転生したオメガ王太子の幸せ家族ルート

深凪雪花

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最終話 ずっと一緒に★

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 そしてさらに数ヶ月後。とうとうナリノスからリゼル王子が婿入りする日がやってきた。俺たちが住まうのは、まだ蒼輝宮だ。
 ――どんな王子なんだろう。
 これまでなぜか秘匿されていた王子という話らしく、父上の人脈を駆使しても人柄などなんの情報も入ってきていない。だから、実は問題児なんじゃないかと、俺も、両親も、正直なところ心配していたりする。
 不安に思いながら、広間で待つこと数十分。

「ノシュア様。リゼル殿下がお越しになりました」

 新米宮女が来訪を告げにくる。
 ほどなくして、俺の前に現れたリゼル王子を見て、俺は――しばし放心した。

「え……」
「本日より、ノシュア殿下の下へ婿入りします、リゼル・イスリッド・ナリノスと申します。ふつつか者ですが、よろしくお願いします」

 リゼル王子は、穏やかに笑む。
 暗めの赤毛。森を切り取ったような緑の瞳。どこからどう見ても、記憶にあるイスリッドと同じ顔をした彼を、俺は呆然と見上げた。

「イス……リッド?」
「はい。お久しぶりです、ノシュア殿下」

 あれ、夢でも見ているのかな。それとも、本物のリゼル王子を押しのけて、ここまでやってきちゃったのかな。
 そんな頓珍漢なことを考える。

「リゼル王子は……」
「俺のことですよ。ずっと以前から、ナリノス国王陛下には王宮にこないかと誘われていたのですが……ノシュア殿下が次期国王になると知りまして。少しでも、あなたのためになることがしたくて、急いでナリノスの王族入りしました」
「俺の、ため?」
「大国ナリノスと結びつきを深められる政略結婚。それは、これから国王となられるノシュア殿下にとって、ささやかながら国王としての実績になるでしょう?」

 言わんとすることは分かる。
 でも、なんで俺が次期国王になることを知っているんだ。それも、まるで自分と結婚したがっていることが分かっていたみたいに聞こえる。
 俺の不思議そうな顔から、イスリッドはそれらの疑問を察したらしかった。

「トヴァス陛下が手紙で教えて下さいました」
「え!?」
「ノシュア殿下が次期国王になられるということ、そのためにこの五年間ずっとギルヴァニスで修業をされていたこと。そのすべては、俺と結婚したいがためだとも」
「!」

 トヴァス陛下! な、な、なんてことまで勝手に伝えているんだよ! 俺がいいなら、自分が口を挟むことではない、って言っていたのに!
 俺はもう顔が真っ赤だ。いや、そりゃあもし独身でいたら、気持ちを伝えようとは思っていたけど、完全なる不意打ちだ。

「嬉しかったです。愛するひとからそこまで求められるなんて、男冥利に尽きます。頑張るあなたのお傍にいられなかったことは、申し訳なく思いますが……」

 イスリッドの腕がそっと伸びてきて、俺の体を引き寄せる。俺は、すっぽりとイスリッドの逞しい腕の中。
 五年ぶりの触れ合いは、だけどドキドキ感よりも安心感の方が強かった。イスリッドの温もりがほっとする。

「俺は、うぬぼれていいんでしょうか。あなたから愛されていると」

 その声音には、穏やかながら不安の色が見え隠れしている。
 それもそうだろう、俺はずっと冷たくしてきたんだから。トヴァス陛下から話を聞いたといっても、自分が愛されているかどうかの確信は持てずにいるに違いない。
 ――伝えなきゃ。
 五年前に自分で自分に誓った。もし、五年後にイスリッドが独身のままでいたら、今度はきちんと想いを伝えることを。

「うぬぼれ……なんかじゃない」

 顔を上げ、真っ直ぐイスリッドの瞳を見つめる。

「俺は、イスリッドのことが好きだ。ずっと、好きだった。だから、俺と結婚して下さい」

 言った。
 言ったぞ。とうとう。
 結婚して下さいって、もう結婚しても同然なのにおかしいかもしれないけど。でも、イスリッドは嬉しそうに笑った。

「はい。結婚しましょう」

 端正な顔立ちが、ぐっと目の前に近付いてくる。雰囲気からキスをされるのだと察して、俺は目を閉じ、優しいキスを受け入れた。




 ――ドキドキする。
 イスリッドが改めて婿入りしてきたその日の夜。俺は寝台の上にちょこんと正座をして、イスリッドがやってくるのを待っていた。
 およそ五年ぶりに抱かれるのだ。緊張するなという方が難しい。
 心臓をバクバクさせていると、やがて寝室の扉が音を立てて開いた。顔を出したのは、もちろんイスリッドだ。シャワーのあとなので髪が濡れているけれども。

