47 / 64
第四章 立ち向かうと決めた、運命に!
45.親友と息抜き
しおりを挟む
洞窟から無事に外に出ると、人々が待ち構えていた。そこには、私のメンバーの姿もあった。
教師が私の側に駆け寄る。
「無事でしたか!!」
ガシッと両肩を掴み、息を吐き出した。
「ここは立ち入り禁止の表示がしてありましたよね? なぜ、わざわざここに入ったのですか?」
「え、表示……?」
そんなものはどこにもなかった。
「ここは魔獣、ジュエルグリズリーの住処。あの魔獣はこの洞窟から出れません。近寄ってはいけないと中等部の頃から散々言っていたはず!!」
そんな危険な場所だったなんて知らなかった。言い訳になるが、中等部の頃から注意喚起していたとしても、私は魔法学園出身で高等部から転入だ。
「あなたはメンバーの制止も振り切り、一人で中へ向かったと報告を受けました。どうしてそんな危険なことをしたのですか。皆の輪を乱して!!」
教師が私を責め立てる。
「僕たちは止めました。北東の洞窟だと言っていたのに、彼女が突っ走りました!!」
「意見も聞きませんでした!!」
えっ、北西の洞窟だって言ったじゃない!!
ここぞとばかりの教師の肩を持つ、エミーリアの取り巻きたち。
やっぱりあんたたち、最初から仕組んでいたのね!!
叱責されるが、私としても言い分はある。
「違います!! 私は――」
はめられたのだ、エミーリアたちに。
興奮状態の教師に反論しようとすると、エミーリアが前にサッと出てきた。
「無事で良かった!! とっても心配していました!!」
私の手を取ると、大げさにギュッと握りしめる。
「本当に無茶は止めてください。単身で乗り込んでいくなんて無謀すぎます」
エミーリアは潤んだ目で私を見上げる。
もとはと言えば、あんたが噛んでいるんじゃないの? 下僕を上手く使って!!
触られている手が気持ち悪く、背筋がゾワゾワする。
ここでなにを言っても、私の分が悪い。エミーリアは尻尾をつかまかせないだろう。
「手を離して」
パッと手を振り払う。
「せっかく心配しているのに。あの態度はないわよね」
「さすがお嬢様。プライドだけはバカ高いんだな。可愛げのない」
ひそひそと陰口を叩かれるが、全部聞こえてる。
「先生」
その時、口を開いたのはレインハルトだった。
「レイテシアへの話でしたら、後で執務室を訪ねますので」
強い口調で教師に向き合う。
「まっ、まあ、レインハルト君がそう言うなら、いいでしょう」
良かった、いくら私でも皆の前で叱責されたくない。
ホッとしてレインハルトに視線を投げる。彼は小さくうなずいた。
微笑みを向けられ、なんだか胸がドキドキする。
「ほら、行くぞ」
そのままグイッと腕を引き、この場から連れ出してくれた。
私のこと、庇ってくれたんだ。
感動していた時、ふと視線を感じ振り返る。エミーリアが目を細め、私をジッと見ている。今まで、エミーリアとの対立をなんとか避けようとしていた。だけどもう、逃げない。
そして決して負けない!!
呪いの人形を作るでもなく前世の思考を捨て、今世は別の方法でやり返すわ。
鋭い視線をキッと彼女に向け、負けずににらみ返した。
屋敷に帰ると、今日の出来事はしっかりハロルドと父の耳に入っていたようだ。
案の定、こってり絞られた。
これもすべてエミーリアのせいだ。絶対倍にして返すから、待っていなさいよ。
二人から説教されながら、復讐を誓った。
******
週末、私はお出かけする。
最近は面白くないことが続いたので、気晴らしだ。街へ出て買い物でストレスを発散する。そして午後になると、時計台の下へ移動した。
ここキトロスの街は、この時計台が有名だ。人々の待ち合わせ場所にもよく使われている。私は近くのベンチに腰掛け、行きかう人々をボーッと眺めていた。
「お待たせ、レイテシア」
懐かしい声が聞こえ、パッと振り返る。
「ちょっと遅刻しちゃった」
「ちょっとじゃないわよ。三十分近くも待ったわよ。私を待たすなんて、いい度胸しているわ」
スッと立ち上がり、腰に手を当てる。プリプリと怒って相手を見下ろす。
「へへ、ごめんごめん。ちょっと発明に夢中になってしまってさ」
「まったくもう。それにしても約束の時間ぐらい守りなさいよね」
ロンとは魔法学園を卒業して以来、時折会っていた。
