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第2章
第13話 魔力補充★
しおりを挟む「ダ、ダメだった……!」
その日の夜。ルツはぱたんと寝台に倒れた。
昼前から一日中、『キタエアゲル君』と戦ったが、中級魔術どころか下級魔術すら会得できなかった。一体何がダメなんだ。
「『貪食』と『怠惰』をちゃんと与えてるはずなのに」
「……君の場合、無理矢理そのことを考えてるだけだから。欲望っていうのは、もっと心の奥底から湧き上がる思いだよ」
アイムは寝台に腰かけながら、やれやれと息をつく。
「だいたい、一日で会得できたら誰も苦労しないよ。それも一気に二段階、会得しようとするなんて焦りすぎ」
「う……」
「それに『貪食』はともかく、『怠惰』は君とは相性悪そうな七欲だと思うけど。ひとまず、他の七欲を考えてみたら?」
「他の七欲っていっても……他には何も思い浮かばねえよ」
「それを考え出すのが、滅魔騎士でしょ」
ごもっともだが、簡単に言ってくれる。
ルツはごろりと仰向けになった。
「うー、滅魔騎士の力って難しいんだな」
「ま、聖なる力よりは複雑かもね。あっちは、信仰心の強さが力の基準っていう、もっとシンプルなものだから」
「へぇ……信仰心の強さか。じゃあ、仮に聖なる契約を結べていたとしても、俺じゃ大して強くなれなかったんだな」
「今の君は、滅魔騎士としても最弱もいいところだけどね」
突っ込みを入れるアイムに、ルツはむっとした。
「俺はこれから強くなるんだ! 見てろ、今に秘奥義まで会得してやる」
「大口叩くねえ。ま、楽しみにしてるよ。……それよりも」
アイムが寝台に上がってきた。ルツの上に移動してきて、ルツの顔にその可愛らしい顔を寄せる。そのまま、キスをされたルツは、ぎょっとした。
「え、おい、まさか――」
「うん。お腹が空いた」
「昨日の今日で!? それにちょっと初級魔術を使っただけじゃん!?」
「君はまだ七欲のコントロールが下手だから、すぐに魔力が枯渇するんだよ」
ちゅっとまた唇が触れた。
滅魔隊支部の部屋で致すことに抵抗がないわけではなかったが、アイムが空腹だというのなら欲望を食らわせてやらねばならない。
ルツからもおずおずと唇を突き返し、アイムと舌を絡ませ合った。互いに貪り合う間に、アイムの手がルツの下半身を撫でる。緩やかな刺激だったが、反応するのに十分だった。
ルツは起き上がって、アイムの身体を押し倒した。
「わっ」
アイムの身体が反転して、寝台に仰向けになる。舌を絡ませながら、アイムの衣服を脱がしていくルツだったが、
(あ、まだシャワー浴びてない)
そのことに思い至り、一旦身体を離した。
アイムは不思議そうな顔でルツを見上げる。
「どうしたの?」
「ちょっと、シャワー浴びてくる」
「それなら僕も浴びる」
というわけで、二人でシャワー室へ向かった。脱衣スペースで衣服を脱ぎ、滝のようなシャワーを抱き合いながら浴びる。身体を密着させているので、少し動くだけで互いのモノが擦れてしまい、なんだか気分が湿ったものになっていく。
「洗ってあげるよ」
アイムは悪戯っぽく笑い、ボディソープを泡立てた。たっぷりの泡をルツの中心に纏わせ、根本から竿まで包み込む。その下の双果にも擦り合わせるようにもみ込まれる。
泡の感覚がふわふわとしていて、それでいて滑りがいいため、優しく刺激されるとすごく気持ちがいい。
ねちっこい愛撫に先端の窪みから先走りがこぼれた。タイルに落ちたそれは、けれど泡ごとシャワーの水に流されていく。
「うっ……も、いいから。上がろうぜ」
このままでは、あろうことか達してしまいそうだ。
苦悶の表情を浮かべるルツに、アイムはくすりと笑った。そして何を思ったのか、くるりと背中を向け、壁に手をついて、お尻をこちらに向ける。
「いいよ。きて」
「こ、ここでするのか?」
「だって、もう待ちきれないでしょ」
後背位で。それも立ったままで。
ルツはごくりと生唾を飲み込んだ。衝動的に突き出された腰を掴んで一息に挿入したくなったが、そんな乱暴なことはしない。挿入する前に、双丘を左右に割り開いて、最奥に泡立てたボディソープを塗りたくった。潤滑剤代わりだ。
「……挿れるぞ」
アイムの腰を掴み、後孔に充溢した分身をあてがう。ゆっくりと襞を押し広げながら、中に埋め込んでいく。
「くっ、うっ」
「痛いか?」
「へい、き。ただ、圧迫感があるだけ」
短く息を継ぐアイムの耳や首筋に、宥めるようにキスを落とす。それで多少は身体の緊張がほぐれたのか、挿入している側のルツが受ける圧迫感も和らいだ気がする。
根本まで挿入し終えたところで、中に馴染むのを数分待った。
「動くからな」
最初はスローペースで抽挿を開始する。貫き、引き抜き、また穿つ。たったそれだけの動作を繰り返すだけなのに、肉壁に擦れる分身がたまらなく気持ちいい。
アイムも感じているようで、奥深くまで貫くと背中を仰け反らせた。
「んっ、あぁぁっ……!」
喘ぎ声が艶っぽい。後背位なのでアイムの表情は見えないが、快楽でとろとろに崩れているのかもしれないと思うと、なんだか欲情してしまう。
「あぁ、あぁっ、っんん!」
「くっ……」
すごい締め付けだ。引き抜こうとすると、逃がすまいと肉壁が圧迫して引き止めてくる。それでいて、中に押し入る時は優しく迎え入れるものだから、緩急が絶妙だ。
まるで生き物のようだと、ルツは思った。
対してアイムも――ルツに抜き差しされるたびに、気持ちのいいところが擦れると、甘い電流が走ったような快感に襲われていた。
「ふ…ぁっ……あぁっ!」
なんだか、正常位よりも深い。身体の奥深くまで熱芯を感じる。後背位とはどんな感じなのか興味があって試しただけだったが、思っていた以上に気持ちがいい。
「やぁっ、あぁぁっ……!」
腰を打ちつけるルツの動きが、自然と加速していく。押し寄せる快感の波に頭の芯がぼんやりとしてきて、アイムはただ快楽を享受することしかできない。
熱い吐息の音。アイムの甘い喘ぎ声。クチュクチュとした水音。淫靡な音だけがシャワー室に響く。
「あっ、あっ、僕…っ……もう」
「いいよ。イけよ。俺も……出そうだ」
アイムの中で、どくりと雄が膨張した。ぐいっと腰が突き出されると雄が弾けて、中に熱いものが迸る。同時にアイムも達して、熱芯から蜜液を吐き出した。
ルツがモノを引き抜くと、アイムの膝が砕けた。崩れ落ちそうになるアイムの体を、ルツは慌てて支える。
「お、おい。大丈夫か?」
「う、ん」
「ベッドまで運んでやる」
アイムを腕に抱え上げ、ルツはシャワー室を出た。床を水滴で濡らすことも構わず、部屋を歩き、寝台にアイムを横たえる。
ぐったりとしているアイムだが、その顔は恍惚としていた。紫の瞳がとろんとしている。
艶めかしいその表情に、ルツは自身の中の色欲が刺激されるのを感じたが、まさかまた挿入したいと言えるわけもなく。
シャワー室に戻って、自分の手で疼きを鎮めた。
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