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森の歩道を歩いている間もずっと涙が止まらなかった。
ヒルデバルドは先頭を歩き、私を中心に騎士が取り囲んで進む。
これじゃあ逃げることはもちろんのこと、誰も私に近づくことさえできないだろう。この対応はまるで、どこかのお姫様と勘違いしているんじゃない?
考えて自嘲気味に笑うが、それすらも泣けてくる。
ふと甘い香りがすることに気づき、顔を上げた。
そこには白い花弁を持つルシアが咲き誇っていた。
私が大好きな花だ。その香りを楽しむため、よく摘んで帰っては小屋に飾っていたっけ。
目につくものすべてが悲しく思え、涙が止まらない。
足を止めてルシアを見ていることに気づいたヒルデバルドも歩みを止め、私をじっと見ている。
目をゴシゴシと手でこすると、ヒルデバルドは胸元に手を入れた。
「お使いください。瞼が腫れてしまわれます」
スッと差し出されたハンカチーフは白地に銀糸の刺繍が入っていた。
「いえ、結構です」
だが意地もあり、かたくなに拒否する。同情なんてされたくない。そもそもあなたがここに来なければ、今頃私は平和な日常を送っていたはずだ。
やり場のない怒りと悲しみ、感情が交差する。今の気持ちをどう表現するべきか、私にはわからない。
ただ流れる涙をそのまま自然に任せた。
ようやくオウルの森を抜ける。
そこには何台もの馬車が並び、騎士たちも数名待機していた。
なぜこんなに大勢で私を迎えにきたのだろう。人数の多さに尻込みする。
「さぁ、疲れたでしょう。お乗りください」
立ち並ぶ中でも一番上等だと思われる黒塗りの馬車の扉を開け、ヒルデバルドは深く頭を下げた。
私は躊躇しながらもシートに腰かけると、ヒルデバルドは扉に手をかけた。
「ここからしばらく馬車で進みます。最初はこまめに休憩を取りましょう。そして夜は街の宿を手配します。順調に進みますと、王都までは五日かかると思います」
五日も移動にかかると聞き、ショックだった。
せめて一日ぐらいなら、自力で帰ることもできるかもしれないと考えていたからだ。
ヒルデバルドは私の考えなど、まるでお見通しだといわんばかりに柔らかく笑った。
「では、ごゆっくりお休みください」
ゆっくりなんてできるわけがない。返事をしないまま、馬車が連なり出発した。
* * *
ハッと気づいて瞼を開けた。
どうやら馬車に揺られてすぐに、泣き疲れて眠ってしまったらしい。時間がたって目は熱を持ち、腫れてきたかもしれない。瞼が重い感覚がある。
ひどい顔をしているんだろうな、私。
そっと瞼を手で触れながらぼんやりと思った。
窓から見える知らない景色は、なおさら私を不安にさせる。
一時間ぐらい眠ってしまった気がする。ここはどこら辺なのだろうか。
ぼんやりと考えていると、馬車が徐々にスピードを落とす。やがて湖が見えた。太陽の光を浴びて水面がキラキラと輝いている。こっちの世界で初めて見るので心が動いた。
やがて馬車が湖の側でゆっくりと停車した。しばらくすると扉がノックされたので、小さく返事をする。
「ここら辺で休憩しましょう。どうぞ、降りてください」
扉が開かれた瞬間、冷たい風を肌で感じる。馬車を降りると爽快な空気を深く吸い込んだ。立ち並ぶ木々の間を移動するリスを見つけ、自然と頬がほころんだ。
透明感のある水面は魚が群れをなして泳いでいるのが見れた。ほとりでは花が咲き誇り、風に揺れている。
自然に囲まれた風景にホッとして、いくぶん緊張が解けた。騎士たちも私と一定の距離を保ち、めいめいに休んでいた。
オウルの森から、どのぐらい離れてしまったのだろう。
そんなことを考えてしまうと表情が曇る。
湖のほとりに立ち、ぼんやりと考えごとしていたら、人の気配を感じる。
「疲れましたか?」
ヒルデバルドは、こちらの様子をうかがうような表情を向ける。
「ええ、急だったものですから。心の準備など、いろいろできませんでしたので」
彼の質問に、つい意地悪な返答をしたくもなる。
「すみません。ですが、それほどまであなた様の存在を、人々が待ちわびています」
本当にそんな人が存在するのだろうか。そう簡単に信じることなどできない。
「失礼ですが、インぺリア国について、どれほど知っていますか?」
「――別に、なにも」
