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第一章 運命を変えてやる!
10.狂った計画
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相手は私の剣幕に押されているが、理解不可能といった顔をしている。
「少しは頭を冷やしなさいよ!!」
スッと両手を前に出す。目を閉じて、自分の中にある魔力の通る道、魔道に意識を集中させる。
徐々に手の平が熱くなってくる、魔力がみなぎってくるのを感じる。
スッと息を吸い込み、噴水に手の平を向けた。
「泣かせた女の子の分と、前回私が断罪ルートを迎えることになった発端を作った恨みだから!! 深く反省しなさい!!」
叫ぶと同時に魔力がほとばしり、噴水に向かっていく。水が大きくうねったと思ったら、水柱が男たちを襲う。
頭から水を被った男たちは全身ずぶ濡れになった。
すごい、私ったら、魔力を出すことができたわ。
自分でも信じられなくて両手をジッと見つめた。なにか特技が欲しくて魔力を取得したいと日々励んでいた。まさか、こんなに早く魔力を扱える日がくるなんて……。
やればできる子、レイテシア!!
魔力をうまくコントロールできるようになれば、薬草士として自立するのも夢ではない。
嬉しくて手をグッと握りしめた。
「これに懲りたら、いじめはやらないことね!!」
呆然としている男たちに吐き捨てた。
魔力を使ってループ前の恨みを晴らした。実に清々しい気分だ。
一人、ジーンと感動している時、近づいてくる足音が聞こえた。
フッと振り返る。
そこにいたのは、光にあたって天使の輪が輝く黒髪、端正な顔だちの、同じ年頃の少年。
全身からあふれ出す気品に、なによりも特徴的だったのが、赤い瞳だった。
あっ、あぁぁぁぁぁぁぁああ!!!!
私はその姿を視界に入れると、パクパクと口を開けた。そう、まるで溺れかけの魚のように。
「騒がしいな」
凛とした声が庭園に響く。
周囲をグルッと見回したのは、レインハルト・バトラー。
彼こそがこの国の第一王子、私が決して出会うべきでない人!!!!
なんてことなの!!
まさかの出会ってしまった衝撃で、気が遠くなった。
細心の注意を払っていたはずなのに、怒りと恨みに任せて、しゃしゃり出てしまった。途中から王子のことなど頭からスコーンと抜けていた。
まずい、まずい状況だわ、これは……。
心臓がドクドクと早い鼓動を刻み、早くこの場から退散せよと訴えている。
レインハルトは濡れた男たちに視線を投げたあと、次に私を見た。
彼の赤い瞳に射抜かれた時、絡め取られてしまったように動けなくなった。
「なにをしていたんだ?」
少し首を傾げるレインハルト。無視するわけにもいかない。
「……ちょっと意地悪でしたので、お説教をしたのです」
正直に答えたあとでハッと気づく。
建国祭というおめでたい日に、王宮で騒ぎを起こすなど、処分を下されるかもしれない。私は身構えた。
レインハルトが男たちの顔を見ると、彼らは気まずそうにうつむいている。
「そうか。だから先ほど、魔力を使って水を操ったのだな。なかなかやるじゃないか」
見てたんかい。
感心したようにつぶやくレインハルトにツッコミたくもなる。
レインハルトはこの場で身分こそ明かしていないが、背後にお付きの人が控えているので、皆が高い身分だと察しているだろう。それに彼の赤い瞳に気づいたら、一発で王族だとわかる。
だが、まだ気づいていない振りはできる。
押し通そう、私は目の前にいるレインハルトが王子だと知らないのだ。
「それはそうと、風邪をひく。早く着替えるといい」
レインハルトが視線を投げると、彼らはきまり悪そうにうつむいた。
「これに懲りたら意地悪などするなよ」
最後にチクリと刺すのも忘れなかった。男たちはお付きの男性に連れられ、すごすごと退散した。
その後ろを眺めていると、レインハルトは私と向き合った。
「さて――」
髪をかき上げる仕草にドキッとした。
「お前の名前はなんていうんだ?」
はいきた、フラグが立つよ、立ってしまうよ。私の足がガクガクと震え始めた。まるで生まれたての小鹿のよう。
だが、どうやっても名乗りたくなくて、必死に頭を張り巡らせた。
「あっ、当ててください」
「当てる?」
レインハルトは怪訝な表情を浮かべる。当たり前だ。だが私はゴリ押しすると決めた。
「ええ。簡単に名乗ってはつまらないでしょう?」
ニコッと笑顔でごまかした。
その反面、背中は冷たい汗がダラダラと流れる。
レインハルトは顎に手を添え、考え込んでいる。今の隙に逃げ出してしまいたい。
「そうか。それもまた楽しいかもしれない」
レインハルトの顔がパアッと輝いた。しまった、逆効果だったか!!
苦し紛れに出した自分の提案に首を絞められている結果だ。
そして彼はスッと手を差し出した。
「俺はレインハルト・バトラー。この国の第一王子だ」
うん、知ってる……!!
