上 下
22 / 53
連載

番外編 マリーナside①

しおりを挟む
私はマリーナ・バルメルク
ドイル国の筆頭公爵であるバルメルク公爵家の側室ユリマーリアが生んだバルメルク家の長女。

お母様は他国カサドラリド国の伯爵令嬢で、自国では『精霊姫』と呼ばれるほど美しい人。
その見た目を引き継いだ私は生まれたその時から誰もが認める美しい容姿で「妖精姫」と呼ばれていた。

美しい容姿に世界的に珍しいピンク色の目。
誰もがみんなが私を褒め称えてくれた。

そして一歳を迎える頃、私は微量ながらも魅了の力を持っていると診断を受けた。
そのおかげか分からないけど私は幼いながらも色々な意識がはっきりしていて大人びた子だった。

みんなが私を褒め称えたり、チヤホヤするのは魅了のおかげだと言われましたが、悪い気はしなかった。

だって事実、私は美しいから。


そんな私の特別は4歳年上のお兄様のエリック。
エリックお兄様は優しくてカッコよくて大好き。
「大好き」とくっついてキスは当たり前だった。


でも、ある日突然お兄様から「それは大切な人とだけする事だから兄様にしてはだめだよ」といわれた。

「お兄様が私の大切な人だから将来はお兄様と結婚する」といったらお兄様に「兄妹で結婚はできないんだよ」っていわれた。

それから何故かお兄様は私から距離を取るようになった。


周りのみんなは可愛いって相変わらず褒め称えてチヤホヤしてくれるのに何故お兄様は私から距離を取るの?

どうして?
どうして??
どうして???


それからしばらくしてお兄様と同じ血が流れた妹のアエリアが生まれた。
優しい目でアエリアをみるお兄様。
暇さえあればお兄様はアエリアと共に過ごしていた。

アエリアを世話してあやすお兄様を見ていると身体の奥底から苛立ちを覚えた。


何故わたしはお兄様と兄妹なの?
(血なんて少ししか繋がっていないのに)

どうせなら全く血が繋がらない他人でいたかった。
(そうすれば何の弊害もなくお兄様と結ばれるのに)

どうせならアエリアみたいにそっくりに生まれたかった。
(そうすれば兄妹としてお兄様を独り占めするのに)


お兄様は私から距離を取るくせに生まれたばかりのアエリアとずっと一緒に過ごしている。


なんで? なんで? なんで?


アエリアが生まれたからお兄様は私から離れていったんだ。

全てはアエリアが悪い。
アエリアがいなくなればお兄様はきっと私の元に戻ってきてくれる。

アエリアさえいなくなれば……
アエリアさえ存在しなければ……全ては元通りになる。

いつしか私はそう思うようになっていた。

アエリアが生まれて1ヶ月程した頃、アエリアへの憎しみの気持ちが膨らむ中それでもお兄様に嫌われるのが怖くて何もできずにいた私に急に転機が訪れた。

急に身体の奥底から別人が……前世の私が声をかけてきたのだ。
それはとても不思議な感覚だった。


『私は貴方の前世を生きたハリス。アエリアの前世のリアに恋人をとられたの』
「私もよ。アエリアに大好きなお兄様をとられたの」
『前世にあった事は繰り返えされるのね……貴方には私と同じ思いをして欲しくない。私が協力するわ』
「協力?」
『アエリアからお兄様を取り戻しましょう』

ハリス前世の記憶が戻ったのと同時に私の力は今までとは比べ物にならないくらい強くなった。

でもこの力がバレてしまうと私は魅了持ちとして幽閉されてしまう。

自由がなくなる。
お兄様の近くにいられなくなる。
それだけは嫌だったのでハリスに力の抑え方を教えてもらって普段は全く力がないように装った。


アエリアからお兄様を取り戻す為、ハリスはまずアエリアの婚約者になった王太子を味方に付けるべきだと言った。

私はハリスの言う通り王太子に近づいて味方にすべく軽い魅了の力を掛けていった。
最初は上手くいかなかったけど少しずつ上手く掛けられるようになっていった。

周りにバレたらそれこそ私は幽閉……いえ、王太子を惑わせた罪で即刻処刑されるかもしれない。
だから慎重に……周りに気づかれないようにやっていく。


私が12歳になった頃、久々にお兄様が私の部屋を訪ねて来てくれた。
私は嬉しくてお兄様に言われるまま着いて行くとお兄様から男性を紹介された。

お兄様の学友。カサドラリド国公爵家嫡男のレイ様。


何故お兄様がわたしにレイ様を紹介するの?

