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第3話 契約番との出逢い3★
しおりを挟む翌日。
シュフィゼを連れて、魔術学院に登校した俺。教室に入るなり、友人がこめかみを押さえながら気だるげな様子でやってきた。
「メルティア、おはよう。あのさ、ちょっと魔法を……って、ん?」
シュフィゼの姿に気付いた友人が、目をぱちくりとさせる。見慣れない顔だし、明らかに年上の男だから怪訝に思ったんだろう。
「えーっと、そちらの方は?」
「あ、うん。お、俺の専属神官だよ」
嘘はついていない。ただ、『聖魔の番』ではないだけだ。
別に『聖魔の番』がいないことを恥ずかしく思ったわけじゃなくて、その情報から俺がシュフィゼに抱かれていることがバレたら嫌だから、咄嗟にそう言ったんだ。
「ああ、そういえば誕生日がきたんだっけ。へえ、よかったな」
「……そうだな。で、魔法がなんだって?」
話の続きを促すと、友人は「おお、そうだ」とあっさり話題変更に乗っかった。
「ちょっと、メルティアの魔法をかけてほしくて。朝から偏頭痛がひどくてさ。市販薬はちっとも効かないし」
「お前、天気が悪いとよく頭痛になるよな。分かった。いいよ」
俺は友人の肩に手を触れ、魔法『精神治癒』を発動させた。
これはあくまで応急処置で根本的な解決にはならないけど、偏頭痛を治す薬なんて開発されていないから。だから、一時的にでも和らげてあげるだけで喜ばれる。
いつものように魔法の効果により偏頭痛が収まったらしく、友人は顔を綻ばせた。
「おお、収まった。ありがとうな、メルティア」
「お礼なんていいよ。俺は……このくらいのことしかできないから」
魔法っていうのは、基本的に一人一つまでしか使えない。稀に複数の魔法を使える魔術師も存在するらしいけど、それは本当に珍しいことだ。
それで俺が使える固有魔法が『精神治癒』。正直、あんまり役立たない能力なんだよな。
これが怪我とか病気を治癒できる魔法なら便利だけど、残念ながらそういう魔法は存在しない。なんでも、死を反転させる力になるからだからとか、なんとか。
ともかく、魔法を使ったけど、昨日みたいに発情症状は出てこない。シュフィゼが傍にいるから抑えてくれているんだろう。といっても、抑制する聖力は無限にあるわけじゃないそうなので、夜になったら一旦止めて性行為コースが確定だ。
その後も、俺の魔法を求めて他にもクラスメートたちが集まってきた。宿題をやるのを忘れて先生に怒られるから怖くて胃が痛いだの、今日は日直当番だけど号令をかけるのが不安で動悸がするだの、俺からしたらデリケート過ぎるだろと言いたくなるような症状で。
でも、本人たちにとっては、真面目につらいことだろうから、内心呆れつつもいつものように魔法をかけて落ち着かせてやった。みんな、感謝してくれたよ。
「メルティア、俺も――」
「ストップ」
四人目の患者がやってきたところで、シュフィゼが口を挟んだ。
ん? なんだ?
不思議そうに見上げると、シュフィゼは「これ以上は無理」と肩を竦めてみせた。これ以上は無理ってことは、聖力切れってことか。つまり、魔法の副作用を抑える力が消耗しきってしまったということらしい。
あれ、案外、回数の上限が低いな。本来なら不可能なことをやっているからか?
これからは一日に三回しか魔法を使えないのか……今までは魔力が許す限り使いたい放題だったから、ちょっと窮屈感があるけど仕方のないこと、か。
そんなわけで、その日はもう魔法を使わなかった。授業を終えた後、シュフィゼとともに寮の自室に戻る。自然と話題は、魔法の回数の上限についてになった。
「一日三回までしか魔法は使えないって認識で合っているのか?」
「いや。別にもっと使ってもらっても俺は大丈夫だよ。俺はね」
俺は首を傾げた。なんだよ、どういうことだ。これ以上は無理って、あんたがストップをかけたんだろ。
「どういう意味だよ」
「あれ以上、魔法を使ったら、その反動の副作用が大きいだろうってこと」
意味を推し量りかねて、俺はますます首を捻る。副作用の反動が大きくなる……発情症状が重くなるってこと?
「副作用は性行為すれば、収まるんだろ?」
「そうだけど。多分、魔法を使った回数分になると思うんだよ。一夜でそう何十回もできないんじゃないの?」
「か、回数!?」
それには度肝を抜かれて、俺はただただ絶句するほかない。魔法を使った回数分だけ性行為をしなくちゃならないだと。マジか。てっきり、その日一日分、一回の性行為で済むかと思っていたのに……うう、世の中そんなにうまい話はないのか。
――と、いうことは。
「え……俺、今日はこれから三回分、性行為しなくちゃならないってこと?」
「多分ね。あくまで俺の推測だから、違うかもしれないけど。今から確かめてみる?」
俺は呻く。呻くほかない。今後のことを考えたら確かめなきゃならないこととはいえ、シュフィゼに抱いてほしいと自分から頼むようなものだ。
「……た、頼む」
これから魔術師として働くためだと割り切って、どうにか声を絞り出す。
そんな俺の中の葛藤を見抜いていたのか、シュフィゼは笑みを噛みしめつつ「分かった」と頷いて、封じていた発情症状を解放した。
瞬間、まただ。また、身体がカッと熱くなってきて、呼吸が荒くなってしまう。二度目の発情症状だけど、まだ慣れない。
「うっ、…ぁあ……」
中が疼く。身体の奥から早く雄棒が欲しいという衝動が沸き上がってくる。ともすれば、自分からシュフィゼを押し倒してしまいそうなくらい。
それを必死に理性で抑え、寝台の上でもじもじとしていると。
「その物欲しそうな顔、たまらない」
目の前まで迫ってきたシュフィゼの唇が、俺の唇を塞ぐ。しばし、ついばむようなキスを繰り返した後、やがて口内にぬるりとした舌が侵入してきた。
俺はつい舌を引っ込めてしまいそうになったけど、あっさりと絡めとられて、貪られる。
「んっ、は…っ……」
舌を吸い上げられると、下半身へ緩やかに快感が伝わる。息子が少しずつ硬くなって持ち上がっていくのが自分でも分かる。
気持ちよくて、無意識のうちに俺からも舌を絡ませにいっていた。貪り合いながら、俺はそっと寝台に押し倒される。
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