彼が名乗ったことで聞き耳を立てていた周囲がざわつき始めた。こうなるから嫌だったのだ。彼と一緒にいれば、嫌でも注目を浴びるに決まっている。
できれば名乗ることなく、この場からフェードアウトしたい。頬が引きつるが、必死に押し隠す。
「この建国祭の間にお前の名前をあてて見せるから」
どうやらレインハルトの興味をひいてしまったようだ。
屈託のない笑みを浮かべる彼を前にして、気が遠くなった。
「少しは頭を冷やしなさいよ!!」
スッと両手を前に出す。目を閉じて、自分の中にある魔力の通る道、魔道に意識を集中させる。
徐々に手の平が熱くなってくる、魔力がみなぎってくるのを感じる。
スッと息を吸い込み、噴水に手の平を向けた。
「泣かせた女の子の分と、前回私が断罪ルートを迎えることになった発端を作った恨みだから!! 深く反省しなさい!!」
叫ぶと同時に魔力がほとばしり、噴水に向かっていく。水が大きくうねったと思ったら、水柱が男たちを襲う。
頭から水を被った男たちは全身ずぶ濡れになった。
すごい、私ったら、魔力を出すことができたわ。
自分でも信じられなくて両手をジッと見つめた。なにか特技が欲しくて魔力を取得したいと日々励んでいた。まさか、こんなに早く魔力を扱える日がくるなんて……。
やればできる子、レイテシア!!
魔力をうまくコントロールできるようになれば、薬草士として自立するのも夢ではない。
嬉しくて手をグッと握りしめた。
「これに懲りたら、いじめはやらないことね!!」
呆然としている男たちに吐き捨てた。
魔力を使ってループ前の恨みを晴らした。実に清々しい気分だ。
一人、ジーンと感動している時、近づいてくる足音が聞こえた。
フッと振り返る。
そこにいたのは、光にあたって天使の輪が輝く黒髪、端正な顔だちの、同じ年頃の少年。
全身からあふれ出す気品に、なによりも特徴的だったのが、赤い瞳だった。
あっ、あぁぁぁぁぁぁぁああ!!!!
私はその姿を視界に入れると、パクパクと口を開けた。そう、まるで溺れかけの魚のように。
「騒がしいな」
凛とした声が庭園に響く。
周囲をグルッと見回したのは、レインハルト・バトラー。
彼こそがこの国の第一王子、私が決して出会うべきでない人!!!!
なんてことなの!!
まさかの出会ってしまった衝撃で、気が遠くなった。
細心の注意を払っていたはずなのに、怒りと恨みに任せて、しゃしゃり出てしまった。途中から王子のことなど頭からスコーンと抜けていた。
まずい、まずい状況だわ、これは……。
心臓がドクドクと早い鼓動を刻み、早くこの場から退散せよと訴えている。
レインハルトは濡れた男たちに視線を投げたあと、次に私を見た。
彼の赤い瞳に射抜かれた時、絡め取られてしまったように動けなくなった。
「なにをしていたんだ?」
少し首を傾げるレインハルト。無視するわけにもいかない。
「……ちょっと意地悪でしたので、お説教をしたのです」
正直に答えたあとでハッと気づく。
建国祭というおめでたい日に、王宮で騒ぎを起こすなど、処分を下されるかもしれない。私は身構えた。
レインハルトが男たちの顔を見ると、彼らは気まずそうにうつむいている。
「そうか。だから先ほど、魔力を使って水を操ったのだな。なかなかやるじゃないか」
見てたんかい。
感心したようにつぶやくレインハルトにツッコミたくもなる。
レインハルトはこの場で身分こそ明かしていないが、背後にお付きの人が控えているので、皆が高い身分だと察しているだろう。それに彼の赤い瞳に気づいたら、一発で王族だとわかる。
だが、まだ気づいていない振りはできる。
押し通そう、私は目の前にいるレインハルトが王子だと知らないのだ。
「それはそうと、風邪をひく。早く着替えるといい」
レインハルトが視線を投げると、彼らはきまり悪そうにうつむいた。
「これに懲りたら意地悪などするなよ」
最後にチクリと刺すのも忘れなかった。男たちはお付きの男性に連れられ、すごすごと退散した。
その後ろを眺めていると、レインハルトは私と向き合った。
「さて――」
髪をかき上げる仕草にドキッとした。
「お前の名前はなんていうんだ?」
はいきた、フラグが立つよ、立ってしまうよ。私の足がガクガクと震え始めた。まるで生まれたての小鹿のよう。
だが、どうやっても名乗りたくなくて、必死に頭を張り巡らせた。
「あっ、当ててください」
「当てる?」
レインハルトは怪訝な表情を浮かべる。当たり前だ。だが私はゴリ押しすると決めた。
「ええ。簡単に名乗ってはつまらないでしょう?」
ニコッと笑顔でごまかした。
その反面、背中は冷たい汗がダラダラと流れる。
レインハルトは顎に手を添え、考え込んでいる。今の隙に逃げ出してしまいたい。
「そうか。それもまた楽しいかもしれない」
レインハルトの顔がパアッと輝いた。しまった、逆効果だったか!!
苦し紛れに出した自分の提案に首を絞められている結果だ。
そして彼はスッと手を差し出した。
「俺はレインハルト・バトラー。この国の第一王子だ」
うん、知ってる……!!
彼が名乗ったことで聞き耳を立てていた周囲がざわつき始めた。こうなるから嫌だったのだ。彼と一緒にいれば、嫌でも注目を浴びるに決まっている。
できれば名乗ることなく、この場からフェードアウトしたい。頬が引きつるが、必死に押し隠す。
「この建国祭の間にお前の名前をあてて見せるから」
どうやらレインハルトの興味をひいてしまったようだ。
屈託のない笑みを浮かべる彼を前にして、気が遠くなった。
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