤児院では中々手が出るものではないんだろう。鳥を見ながら瞳を輝かせるミミルちゃんに、用意したアイラも満足そうだ。
「砂糖菓子には紅茶だよね。淹れてくるから少し待ってて」
アイラが席を立ったのを見計らって私は気になったことをセシルに耳打ちする。
「このお菓子っていくらくらいするの?」
我ながら下世話だとは思う。でもクリスマスケーキの上に乗せられているサンタみたいな、ただの砂糖の塊が高級と言われたら気になるでしょ?
「私が前に見た砂糖菓子は一個で銀貨一枚したわ。でもあれは普通の丸い形だったし、こんな風に造形が凝っているのなら少なくとも倍以上はしそう。それをこんなに買うなんてさすがは治癒魔法師ね」
ひえっ。綺麗な形とはいえ砂糖の塊が二千円もするなんてセシルが遠慮するのも分かる。それにやっぱり世間的に見ても治癒魔法師はお金持ちってイメージなんだ。
「お待たせー! って二人も遠慮せずに取ってよね」
人数分の紅茶を持ってきたアイラは笑いながらそう言うと、薔薇を模した砂糖菓子を手に取り紅茶へちゃぽんと入れてしまう。
スプーンでぐるぐると混ぜられた薔薇は儚くも溶けてしまった。二千円があんなにもあっさり消えてしまうなんて。
「二人とも取らないなら私が勝手に選ぶよ。ハルカは葉っぱでセシルさんは雪の結晶ね!」
渡された二千円、いや砂糖菓子を前にセシルと目を合わせるとお互い小さく頷いて一口食べる。
……うん。お砂糖だ。口の中に広がる強烈な甘みに思わず紅茶を飲む。紅茶の渋みのおかげで一つ食べることができたけど、これはアイラがやっていたように紅茶に入れて楽しむのが正解かもしれない。
ただそれは私だけだったようで、アイラもセシルもミミルちゃんも美味しそうに食べていた。
「ハルカは次どれにする?」
「私はもういいかな。そんなにお腹空いてなくて」
「そう? 遠慮しなくていいからね?」
この世界のお菓子は砂糖菓子しかないのかな? もしそうなら辛すぎるから材料が揃ったら皆にクッキーを作ってあげよう。そう密かに決意した女子会だった。
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