上 下
47 / 53
連載

番外編 エリアーナside⑦

しおりを挟む
私は思わずカレンダーに目をやる。
今から注文したところでギリギリ間に合うか間に合わないか……

ケンビットに確認を取ってる暇なんてない。

「今すぐ手配……」

私はモンテーヌにアエリアのドレスを手配させようとするが、一瞬考える。

あのアエリア1番のケンビットがドレスを用意し忘れるなんて考えられない。

……どうしてこんな事になった?

もし、このままドレスがなかったらケンビットはどう出る?


「ちょっと待ってモンテーヌ……このままでいいわ」
「しかし……」
「大丈夫。私がなんとかするから。この事は誰にも言わないで。フェルトンにも、アエリアにも……」
「ですがっ……」
「いいからっ」

私が怒鳴るとモンテーヌは困り顔をしながらも頭を下げる。

「かしこましました。協会の方にも大丈夫である事を伝えます」

モンテーヌはそう言って部屋を出ていった。


私は椅子に座り考える。

なぜ、ケンビットはアエリアのドレスを準備していないのか……

手配ミス?
意図的に?
それとも他に何か理由がある?

まぁ、どれにしてもドレスがないという事態にケンビットはどう出るのだろう。

その時のケンビットの対応次第で今後、アエリアの為にどうすべきか全てが分かる。


ドレスが無いと分かってケンビットはアエリア愛する人の気持ちにしっかり寄り添えるか……もし、それができないなら早々に血の呪縛なんかが絡んだくだらない婚約を白紙にしよう。


アエリアには苦しい思いをさせる事になる。


でも、このチャンスを逃せばナリエ叔母様の様に死ぬまで苦しい思いをしなくてはならないかもしれない。

一時の苦しみより永遠の苦しみの方が辛いから強硬手段だけどアエリアの為にもやるしかない。

私は固く決意した。




宴当日。
アエリアは以前ケンビットから贈られたドレスを上手くリメイクして出てきた。

私はケンビットの反応を見たが、ケンビットは気付いていない様子だった。

信じられない……
自分が送ったドレスでしょう?
気づかないの?

その後、マリーナがアエリアのドレスに気づいて指摘した際もケンビットは呆然とするのみでアエリアに寄り添う事も謝る事もしない。
 

私はもう我慢の限界で口を出してしまった。


アエリアは本当にナリエ叔母様にそっくり。
きっとこのままだとこの先ずっと苦労する。

ケンビットにアエリアを、託したのは失敗だったのかもしれない。

それはもう私の過ちだ。

ケンビットとアエリアの婚約はすぐでも白紙に戻そう。
誰にも文句は言わせない。

そして婚約を無くしてアエリアを自由にさせよう。

血の呪縛はやはり自らの手で断ち切ろう。
私はそう決意して行動を起こす事にした。




しかし、それからすぐマリーナが『奇異の聖女』と呼ばれるハリスとかいう魔女と力を共有して魅了の力を使っている事を知った。

ケンビットはその魅了の力に惑わされていたらしい。

ケンビットだけではなく私も……

悔しかった。
悲しかった。

自分自身に腹が立った。

だって全て私の空回りだった。

アエリアの気持ちを全く分かっていなかった。
結局、私は自分の事しか考えられていなかった酷い親だ。

アエリアには本当に申し訳ないと思う。


でも全てが分かった今、これだけは言いたい。

私は王家とか血筋とか全く関係なく心からアエリアとケンビットに結ばれて欲しかった。

2人で幸せな家庭を作って欲しかった。

マリーナハリスの邪魔さえなければ2人は絶対理想の夫婦となっていたはず。

仲睦まじい国王と王妃となり、国民からも愛されこの国の行く末を変えてくれたはず。

その考えは今でも変わらない。



だって初めて会った時の2人のあの光景は今でも私の脳裏に焼き付いてる。

でもこの気持ちも私のエゴよね。


もう全ては過ぎた事……通り過ぎた過去は2度と戻ってこない。


ごめんなさい……アエリア。

今はただ運命の出会いを果たした貴方が誰よりも幸せになる事を私にも願わせて……
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

夫の色のドレスを着るのをやめた結果、夫が我慢をやめてしまいました

氷雨そら
恋愛
夫の色のドレスは私には似合わない。 ある夜会、夫と一緒にいたのは夫の愛人だという噂が流れている令嬢だった。彼女は夫の瞳の色のドレスを私とは違い完璧に着こなしていた。噂が事実なのだと確信した私は、もう夫の色のドレスは着ないことに決めた。 小説家になろう様にも掲載中です

挙式後すぐに離婚届を手渡された私は、この結婚は予め捨てられることが確定していた事実を知らされました

結城芙由奈 
恋愛
【結婚した日に、「君にこれを預けておく」と離婚届を手渡されました】 今日、私は子供の頃からずっと大好きだった人と結婚した。しかし、式の後に絶望的な事を彼に言われた。 「ごめん、本当は君とは結婚したくなかったんだ。これを預けておくから、その気になったら提出してくれ」 そう言って手渡されたのは何と離婚届けだった。 そしてどこまでも冷たい態度の夫の行動に傷つけられていく私。 けれどその裏には私の知らない、ある深い事情が隠されていた。 その真意を知った時、私は―。 ※暫く鬱展開が続きます ※他サイトでも投稿中

私が死んで満足ですか?

