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番外編 ケンビットのその後①

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先日、ドイル国とグランドールメイル帝国の同盟式典が終わりアエリアがグランドールメイル帝国 メイル陛下の元に行った。


ハリスの事があり婚約解消してからアエリアが旅立つまでの約3ヶ月間。

日が経つ毎にアエリアはよく笑う様になった。
アエリアの笑顔が嬉しくなる反面、その笑顔を引き出したのが私ではない事の悔しさがずっと私の気持ちを苦しめる。


私とアエリアは今までとは違う関係になったが、婚約者として過ごして来た18年間より最近の方がアエリアとの心の距離感が近くなった様に感じている。


アエリアは私に対して申し訳無さそうにしていたが、私はアエリアにそんな気持ちは求めていなかった。

申し訳ないと思うべきは私の方だ。
ずっとアエリアを苦しめてきたのだから……

でも、お互いそんな気持ちを持ち続けて関係がギクシャクしてしまうのは嫌だった。

だから私はアエリアに『これでお互い様だな。だからこれからは気にせずやって行こう』と笑顔で言った。

その時に見せたアエリアの顔は今まで見た中で最高に可愛かった。


どうしてもアエリアへの愛しさを消す事ができなくて1人になると過去を振り返り後悔ばかりしてしまう。



もう過去はやり直す事はできないのに……


全てを理解して、全てを納得して決めたことなのに虚しさが拭えない。心にぽっかりと穴が開いてしまった。

自分がこんなにも諦めが悪く女々しいなんて思っていなかった。


そして、私はそれらの思いを誤魔化すかのように国の為に動いた。

ドイル国の真実が分かったからこそ国のあり方そのものの考えを正し、この国を根本から見直さなくてはいけない。

父上からはこの件に関しては私に一任された。
これからこの国を背負うものとして、私は自身の感情で立ち止まる事は出来ない。



最近は私がずっと距離を感じていた従者のケリーやアエリアの兄エリックが私の側近となり力となってくれている。


私はケリーに対してずっと距離感を感じていた。

私はハリスの騒動以降、少し距離が縮まったケリーに意を決してその理由を聞くと、ケリーは眉間に皺を寄せて「私が距離をとっているのではありません。殿下が私に距離をとっているのです」と言われた。

それから私はケリーと積極的に話す様になった。

10も歳が離れたケリーは私の幼少の頃からの色々を話してくれた。そんな所まで見ていてくれたのかと言う事までハッキリと。

正直驚いた。でも同時にこんな近くに私を思っていてくれる人がいた事に喜びを感じた。


「殿下が私に心を開いてくれる日など来ないと思っておりましたが、嬉しいものですね」

いつも表情を変えず黙々としているケリーがそう言いながら私に笑った。

ケリーの笑顔を初めて見た。

何故だか胸が痛んだ。


アエリアの事だけではない。
私は今まで何をやってきていたのだろうか?
何を見ていたのだろうか?

本当に自分の愚かさを身に染みて感じた。


それから私は周り人々の見る目や関わり方が変わってきた。

アエリアの兄であるエリックもその1人だ。
幼い頃にほんの一時だけ一緒に過ごしたエリック。
幼い私はあの時エリックに嫉妬をし、何も言わず距離をとり傷つけた。

エリックは私に懸命に接して来てくれていたのに突き放しひどい事をした。

だから、エリックは私を嫌っていると思っていた。

アエリアに逢いにバルメルク邸に行って顔を合わせてもすぐに逃げられてしまっていたし、エリックとの仲は修復不可能だと感じていた。

が、エリックは私に寄り添って来てくれた。
改めて話してみると、エリックは「陛下にずっと嫌われてると思っていた」と言った。


その時私は気付かされた。

自身の思いは……自身の考えは口に出して相手にしっかり伝えなければいけないと言う事を。

思っているだけではダメなのだ。

当たり前なことなのに、簡単な事なのに私は今までそれができていなかった。


それに気づいた私は、国民の今のこの国に対する思いを直接聞きたいと思った。


1人でコッソリ街に出ては見たが上手く情報を掴む事など出来なかった。

当たり前だ。

今まで街に視察に出た事は何度かあったが、あくまで王族としてだ。私は王城の中からしか国を見ていなかったのだから、平民と同じ目線で国を見る事は難しいことだった。


悩んでいる私にはアエリアは自身の侍女の知り合いが街にいるとその者達を紹介をしてくれた。


[パルムパルム]という酒場にいる変わった者達だった。

色黒で筋肉質な体格でばっちりと化粧をしている店主ガルム。
小柄でいつも気だるそうにしている街の情報屋ゼノ。
ゼノの妹でゼノの下につき情報収集をしているサラナ。
腰まで伸ばした金髪のストレートで貴族世界ではあり得ない露出の多い服を着ているカーラ。


最初こそ見た目に驚き大丈夫かと思ったが、考え方はそこら辺の変な貴族よりしっかりしていて、なんと言ってもこのドイル国の事を思ってくれていた。

ガルムに関しては以前衛兵として国に支えていたらしい。

その時から築いてきた人脈はすごく、見た目によらずとても頼りになる人物だった。


彼らからは私1人では絶対に知り得る事ができない街の情報や、貴族達の裏側を知る事ができた。

彼らの協力も得てドイル国はこれから何にも囚われない素敵な国に変わって行くだろう。


私は私のやるべき事、できる事を必死にやる。


この国の為に……
この国の国民の為に……


そして、この国の呪縛を解放される事を望んでいたアエリアの為、私自身の為に……
 



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