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連載
番外編 エリアーナside②
しおりを挟むお父様と王城に来るとよく第二王子のフェルトンの姿を見かけた。
私と同じメルトニア人の純血を引き継ぐ王子。
私は、ナリエ叔母様が自分を追い詰めてしまう原因の一つがこの第二王子のせいだと思っていた。そしていつも澄まして周りには一切興味がないといった彼の態度が腹立たしくて大っ嫌いだった。
わずかしかいない純血者の王子フェルトンと、高位貴族の私を何とか結ばせようと画策する者は多くいたけど、フェルトンも私もお互いに良い印象が無いためか、互いに互いを拒否していた。
お父様は純血主義者であったけど、お母様に似ている私をこれでもかというほど溺愛して甘かったので、フェルトンを避ける私の為に変な考えをもつ輩は前もって排除してくれていた。
そのため、私とフェルトンの接点はほとんどなかった。
6歳になった頃、なんとなくフェルトンが苛々としている姿を見掛ける事が多くなった。
常に落ち着いていて子供らしくなく、人に興味を示さない彼が何に対してそんなにイライラしているのか? 気になると追求したくなる性分なので、つい彼の後をこっそりとついて行った。
彼が小走りに向かった先は王宮の中庭。緑の小道を抜けた誰にも目のつかない小さな空間に彼はいた。そこで、フェルトンは石を投げたり王子らしくない暴言を吐いたりしているいつもの彼からは想像もできない姿があった。
でも、その暴言は誰に向けたものではなく自分自身に向けて言っているようだった。
(この人……頭おかしいのかしら?)
あまりの光景に思わずそう思ってしまうほどだったけど、ジッとその場で彼を見ていると明らかに行動としておかしかった。
「貴方は何故いつも苛立っているの?」
私が思わず声を掛けてしまうと、フェルトンは作られた笑みを見せる。
ナリエ叔母様もたまに見せる嘘の笑み。
気持ち悪い。
私が思っている事をそのまま言うとフェルトンは急に怒りだした。
自身の中にもう一人の人がいて自分の思い通りに動けないこと。
その苛立ちをどこにもぶつけられないこと。
フェルトンが言っている事は正直意味不明だったけど、嘘や虚言を言っているようにも思えなかった。この人も苦しんでいたんだと思うと急に親近感が湧いてきた。
それから私はその秘密の中庭でフェルトンと色々話すようになった。
フェルトンは話してみると私と考えが似た人だった。
特にこの国の変な血筋主義や王族の関係に関しては意見が合った。
こんな人は初めてだった。
気づけば私はいつしかフェルトンに恋心を抱いてた。
でもそれに気づいた頃、フェルトンは別の女の子に夢中になっていた。
カサドラリド国の伯爵令嬢。
私はどんな子か気になってお父様にお願いして翌年のカサドラリドの産業祭に連れて行ってもらった。
フェルトンの想い人。ユリマーリアはとても可愛くて綺麗な子だった。
私はフェルトンにバレないようにこっそりユリマーリアと接触してみた。
ユリマーリアは私達より一歳年下で、見たままの性格で少しおっとりした普通に良い子だった。
正直、あのフェルトンが惚れるのも分かる。
私とは真逆の女の子。勝てる気が全くしなかった。
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