久々に会ったロンは背が伸びて、ボサボサだった髪を切ってこざっぱりしていた……ということもなく、以前とどこも変わっていない。その様子を見ていると心が和む。
「変わらないわね、ロンは。元気にしていた?」
「うん。なんとかやっているよ。で、君はどうなの?」
「ええ、まあ。なんとか上手くやっているかな」
目を逸らしながら答えるとロンは肩を揺らし、苦笑する。
「なんかあったでしょ。レイテシアは嘘をつくとき、必ず目を逸らすんだから」
やはり魔法学園時代にずっと行動を共にしていたロンには見透かされている。観念して息を吐き出した。
「まあ、いろいろあるのよね」
「そっか。僕で良ければ話を聞くよ。とりあえず場所を移動しないか?」
「そうね、落ち着いて話ができる場所にいきましょうか」
キョロキョロと周囲を見回すとロンが一角を指さした。そこは飲み物や軽食を扱っている店だった。
「じゃあ、あのお店に入りましょう。喉が渇いたし。話を聞いてくれるお礼にご馳走するわ」
「やったね、さすがレイテシア。僕お腹ぺこぺこ!! レイテシアに会うと思って昨日からなにも食べてない」
「そこはさすがに食べてきなさいよ!!」
「いや、美味しいご飯をご馳走してくれるかなって、期待していた」
「まったく、その図々しさは呆れを通り越して尊敬さえするわ」
変わらぬロンを見ていると笑いがこみ上げる。
そのまま意気投合して店へ向かった。
教師が私の側に駆け寄る。
「無事でしたか!!」
ガシッと両肩を掴み、息を吐き出した。
「ここは立ち入り禁止の表示がしてありましたよね? なぜ、わざわざここに入ったのですか?」
「え、表示……?」
そんなものはどこにもなかった。
「ここは魔獣、ジュエルグリズリーの住処。あの魔獣はこの洞窟から出れません。近寄ってはいけないと中等部の頃から散々言っていたはず!!」
そんな危険な場所だったなんて知らなかった。言い訳になるが、中等部の頃から注意喚起していたとしても、私は魔法学園出身で高等部から転入だ。
「あなたはメンバーの制止も振り切り、一人で中へ向かったと報告を受けました。どうしてそんな危険なことをしたのですか。皆の輪を乱して!!」
教師が私を責め立てる。
「僕たちは止めました。北東の洞窟だと言っていたのに、彼女が突っ走りました!!」
「意見も聞きませんでした!!」
えっ、北西の洞窟だって言ったじゃない!!
ここぞとばかりの教師の肩を持つ、エミーリアの取り巻きたち。
やっぱりあんたたち、最初から仕組んでいたのね!!
叱責されるが、私としても言い分はある。
「違います!! 私は――」
はめられたのだ、エミーリアたちに。
興奮状態の教師に反論しようとすると、エミーリアが前にサッと出てきた。
「無事で良かった!! とっても心配していました!!」
私の手を取ると、大げさにギュッと握りしめる。
「本当に無茶は止めてください。単身で乗り込んでいくなんて無謀すぎます」
エミーリアは潤んだ目で私を見上げる。
もとはと言えば、あんたが噛んでいるんじゃないの? 下僕を上手く使って!!
触られている手が気持ち悪く、背筋がゾワゾワする。
ここでなにを言っても、私の分が悪い。エミーリアは尻尾をつかまかせないだろう。
「手を離して」
パッと手を振り払う。
「せっかく心配しているのに。あの態度はないわよね」
「さすがお嬢様。プライドだけはバカ高いんだな。可愛げのない」
ひそひそと陰口を叩かれるが、全部聞こえてる。
「先生」
その時、口を開いたのはレインハルトだった。
「レイテシアへの話でしたら、後で執務室を訪ねますので」
強い口調で教師に向き合う。
「まっ、まあ、レインハルト君がそう言うなら、いいでしょう」
良かった、いくら私でも皆の前で叱責されたくない。
ホッとしてレインハルトに視線を投げる。彼は小さくうなずいた。
微笑みを向けられ、なんだか胸がドキドキする。
「ほら、行くぞ」
そのままグイッと腕を引き、この場から連れ出してくれた。
私のこと、庇ってくれたんだ。
感動していた時、ふと視線を感じ振り返る。エミーリアが目を細め、私をジッと見ている。今まで、エミーリアとの対立をなんとか避けようとしていた。だけどもう、逃げない。
そして決して負けない!!
