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第二章 魔法学園へ!
17.彼の入学理由
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そこにいたのはサラサラとした黒髪を持ち、赤い瞳を向けているレインハルト・バトラーだった。
ま、まさかの同じクラス……!!
反射的に顔を勢いよく、背けてしまう。
しかもよりによって、隣の席!?
神様、どうしても彼に私を断罪させたいのですか。
ひどすぎる、先ほど立ち向かうと決めたばかりの運命だったが、こうまでくると呪われているとしか思えない。涙が出そうだ。
「また会ったな」
低い声がかけられ、おずおずと顔を向ける。レインハルトは笑みを浮かべている。
「……なんでいるの」
思わず聞いてしまう。不躾な質問に、レインハルトは目をパチクリとさせた。
「貴族、ましてやあなたの立場なら、帝国アカデミーに通うのが普通じゃない。いったい、どういうこと?」
「失礼だぞ、貴様!!」
その時、背後から怒声が聞こえ、振り返る。
そこにいたのは黒髪に黒ぶちのメガネをかけた、背が高くひょろっとした細身の男子生徒。彼はメガネの中央をクイッと指で押す。
「レインハルト様になんたる口をきくのだ!!」
誰、この人……。
急に現れた人物は、ギャーギャー息巻いている。
「やめろ、レオネル」
突如、レインハルトの低い声が響く。レオネルと呼ばれた生徒は目を見開き、ハッと我に返る。
「失礼しました」
ガバッと頭を下げるレオネルに、レインハルトはため息をつく。
「紹介しよう。彼はレオネル。俺の側近だ」
わざわざお付きを連れてまで、この学園に通うのか。ますます彼の考えは読めない。
「俺の立場だからこそ、この学園を選んだんだ」
首を傾げる私に、レインハルトは続ける。
「この学園は貴族だけではなく、様々な身分の人々と接する機会があるだろう。帝国アカデミーで貴族だけの繋がりを持つより、貴重な体験となるはずだ」
予想外の返答を聞き、うなった。
確かに大人になれば嫌でも貴族としか付き合わなくなるだろう。だけど、一国の王太子がたった一人の共だけだなんて。しかも同じ歳の生徒。なにかあった場合、対処できるのだろうか。
チラッと見れば、レオネルと目が合った。彼はメガネの中央をクイッと指で押す。
「なにか? 私がレインハルト様の側近で不満でも?」
「いえ、別に……」
考えが見透かされたようだ。結構目ざとくて内心ギクッとする。
「私の喜びはレインハルト様のお側にいること!! この命をかけて尽すく、それこそが私の生まれてきた使命!!」
また暑苦しいのがきたわね。
彼はループ前にはいなかった。いたら絶対忘れない、こんなに濃いキャラ。
「それよりも――」
レインハルトは私の顔をジッとのぞき込む。
「レイテシア・ローレンス」
「えっ?」
急に名前を呼ばれたので驚いた。彼はいたずらが成功したような顔で微笑んだ。
「お前の名前、次に会った時までに当てる約束だっただろう?」
「どうして……」
どこで私の名前を知ったのだろう。心臓がドクドクと音を出した。
「名簿の一覧を見て気づいた。ローレンス家は建国祭にも出席する侯爵家。式で見かけて間違いないと確信したし、入学前のテストで次席だったと教師が話していた」
なに、その推理。鋭すぎてぐぅの音も出ない。
「それで、貴族が入学する帝国アカデミーに通わずに、どうしてここに入学したんだ? レイテシア」
しかも同じ質問を返されたーー!!
にっこりと微笑むレインハルト。あなたから逃げたくてこの魔法学園を選んだの。だけど、どうして同じ学園、よりによってのクラスメイトに隣の席。
「なんだか、俺たち、こんなところで会うなんて、運命感じないか?」
ちょっと止めてよ、運命なんてあなたの口から聞かされると、背中がぞわぞわするんですけど。私は運命を変えたくて必死なんだから!!
