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連載
番外編 ハリスside①
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ここがどこの国とか、どこの場所だとかそんな事など分からない浮浪者が多く集まる小さなスラム街で私は生まれた。
私はこのスラム街のみんなからハリスと呼ばれていた。
今の年は多分15.6歳位? 正確に数えた事などないから詳しくは分からない。
特徴は珍しいピンク色の瞳に銀色の髪でスラムの世界では珍しい美しい見た目だった。故に何度も誘拐や強姦に襲われたりもしたけど、この街で生まれた私はこのスラム街に住み着く皆に守られて育った。
暮らしは貧しいけど、優しい父母に私によく懐いた弟妹達。私を可愛がってくれる街のみんながいたから私はこのスラム街での生活は嫌いでは無かった。
物心がついた頃には食糧や物資を確保する為に徒歩で2時間掛かる隣街まで出向いて色々な人に声を掛けて物乞いをしていた。
一緒に行った弟妹達や他の子達は物乞いに苦労していたけど私が声を掛けた人みんなが優しくて喜んで服でも食料でも色々なものを沢山くれた。
そして、1人では持ちきれない量はみんなに振り分けてあげていた。だから、私は常にみんなから感謝をされていた。
そんな私の意見はみんな聞いてくれるし、何かあっても私を守ってくれる。
私はこの街でみんなの人気者だった。
私はこのスラムの街の女王だった。
私を養女として引き取りたいと言う金持らしき人も沢山いたけど、私はあえてこの生活を選んでいた。
この街での生活は私にとって何にも縛られる事なく自由で別に不満もなく、悪くなかったから。
でもある日、私を訪ねてこのスラム街には似合わない白い身なりのいい服を着た綺麗な若い男性がやってきた。
今まで見たことのない程に美しい男性。
私は一目見で恋に落ちた。
彼はこの国の中心にある神殿の神官で“イル”だと名乗った。
イルは私は選ばれた『神の愛し子』で特別な力があるから国の為に神殿に来て欲しいと手を差し伸べてきた。
「貴方と一緒にいられるの?」
私が尋ねるとイルは優しく微笑んで「ええ」と頷いた。
家族の事が心配だったけど、イルは家族も保護すると言ってくれたので私は快く頷いた。
こんな気持ち初めてだった。
神殿に行くと、そこは広くてとても綺麗な所だった。
この神殿の神官は神の子と言われるメルトニア人が主だっていてメルトニア人以外は“神職者”と呼ばれていた。
イルはその神官達の中でもトップクラスの“最神官”と呼ばれていた。
イルは私の力はまだ愛し子としての全て開花していないからこれから開花させていこうと言った。
「開花したらイルは嬉しい?」
「はい。この世界の為になりますから」
私が尋ねるとイルはニッコリと笑う。
その笑顔を見て私はイルの為に頑張ろうと思った。
私は神殿にいるみんなから聖女様と呼ばれた。
今まで触れた事すらない綺麗な肌触りの良い白い服を着せられて何人もの神官や神職者を引き連れて力を開花させる為の毎日祈りを捧げた。
私が神殿での生活に慣れた頃、イルが毎年行われる国の見回りに行くと私に伝えてきた。大小関わらず把握しているこの国の全ての街や村を回るので神殿に戻ってくるまで数ヶ月掛かると言われた。
私が寂しがるとイルは私の頭をなでて「帰ってくるまでにどのくらい力が開花しているか楽しみだな」と言って微笑んでくれた。
その笑みに私の胸は激しく高鳴る。
イルが神殿から出て行ってから何日もしないうちに私は自分でも感じる程の強い力を手に入れる事が出来た。
そして気がつくと周りの神職者達が私に対して尊敬の眼差しを向ける様になった。
神職者達は皆、競うように私の為に何かをしたがり、私と共にいる事を望んだ。
以前にいたスラムの街に戻ったようで気分が良かった。
私が思う事は神職者達が全て叶えてくれた。
私により気に入られようと神職者達が殺し合いギリギリのいざこざを起こす事も珍しくなかったが、私自身それを楽しんでいた。
この神殿には私以外にも愛し子が3人いた。
その中の1人に「もう少し力を抑えた方がいい」と言われたが、何の事か私には分からなかった。
だって今の生活が楽しいから。
自分の持っている力を自分の為に使わないでどこで使えというの?