『アエリアが私の事が邪魔だから他国に行かせようとしてるかも』
ハリスが私の脳内で呟き私の苛立ちが募る。


お兄様が席を外しレイ様と2人になるとレイ様が私を見て笑い始める。

「なにか?」
「いや、なんかかなり鬱憤たまってるみたいだね。性格の悪さが顔に出てる」

性格の悪さ?
なんなのこの人……

「僕はエリックにアエリア嬢を紹介してほしいって言ったんだけどね」

腹が立って魅了の力でも使ってやろうと思った瞬間、レイ様は思いがけない事を口にした。

「えっ? アエリア?」
「アエリア嬢には婚約者の王太子がいるから紹介できないって美しくて自慢の妹マリーナ嬢を紹介するって言われたんだよ」

美しくて自慢の妹?

お兄様がそんな事を……
喜びが身体中を駆け巡り、先程までの苛立ちがスッと抜けていく。

「どうだい? 私と組まないか?」
「組む?」

私はレイ様を睨みつける。

「君はエリックが好きなんだろう? 距離を置かれて寂しく無いかい? 私と偽りの婚約を結ぼう。そうすればエリックは君と距離を置く事はしなくなるはずだ。そのかわりアエリア嬢を王太子と婚約解消させる事に協力してくれない?」

「なぜアエリアなの?」
「別に……ただ容姿が好みなだけ」

クズ男ね……でもアエリアにはピッタリかも。

私は心の奥のハリスに答えを聞く。
「ねぇ。ハリスどう思う?」
『いいんじゃ無いかしら。婚約は良い目眩しになるわ』

目眩し? 良くわからないけど私にはどう考えても利点しかない。

「お父様にお願いしてみるわ」
私がそう言うとレイ様は怪しげに微笑む。

「話がわかる子で嬉しいよ」


それから私は約束通りお父様にレイ様との婚約者をお願いした。
レイ様からも早々に承諾の連絡があり、私達は正式に婚約者となった。

レイ様が言っていた通りそれからお兄様は私を避けるような事は無くなった。

お願いをすれば一緒に街に買い物に行ってくれるし、家の中で一緒にお茶をしたりお兄様と過ごせる時間は多くなった。

王太子にも私に婚約者ができた事を報告するとそれに気を許したのか今まで以上に魅了の力を掛けやすくなっていった。

しおりを挟む
感想 583

あなたにおすすめの小説

5年も苦しんだのだから、もうスッキリ幸せになってもいいですよね?

gacchi
恋愛
13歳の学園入学時から5年、第一王子と婚約しているミレーヌは王子妃教育に疲れていた。好きでもない王子のために苦労する意味ってあるんでしょうか。 そんなミレーヌに王子は新しい恋人を連れて 「婚約解消してくれる?優しいミレーヌなら許してくれるよね?」 もう私、こんな婚約者忘れてスッキリ幸せになってもいいですよね? 3/5 1章完結しました。おまけの後、2章になります。 4/4 完結しました。奨励賞受賞ありがとうございました。 1章が書籍になりました。

どうやら夫に疎まれているようなので、私はいなくなることにします

文野多咲
恋愛
秘めやかな空気が、寝台を囲う帳の内側に立ち込めていた。 夫であるゲルハルトがエレーヌを見下ろしている。 エレーヌの髪は乱れ、目はうるみ、体の奥は甘い熱で満ちている。エレーヌもまた、想いを込めて夫を見つめた。 「ゲルハルトさま、愛しています」 ゲルハルトはエレーヌをさも大切そうに撫でる。その手つきとは裏腹に、ぞっとするようなことを囁いてきた。 「エレーヌ、俺はあなたが憎い」 エレーヌは凍り付いた。

最愛の側妃だけを愛する旦那様、あなたの愛は要りません

abang
恋愛
私の旦那様は七人の側妃を持つ、巷でも噂の好色王。 後宮はいつでも女の戦いが絶えない。 安心して眠ることもできない後宮に、他の妃の所にばかり通う皇帝である夫。 「どうして、この人を愛していたのかしら?」 ずっと静観していた皇后の心は冷めてしまいう。 それなのに皇帝は急に皇后に興味を向けて……!? 「あの人に興味はありません。勝手になさい!」

