上 下
52 / 53
連載

番外編 カエラside⑤

しおりを挟む
周りの状況が目まぐるしく変わり、私はその変化に付いていく事に必死でした。

国王となったアムールを支えつつ、亡くなった王妃の代理となり、今まで側妃として……ただアムールの近くで影でいる為にあえて関与してこなかった王政にも関わらなくてはいけなくなった。

そして、この国の王家の人間として私はドイル国の血筋主義について学び直す事となった。

ドイル国の事。
メルトニア人の事。
今までも頭では理解していましたが、学べば学ぶほどそれはとても根深いものだった。

自身は側妃。いつしかアムールと正妃ミリア様との間に子ができると思っていたので、私の産んだケンビットもフェルトン殿下アムールの叔父のよう王位継承権など持たせないつもりでいた。

だからこそ血筋主義に関してもあまり考えてないようにしてきていたけど、ケンビットが王太子となってしまったら話は変わってくる。

ケンビットは3世代目の濃血者。

だからケンビットとメルトニア人の純血の間に子供が産まれなければ王家は濃血ではなく混血の後継者を持つ事になる。

国の尊重となる王族としてはそれは避けたい事だった。

もうメルトニア人の純血を今後保つ事はできないのは誰しもがわかっていた。

だからこそ、その中でも王族は最も濃いメルトニア人の血筋を保たなくてはならない。

私はこの国唯一の妃としてこの王家の考えを守らなければと思った。

その為にもケンビットには純血の婚約者が欲しかった。 

純血の子供……それはエリアーナとフェルトンの子供。

私とアムールは2人にこの国の為にと頭を下げたが、この国のあり方に疑問を抱いている2人は決して頷いてくれない。

エリアーナとフェルトンの気持ちも分かる。
私も内心こんなのおかしいと思う。
でも、私にはどうする事も出来ない。

私も必死だった。
ケンビットがこれから背負う王家を守る為に私ができるのはこのくらいしかなかった。


しかし、当人達の意思があっても子供なんて簡単に授かれるものではない。

意思がないなら尚更だ。

正直、諦めかけたその時エリアーナの妊娠が発覚した。
そして産まれたのは王家にとっては待望の女の子。

嬉しかった。このチャンスは逃せないと思った。

エリアーナは絶対に首を縦には振らない事も分かっていた。
私はとにかく誠意をみせた。


エリアーナがケンビットとアエリアの婚約を承諾してくれた時には身体中の力が抜けた。


本当に嬉しかった。





アエリアに出会った事によりケンビットは人が変わったように明るくなった。

アエリアはとても真面目で良い子。
教えた事はすぐ覚えて、それだけではなく「1」教えれば「10」覚えてくるような子だった。

私はアエリアを我が子のようにとても愛おしく思っていた。

2人の仲も上手くいっている。




全ては良い方に進んでいる。と、私はなんの心配などせず安心をしていた。




しかし、それが少しずつおかしくなってきたのはアエリアが災害にあったコスタル村に行きたいと言った頃からだった。

小さな不安やモヤモヤがこの頃から私の中に生まれ始めてはいたが、私はあえて気づかないふりをした。

そんな中、コスタル村の復興に尽力してくださったグランドールメイル帝国皇帝『感謝の宴』を行う事になった。

私はアエリアと共に準備を行った。

アエリアは的確に仕事をこなして私がもう教えられる事なんてないくらい成長した。

きっと、アエリアならこの国にとって良い王妃になるとこの時までは疑いもしなかった。



ある程度準備が整い、あとは最終調整をするだけとなった頃、私はアエリアを久々にお茶へと誘った。

お茶の最中の雑談としてグランドールメイル帝国の皇帝の話を出すと、アエリアが今まで見せた事のない穏やかな顔をした。

まるで愛しい人を思い出しているような……

嫌な予感がした。

おもわず私がアエリアを問い詰めるとアエリアは否定した。
自身はケンビットの婚約者であると。

私はアエリアの答えにホッと胸を下ろした。


が、その後にそんな事よりも衝撃的な事実を知る事となる。

ケンビットがアエリアの宴の為のドレスを用意していないというのだ。

何よりアエリアの事を真っ先にやるケンビットがドレスを準備していない?


私は頭が真っ白になった。


しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

私が死んで満足ですか?

マチバリ
恋愛
王太子に婚約破棄を告げられた伯爵令嬢ロロナが死んだ。 ある者は面倒な婚約破棄の手続きをせずに済んだと安堵し、ある者はずっと欲しかった物が手に入ると喜んだ。 全てが上手くおさまると思っていた彼らだったが、ロロナの死が与えた影響はあまりに大きかった。 書籍化にともない本編を引き下げいたしました

結婚して5年、冷たい夫に離縁を申し立てたらみんなに止められています。

真田どんぐり
恋愛
ー5年前、ストレイ伯爵家の美しい令嬢、アルヴィラ・ストレイはアレンベル侯爵家の侯爵、ダリウス・アレンベルと結婚してアルヴィラ・アレンベルへとなった。 親同士に決められた政略結婚だったが、アルヴィラは旦那様とちゃんと愛し合ってやっていこうと決意していたのに……。 そんな決意を打ち砕くかのように旦那様の態度はずっと冷たかった。 (しかも私にだけ!!) 社交界に行っても、使用人の前でもどんな時でも冷たい態度を取られた私は周りの噂の恰好の的。 最初こそ我慢していたが、ある日、偶然旦那様とその幼馴染の不倫疑惑を耳にする。 (((こんな仕打ち、あんまりよーー!!))) 旦那様の態度にとうとう耐えられなくなった私は、ついに離縁を決意したーーーー。

【完結】もう無理して私に笑いかけなくてもいいですよ?