イルが見回りに出向いてから一ヶ月程経った頃には神殿にいるほとんどの神職者が私に心酔していて、反対に3人の愛し子と神官達は私と距離を取るようになっていた。
神の子とされる神官達は神職者達を侍らす私に嫌悪の顔を向けたが、私に対して何もする事が出来なかった。
そして、次第に神職者と神官の間に亀裂が入っていった。
娯楽などない神殿内で些細な事で衝突しあうその姿は滑稽で私の唯一の楽しみだった。
私の力は日を増すごとに強くなっていった。
その為か、私や神職者達に嫌悪の目を向けていた神官達も次第に私に心酔するようになっていった。
他の愛し子達は何故かはわからないけど、私を恐れている様で今まで以上に私には関わらない様にしていた。
でも、それは好都合だった。
他の愛し子達がどんな力を持っているかは知らないけど私の楽園の邪魔をされなくていいから。
イルが神殿にいなくなってから2ヶ月後には周りの者は全員、私以外の事は目に入らなくなるくらい私に夢中になった。
私はこの神殿内での女王となった。
澄ましたり、偉そうにしている神官達が私に心酔している姿を見て私は楽しくてたまらなかった。
私はこのスラム街のみんなからハリスと呼ばれていた。
今の年は多分15.6歳位? 正確に数えた事などないから詳しくは分からない。
特徴は珍しいピンク色の瞳に銀色の髪でスラムの世界では珍しい美しい見た目だった。故に何度も誘拐や強姦に襲われたりもしたけど、この街で生まれた私はこのスラム街に住み着く皆に守られて育った。
暮らしは貧しいけど、優しい父母に私によく懐いた弟妹達。私を可愛がってくれる街のみんながいたから私はこのスラム街での生活は嫌いでは無かった。
物心がついた頃には食糧や物資を確保する為に徒歩で2時間掛かる隣街まで出向いて色々な人に声を掛けて物乞いをしていた。
一緒に行った弟妹達や他の子達は物乞いに苦労していたけど私が声を掛けた人みんなが優しくて喜んで服でも食料でも色々なものを沢山くれた。
そして、1人では持ちきれない量はみんなに振り分けてあげていた。だから、私は常にみんなから感謝をされていた。
そんな私の意見はみんな聞いてくれるし、何かあっても私を守ってくれる。
私はこの街でみんなの人気者だった。
私はこのスラムの街の女王だった。
私を養女として引き取りたいと言う金持らしき人も沢山いたけど、私はあえてこの生活を選んでいた。
この街での生活は私にとって何にも縛られる事なく自由で別に不満もなく、悪くなかったから。
でもある日、私を訪ねてこのスラム街には似合わない白い身なりのいい服を着た綺麗な若い男性がやってきた。
今まで見たことのない程に美しい男性。
私は一目見で恋に落ちた。
彼はこの国の中心にある神殿の神官で“イル”だと名乗った。
イルは私は選ばれた『神の愛し子』で特別な力があるから国の為に神殿に来て欲しいと手を差し伸べてきた。
「貴方と一緒にいられるの?」
私が尋ねるとイルは優しく微笑んで「ええ」と頷いた。
家族の事が心配だったけど、イルは家族も保護すると言ってくれたので私は快く頷いた。
こんな気持ち初めてだった。
神殿に行くと、そこは広くてとても綺麗な所だった。
この神殿の神官は神の子と言われるメルトニア人が主だっていてメルトニア人以外は“神職者”と呼ばれていた。
イルはその神官達の中でもトップクラスの“最神官”と呼ばれていた。
イルは私の力はまだ愛し子としての全て開花していないからこれから開花させていこうと言った。
「開花したらイルは嬉しい?」
「はい。この世界の為になりますから」
私が尋ねるとイルはニッコリと笑う。
その笑顔を見て私はイルの為に頑張ろうと思った。
私は神殿にいるみんなから聖女様と呼ばれた。
今まで触れた事すらない綺麗な肌触りの良い白い服を着せられて何人もの神官や神職者を引き連れて力を開花させる為の毎日祈りを捧げた。
私が神殿での生活に慣れた頃、イルが毎年行われる国の見回りに行くと私に伝えてきた。大小関わらず把握しているこの国の全ての街や村を回るので神殿に戻ってくるまで数ヶ月掛かると言われた。
私が寂しがるとイルは私の頭をなでて「帰ってくるまでにどのくらい力が開花しているか楽しみだな」と言って微笑んでくれた。
その笑みに私の胸は激しく高鳴る。
イルが神殿から出て行ってから何日もしないうちに私は自分でも感じる程の強い力を手に入れる事が出来た。
そして気がつくと周りの神職者達が私に対して尊敬の眼差しを向ける様になった。
神職者達は皆、競うように私の為に何かをしたがり、私と共にいる事を望んだ。
以前にいたスラムの街に戻ったようで気分が良かった。
私が思う事は神職者達が全て叶えてくれた。
私により気に入られようと神職者達が殺し合いギリギリのいざこざを起こす事も珍しくなかったが、私自身それを楽しんでいた。
この神殿には私以外にも愛し子が3人いた。
その中の1人に「もう少し力を抑えた方がいい」と言われたが、何の事か私には分からなかった。
だって今の生活が楽しいから。
自分の持っている力を自分の為に使わないでどこで使えというの?
イルが見回りに出向いてから一ヶ月程経った頃には神殿にいるほとんどの神職者が私に心酔していて、反対に3人の愛し子と神官達は私と距離を取るようになっていた。
神の子とされる神官達は神職者達を侍らす私に嫌悪の顔を向けたが、私に対して何もする事が出来なかった。
そして、次第に神職者と神官の間に亀裂が入っていった。
娯楽などない神殿内で些細な事で衝突しあうその姿は滑稽で私の唯一の楽しみだった。
私の力は日を増すごとに強くなっていった。
その為か、私や神職者達に嫌悪の目を向けていた神官達も次第に私に心酔するようになっていった。
他の愛し子達は何故かはわからないけど、私を恐れている様で今まで以上に私には関わらない様にしていた。
でも、それは好都合だった。
他の愛し子達がどんな力を持っているかは知らないけど私の楽園の邪魔をされなくていいから。
イルが神殿にいなくなってから2ヶ月後には周りの者は全員、私以外の事は目に入らなくなるくらい私に夢中になった。
私はこの神殿内での女王となった。
澄ましたり、偉そうにしている神官達が私に心酔している姿を見て私は楽しくてたまらなかった。
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