呪いの人形を作るでもなく前世の思考を捨て、今世は別の方法でやり返すわ。
鋭い視線をキッと彼女に向け、負けずににらみ返した。
屋敷に帰ると、今日の出来事はしっかりハロルドと父の耳に入っていたようだ。
案の定、こってり絞られた。
これもすべてエミーリアのせいだ。絶対倍にして返すから、待っていなさいよ。
二人から説教されながら、復讐を誓った。
******
週末、私はお出かけする。
最近は面白くないことが続いたので、気晴らしだ。街へ出て買い物でストレスを発散する。そして午後になると、時計台の下へ移動した。
ここキトロスの街は、この時計台が有名だ。人々の待ち合わせ場所にもよく使われている。私は近くのベンチに腰掛け、行きかう人々をボーッと眺めていた。
「お待たせ、レイテシア」
懐かしい声が聞こえ、パッと振り返る。
「ちょっと遅刻しちゃった」
「ちょっとじゃないわよ。三十分近くも待ったわよ。私を待たすなんて、いい度胸しているわ」
スッと立ち上がり、腰に手を当てる。プリプリと怒って相手を見下ろす。
「へへ、ごめんごめん。ちょっと発明に夢中になってしまってさ」
「まったくもう。それにしても約束の時間ぐらい守りなさいよね」
ロンとは魔法学園を卒業して以来、時折会っていた。
久々に会ったロンは背が伸びて、ボサボサだった髪を切ってこざっぱりしていた……ということもなく、以前とどこも変わっていない。その様子を見ていると心が和む。
「変わらないわね、ロンは。元気にしていた?」
「うん。なんとかやっているよ。で、君はどうなの?」
「ええ、まあ。なんとか上手くやっているかな」
目を逸らしながら答えるとロンは肩を揺らし、苦笑する。
「なんかあったでしょ。レイテシアは嘘をつくとき、必ず目を逸らすんだから」
やはり魔法学園時代にずっと行動を共にしていたロンには見透かされている。観念して息を吐き出した。
「まあ、いろいろあるのよね」
「そっか。僕で良ければ話を聞くよ。とりあえず場所を移動しないか?」
「そうね、落ち着いて話ができる場所にいきましょうか」
キョロキョロと周囲を見回すとロンが一角を指さした。そこは飲み物や軽食を扱っている店だった。
「じゃあ、あのお店に入りましょう。喉が渇いたし。話を聞いてくれるお礼にご馳走するわ」
「やったね、さすがレイテシア。僕お腹ぺこぺこ!! レイテシアに会うと思って昨日からなにも食べてない」
「そこはさすがに食べてきなさいよ!!」
「いや、美味しいご飯をご馳走してくれるかなって、期待していた」
「まったく、その図々しさは呆れを通り越して尊敬さえするわ」
変わらぬロンを見ていると笑いがこみ上げる。
そのまま意気投合して店へ向かった。
120
お気に入りに追加
3,079
あなたにおすすめの小説
この野菜は悪役令嬢がつくりました!
真鳥カノ
ファンタジー
幼い頃から聖女候補として育った公爵令嬢レティシアは、婚約者である王子から突然、婚約破棄を宣言される。
花や植物に『恵み』を与えるはずの聖女なのに、何故か花を枯らしてしまったレティシアは「偽聖女」とまで呼ばれ、どん底に落ちる。
だけどレティシアの力には秘密があって……?
せっかくだからのんびり花や野菜でも育てようとするレティシアは、どこでもやらかす……!
レティシアの力を巡って動き出す陰謀……?
色々起こっているけれど、私は今日も野菜を作ったり食べたり忙しい!
毎日2〜3回更新予定
だいたい6時30分、昼12時頃、18時頃のどこかで更新します!
