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第四章 立ち向かうと決めた、運命に!

45.親友と息抜き

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 洞窟から無事に外に出ると、人々が待ち構えていた。そこには、私のメンバーの姿もあった。

 教師が私の側に駆け寄る。

「無事でしたか!!」

 ガシッと両肩を掴み、息を吐き出した。

「ここは立ち入り禁止の表示がしてありましたよね? なぜ、わざわざここに入ったのですか?」
「え、表示……?」

 そんなものはどこにもなかった。

「ここは魔獣、ジュエルグリズリーの住処。あの魔獣はこの洞窟から出れません。近寄ってはいけないと中等部の頃から散々言っていたはず!!」

 そんな危険な場所だったなんて知らなかった。言い訳になるが、中等部の頃から注意喚起していたとしても、私は魔法学園出身で高等部から転入だ。

「あなたはメンバーの制止も振り切り、一人で中へ向かったと報告を受けました。どうしてそんな危険なことをしたのですか。皆の輪を乱して!!」

 教師が私を責め立てる。

「僕たちは止めました。北東の洞窟だと言っていたのに、彼女が突っ走りました!!」
「意見も聞きませんでした!!」

 えっ、北西の洞窟だって言ったじゃない!!

 ここぞとばかりの教師の肩を持つ、エミーリアの取り巻きたち。

 やっぱりあんたたち、最初から仕組んでいたのね!!

 叱責されるが、私としても言い分はある。

「違います!! 私は――」

 はめられたのだ、エミーリアたちに。

 興奮状態の教師に反論しようとすると、エミーリアが前にサッと出てきた。

「無事で良かった!! とっても心配していました!!」

 私の手を取ると、大げさにギュッと握りしめる。

「本当に無茶は止めてください。単身で乗り込んでいくなんて無謀すぎます」

 エミーリアは潤んだ目で私を見上げる。

 もとはと言えば、あんたが噛んでいるんじゃないの? 下僕しもべを上手く使って!!

 触られている手が気持ち悪く、背筋がゾワゾワする。

 ここでなにを言っても、私の分が悪い。エミーリアは尻尾をつかまかせないだろう。

「手を離して」

 パッと手を振り払う。

「せっかく心配しているのに。あの態度はないわよね」
「さすがお嬢様。プライドだけはバカ高いんだな。可愛げのない」

 ひそひそと陰口を叩かれるが、全部聞こえてる。

「先生」

 その時、口を開いたのはレインハルトだった。

「レイテシアへの話でしたら、後で執務室を訪ねますので」

 強い口調で教師に向き合う。

「まっ、まあ、レインハルト君がそう言うなら、いいでしょう」

 良かった、いくら私でも皆の前で叱責されたくない。

 ホッとしてレインハルトに視線を投げる。彼は小さくうなずいた。

 微笑みを向けられ、なんだか胸がドキドキする。

「ほら、行くぞ」

 そのままグイッと腕を引き、この場から連れ出してくれた。

 私のこと、庇ってくれたんだ。

 感動していた時、ふと視線を感じ振り返る。エミーリアが目を細め、私をジッと見ている。今まで、エミーリアとの対立をなんとか避けようとしていた。だけどもう、逃げない。

 そして決して負けない!!

 呪いの人形を作るでもなく前世の思考を捨て、今世は別の方法でやり返すわ。

 鋭い視線をキッと彼女に向け、負けずににらみ返した。

 屋敷に帰ると、今日の出来事はしっかりハロルドと父の耳に入っていたようだ。
 案の定、こってり絞られた。

 これもすべてエミーリアのせいだ。絶対倍にして返すから、待っていなさいよ。

 二人から説教されながら、復讐を誓った。

******


 週末、私はお出かけする。

 最近は面白くないことが続いたので、気晴らしだ。街へ出て買い物でストレスを発散する。そして午後になると、時計台の下へ移動した。

 ここキトロスの街は、この時計台が有名だ。人々の待ち合わせ場所にもよく使われている。私は近くのベンチに腰掛け、行きかう人々をボーッと眺めていた。

「お待たせ、レイテシア」

 懐かしい声が聞こえ、パッと振り返る。

「ちょっと遅刻しちゃった」
「ちょっとじゃないわよ。三十分近くも待ったわよ。私を待たすなんて、いい度胸しているわ」

 スッと立ち上がり、腰に手を当てる。プリプリと怒って相手を見下ろす。

「へへ、ごめんごめん。ちょっと発明に夢中になってしまってさ」
「まったくもう。それにしても約束の時間ぐらい守りなさいよね」

 ロンとは魔法学園を卒業して以来、時折会っていた。

 久々に会ったロンは背が伸びて、ボサボサだった髪を切ってこざっぱりしていた……ということもなく、以前とどこも変わっていない。その様子を見ていると心が和む。

「変わらないわね、ロンは。元気にしていた?」
「うん。なんとかやっているよ。で、君はどうなの?」
「ええ、まあ。なんとか上手くやっているかな」

 目を逸らしながら答えるとロンは肩を揺らし、苦笑する。

「なんかあったでしょ。レイテシアは嘘をつくとき、必ず目を逸らすんだから」

 やはり魔法学園時代にずっと行動を共にしていたロンには見透かされている。観念して息を吐き出した。

「まあ、いろいろあるのよね」
「そっか。僕で良ければ話を聞くよ。とりあえず場所を移動しないか?」
「そうね、落ち着いて話ができる場所にいきましょうか」

 キョロキョロと周囲を見回すとロンが一角を指さした。そこは飲み物や軽食を扱っている店だった。

「じゃあ、あのお店に入りましょう。喉が渇いたし。話を聞いてくれるお礼にご馳走するわ」
「やったね、さすがレイテシア。僕お腹ぺこぺこ!! レイテシアに会うと思って昨日からなにも食べてない」
「そこはさすがに食べてきなさいよ!!」
「いや、美味しいご飯をご馳走してくれるかなって、期待していた」
「まったく、その図々しさは呆れを通り越して尊敬さえするわ」

 変わらぬロンを見ていると笑いがこみ上げる。

 そのまま意気投合して店へ向かった。
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