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番外編 エリアーナside⑤

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案の定、カエラとアムールはアエリアを1人息子であり王太子のケンビットの伴侶にして欲しいと頭を下げてきた。

私は断固拒否した。

私が拒否をすると、それこそアエリアが生まれてから毎日のようにカエラは私に頭を下げにきた。

一度でいいからケンビットと会わせて欲しいと……

流石の私も産後、毎日の様に友人であるカエラが公務を削ってまで頭を下げに来られると参ってしまう。

だから一度だけならと了承をした。



数日後、カエラはケンビットを連れて我が家にやってきた。
ケンビットは7歳にして全てを諦めた様な冷めた目をした子供だった。

そうなるのも分からなくない。
純血主義が未だ根を張るこの国で、王家最後の濃血者になってしまった彼を渦巻く環境は厳しいものだと思う。

彼がアエリア純血者以外と子を成せば王家はその濃血者としての血筋も無くなり混血者となってしまう。

もうメルトニア人の純血を……濃血王家この国が保つ事は無理だろう。

でも、王家は最後までメルトニア人の血筋を保ちたくて必死だ。
そんな環境に置かれたケンビットは可哀想だとは思う。


でも、それとこれとは話は別。
私は、愛するフェルトンとの間に生まれたこの愛らしいアエリアに辛い思いはさせたくない。

だから、ケンビットには自身でこの国の行末を変えていく力をつけてほしい。アエリアは巻き込ませない。


そう思っていたのに、ケンビットがアエリアを見た瞬間、笑顔なんて一度も見せた事のないあのケンビットがアエリアに対して柔らかく微笑んだ。

私の心が揺らいだ。

ケンビットがアエリアの頬にそっと指を触れるとアエリアがキャッキャっと喜んだ。

そんなアエリアにケンビットは目を輝かせて優しく笑いかける。




人が恋に落ちる瞬間を見た。




それからケンビットは頻繁にアエリアに会いにくる様になった。
人形のように表情がなかったケンビットがアエリアに会うたび色々な表情を見せるようになった。

アエリアもケンビットが会いに来るとどんなに泣いていてもすぐに機嫌が良くなった。



この2人には私達にはわからない繋がりがあるのかも知れない。


ケンビットはまだ幼いながらもアエリアより7つも年上だからアエリアをしっかり守って幸せにしてくれるかもしれない。

アエリアとケンビットに任せておけば、今の狂った王家を変えてくれるかも……きっとこの国をいい方向に変えてくれるかもしれない。

私は2人を見てそう思わずにはいられなかった。


2人にこの国の未来を掛けてみてもいいのかもしれない……

私はそう思い、アエリアをケンビットの婚約者にする事を了承した。



フェルトンは私の決断に不安そうにしていたが、何も言っては来なかった。


私はこの時、ケンビットとアエリアなら信じられる。大丈夫だと感じていた。

そして、そうと決めたからには私はしばらくは何も言わずに2人を見守る事にした。

私はなんでもかんでもお節介をやいて出しゃばってしまうから、きっと2人の近くで見ていたら我慢できず色々口を出してしまう。

それで沢山失敗もしてきた。

だからこそ、こんなおせっかいが近くにいたら2人の為にはならない気がする。

とりあえずは全てを穏やかなカエラに託して私はしばらくこの性格をおさえる事をこの時決めた。



しかし、最近になってその選択は間違いだったのかもと思うようになった。

アエリアは元々真面目な性格だった為か幼少の頃から愚痴も弱音も吐くことなく黙々と王妃教育をこなしていった。

アエリアは王妃教育が進むに連れて私達家族とは一線を引くようになり、感情を一切表に出さなくなった。

流石に一度決めた事を「やっぱ辞めた」とは言えず、とりあえずは見守っていたけど、状況は良いとは言い難かった。


だから、私はケンビットのアエリアに対する愛を信じるしかなかった。
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