冬馬亮
恋愛
公爵令嬢のエリーゼは、遅れて出席した夜会で、婚約者のオズワルドがエリーゼへの不満を口にするのを偶然耳にする。 オズワルドを愛していたエリーゼはひどくショックを受けるが、悩んだ末に婚約解消を決意する。だが、喜んで受け入れると思っていたオズワルドが、なぜか婚約解消を拒否。関係の再構築を提案する。その後、プレゼント攻撃や突撃訪問の日々が始まるが、オズワルドは別の令嬢をそばに置くようになり・・・ 「彼女は友人の妹で、なんとも思ってない。オレが好きなのはエリーゼだ」 「私みたいな女に無理して笑いかけるのも限界だって夜会で愚痴をこぼしてたじゃないですか。よかったですね、これでもう、無理して私に笑いかけなくてよくなりましたよ」

【完結】仰る通り、貴方の子ではありません

ユユ
恋愛
辛い悪阻と難産を経て産まれたのは 私に似た待望の男児だった。 なのに認められず、 不貞の濡れ衣を着せられ、 追い出されてしまった。 実家からも勘当され 息子と2人で生きていくことにした。 * 作り話です * 暇つぶしにどうぞ * 4万文字未満 * 完結保証付き * 少し大人表現あり

【完結】側妃は愛されるのをやめました

なか
恋愛
「君ではなく、彼女を正妃とする」  私は、貴方のためにこの国へと貢献してきた自負がある。  なのに……彼は。 「だが僕は、ラテシアを見捨てはしない。これから君には側妃になってもらうよ」  私のため。  そんな建前で……側妃へと下げる宣言をするのだ。    このような侮辱、恥を受けてなお……正妃を求めて抗議するか?  否。  そのような恥を晒す気は無い。 「承知いたしました。セリム陛下……私は側妃を受け入れます」  側妃を受けいれた私は、呼吸を挟まずに言葉を続ける。  今しがた決めた、たった一つの決意を込めて。 「ですが陛下。私はもう貴方を支える気はありません」  これから私は、『捨てられた妃』という汚名でなく、彼を『捨てた妃』となるために。  華々しく、私の人生を謳歌しよう。  全ては、廃妃となるために。    ◇◇◇  設定はゆるめです。  読んでくださると嬉しいです!

愛された側妃と、愛されなかった正妃

編端みどり
恋愛
隣国から嫁いだ正妃は、夫に全く相手にされない。 夫が愛しているのは、美人で妖艶な側妃だけ。 連れて来た使用人はいつの間にか入れ替えられ、味方がいなくなり、全てを諦めていた正妃は、ある日側妃に子が産まれたと知った。自分の子として育てろと無茶振りをした国王と違い、産まれたばかりの赤ん坊は可愛らしかった。 正妃は、子育てを通じて強く逞しくなり、夫を切り捨てると決めた。 ※カクヨムさんにも掲載中 ※ 『※』があるところは、血の流れるシーンがあります ※センシティブな表現があります。血縁を重視している世界観のためです。このような考え方を肯定するものではありません。不快な表現があればご指摘下さい。

七年間の婚約は今日で終わりを迎えます

hana
恋愛
公爵令嬢エミリアが十歳の時、第三王子であるロイとの婚約が決まった。しかし婚約者としての生活に、エミリアは不満を覚える毎日を過ごしていた。そんな折、エミリアは夜会にて王子から婚約破棄を宣言される。

旦那様、離縁の申し出承りますわ

ブラウン
恋愛
「すまない、私はクララと生涯を共に生きていきたい。離縁してくれ」 大富豪 伯爵令嬢のケイトリン。 領地が災害に遭い、若くして侯爵当主なったロイドを幼少の頃より思いを寄せていたケイトリン。ロイド様を助けるため、性急な結婚を敢行。その為、旦那様は平民の女性に癒しを求めてしまった。この国はルメニエール信仰。一夫一妻。婚姻前の男女の行為禁止、婚姻中の不貞行為禁止の厳しい規律がある。旦那様は平民の女性と結婚したいがため、ケイトリンンに離縁を申し出てきた。 旦那様を愛しているがため、旦那様の領地のために、身を粉にして働いてきたケイトリン。 その後、階段から足を踏み外し、前世の記憶を思い出した私。 離縁に応じましょう!未練なし!どうぞ愛する方と結婚し末永くお幸せに! *女性軽視の言葉が一部あります(すみません)

処理中です...
本作については削除予定があるため、新規のレンタルはできません。
番外編を閲覧することが出来ません。
過去1ヶ月以内にレジーナの小説・漫画を1話以上レンタルしている と、レジーナのすべての番外編を読むことができます。

このユーザをミュートしますか?

※ミュートすると該当ユーザの「小説・投稿漫画・感想・コメント」が非表示になります。ミュートしたことは相手にはわかりません。またいつでもミュート解除できます。
※一部ミュート対象外の箇所がございます。ミュートの対象範囲についての詳細はヘルプにてご確認ください。
※ミュートしてもお気に入りやしおりは解除されません。既にお気に入りやしおりを使用している場合はすべて解除してからミュートを行うようにしてください。