25 / 53
連載
番外編 エリックside①
しおりを挟む
私はエリック・バルメルク
バルメルク公爵家嫡男。このドイル国の筆頭公爵バルメルク家の正式な跡取り。
私が産まれたドイル国には血で定められた決まりがある。
【ドイル国を治める国王はメルトニア人の純血者のみに限る】
私はこのメルトニア人の純血者にあたる人間だった。
父は現バルメルク公爵ですが、血筋的に王族……前国王王弟でもあるので私自身王族の後継者争いの中心になってもおかしくない存在だった。が、父や母、亡くなったお祖父様のおかげでそういう煩わしいものに巻き込まれる事なく“バルメルク公爵家の後継”として難なく育ってきた。
父は真面目で几帳面。宰相として国王陛下を支え、国を政務を補佐する優秀な人。母はなんというか……思った事は即実行で行動力があり、人に惑わされない自分の意思をしっかりと持った裏表のない素直な人。
2人に大切に育てられ、私はとても恵まれていた。
私が2歳になった頃、父は隣国カサドラリドからユリマーリアを側室に迎え入れた。
ユリマーリアはとても綺麗で優しい人で、別腹の子である私に対しても嫌な顔をせずとても優しく接してくれて私はすぐにユリマーリアに懐いた。
誰にも内緒ですが、私にとってユリマーリアは初恋の人だった。
ユリマーリアは父をとても愛していた。
母も父をとても愛していたが、父とユリマーリアをいつも温かな目で見つめていた。
不思議な関係だなと子供ながらに感じたが、私は自分の家族が大好きだった。
私が4歳の時、父とユリマーリアの間に私の妹となるマリーナが産まれた。
可愛くてふわふわでとても嬉しかった。
か弱いその姿に大切にしてあげようと思った。
そして同じ頃、私は父に連れられ登城し、先日王太子となった1歳年上のケンビット殿下を紹介された。
父からは「これからお前が支えるべきお方だ」と言われた。
出会った頃の殿下は全てを諦めた様に無表情だった。
言ってしまえば子供っぽくない大人びた人だった。
その原因はすぐに分かった。
殿下を取り巻く大人達の目や態度。そのくせに王太子となった殿下に取り入って甘い蜜を吸おうとする都合の良い大人達が擦り寄る。
第三者である子供の私にとっても気分が良いものでは無かった。
そんな境遇にいる殿下を不憫に思った。
だから私は殿下の力になりたかった。
父に言われた通り自分が殿下の支えになるように頑張ろうと思った。
どんなに無視をされても根気よく殿下に声を掛けて無理矢理にでも遊んだ。
殿下の笑顔をいつか見たいと思って自分ができる限りの事をした。
数ヶ月経ち毎日の様にしつこく殿下と過ごし、殿下も私に心を許しはじめてくれてやっと友人関係になれると喜んだが、それから何日もしない内に殿下はまた出会った頃の冷たい殿下に戻ってしまった。
それ以降、会う事すら拒否される様になった。
私には意味が分からなかった。
あんなに心を開き始めてくれていたのに……
私は殿下に会ってもらえなくても今まで通り王城に通った。
何日通っても殿下は私に会ってくれなかった。
私が何かしたかな?
拒否される前日は特に変わった事はなかった。
考えても分からなかった。
しかし、それから数日後。殿下が私に会ってくれなくなった理由がわかった。
その日も殿下に会ってもらえず仕方なく王城の中庭のベンチに座って時間を潰していた。
特にやる事などないので、どうしたら殿下は私に会ってくれるのかをひたすら1人悩んでいると、そこに知らない貴婦人がやってきた。
「あら? 今日はおひとりですか? 殿下は?」
急に声をかけられてびっくりしたが、ここは王城内。変な人はいないはずだし、私自身暇だったので私は貴婦人の質問に素直に答えてしまった。
「殿下が私に会ってくださらないのです」
「あら。殿下が? それは悲しいですね」
貴婦人は悲しそうな顔を私に向けて私の隣に座る。
「何故、急に会ってくれなくなったから分からなくて……あんなに仲良くなったのに…」
私は何故だかその貴婦人は私の気持ちがわかってくれるかもと思い自分の胸の内を話した。
すると貴婦人は先程とは打って変わって意味ありげな笑みを浮かべる。
「でも……それは仕方のない事では? だって殿下は貴方と違い純血でないもの。殿下は3代目の濃血者。もう混血者と変わりない王族としての落ちこぼれですのよ。貴方に嫉妬して、嫌悪して顔も見たくなくなるのも分かりますわ」
「嫌悪……?」
この貴婦人が言っている意味がすぐにはわからなかった。
ただ、その言葉は殿下をバカにしているものに聞こえて腹が立った。
文句を言おうと私が貴婦人の方を向くと、貴婦人が私の頬に手を添えて色目を含んだ目で見てきた。
あきらかに母程の歳の女が子供の私に向けるような目ではない。
「貴方は純血のサラブレッド。王太子殿下より優秀なお方ですわ。わたくしが色々教えて差し上げましょう」
この人は何を言っているの?