うつむいて小さく首をふった。
私がこの世界に迷い込んでから、オウルの森とサーラがすべてだった。
そして時折たずねるルルドの村と。
狭い世界だと人が聞いたら笑うだろう。だが毎日学び、生活していくのに必死だった。それがいきなりインぺリア国について知っているかだなんて、知る由もない。
「リーン様に説明することも私の仕事です。到着するまでの間、お話ししてもよろしいでしょうか」
ちょうどいい。私も彼に聞きたいことはたくさんある。
なぜ今頃になって迎えにきたのか。――ほうっておいてくれたら良かったのに。
恨み言になる言葉をグッと呑み込み、唇を噛みしめた。
「インぺリア国はこの世界を統べる大国になります。軍事力、貿易など、すべてにおいて世界の中心です。我が国には時折、異なる世界の存在が迷い込みます。文化も生活も違う彼らを、インぺリア国では、保護して丁重に扱う決まりとなっています。彼らは「異世界からの落ち人」と呼ばれます」
ヒルデバルドはスッと膝を折る。
「そして最初に説明しましたが、神殿の巫女から、オウルの森の奥深くに、異世界からの落ち人がいると神託があったのです。詳しい神託は王本人が授かっております。オウルの森の異世界の落ち人は、この国にとって、なくてはならない存在だと告げられました。それがリーン様のことです」
まっすぐに私の目を見つめるヒルデバルドの視線から、サッと逸らす。
「それがなぜ私なのですか。私は特別な力などありません」
過剰な期待をしてもらっても困る。
「いいえ。神殿の神託は絶対です。だからこそ、あなたを探していたのです。悪事を考え、王族より先にあなたを保護した挙句、甘い言葉で操り、利用しようと考える輩はどこにだっています」
私に期待するほどの利用価値はない。鼻で笑う。
「王城に行き、まずはディオリュクス王に謁見していただきます」
「ディオリュクス王……」
初めて耳にする名前に反応した。
「はい、ディオリュクス王から、聖女の称号を与えられることになると思います。王という後ろ盾を手にし、あなたは王の物となることを意味します」
告げられた言葉に、ついカッとなる。
「私は物ではありませんから!!」
自分で口にしながら、肩が震える。
「王の物ということは、大変名誉なことであると同時に、誰にも手を出されない、つまりあなたを脅かす人はいないということです」
「ですが……!!」
納得がいかずに憤る。ヒルデバルドはなだめるように手で制した。
「最高権力である後ろ盾を手に入れるという意味です。リーン様は最高のカードを手に入れたと思ってください」
そんな使いどころのわからないカードなど私には不要に思える。
どう説明をすればわかってもらえるのだろう。
人より上にいきたいとか、そんな気持ちなどなく、私はただ平穏に暮らしたいだけなのに――。
「では仮に、そのディオリュクス王というお方が私を所持する形になったとします。そのお方が不要だと私を切り捨ててくださったのなら、オウルの森へ帰れるのでしょうか?」
私は一番聞きたかったことを、切り出した。緊張で震えるが、ギュッと手を握りしめた。
ヒルデバルドは真面目な顔で私をじっと見ている。やがてフッと柔らかな笑みを見せた。
「王もリーン様に会えるのを、それはそれは楽しみにしております。よほど待ち遠しいのか、みずから迎えに来ると仰ったほどです」
ただ神託がくだっただけで、なぜそこまで思い込むのか。この話には裏があると感じる。
「ディオリュクス王は王族特有のまばゆい金の髪に深い青の瞳を持っておられます。端正な顔だちで気高く、大変魅力的な二十一歳の若き王です」
彼のどこかうさんくさい笑みなど、信用してはいけない。警戒し、目を細めた。
「では、そろそろ出発しましょう。今日はこの先のテティスの街で昼食を取り、そこからは一気に足を進め、ラグドンの街で宿を取る予定です」
「そうですか……」
「これからも質問など出ると思います。いつでも聞いてください」
すべてが不安でわからない。
でも聞いたところで、この感情を払拭できるものでもない。今は余計な感情をすべて消し去り、ただ一人になりたいと思った。
ヒルデバルドは先頭を歩き、私を中心に騎士が取り囲んで進む。
これじゃあ逃げることはもちろんのこと、誰も私に近づくことさえできないだろう。この対応はまるで、どこかのお姫様と勘違いしているんじゃない?
