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第一章 運命を変えてやる!
7.気が重い出席
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それから私は日々、薬草図鑑を片手に領地の森にいりびたる。
「これはリーストの葉、そしてコーリンの根」
薬草片手に図鑑と見比べる。リーストの葉は胃腸が弱った時に、コーリンの根は風邪に効果がある。
「あとは魔力ね」
人々は生まれながらにして魔力の通る魔道という道がある。ある程度魔力を使いこなすには才能とセンスが必要だ。
自分には魔力はないと思い込み、あきらめていたループ前。
薬草士は作った薬に、魔力で更に力を入れる。すると効果が倍になると言われている。
今世の私は魔力を使いこなして、薬草士の資格を手に入れたい。
そのためにも努力を惜しまない。
******
夕食時、父が口を開く。
「一か月後の建国祭に皆で出席するから、準備するように」
父から聞き、手に持つスプーンを落としそうになった。
建国祭、この国が誕生したことを国民皆で祝う催しだ。街に華やかなパレード、貴族たちは舞踏会が開催され、にぎやかな日となる。
国民の皆が楽しみにしている祭りだ。
だが建国祭と聞き、手が震えるほど心臓がドクドクと脈を打つ。
なぜなら――ここで私と王子は初めて出会うのだ。
出来ることならば、出会いから回避したい。
「ハロルドもレイテシアも準備をしておくように。フローレンス家として恥ずかしくない行動をするのだ」
父の言葉が重圧となり、グッと言葉に詰まる。
どうしよう、行きたくないとか言える雰囲気ではない。
「レイテシア、ドレスを新調しなさい。二人共、体調を万全にして出席するのだぞ。当日は王に謁見もあるのだから」
「……はい、お父様、ありがとうございます」
私は浮かない返事をした。
ここまで言われたら出席するしかない。
しっかりするのよ、レイテシア。関わらなければいいだけだ。
今はまだ、顔見知りですらない関係なのだから。
胸に手を当て、自分自身に言い聞かせた。
******
そして建国祭当日。
新調したドレスに身を包む。
贅沢に使用したレースと、スカートに施されたフリルが可愛らしい。優しい色合いの柔らかい雰囲気だ。
「お綺麗ですわ、レイテシア様」
着替えを手伝ってくれるメイドが私を褒めてくれる。
「ありがとう」
ループ前はメイドたちからも疎まれていた。それは彼女たちの態度の端々にも感じていた。
だがここ最近では、彼女たちの態度にも変化が見られるようになっていた。
「こちらのネックレスはお嬢様の瞳の色とお揃いで、とっても素敵ですわ」
紫色の一粒の宝石の、大人っぽいアクセサリが私の首元で輝く。
「お似合いですわ」
やはりマーサをクビにしたことで、ある種の見せしめにもなったのだろう。
馬鹿にする人間が一人でもいると、周囲にもその感情が伝染するものだ。
メイド達は嬉々として私を着飾ってくれる。まるで着せ替え人形になったみたいだ。
「準備はできたか!!」
その時、ノックもなしに扉が開く。
ひょっこり顔を出したのはハロルドだった。髪を後ろになでつけて正装に身を包む。
その姿はいつもより凛々しい。私に虫を見せ、蛇を投げつけた同一人物とは思えない。人は見た目でこうも印象が変わるのか。
「お兄様、ノックもしないで失礼ですわよ」
「なんだよ、もう着替え終えているからいいじゃないか」
対するハロルドは悪びれることなく、私に近づいた。
そして頭のてっぺんからつま先までジロジロと眺めたあと、腕を組んだ。
「ふうん。まあ、いつもよりましになった」
「ありがとうございます。お兄様もいつもよりましですわ」
ツンと顎を上げるとハロルドは噴き出した。
「お前も言うようになったな」
なにが面白かったのか、彼は笑い出した。
そしてひとしきり笑ったあと、ハロルドは私の頭をポンポンとなでた。
「前のお前だったら、俺に近寄りもしないどころか、なにを言われても暗い顔してうつむくだけだったくせに。可愛げがなくなったなー」
私への不満を述べているが、口調は軽く、どこか楽しそうだ。
「お兄様に鍛えられたのですわ」
私もひるむことなく、言い返した。
実際、ハロルドとの関係は変わった。
彼はなにかと私を構ってくる。前は極力接しないようにしていたが、最近ではちゃんと向き合っている。そうすると不思議なもので、口は悪いし時にはいたずらも度が過ぎるけれど、そう悪くない兄だと思えるようになった。兄というよりケンカ仲間みたいな感覚だ。自分でもこんな短期間で関係が変わったことに驚いている。
これも彼が投げ入れてくれた蛇のおかげなのだろうか。認めたくはないが。