気持ち悪い……
私は思わずその貴婦人の手を振り払いその場を走り去った。
そして父上を見つけ出してすぐに帰りたい事を伝えた。
もう王城にはいたくなかった。
貴婦人が気持ち悪かったというのもあるが、殿下が私に会ってくれなくなった理由が私の血筋が原因だと分かって私はショックだった。
私自身自分の血の事は知っていたけど、バルメルク公爵家の名の下にずっと守られてきていたのであまり純血というものの重要性を感じていなかったし、どうでもいい事だと思っていた。
でも、殿下の身の上を知って何も知らなかった自分に後悔した。
殿下に避けられても仕方ない。でも、それ以上に私自身もう殿下に合わせる顔がないと思った。
バルメルク公爵家嫡男。このドイル国の筆頭公爵バルメルク家の正式な跡取り。
私が産まれたドイル国には血で定められた決まりがある。
【ドイル国を治める国王はメルトニア人の純血者のみに限る】
私はこのメルトニア人の純血者にあたる人間だった。
父は現バルメルク公爵ですが、血筋的に王族……前国王王弟でもあるので私自身王族の後継者争いの中心になってもおかしくない存在だった。が、父や母、亡くなったお祖父様のおかげでそういう煩わしいものに巻き込まれる事なく“バルメルク公爵家の後継”として難なく育ってきた。
父は真面目で几帳面。宰相として国王陛下を支え、国を政務を補佐する優秀な人。母はなんというか……思った事は即実行で行動力があり、人に惑わされない自分の意思をしっかりと持った裏表のない素直な人。
2人に大切に育てられ、私はとても恵まれていた。
私が2歳になった頃、父は隣国カサドラリドからユリマーリアを側室に迎え入れた。
ユリマーリアはとても綺麗で優しい人で、別腹の子である私に対しても嫌な顔をせずとても優しく接してくれて私はすぐにユリマーリアに懐いた。
誰にも内緒ですが、私にとってユリマーリアは初恋の人だった。
ユリマーリアは父をとても愛していた。
母も父をとても愛していたが、父とユリマーリアをいつも温かな目で見つめていた。
不思議な関係だなと子供ながらに感じたが、私は自分の家族が大好きだった。
私が4歳の時、父とユリマーリアの間に私の妹となるマリーナが産まれた。
可愛くてふわふわでとても嬉しかった。
か弱いその姿に大切にしてあげようと思った。
そして同じ頃、私は父に連れられ登城し、先日王太子となった1歳年上のケンビット殿下を紹介された。
父からは「これからお前が支えるべきお方だ」と言われた。
出会った頃の殿下は全てを諦めた様に無表情だった。
言ってしまえば子供っぽくない大人びた人だった。
その原因はすぐに分かった。
殿下を取り巻く大人達の目や態度。そのくせに王太子となった殿下に取り入って甘い蜜を吸おうとする都合の良い大人達が擦り寄る。
第三者である子供の私にとっても気分が良いものでは無かった。
そんな境遇にいる殿下を不憫に思った。
だから私は殿下の力になりたかった。
父に言われた通り自分が殿下の支えになるように頑張ろうと思った。
どんなに無視をされても根気よく殿下に声を掛けて無理矢理にでも遊んだ。
殿下の笑顔をいつか見たいと思って自分ができる限りの事をした。
数ヶ月経ち毎日の様にしつこく殿下と過ごし、殿下も私に心を許しはじめてくれてやっと友人関係になれると喜んだが、それから何日もしない内に殿下はまた出会った頃の冷たい殿下に戻ってしまった。
それ以降、会う事すら拒否される様になった。
私には意味が分からなかった。
あんなに心を開き始めてくれていたのに……
私は殿下に会ってもらえなくても今まで通り王城に通った。
何日通っても殿下は私に会ってくれなかった。
私が何かしたかな?