マチバリ
恋愛
王太子に婚約破棄を告げられた伯爵令嬢ロロナが死んだ。 ある者は面倒な婚約破棄の手続きをせずに済んだと安堵し、ある者はずっと欲しかった物が手に入ると喜んだ。 全てが上手くおさまると思っていた彼らだったが、ロロナの死が与えた影響はあまりに大きかった。 書籍化にともない本編を引き下げいたしました

初夜に「俺がお前を抱く事は無い!」と叫んだら長年の婚約者だった新妻に「気持ち悪い」と言われた上に父にも予想外の事を言われた男とその浮気女の話

ラララキヲ
恋愛
 長年の婚約者を欺いて平民女と浮気していた侯爵家長男。3年後の白い結婚での離婚を浮気女に約束して、新妻の寝室へと向かう。  初夜に「俺がお前を抱く事は無い!」と愛する夫から宣言された無様な女を嘲笑う為だけに。  しかし寝室に居た妻は……  希望通りの白い結婚と愛人との未来輝く生活の筈が……全てを周りに知られていた上に自分の父親である侯爵家当主から言われた言葉は──  一人の女性を蹴落として掴んだ彼らの未来は……── <【ざまぁ編】【イリーナ編】【コザック第二の人生編(ザマァ有)】となりました> ◇テンプレ浮気クソ男女。 ◇軽い触れ合い表現があるのでR15に ◇ふんわり世界観。ゆるふわ設定。 ◇ご都合展開。矛盾は察して下さい… ◇なろうにも上げてます。 ※HOTランキング入り(1位)!?[恋愛::3位]ありがとうございます!恐縮です!期待に添えればよいのですがッ!!(;><)

婚約者に消えろと言われたので湖に飛び込んだら、気づけば三年が経っていました。

束原ミヤコ
恋愛
公爵令嬢シャロンは、王太子オリバーの婚約者に選ばれてから、厳しい王妃教育に耐えていた。 だが、十六歳になり貴族学園に入学すると、オリバーはすでに子爵令嬢エミリアと浮気をしていた。 そしてある冬のこと。オリバーに「私の為に消えろ」というような意味のことを告げられる。 全てを諦めたシャロンは、精霊の湖と呼ばれている学園の裏庭にある湖に飛び込んだ。 気づくと、見知らぬ場所に寝かされていた。 そこにはかつて、病弱で体の小さかった辺境伯家の息子アダムがいた。 すっかり立派になったアダムは「あれから三年、君は目覚めなかった」と言った――。

最愛の側妃だけを愛する旦那様、あなたの愛は要りません

abang
恋愛
私の旦那様は七人の側妃を持つ、巷でも噂の好色王。 後宮はいつでも女の戦いが絶えない。 安心して眠ることもできない後宮に、他の妃の所にばかり通う皇帝である夫。 「どうして、この人を愛していたのかしら?」 ずっと静観していた皇后の心は冷めてしまいう。 それなのに皇帝は急に皇后に興味を向けて……!? 「あの人に興味はありません。勝手になさい!」

妹と旦那様に子供ができたので、離縁して隣国に嫁ぎます

冬月光輝
恋愛
私がベルモンド公爵家に嫁いで3年の間、夫婦に子供は出来ませんでした。 そんな中、夫のファルマンは裏切り行為を働きます。 しかも相手は妹のレナ。 最初は夫を叱っていた義両親でしたが、レナに子供が出来たと知ると私を責めだしました。 夫も婚約中から私からの愛は感じていないと口にしており、あの頃に婚約破棄していればと謝罪すらしません。 最後には、二人と子供の幸せを害する権利はないと言われて離縁させられてしまいます。 それからまもなくして、隣国の王子であるレオン殿下が我が家に現れました。 「約束どおり、私の妻になってもらうぞ」 確かにそんな約束をした覚えがあるような気がしますが、殿下はまだ5歳だったような……。 言われるがままに、隣国へ向かった私。 その頃になって、子供が出来ない理由は元旦那にあることが発覚して――。 ベルモンド公爵家ではひと悶着起こりそうらしいのですが、もう私には関係ありません。 ※ざまぁパートは第16話〜です

5年も苦しんだのだから、もうスッキリ幸せになってもいいですよね?

gacchi
恋愛
13歳の学園入学時から5年、第一王子と婚約しているミレーヌは王子妃教育に疲れていた。好きでもない王子のために苦労する意味ってあるんでしょうか。 そんなミレーヌに王子は新しい恋人を連れて 「婚約解消してくれる?優しいミレーヌなら許してくれるよね?」 もう私、こんな婚約者忘れてスッキリ幸せになってもいいですよね? 3/5 1章完結しました。おまけの後、2章になります。 4/4 完結しました。奨励賞受賞ありがとうございました。 1章が書籍になりました。

処理中です...
本作については削除予定があるため、新規のレンタルはできません。
番外編を閲覧することが出来ません。
過去1ヶ月以内にレジーナの小説・漫画を1話以上レンタルしている と、レジーナのすべての番外編を読むことができます。

このユーザをミュートしますか?

※ミュートすると該当ユーザの「小説・投稿漫画・感想・コメント」が非表示になります。ミュートしたことは相手にはわかりません。またいつでもミュート解除できます。
※一部ミュート対象外の箇所がございます。ミュートの対象範囲についての詳細はヘルプにてご確認ください。
※ミュートしてもお気に入りやしおりは解除されません。既にお気に入りやしおりを使用している場合はすべて解除してからミュートを行うようにしてください。