「まあ、いい。そろそろ時間だから行くぞ。お父様がエントランスフロアで待っている」
「ええ」
そしてハロルドと共に階下へ向かった。
「これはリーストの葉、そしてコーリンの根」
薬草片手に図鑑と見比べる。リーストの葉は胃腸が弱った時に、コーリンの根は風邪に効果がある。
「あとは魔力ね」
人々は生まれながらにして魔力の通る魔道という道がある。ある程度魔力を使いこなすには才能とセンスが必要だ。
自分には魔力はないと思い込み、あきらめていたループ前。
薬草士は作った薬に、魔力で更に力を入れる。すると効果が倍になると言われている。
今世の私は魔力を使いこなして、薬草士の資格を手に入れたい。
そのためにも努力を惜しまない。
******
夕食時、父が口を開く。
「一か月後の建国祭に皆で出席するから、準備するように」
父から聞き、手に持つスプーンを落としそうになった。
建国祭、この国が誕生したことを国民皆で祝う催しだ。街に華やかなパレード、貴族たちは舞踏会が開催され、にぎやかな日となる。
国民の皆が楽しみにしている祭りだ。
だが建国祭と聞き、手が震えるほど心臓がドクドクと脈を打つ。
なぜなら――ここで私と王子は初めて出会うのだ。
出来ることならば、出会いから回避したい。
「ハロルドもレイテシアも準備をしておくように。フローレンス家として恥ずかしくない行動をするのだ」
父の言葉が重圧となり、グッと言葉に詰まる。
どうしよう、行きたくないとか言える雰囲気ではない。
「レイテシア、ドレスを新調しなさい。二人共、体調を万全にして出席するのだぞ。当日は王に謁見もあるのだから」
「……はい、お父様、ありがとうございます」
私は浮かない返事をした。
ここまで言われたら出席するしかない。
しっかりするのよ、レイテシア。関わらなければいいだけだ。
今はまだ、顔見知りですらない関係なのだから。
胸に手を当て、自分自身に言い聞かせた。
******
そして建国祭当日。
新調したドレスに身を包む。
贅沢に使用したレースと、スカートに施されたフリルが可愛らしい。優しい色合いの柔らかい雰囲気だ。
「お綺麗ですわ、レイテシア様」
着替えを手伝ってくれるメイドが私を褒めてくれる。
「ありがとう」
ループ前はメイドたちからも疎まれていた。それは彼女たちの態度の端々にも感じていた。
だがここ最近では、彼女たちの態度にも変化が見られるようになっていた。
「こちらのネックレスはお嬢様の瞳の色とお揃いで、とっても素敵ですわ」
紫色の一粒の宝石の、大人っぽいアクセサリが私の首元で輝く。
「お似合いですわ」
やはりマーサをクビにしたことで、ある種の見せしめにもなったのだろう。
馬鹿にする人間が一人でもいると、周囲にもその感情が伝染するものだ。
メイド達は嬉々として私を着飾ってくれる。まるで着せ替え人形になったみたいだ。
「準備はできたか!!」
その時、ノックもなしに扉が開く。
ひょっこり顔を出したのはハロルドだった。髪を後ろになでつけて正装に身を包む。
その姿はいつもより凛々しい。私に虫を見せ、蛇を投げつけた同一人物とは思えない。人は見た目でこうも印象が変わるのか。
「お兄様、ノックもしないで失礼ですわよ」
「なんだよ、もう着替え終えているからいいじゃないか」
対するハロルドは悪びれることなく、私に近づいた。
そして頭のてっぺんからつま先までジロジロと眺めたあと、腕を組んだ。
「ふうん。まあ、いつもよりましになった」
「ありがとうございます。お兄様もいつもよりましですわ」
ツンと顎を上げるとハロルドは噴き出した。
「お前も言うようになったな」
なにが面白かったのか、彼は笑い出した。
そしてひとしきり笑ったあと、ハロルドは私の頭をポンポンとなでた。
「前のお前だったら、俺に近寄りもしないどころか、なにを言われても暗い顔してうつむくだけだったくせに。可愛げがなくなったなー」
私への不満を述べているが、口調は軽く、どこか楽しそうだ。
「お兄様に鍛えられたのですわ」
私もひるむことなく、言い返した。
実際、ハロルドとの関係は変わった。
彼はなにかと私を構ってくる。前は極力接しないようにしていたが、最近ではちゃんと向き合っている。そうすると不思議なもので、口は悪いし時にはいたずらも度が過ぎるけれど、そう悪くない兄だと思えるようになった。兄というよりケンカ仲間みたいな感覚だ。自分でもこんな短期間で関係が変わったことに驚いている。
これも彼が投げ入れてくれた蛇のおかげなのだろうか。認めたくはないが。
「まあ、いい。そろそろ時間だから行くぞ。お父様がエントランスフロアで待っている」
「ええ」
そしてハロルドと共に階下へ向かった。
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