拒否される前日は特に変わった事はなかった。
考えても分からなかった。
しかし、それから数日後。殿下が私に会ってくれなくなった理由がわかった。
その日も殿下に会ってもらえず仕方なく王城の中庭のベンチに座って時間を潰していた。
特にやる事などないので、どうしたら殿下は私に会ってくれるのかをひたすら1人悩んでいると、そこに知らない貴婦人がやってきた。
「あら? 今日はおひとりですか? 殿下は?」
急に声をかけられてびっくりしたが、ここは王城内。変な人はいないはずだし、私自身暇だったので私は貴婦人の質問に素直に答えてしまった。
「殿下が私に会ってくださらないのです」
「あら。殿下が? それは悲しいですね」
貴婦人は悲しそうな顔を私に向けて私の隣に座る。
「何故、急に会ってくれなくなったから分からなくて……あんなに仲良くなったのに…」
私は何故だかその貴婦人は私の気持ちがわかってくれるかもと思い自分の胸の内を話した。
すると貴婦人は先程とは打って変わって意味ありげな笑みを浮かべる。
「でも……それは仕方のない事では? だって殿下は貴方と違い純血でないもの。殿下は3代目の濃血者。もう混血者と変わりない王族としての落ちこぼれですのよ。貴方に嫉妬して、嫌悪して顔も見たくなくなるのも分かりますわ」
「嫌悪……?」
この貴婦人が言っている意味がすぐにはわからなかった。
ただ、その言葉は殿下をバカにしているものに聞こえて腹が立った。
文句を言おうと私が貴婦人の方を向くと、貴婦人が私の頬に手を添えて色目を含んだ目で見てきた。
あきらかに母程の歳の女が子供の私に向けるような目ではない。
「貴方は純血のサラブレッド。王太子殿下より優秀なお方ですわ。わたくしが色々教えて差し上げましょう」
この人は何を言っているの?
気持ち悪い……
私は思わずその貴婦人の手を振り払いその場を走り去った。
そして父上を見つけ出してすぐに帰りたい事を伝えた。
もう王城にはいたくなかった。
貴婦人が気持ち悪かったというのもあるが、殿下が私に会ってくれなくなった理由が私の血筋が原因だと分かって私はショックだった。
私自身自分の血の事は知っていたけど、バルメルク公爵家の名の下にずっと守られてきていたのであまり純血というものの重要性を感じていなかったし、どうでもいい事だと思っていた。
でも、殿下の身の上を知って何も知らなかった自分に後悔した。
殿下に避けられても仕方ない。でも、それ以上に私自身もう殿下に合わせる顔がないと思った。
0
お気に入りに追加
7,636
あなたにおすすめの小説
夫の色のドレスを着るのをやめた結果、夫が我慢をやめてしまいました
氷雨そら
恋愛
夫の色のドレスは私には似合わない。
ある夜会、夫と一緒にいたのは夫の愛人だという噂が流れている令嬢だった。彼女は夫の瞳の色のドレスを私とは違い完璧に着こなしていた。噂が事実なのだと確信した私は、もう夫の色のドレスは着ないことに決めた。
小説家になろう様にも掲載中です
挙式後すぐに離婚届を手渡された私は、この結婚は予め捨てられることが確定していた事実を知らされました
結城芙由奈
恋愛
【結婚した日に、「君にこれを預けておく」と離婚届を手渡されました】
今日、私は子供の頃からずっと大好きだった人と結婚した。しかし、式の後に絶望的な事を彼に言われた。
「ごめん、本当は君とは結婚したくなかったんだ。これを預けておくから、その気になったら提出してくれ」
そう言って手渡されたのは何と離婚届けだった。
そしてどこまでも冷たい態度の夫の行動に傷つけられていく私。
けれどその裏には私の知らない、ある深い事情が隠されていた。
その真意を知った時、私は―。
※暫く鬱展開が続きます
※他サイトでも投稿中
私が死んで満足ですか?
マチバリ
恋愛
王太子に婚約破棄を告げられた伯爵令嬢ロロナが死んだ。
ある者は面倒な婚約破棄の手続きをせずに済んだと安堵し、ある者はずっと欲しかった物が手に入ると喜んだ。
全てが上手くおさまると思っていた彼らだったが、ロロナの死が与えた影響はあまりに大きかった。
書籍化にともない本編を引き下げいたしました
初夜に「俺がお前を抱く事は無い!」と叫んだら長年の婚約者だった新妻に「気持ち悪い」と言われた上に父にも予想外の事を言われた男とその浮気女の話
ラララキヲ
恋愛
長年の婚約者を欺いて平民女と浮気していた侯爵家長男。3年後の白い結婚での離婚を浮気女に約束して、新妻の寝室へと向かう。
初夜に「俺がお前を抱く事は無い!」と愛する夫から宣言された無様な女を嘲笑う為だけに。
しかし寝室に居た妻は……
希望通りの白い結婚と愛人との未来輝く生活の筈が……全てを周りに知られていた上に自分の父親である侯爵家当主から言われた言葉は──
一人の女性を蹴落として掴んだ彼らの未来は……──
<【ざまぁ編】【イリーナ編】【コザック第二の人生編(ザマァ有)】となりました>
◇テンプレ浮気クソ男女。
◇軽い触れ合い表現があるのでR15に
◇ふんわり世界観。ゆるふわ設定。
◇ご都合展開。矛盾は察して下さい…
◇なろうにも上げてます。
※HOTランキング入り(1位)!?[恋愛::3位]ありがとうございます!恐縮です!期待に添えればよいのですがッ!!(;><)
婚約者に消えろと言われたので湖に飛び込んだら、気づけば三年が経っていました。
束原ミヤコ
恋愛
公爵令嬢シャロンは、王太子オリバーの婚約者に選ばれてから、厳しい王妃教育に耐えていた。
だが、十六歳になり貴族学園に入学すると、オリバーはすでに子爵令嬢エミリアと浮気をしていた。
そしてある冬のこと。オリバーに「私の為に消えろ」というような意味のことを告げられる。
全てを諦めたシャロンは、精霊の湖と呼ばれている学園の裏庭にある湖に飛び込んだ。
気づくと、見知らぬ場所に寝かされていた。
そこにはかつて、病弱で体の小さかった辺境伯家の息子アダムがいた。
すっかり立派になったアダムは「あれから三年、君は目覚めなかった」と言った――。
最愛の側妃だけを愛する旦那様、あなたの愛は要りません
abang
恋愛
私の旦那様は七人の側妃を持つ、巷でも噂の好色王。
後宮はいつでも女の戦いが絶えない。
安心して眠ることもできない後宮に、他の妃の所にばかり通う皇帝である夫。
「どうして、この人を愛していたのかしら?」
ずっと静観していた皇后の心は冷めてしまいう。
それなのに皇帝は急に皇后に興味を向けて……!?
「あの人に興味はありません。勝手になさい!」
妹と旦那様に子供ができたので、離縁して隣国に嫁ぎます
冬月光輝
恋愛
私がベルモンド公爵家に嫁いで3年の間、夫婦に子供は出来ませんでした。
そんな中、夫のファルマンは裏切り行為を働きます。
しかも相手は妹のレナ。
最初は夫を叱っていた義両親でしたが、レナに子供が出来たと知ると私を責めだしました。
夫も婚約中から私からの愛は感じていないと口にしており、あの頃に婚約破棄していればと謝罪すらしません。
最後には、二人と子供の幸せを害する権利はないと言われて離縁させられてしまいます。
それからまもなくして、隣国の王子であるレオン殿下が我が家に現れました。
「約束どおり、私の妻になってもらうぞ」
確かにそんな約束をした覚えがあるような気がしますが、殿下はまだ5歳だったような……。
言われるがままに、隣国へ向かった私。
その頃になって、子供が出来ない理由は元旦那にあることが発覚して――。
ベルモンド公爵家ではひと悶着起こりそうらしいのですが、もう私には関係ありません。
※ざまぁパートは第16話〜です
5年も苦しんだのだから、もうスッキリ幸せになってもいいですよね?
gacchi
恋愛
13歳の学園入学時から5年、第一王子と婚約しているミレーヌは王子妃教育に疲れていた。好きでもない王子のために苦労する意味ってあるんでしょうか。
そんなミレーヌに王子は新しい恋人を連れて
「婚約解消してくれる?優しいミレーヌなら許してくれるよね?」
もう私、こんな婚約者忘れてスッキリ幸せになってもいいですよね?
3/5 1章完結しました。おまけの後、2章になります。
4/4 完結しました。奨励賞受賞ありがとうございました。
1章が書籍になりました。
過去1ヶ月以内にレジーナの小説・漫画を1話以上レンタルしている
と、レジーナのすべての番外編を読むことができます。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる
本作については削除予定があるため、新規のレンタルはできません。
番外編を閲覧することが出来ません。
過去1ヶ月以内にレジーナの小説・漫画を1話以上レンタルしている
と、レジーナのすべての番外編を読むことができます。
このユーザをミュートしますか?
※ミュートすると該当ユーザの「小説・投稿漫画・感想・コメント」が非表示になります。ミュートしたことは相手にはわかりません。またいつでもミュート解除できます。
※一部ミュート対象外の箇所がございます。ミュートの対象範囲についての詳細はヘルプにてご確認ください。
※ミュートしてもお気に入りやしおりは解除されません。既にお気に入りやしおりを使用している場合はすべて解除してからミュートを行うようにしてください。