考えて自嘲気味に笑うが、それすらも泣けてくる。
ふと甘い香りがすることに気づき、顔を上げた。
そこには白い花弁を持つルシアが咲き誇っていた。
私が大好きな花だ。その香りを楽しむため、よく摘んで帰っては小屋に飾っていたっけ。
目につくものすべてが悲しく思え、涙が止まらない。
足を止めてルシアを見ていることに気づいたヒルデバルドも歩みを止め、私をじっと見ている。
目をゴシゴシと手でこすると、ヒルデバルドは胸元に手を入れた。
「お使いください。瞼が腫れてしまわれます」
スッと差し出されたハンカチーフは白地に銀糸の刺繍が入っていた。
「いえ、結構です」
だが意地もあり、かたくなに拒否する。同情なんてされたくない。そもそもあなたがここに来なければ、今頃私は平和な日常を送っていたはずだ。
やり場のない怒りと悲しみ、感情が交差する。今の気持ちをどう表現するべきか、私にはわからない。
ただ流れる涙をそのまま自然に任せた。
ようやくオウルの森を抜ける。
そこには何台もの馬車が並び、騎士たちも数名待機していた。
なぜこんなに大勢で私を迎えにきたのだろう。人数の多さに尻込みする。
「さぁ、疲れたでしょう。お乗りください」
立ち並ぶ中でも一番上等だと思われる黒塗りの馬車の扉を開け、ヒルデバルドは深く頭を下げた。
私は躊躇しながらもシートに腰かけると、ヒルデバルドは扉に手をかけた。
「ここからしばらく馬車で進みます。最初はこまめに休憩を取りましょう。そして夜は街の宿を手配します。順調に進みますと、王都までは五日かかると思います」
五日も移動にかかると聞き、ショックだった。
せめて一日ぐらいなら、自力で帰ることもできるかもしれないと考えていたからだ。
ヒルデバルドは私の考えなど、まるでお見通しだといわんばかりに柔らかく笑った。
「では、ごゆっくりお休みください」
ゆっくりなんてできるわけがない。返事をしないまま、馬車が連なり出発した。
* * *
ハッと気づいて瞼を開けた。
どうやら馬車に揺られてすぐに、泣き疲れて眠ってしまったらしい。時間がたって目は熱を持ち、腫れてきたかもしれない。瞼が重い感覚がある。
ひどい顔をしているんだろうな、私。
そっと瞼を手で触れながらぼんやりと思った。
窓から見える知らない景色は、なおさら私を不安にさせる。
一時間ぐらい眠ってしまった気がする。ここはどこら辺なのだろうか。
ぼんやりと考えていると、馬車が徐々にスピードを落とす。やがて湖が見えた。太陽の光を浴びて水面がキラキラと輝いている。こっちの世界で初めて見るので心が動いた。
やがて馬車が湖の側でゆっくりと停車した。しばらくすると扉がノックされたので、小さく返事をする。
「ここら辺で休憩しましょう。どうぞ、降りてください」
扉が開かれた瞬間、冷たい風を肌で感じる。馬車を降りると爽快な空気を深く吸い込んだ。立ち並ぶ木々の間を移動するリスを見つけ、自然と頬がほころんだ。
透明感のある水面は魚が群れをなして泳いでいるのが見れた。ほとりでは花が咲き誇り、風に揺れている。
自然に囲まれた風景にホッとして、いくぶん緊張が解けた。騎士たちも私と一定の距離を保ち、めいめいに休んでいた。
オウルの森から、どのぐらい離れてしまったのだろう。
そんなことを考えてしまうと表情が曇る。
湖のほとりに立ち、ぼんやりと考えごとしていたら、人の気配を感じる。
「疲れましたか?」
ヒルデバルドは、こちらの様子をうかがうような表情を向ける。
「ええ、急だったものですから。心の準備など、いろいろできませんでしたので」
彼の質問に、つい意地悪な返答をしたくもなる。
「すみません。ですが、それほどまであなた様の存在を、人々が待ちわびています」
本当にそんな人が存在するのだろうか。そう簡単に信じることなどできない。
「失礼ですが、インぺリア国について、どれほど知っていますか?」
「――別に、なにも」
うつむいて小さく首をふった。
私がこの世界に迷い込んでから、オウルの森とサーラがすべてだった。
そして時折たずねるルルドの村と。