ちょっと頬を染めるレインハルトを前にして、私の思惑とは全然別の方向に作用しているとは、口が裂けても言えなかった。
その後、レインハルトは周囲の注目を集めていた。だが、ちょっと遠巻きにされている感じで、皆がチラチラと視線を投げるけれど、誰も話しかけようとはしなかった。一国の王太子なのだから、この反応は当たり前だろう。私たちの教室は異様な緊張感が漂っている。
やがて教師が入室し、皆がそれぞれ挨拶をすることとなった。席の端から順番に自己紹介をし、ついにレインハルトの番になった。
「式でも挨拶をしたが、レインハルト・バトラーだ。ここでは身分という垣根を越えて、皆と仲良くしたいと思っている。敬語など堅苦しいことは抜きにして、個人として付き合ってくれたら嬉しい」
笑顔で堂々と挨拶をするが、クラスメイトたちは、完全に気圧されている。そりゃそうだ。
やがて私の番になる。
「レイテシア・ローレンスです。この学園では薬草について学びたいと思っています。よろしくお願いします」
月並みな挨拶をし、ぺこりと頭を下げて着席する。
「なぁ、お前、薬草士でも目指すのか?」
「そうだけど。この学園は薬草士を多く選出していると聞いたから」
そうよ、私はバッドエンドを回避目的だけでなく、己の力を最大限に伸ばすために、この学園にきた。力をつければ、ある程度は自分の身に何が起きても対処できるはず。
まずは、このクラス、いや、学年のトップを狙うのだ。
そのためにも、レインハルトにだって負けてなどいられない。
息を深く吸い込み、決意する。
「俺も負けていられないな」
トップ入学がなにを言いますか。けど、見ていなさいよ。その座を奪ってやるわ。メラメラと熱くたぎる闘志を燃やす。
「言っておくけど、私も負けないから」
宣言すると、一瞬、おや、という顔をした。
なによ、私ごときがレインハルトに宣戦布告をしたのが面白かったのかしら。
「そうか。お互いがいい刺激になるといいな」
満面の笑みを見せたレインハルト。美形の微笑みに当てられて、一瞬胸がドキリとした。慌てて視線を逸らす。
いけない、いけない。彼の笑顔に惹かれて、ループ前の二の舞になったらごめんだわ。今世では、まずは恋愛は封印すると決めたんだから。暗い塔に閉じ込められて一生を終えるだなんて、もう二度と味わいたくない。
やがて最後の生徒の自己紹介になった。
その男子生徒はボサボサの頭で、前髪が長く、目が見えない。あれで前を歩けるのか気になるぐらいだ。おまけに制服はダボダボでどうみてもサイズが大きい。誰かのお下がりなのだろうか。
「ロン・フランクスです。よろしくお願いします」
えっ……!?
抑揚のない声で挨拶をする彼の名前を聞き、驚いて声が出そうになった。
ま、まさかの同じクラス……!!
反射的に顔を勢いよく、背けてしまう。
しかもよりによって、隣の席!?
神様、どうしても彼に私を断罪させたいのですか。
ひどすぎる、先ほど立ち向かうと決めたばかりの運命だったが、こうまでくると呪われているとしか思えない。涙が出そうだ。
「また会ったな」
低い声がかけられ、おずおずと顔を向ける。レインハルトは笑みを浮かべている。
「……なんでいるの」
思わず聞いてしまう。不躾な質問に、レインハルトは目をパチクリとさせた。
「貴族、ましてやあなたの立場なら、帝国アカデミーに通うのが普通じゃない。いったい、どういうこと?」
「失礼だぞ、貴様!!」
その時、背後から怒声が聞こえ、振り返る。
そこにいたのは黒髪に黒ぶちのメガネをかけた、背が高くひょろっとした細身の男子生徒。彼はメガネの中央をクイッと指で押す。
「レインハルト様になんたる口をきくのだ!!」
誰、この人……。
急に現れた人物は、ギャーギャー息巻いている。
「やめろ、レオネル」
突如、レインハルトの低い声が響く。レオネルと呼ばれた生徒は目を見開き、ハッと我に返る。
「失礼しました」
ガバッと頭を下げるレオネルに、レインハルトはため息をつく。
「紹介しよう。彼はレオネル。俺の側近だ」
わざわざお付きを連れてまで、この学園に通うのか。ますます彼の考えは読めない。
「俺の立場だからこそ、この学園を選んだんだ」
首を傾げる私に、レインハルトは続ける。
「この学園は貴族だけではなく、様々な身分の人々と接する機会があるだろう。帝国アカデミーで貴族だけの繋がりを持つより、貴重な体験となるはずだ」
予想外の返答を聞き、うなった。
確かに大人になれば嫌でも貴族としか付き合わなくなるだろう。だけど、一国の王太子がたった一人の共だけだなんて。しかも同じ歳の生徒。なにかあった場合、対処できるのだろうか。
チラッと見れば、レオネルと目が合った。彼はメガネの中央をクイッと指で押す。
「なにか? 私がレインハルト様の側近で不満でも?」
「いえ、別に……」
考えが見透かされたようだ。結構目ざとくて内心ギクッとする。
「私の喜びはレインハルト様のお側にいること!! この命をかけて尽すく、それこそが私の生まれてきた使命!!」
また暑苦しいのがきたわね。
彼はループ前にはいなかった。いたら絶対忘れない、こんなに濃いキャラ。
「それよりも――」
レインハルトは私の顔をジッとのぞき込む。
「レイテシア・ローレンス」
「えっ?」
急に名前を呼ばれたので驚いた。彼はいたずらが成功したような顔で微笑んだ。
「お前の名前、次に会った時までに当てる約束だっただろう?」
「どうして……」
どこで私の名前を知ったのだろう。心臓がドクドクと音を出した。
「名簿の一覧を見て気づいた。ローレンス家は建国祭にも出席する侯爵家。式で見かけて間違いないと確信したし、入学前のテストで次席だったと教師が話していた」
なに、その推理。鋭すぎてぐぅの音も出ない。
「それで、貴族が入学する帝国アカデミーに通わずに、どうしてここに入学したんだ? レイテシア」
しかも同じ質問を返されたーー!!
