111 / 111
七欲悪魔編
アンケートお礼SS2(主人公一家)
しおりを挟む「では、誓いのキスを」
春の穏やかな日差しがステンドグラス越しに降り注ぐ、明るい教会内。結婚式を挙げているのは、一組の狼男たち。
ウルフ王の王太子殿下と、――今年二十歳になったシェフィだ。
相変わらず、ケモ耳と尻尾を生やした半獣人形態のシェフィ。大人になっても、完全なる擬人形態にはなれなかった。童顔で可愛らしい顔立ちには、違和感ないけども。
ともかく――美しい純白の花婿衣装に身を包んだシェフィは、王太子殿下と向き合ってそっと口づけを交わした。誓いのキスを終えてから照れ臭そうに小さく笑う姿は、幸福感に満ちていて。俺とアウグネストは、ほっこりとするものがあった。
後宮を去った十年前から、リュイさんとユヴァルーシュと暮らし始めたシェフィだけど、まさか他国の王太子殿下に見初められて結婚するとはなぁ。人生って、マジで何が起こるか分からない。
とはいえ、ガーネリアでは平民だったシェフィだ。数年前にアイオニア王国の貴族に養子入りしてから王家に婿入り、という経緯がある。それを可能にしたのは、やたらと人脈の広いユヴァルーシュの存在があったからだ。もっとも、アウグネストが言うには、そもそもアイオニア王太子殿下とシェフィを引き合わせたのも、ユヴァルーシュの根回しかもしれないとのことだけど。末恐ろしい奴だよ、まったく。
『ユヴァルーシュさん、シェフィには玉の輿に乗ってもらいたかったのかな』
『それもあるかもしれないが……一番大きいのは、さっさと婿入りさせてリュイと二人でのんびり暮らしたかったんだろう』
要するに、厄介払い。やっぱり、末恐ろしい奴。
シェフィも大概リュイさん大好きっ子だったけど、ユヴァルーシュはそれを上回るものがあるよな。悪知恵が働く分、ユヴァルーシュの方が怖いっていう。
そのリュイさんは……あ、いたいた。信徒席の二列目にユヴァルーシュと座っている。ここからだと背中しか見えないけど……うん。あれは多分、号泣してるな。あれだけ可愛がっていた義息子が結婚となったら、そりゃあ感極まっちゃうか。
「新郎たちの退場です」
響くのは進行係の言葉。シェフィとアイオニア王太子殿下は腕を組んで、招待客たちからの祝福の拍手を浴びながら、扉の向こうへ消えていった。
――シェフィ。幸せになれよ。
「キレイだったね。僕もあんな花婿衣装を着てみたい」
結婚式場からの帰り道、目をキラキラと輝かせて言うのは、次男のシセルフィーユだ。今年で六歳になる、『種宿』のオーガ。
結婚式や婚礼衣装に憧れる夢見がちなところは、俺にちょっと似ているかも。
「俺に任せろ。世界で一番綺麗な花婿にしてやる」
自信満々に言うのは、今年十歳になるイシュハヴァルトだ。シセルフィーユが生まれてからというもの、もう溺愛ぶりが年々加速していっている。
いいお兄ちゃんなのはいいんだけど、完全なるブラコンだよな……。シセルフィーユの結婚相手にまであれこれ口出ししそうだと、俺は今から心配だったりする。それに本当にシセルフィーユがよそに婿入りしたら、魂のない抜け殻になってしまいそうでそれも心配。
キャッキャッと楽しげに笑い合う愛息子たちを、俺とアウグネストは微笑ましく見つめてから、顔を見合わせて笑い合う。
この二人は、一体どんな大人に成長するんだろうな。
「でも本当に綺麗だったよな、シェフィ」
「ああ。シェフィには幸せになってもらいたいものだ」
シェフィ、か。ずっと昔、窓ガラスに泥団子をぶつけて喧嘩を売ってきたやんちゃな子どもが、今や立派な大人になって王太子婿。時間の流れっていうのは速い。
「あいつなら大丈夫だって。昔から愛され体質だし、それに――あれだけリュイさんに愛されて育ったんだから」
たとえどんな逆境でも強く生きていける子だと思う。実の親に捨てられた過去だって、もうとっくに乗り越えただろう。
俺もリュイさんを見習って、我が子たちには惜しみなく愛情を注ごう。それで二人がそれぞれ結婚する時は、周りが呆れるくらいわんわん泣くんだ。
いつの日かやってくる、寂しくも嬉しい未来を、俺は夢に見る。
○○○
【『カップリング人気投票』結果発表】
第一位 アウグネスト×エリューゲン 9票
第二位 ユヴァルーシュ×リュイ 4票
第三位 ハノス×テオドールフラム 3票
ご投票下さった方、ありがとうございました!