悪役令嬢になるのも面倒なので、冒険にでかけます
綾月百花
ファンタジー
リリーには幼い頃に決められた王子の婚約者がいたが、その婚約者の誕生日パーティーで婚約者はミーネと入場し挨拶して歩きファーストダンスまで踊る始末。国王と王妃に謝られ、贈り物も準備されていると宥められるが、その贈り物のドレスまでミーネが着ていた。リリーは怒ってワインボトルを持ち、美しいドレスをワイン色に染め上げるが、ミーネもリリーのドレスの裾を踏みつけ、ワインボトルからボトボトと頭から濡らされた。相手は子爵令嬢、リリーは伯爵令嬢、位の違いに国王も黙ってはいられない。婚約者はそれでも、リリーの肩を持たず、リリーは国王に婚約破棄をして欲しいと直訴する。それ受け入れられ、リリーは清々した。婚約破棄が完全に決まった後、リリーは深夜に家を飛び出し笛を吹く。会いたかったビエントに会えた。過ごすうちもっと好きになる。必死で練習した飛行魔法とささやかな攻撃魔法を身につけ、リリーは今度は自分からビエントに会いに行こうと家出をして旅を始めた。旅の途中の魔物の森で魔物に襲われ、リリーは自分の未熟さに気付き、国営の騎士団に入り、魔物狩りを始めた。最終目的はダンジョンの攻略。悪役令嬢と魔物退治、ダンジョン攻略等を混ぜてみました。メインはリリーが王妃になるまでのシンデレラストーリーです。
宮廷から追放された聖女の回復魔法は最強でした。後から戻って来いと言われても今更遅いです
ダイナイ
ファンタジー
「お前が聖女だな、お前はいらないからクビだ」
宮廷に派遣されていた聖女メアリーは、お金の無駄だお前の代わりはいくらでもいるから、と宮廷を追放されてしまった。
聖国から王国に派遣されていた聖女は、この先どうしようか迷ってしまう。とりあえず、冒険者が集まる都市に行って仕事をしようと考えた。
しかし聖女は自分の回復魔法が異常であることを知らなかった。
冒険者都市に行った聖女は、自分の回復魔法が周囲に知られて大変なことになってしまう。
運命に勝てない当て馬令嬢の幕引き。
ぽんぽこ狸
恋愛
気高き公爵家令嬢オリヴィアの護衛騎士であるテオは、ある日、主に天啓を受けたと打ち明けられた。
その内容は運命の女神の聖女として召喚されたマイという少女と、オリヴィアの婚約者であるカルステンをめぐって死闘を繰り広げ命を失うというものだったらしい。
だからこそ、オリヴィアはもう何も望まない。テオは立場を失うオリヴィアの事は忘れて、自らの道を歩むようにと言われてしまう。
しかし、そんなことは出来るはずもなく、テオも将来の王妃をめぐる運命の争いの中に巻き込まれていくのだった。
五万文字いかない程度のお話です。さくっと終わりますので読者様の暇つぶしになればと思います。
投獄された聖女は祈るのをやめ、自由を満喫している。
七辻ゆゆ
ファンタジー
「偽聖女リーリエ、おまえとの婚約を破棄する。衛兵、偽聖女を地下牢に入れよ!」
リーリエは喜んだ。
「じゆ……、じゆう……自由だわ……!」
もう教会で一日中祈り続けなくてもいいのだ。
婚約破棄された私は、処刑台へ送られるそうです
秋月乃衣
恋愛
ある日システィーナは婚約者であるイデオンの王子クロードから、王宮敷地内に存在する聖堂へと呼び出される。
そこで聖女への非道な行いを咎められ、婚約破棄を言い渡された挙句投獄されることとなる。
いわれの無い罪を否定する機会すら与えられず、寒く冷たい牢の中で断頭台に登るその時を待つシスティーナだったが──
他サイト様でも掲載しております。
聖女召喚に巻き込まれた挙句、ハズレの方と蔑まれていた私が隣国の過保護な王子に溺愛されている件
バナナマヨネーズ
恋愛
聖女召喚に巻き込まれた志乃は、召喚に巻き込まれたハズレの方と言われ、酷い扱いを受けることになる。
そんな中、隣国の第三王子であるジークリンデが志乃を保護することに。
志乃を保護したジークリンデは、地面が泥濘んでいると言っては、志乃を抱き上げ、用意した食事が熱ければ火傷をしないようにと息を吹きかけて冷ましてくれるほど過保護だった。
そんな過保護すぎるジークリンデの行動に志乃は戸惑うばかり。
「私は子供じゃないからそんなことしなくてもいいから!」
「いや、シノはこんなに小さいじゃないか。だから、俺は君を命を懸けて守るから」
「お…重い……」
「ん?ああ、ごめんな。その荷物は俺が持とう」
「これくらい大丈夫だし、重いってそういうことじゃ……。はぁ……」
過保護にされたくない志乃と過保護にしたいジークリンデ。
二人は共に過ごすうちに知ることになる。その人がお互いの運命の人なのだと。
全31話
現聖女ですが、王太子妃様が聖女になりたいというので、故郷に戻って結婚しようと思います。
和泉鷹央
恋愛
聖女は十年しか生きられない。
この悲しい運命を変えるため、ライラは聖女になるときに精霊王と二つの契約をした。
それは期間満了後に始まる約束だったけど――
一つ……一度、死んだあと蘇生し、王太子の側室として本来の寿命で死ぬまで尽くすこと。
二つ……王太子が国王となったとき、国民が苦しむ政治をしないように側で支えること。
ライラはこの契約を承諾する。
十年後。
あと半月でライラの寿命が尽きるという頃、王太子妃ハンナが聖女になりたいと言い出した。
そして、王太子は聖女が農民出身で王族に相応しくないから、婚約破棄をすると言う。
こんな王族の為に、死ぬのは嫌だな……王太子妃様にあとを任せて、村に戻り幼馴染の彼と結婚しよう。
そう思い、ライラは聖女をやめることにした。
他の投稿サイトでも掲載しています。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる