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番外編 エリックside①

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私はエリック・バルメルク
バルメルク公爵家嫡男。このドイル国の筆頭公爵バルメルク家の正式な跡取り。

私が産まれたドイル国には血で定められた決まりがある。

【ドイル国を治める国王はメルトニア人の純血者のみに限る】

私はこのメルトニア人の純血者にあたる人間だった。

父は現バルメルク公爵ですが、血筋的に王族……前国王王弟でもあるので私自身王族の後継者争いの中心になってもおかしくない存在だった。が、父や母、亡くなったお祖父様のおかげでそういう煩わしいものに巻き込まれる事なく“バルメルク公爵家の後継”として難なく育ってきた。


父は真面目で几帳面。宰相として国王陛下を支え、国を政務を補佐する優秀な人。母はなんというか……思った事は即実行で行動力があり、人に惑わされない自分の意思をしっかりと持った裏表のない素直な人。

2人に大切に育てられ、私はとても恵まれていた。


私が2歳になった頃、父は隣国カサドラリドからユリマーリアを側室に迎え入れた。

ユリマーリアはとても綺麗で優しい人で、別腹の子である私に対しても嫌な顔をせずとても優しく接してくれて私はすぐにユリマーリアに懐いた。

誰にも内緒ですが、私にとってユリマーリアは初恋の人だった。

ユリマーリアは父をとても愛していた。
母も父をとても愛していたが、父とユリマーリアをいつも温かな目で見つめていた。

不思議な関係だなと子供ながらに感じたが、私は自分の家族が大好きだった。


私が4歳の時、父とユリマーリアの間に私の妹となるマリーナが産まれた。

可愛くてふわふわでとても嬉しかった。
か弱いその姿に大切にしてあげようと思った。

そして同じ頃、私は父に連れられ登城し、先日王太子となった1歳年上のケンビット殿下を紹介された。

父からは「これからお前が支えるべきお方だ」と言われた。

出会った頃の殿下は全てを諦めた様に無表情だった。
言ってしまえば子供っぽくない大人びた人だった。

その原因はすぐに分かった。

殿下を取り巻く大人達周りの目や態度。そのくせに王太子となった殿下に取り入って甘い蜜を吸おうとする都合の良い大人達が擦り寄る。

第三者である子供の私にとっても気分が良いものでは無かった。

そんな境遇にいる殿下を不憫に思った。
だから私は殿下の力になりたかった。
父に言われた通り自分が殿下の支えになるように頑張ろうと思った。

どんなに無視をされても根気よく殿下に声を掛けて無理矢理にでも遊んだ。

殿下の笑顔をいつか見たいと思って自分ができる限りの事をした。


数ヶ月経ち毎日の様にしつこく殿下と過ごし、殿下も私に心を許しはじめてくれてやっと友人関係になれると喜んだが、それから何日もしない内に殿下はまた出会った頃の冷たい殿下に戻ってしまった。

それ以降、会う事すら拒否される様になった。

私には意味が分からなかった。
あんなに心を開き始めてくれていたのに……

私は殿下に会ってもらえなくても今まで通り王城に通った。
何日通っても殿下は私に会ってくれなかった。

私が何かしたかな?
拒否される前日は特に変わった事はなかった。
考えても分からなかった。


しかし、それから数日後。殿下が私に会ってくれなくなった理由がわかった。


その日も殿下に会ってもらえず仕方なく王城の中庭のベンチに座って時間を潰していた。

特にやる事などないので、どうしたら殿下は私に会ってくれるのかをひたすら1人悩んでいると、そこに知らない貴婦人がやってきた。


「あら? 今日はおひとりですか? 殿下は?」

急に声をかけられてびっくりしたが、ここは王城内。変な人はいないはずだし、私自身暇だったので私は貴婦人の質問に素直に答えてしまった。

「殿下が私に会ってくださらないのです」
「あら。殿下が? それは悲しいですね」

貴婦人は悲しそうな顔を私に向けて私の隣に座る。

「何故、急に会ってくれなくなったから分からなくて……あんなに仲良くなったのに…」

私は何故だかその貴婦人は私の気持ちがわかってくれるかもと思い自分の胸の内を話した。

すると貴婦人は先程とは打って変わって意味ありげな笑みを浮かべる。

「でも……それは仕方のない事では? だって殿下は貴方と違い純血でないもの。殿下は3代目の濃血者。もう混血者と変わりない王族としての落ちこぼれですのよ。貴方に嫉妬して、嫌悪して顔も見たくなくなるのも分かりますわ」

「嫌悪……?」

この貴婦人が言っている意味がすぐにはわからなかった。
ただ、その言葉は殿下をバカにしているものに聞こえて腹が立った。

文句を言おうと私が貴婦人の方を向くと、貴婦人が私の頬に手を添えて色目を含んだ目で見てきた。

あきらかに母程の歳の女が子供の私に向けるような目ではない。

「貴方は純血のサラブレッド。王太子殿下より優秀なお方ですわ。わたくしが色々教えて差し上げましょう」

この人は何を言っているの?

気持ち悪い……

私は思わずその貴婦人の手を振り払いその場を走り去った。
そして父上を見つけ出してすぐに帰りたい事を伝えた。

もう王城にはいたくなかった。

貴婦人が気持ち悪かったというのもあるが、殿下が私に会ってくれなくなった理由が私の血筋が原因だと分かって私はショックだった。

私自身自分の血の事は知っていたけど、バルメルク公爵家の名の下にずっと守られてきていたのであまり純血というものの重要性を感じていなかったし、どうでもいい事だと思っていた。

でも、殿下の身の上を知って何も知らなかった自分に後悔した。

殿下に避けられても仕方ない。でも、それ以上に私自身もう殿下に合わせる顔がないと思った。

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