狭い世界だと人が聞いたら笑うだろう。だが毎日学び、生活していくのに必死だった。それがいきなりインぺリア国について知っているかだなんて、知る由もない。
「リーン様に説明することも私の仕事です。到着するまでの間、お話ししてもよろしいでしょうか」
ちょうどいい。私も彼に聞きたいことはたくさんある。
なぜ今頃になって迎えにきたのか。――ほうっておいてくれたら良かったのに。
恨み言になる言葉をグッと呑み込み、唇を噛みしめた。
「インぺリア国はこの世界を統べる大国になります。軍事力、貿易など、すべてにおいて世界の中心です。我が国には時折、異なる世界の存在が迷い込みます。文化も生活も違う彼らを、インぺリア国では、保護して丁重に扱う決まりとなっています。彼らは「異世界からの落ち人」と呼ばれます」
ヒルデバルドはスッと膝を折る。
「そして最初に説明しましたが、神殿の巫女から、オウルの森の奥深くに、異世界からの落ち人がいると神託があったのです。詳しい神託は王本人が授かっております。オウルの森の異世界の落ち人は、この国にとって、なくてはならない存在だと告げられました。それがリーン様のことです」
まっすぐに私の目を見つめるヒルデバルドの視線から、サッと逸らす。
「それがなぜ私なのですか。私は特別な力などありません」
過剰な期待をしてもらっても困る。
「いいえ。神殿の神託は絶対です。だからこそ、あなたを探していたのです。悪事を考え、王族より先にあなたを保護した挙句、甘い言葉で操り、利用しようと考える輩はどこにだっています」
私に期待するほどの利用価値はない。鼻で笑う。
「王城に行き、まずはディオリュクス王に謁見していただきます」
「ディオリュクス王……」
初めて耳にする名前に反応した。
「はい、ディオリュクス王から、聖女の称号を与えられることになると思います。王という後ろ盾を手にし、あなたは王の物となることを意味します」
告げられた言葉に、ついカッとなる。
「私は物ではありませんから!!」
自分で口にしながら、肩が震える。
「王の物ということは、大変名誉なことであると同時に、誰にも手を出されない、つまりあなたを脅かす人はいないということです」
「ですが……!!」
納得がいかずに憤る。ヒルデバルドはなだめるように手で制した。
「最高権力である後ろ盾を手に入れるという意味です。リーン様は最高のカードを手に入れたと思ってください」
そんな使いどころのわからないカードなど私には不要に思える。
どう説明をすればわかってもらえるのだろう。
人より上にいきたいとか、そんな気持ちなどなく、私はただ平穏に暮らしたいだけなのに――。
「では仮に、そのディオリュクス王というお方が私を所持する形になったとします。そのお方が不要だと私を切り捨ててくださったのなら、オウルの森へ帰れるのでしょうか?」
私は一番聞きたかったことを、切り出した。緊張で震えるが、ギュッと手を握りしめた。
ヒルデバルドは真面目な顔で私をじっと見ている。やがてフッと柔らかな笑みを見せた。
「王もリーン様に会えるのを、それはそれは楽しみにしております。よほど待ち遠しいのか、みずから迎えに来ると仰ったほどです」
ただ神託がくだっただけで、なぜそこまで思い込むのか。この話には裏があると感じる。
「ディオリュクス王は王族特有のまばゆい金の髪に深い青の瞳を持っておられます。端正な顔だちで気高く、大変魅力的な二十一歳の若き王です」
彼のどこかうさんくさい笑みなど、信用してはいけない。警戒し、目を細めた。
「では、そろそろ出発しましょう。今日はこの先のテティスの街で昼食を取り、そこからは一気に足を進め、ラグドンの街で宿を取る予定です」
「そうですか……」
「これからも質問など出ると思います。いつでも聞いてください」
すべてが不安でわからない。
でも聞いたところで、この感情を払拭できるものでもない。今は余計な感情をすべて消し去り、ただ一人になりたいと思った。
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