にっこりと微笑むレインハルト。あなたから逃げたくてこの魔法学園を選んだの。だけど、どうして同じ学園、よりによってのクラスメイトに隣の席。
「なんだか、俺たち、こんなところで会うなんて、運命感じないか?」
ちょっと止めてよ、運命なんてあなたの口から聞かされると、背中がぞわぞわするんですけど。私は運命を変えたくて必死なんだから!!
ちょっと頬を染めるレインハルトを前にして、私の思惑とは全然別の方向に作用しているとは、口が裂けても言えなかった。
その後、レインハルトは周囲の注目を集めていた。だが、ちょっと遠巻きにされている感じで、皆がチラチラと視線を投げるけれど、誰も話しかけようとはしなかった。一国の王太子なのだから、この反応は当たり前だろう。私たちの教室は異様な緊張感が漂っている。
やがて教師が入室し、皆がそれぞれ挨拶をすることとなった。席の端から順番に自己紹介をし、ついにレインハルトの番になった。
「式でも挨拶をしたが、レインハルト・バトラーだ。ここでは身分という垣根を越えて、皆と仲良くしたいと思っている。敬語など堅苦しいことは抜きにして、個人として付き合ってくれたら嬉しい」
笑顔で堂々と挨拶をするが、クラスメイトたちは、完全に気圧されている。そりゃそうだ。
やがて私の番になる。
「レイテシア・ローレンスです。この学園では薬草について学びたいと思っています。よろしくお願いします」
月並みな挨拶をし、ぺこりと頭を下げて着席する。
「なぁ、お前、薬草士でも目指すのか?」
「そうだけど。この学園は薬草士を多く選出していると聞いたから」
そうよ、私はバッドエンドを回避目的だけでなく、己の力を最大限に伸ばすために、この学園にきた。力をつければ、ある程度は自分の身に何が起きても対処できるはず。
まずは、このクラス、いや、学年のトップを狙うのだ。
そのためにも、レインハルトにだって負けてなどいられない。
息を深く吸い込み、決意する。
「俺も負けていられないな」
トップ入学がなにを言いますか。けど、見ていなさいよ。その座を奪ってやるわ。メラメラと熱くたぎる闘志を燃やす。
「言っておくけど、私も負けないから」
宣言すると、一瞬、おや、という顔をした。
なによ、私ごときがレインハルトに宣戦布告をしたのが面白かったのかしら。
「そうか。お互いがいい刺激になるといいな」
満面の笑みを見せたレインハルト。美形の微笑みに当てられて、一瞬胸がドキリとした。慌てて視線を逸らす。
いけない、いけない。彼の笑顔に惹かれて、ループ前の二の舞になったらごめんだわ。今世では、まずは恋愛は封印すると決めたんだから。暗い塔に閉じ込められて一生を終えるだなんて、もう二度と味わいたくない。
やがて最後の生徒の自己紹介になった。
その男子生徒はボサボサの頭で、前髪が長く、目が見えない。あれで前を歩けるのか気になるぐらいだ。おまけに制服はダボダボでどうみてもサイズが大きい。誰かのお下がりなのだろうか。
「ロン・フランクスです。よろしくお願いします」
えっ……!?
抑揚のない声で挨拶をする彼の名前を聞き、驚いて声が出そうになった。
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