262
お気に入りに追加
1,620
この作品の感想を投稿する
みんなの感想(7件)
あなたにおすすめの小説
兄たちが弟を可愛がりすぎです
クロユキ
BL
俺が風邪で寝ていた目が覚めたら異世界!?
メイド、王子って、俺も王子!?
おっと、俺の自己紹介忘れてた!俺の、名前は坂田春人高校二年、別世界にウィル王子の身体に入っていたんだ!兄王子に振り回されて、俺大丈夫か?!
涙脆く可愛い系に弱い春人の兄王子達に振り回され護衛騎士に迫って慌てていっもハラハラドキドキたまにはバカな事を言ったりとしている主人公春人の話を楽しんでくれたら嬉しいです。
1日の話しが長い物語です。
誤字脱字には気をつけてはいますが、余り気にしないよ~と言う方がいましたら嬉しいです。
触手の苗床にされてた剣士を助けたんだけどエロさが半端ない!
天城
BL
冒険者ヴィンセントは、モンスター研究者からの依頼で、植物系触手の中から『苗床』の青年クロードを助け出した。
大量の種を植え付けられた『苗床』は、剣士のような均整の取れた身体をしているのに妙に色っぽい。初めて男に欲情したヴィンセントは、戸惑いながらも依頼で『苗床』の世話係となった。
「あ、できるだけ回数ヤってくれる?あと射精もたくさんさせてくれる?」
「はあああ??」
雇い主のオーダーは、一日一度は触手の種を産ませる事。
普段表情に乏しいクロードは、触れた時だけ目眩がするほどの色香を放つ。触手に犯され熟れきった身体の抱き心地は最高だった。
三十路の冒険者(苦労性の男前)×苗床の青年(金髪緑眼・美形)
色んなプレイを含みますが、基本的に本編では特定攻としかヤりません。【一日3回更新。ムーンからの転載後は、続きの番外編を更新します。第12回BL大賞エントリーしています。よろしくお願いします!】
俺の悪役チートは獣人殿下には通じない
空飛ぶひよこ
BL
【女神の愛の呪い】
この世界の根源となる物語の悪役を割り当てられたエドワードに、女神が与えた独自スキル。
鍛錬を怠らなければ人類最強になれる剣術・魔法の才、運命を改変するにあたって優位になりそうな前世の記憶を思い出すことができる能力が、生まれながらに備わっている。(ただし前世の記憶をどこまで思い出せるかは、女神の判断による)
しかし、どれほど強くなっても、どれだけ前世の記憶を駆使しても、アストルディア・セネバを倒すことはできない。
性別・種族を問わず孕ませられるが故に、獣人が人間から忌み嫌われている世界。
獣人国セネーバとの国境に位置する辺境伯領嫡男エドワードは、八歳のある日、自分が生きる世界が近親相姦好き暗黒腐女子の前世妹が書いたBL小説の世界だと思い出す。
このままでは自分は戦争に敗れて[回避したい未来その①]性奴隷化後に闇堕ち[回避したい未来その②]、実子の主人公(受け)に性的虐待を加えて暗殺者として育てた末[回避したい未来その③]、かつての友でもある獣人王アストルディア(攻)に殺される[回避したい未来その④]虐待悪役親父と化してしまう……!
悲惨な未来を回避しようと、なぜか備わっている【女神の愛の呪い】スキルを駆使して戦争回避のために奔走した結果、受けが生まれる前に原作攻め様の番になる話。
※悪役転生 男性妊娠 獣人 幼少期からの領政チートが書きたくて始めた話
※近親相姦は原作のみで本編には回避要素としてしか出てきません(ブラコンはいる)
黄色い水仙を君に贈る
えんがわ
BL
──────────
「ねぇ、別れよっか……俺たち……。」
「ああ、そうだな」
「っ……ばいばい……」
俺は……ただっ……
「うわああああああああ!」
君に愛して欲しかっただけなのに……
【完結】王子の婚約者をやめて厄介者同士で婚約するんで、そっちはそっちでやってくれ
天冨七緒
BL
頭に強い衝撃を受けた瞬間、前世の記憶が甦ったのか転生したのか今現在異世界にいる。
俺が王子の婚約者?
隣に他の男の肩を抱きながら宣言されても、俺お前の事覚えてねぇし。
てか、俺よりデカイ男抱く気はねぇし抱かれるなんて考えたことねぇから。
婚約は解消の方向で。
あっ、好みの奴みぃっけた。
えっ?俺とは犬猿の仲?
そんなもんは過去の話だろ?
俺と王子の仲の悪さに付け入って、王子の婚約者の座を狙ってた?