政略より愛を選んだ結婚。~後悔は十年後にやってきた。~

つくも茄子
恋愛
幼い頃からの婚約者であった侯爵令嬢との婚約を解消して、学生時代からの恋人と結婚した王太子殿下。 政略よりも愛を選んだ生活は思っていたのとは違っていた。「お幸せに」と微笑んだ元婚約者。結婚によって去っていた側近達。愛する妻の妃教育がままならない中での出産。世継ぎの王子の誕生を望んだものの産まれたのは王女だった。妻に瓜二つの娘は可愛い。無邪気な娘は欲望のままに動く。断罪の時、全てが明らかになった。王太子の思い描いていた未来は元から無かったものだった。後悔は続く。どこから間違っていたのか。 他サイトにも公開中。

私が死んで満足ですか?

マチバリ
恋愛
王太子に婚約破棄を告げられた伯爵令嬢ロロナが死んだ。 ある者は面倒な婚約破棄の手続きをせずに済んだと安堵し、ある者はずっと欲しかった物が手に入ると喜んだ。 全てが上手くおさまると思っていた彼らだったが、ロロナの死が与えた影響はあまりに大きかった。 書籍化にともない本編を引き下げいたしました

貴方もヒロインのところに行くのね? [完]

風龍佳乃
恋愛
元気で活発だったマデリーンは アカデミーに入学すると生活が一変し てしまった 友人となったサブリナはマデリーンと 仲良くなった男性を次々と奪っていき そしてマデリーンに愛を告白した バーレンまでもがサブリナと一緒に居た マデリーンは過去に決別して 隣国へと旅立ち新しい生活を送る。 そして帰国したマデリーンは 目を引く美しい蝶になっていた

むしゃくしゃしてやりましたの。後悔はしておりませんわ。

緑谷めい
恋愛
「むしゃくしゃしてやりましたの。後悔はしておりませんわ」  そう、むしゃくしゃしてやった。後悔はしていない。    私は、カトリーヌ・ナルセー。17歳。  ナルセー公爵家の長女であり、第2王子ハロルド殿下の婚約者である。父のナルセー公爵は、この国の宰相だ。  その父は、今、私の目の前で、顔面蒼白になっている。 「カトリーヌ、もう一度言ってくれ。私の聞き間違いかもしれぬから」  お父様、お気の毒ですけれど、お聞き間違いではございませんわ。では、もう一度言いますわよ。 「今日、王宮で、ハロルド様に往復ビンタを浴びせ、更に足で蹴りつけましたの」  

【完結】幼い頃から婚約を誓っていた伯爵に婚約破棄されましたが、数年後に驚くべき事実が発覚したので会いに行こうと思います

菊池 快晴
恋愛
令嬢メアリーは、幼い頃から将来を誓い合ったゼイン伯爵に婚約破棄される。 その隣には見知らぬ女性が立っていた。 二人は傍から見ても仲睦まじいカップルだった。 両家の挨拶を終えて、幸せな結婚前パーティで、その出来事は起こった。 メアリーは彼との出会いを思い返しながら打ちひしがれる。 数年後、心の傷がようやく癒えた頃、メアリーの前に、謎の女性が現れる。 彼女の口から発せられた言葉は、ゼインのとんでもない事実だった――。 ※ハッピーエンド&純愛 他サイトでも掲載しております。

処理中です...
本作については削除予定があるため、新規のレンタルはできません。
番外編を閲覧することが出来ません。
過去1ヶ月以内にレジーナの小説・漫画を1話以上レンタルしている と、レジーナのすべての番外編を読むことができます。

このユーザをミュートしますか?

※ミュートすると該当ユーザの「小説・投稿漫画・感想・コメント」が非表示になります。ミュートしたことは相手にはわかりません。またいつでもミュート解除できます。
※一部ミュート対象外の箇所がございます。ミュートの対象範囲についての詳細はヘルプにてご確認ください。
※ミュートしてもお気に入りやしおりは解除されません。既にお気に入りやしおりを使用している場合はすべて解除してからミュートを行うようにしてください。