「お待たせしました」
「い、いや……」

 ぎこちなく笑い返す。すると、緊張しているのが丸分かりらしかったらく、イスリッドは小さく笑った。

「そんなに緊張なさらず。……優しくしますから」

 寝台に上がってきたイスリッドの端正な顔が、こっちに迫ってくる。反射的にぎゅっと目をつぶると、優しい口付けが俺の唇に触れた。

「ん、んぅ……」

 ずっとキスをしていたら息苦しくなり、酸素を求めて口が開く。イスリッドはその隙を見逃さず、口内に舌を差し入れてきた。

「ふ…ぁ……っ!」

 ねっとりと舌が絡みついてくる。舌をちゅっと吸われるたびに身体がぞくぞくと痺れる。甘い刺激が下半身に届いて、足がもじもじとなってしまう。

「あ、はっ……ぁ、んっ……!」

 呼吸が上手くできない。なんだか、酸欠で頭がぼぅっとしてきた。
 やっと解放された頃には、俺の呼吸は弾んでいて、吐息が熱くなっていた。

「イスリッ、ド……」

 熱で潤んだ目でイスリッドを見上げると、イスリッドもまた欲情した眼差しをしていた。
 肩を掴まれ、寝台に押し倒される。俺の寝間着を流れるような動作で脱がしていく。
 次第に露になる、俺の乳白色の身体。五年前と変わらず貧相な身体だ。何度も見られているとはいえ、気恥ずかしいので身をよじる。

「……あ、あんまり見るなよ」
「こんなに綺麗なんですから、見せて下さい」

 イスリッドの指が、薄い色素の輪をゆっくりとなぞり出す。くすぐったくて、我慢しようと思っても、身体がびくびくと動いてしまう。

「あっ……!」

 左右の乳首をきゅっと摘ままれて、喘ぎ声が飛び出した。慌てて両手で口を押さえようとしたけど、イスリッドが甘く耳元に囁く。

「ダメです。もっと聞かせて下さい」

 両手首を、シーツにまとめて縫い付けられた。
 いまさらとはいえ、変な声を出したくないのに、片方の乳首はイスリッドの指で転がされて、もう片方の乳首は唇で舐められると、口から喘ぎ声が止められなかった。

「あ、やっ……ぁ、あぁっ!」

 久しぶりだからかもしれないけど、嫌だ。こんなの、変になってしまう。
 下半身がすっかり反応しているのが、自分でも分かる。それは俺の上に覆いかぶさっているイスリッドにも伝わったみたいだ。乳首から手を離して下腹部に手を伸ばし、中心を上下に扱かれると……たまらなく、気持ちがいい。
 先端の窪みから滲み出る液体が、クチュクチュと音を立てる。それは俺が興奮しているという紛れもない欲望の証であり、羞恥心が込み上げてきた。
 すっかり勃ち上がった花棒の先端から樹液を掬ったイスリッドの指が、俺の菊門を這う。最奥の窄まりに樹液を塗りたくって、指を一本挿し入れた。
 相変わらず奇妙な感覚はあるものの、やっぱり痛くはない。

「そろそろ、いいかな」

 俺の後孔を丹念にほぐし終えたところで、イスリッドは一旦、身体を離した。イスリッドもまた、寝間着を脱ぎ捨てて裸体になる。
 俺のモノよりも立派な雄棒が視界に入って、ごくりと生唾を飲み込んだ。すでにこの快楽を知っているから、身体の奥が欲して疼く。

「挿れますね」

 正常位の体勢で、イスリッドのモノが後孔にあてがわれた。ぐっと押し付けられて、圧力がかかると少しずつそこが開けていく。蠢く花襞がイスリッドのモノを飲み込んでいく。

「大丈夫ですか?」
「う、うん」

 動かずにいても、中に熱芯を感じる。確かにイスリッドと繋がっているんだと感じる。
 そう思うと、涙が出てきそうなくらい嬉しかった。たまらず、イスリッドの首裏に腕を回して抱きつく。それには、イスリッドは少々驚いた様子だ。

「ノシュア殿下?」
「好きだ。好きだよ。昔、冷たくしてごめん」

 理由を聞かれたら、どう答えたらいいのか分からないけど。それでも、謝らずにはいられない。イスリッドは、「過ぎたことは、もういいんですよ」と優しく応じてくれた。

「動きますよ」

 すっと腰が引かれて、かと思うと、ゆっくりと押し入ってくる。

「あっ、あぁっ、イスリッドっ……」
「可愛いですね。ノシュア殿下」
「ダ、ダメェ……そんなにしたら、んっ!」

 もうイってしまいそうになる。とは、恥ずかしくて言えない。っていうか、早すぎだろ俺。

「あっ、んぁっ、イスリッドっ……!」

 全身をガクガクと揺さぶられて、意識がただ目の前の快楽にとらわれる。
 俺はいつしか、夢中で自分からも腰を振っていた。はしたないことをしている自覚はあったけど、止められなかった。
 感じ入る俺の顔を、イスリッドは愛おしげに見下ろす。

「ノシュア殿下。愛しています」

 どきりと胸が高鳴った。無意識に中がキュウと締まって、イスリッドを締め付けてしまう。
 イスリッドは、ほのかに笑った。ズンズンと容赦なく中を抉る。

「んんっ、あっ、ふぁぁっ」

 もう、たまらない。奥を突かれるたびに火花が散る。

「イスリッ、ド……も、もうっ……」
「いいですよ。イけばいい」
「あぁ、ふぁぁっ、イスリッドっ、あぁあぁぁぁ――……!」

 一息に突き上げられると、高みがやってきて俺はぎゅっと目をつぶった。硬く勃ち上がった下半身から蜜液が吹き出し、同時に俺の中にも熱い蜜液が注ぎ込まれる。
 息を弾ませながら、イスリッドと強く抱き締め合った。至福に包まれながら、触れ合うだけのキスを交わす。
 ――イスリッド。
 俺も、愛しているよ。この世の誰よりも。


○○○○○○○○

最後までお付き合いくださり、ありがとうございました!
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