あんな浮気野郎はほっといて俺にしろよ。
BL大賞に応募したく急いでしまった為に荒い部分がありますが、ちょこちょこ直しながら公開していきます。
そういうシーンも早い段階でありますのでご注意ください。
同時に「王子を追いかけていた人に転生?ごめんなさい僕は違う人が気になってます」も公開してます、そちらもよろしくお願いします。
お前が結婚した日、俺も結婚した。
jun
BL
十年付き合った慎吾に、「子供が出来た」と告げられた俺は、翌日同棲していたマンションを出た。
新しい引っ越し先を見つける為に入った不動産屋は、やたらとフレンドリー。
年下の直人、中学の同級生で妻となった志帆、そして別れた恋人の慎吾と妻の美咲、絡まりまくった糸を解すことは出来るのか。そして本田 蓮こと俺が最後に選んだのは・・・。
*現代日本のようでも架空の世界のお話しです。気になる箇所が多々あると思いますが、さら〜っと読んで頂けると有り難いです。
*初回2話、本編書き終わるまでは1日1話、10時投稿となります。
獣のような男が入浴しているところに落っこちた結果
ひづき
BL
異界に落ちたら、獣のような男が入浴しているところだった。
そのまま美味しく頂かれて、流されるまま愛でられる。
2023/04/06 後日談追加
大好きなBLゲームの世界に転生したので、最推しの隣に居座り続けます。 〜名も無き君への献身〜
7ズ
BL
異世界BLゲーム『救済のマリアージュ』。通称:Qマリには、普通のBLゲームには無い闇堕ちルートと言うものが存在していた。
攻略対象の為に手を汚す事さえ厭わない主人公闇堕ちルートは、闇の腐女子の心を掴み、大ヒットした。
そして、そのゲームにハートを打ち抜かれた光の腐女子の中にも闇堕ちルートに最推しを持つ者が居た。
しかし、大規模なファンコミュニティであっても彼女の推しについて好意的に話す者は居ない。
彼女の推しは、攻略対象の養父。ろくでなしで飲んだくれ。表ルートでは事故で命を落とし、闇堕ちルートで主人公によって殺されてしまう。
どのルートでも死の運命が確約されている名も無きキャラクターへ異常な執着と愛情をたった一人で注いでいる孤独な彼女。
ある日、眠りから目覚めたら、彼女はQマリの世界へ幼い少年の姿で転生してしまった。
異常な執着と愛情を現実へと持ち出した彼女は、最推しである養父の設定に秘められた真実を知る事となった。
果たして彼女は、死の運命から彼を救い出す事が出来るのか──?
ーーーーーーーーーーーー
狂気的なまでに一途な男(in腐女子)×名無しの訳あり飲兵衛
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる
本作については削除予定があるため、新規のレンタルはできません。
このユーザをミュートしますか?
※ミュートすると該当ユーザの「小説・投稿漫画・感想・コメント」が非表示になります。ミュートしたことは相手にはわかりません。またいつでもミュート解除できます。
※一部ミュート対象外の箇所がございます。ミュートの対象範囲についての詳細はヘルプにてご確認ください。
※ミュートしてもお気に入りやしおりは解除されません。既にお気に入りやしおりを使用している場合はすべて解除してからミュートを行うようにしてください。
みんな幸せになって良かったです!
ぜひ、その後のリュイ達やシェフィ達など、みんなの姿が見られたら嬉しいです!
>>ミルフィーユ様
感想ありがとうございます!
返信が遅れてしまい、すみません……!(アプリの通知に気付いておりませんでした)
作者としてもハッピーエンドにできてよかったと思っています。
その後のお話も番外編として書くかもしれません。
最後までお付き合い下さり、本当にありがとうございましたm(_ _)m
番外編グッときました!
リュイさんの深い愛情が、シェフイに伝わって、大人になったシェフイが、幸せになっててよかったです。
みんなとの楽しい思い出を大人になって思い出してる話、すごいよかったです!
子供で、しっぽをぶんぶん振ってるシェフイも可愛い
>>ミルフィーユ様
感想ありがとうございます!
返信が遅くなってしまい、すみません(汗)
楽しんでいただけたようでよかったです!
十年後のシェフィ、幸せにしているようです(^^)
最終話となっていて、ガーン😨と思っていたら、まだ続くようでまた楽しみです😊
リュイさんとエリューゲンのこれからも気になるし、まだ謎もあるのでこれからも宜しくお願いします✨
まずは、お疲れさまでした😊
>>はな様
返信が遅くなってしまい、すみません!
感想ありがとうございます。
まだ真の最終話ではありませんが、ここまでお付き合いいただいて感想しかありません。
引き続き楽しんでいただけたら嬉しいです(^^)