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馬車を降りると、案内係の騎士に連れられて謁見室に向かう。
妃教育のために何度も来ていた王城だけど、流石にここまで来ると緊張感が出てくる。


謁見室の前まで来て扉が開くとそこには既に主要人物が揃っていた。

最前列にはサムル王太子殿下。その横にアロンが控えている。
その向かいにマルク様とローライ様。
そして、その後ろにひっそりとエリーさんが立っている。

そこから少し離れて、筆頭公爵のウィストン侯爵。
先代宰相でマサラ王妃の恋人…そして謀反の首謀者であろうハリストン公爵。
現宰相補佐のマサラダ公爵が控えている。
現財務大臣のキャスティン侯爵。

その4人が順に並んでいる。

私とお父様は謁見室に案内してくれた騎士の指定された場所まで進む。

謁見室の中では誰がしゃべるでもなく静まり返っている。

しばらくすると、部屋の奥の扉がガチャリと開いて、両手を手錠で繋がれて両脇を騎士に堅められた王弟で第二騎士団長のモーメント侯爵がやつれた状態で入ってくる。


その姿を見て、状況をそこまで把握していないお父様は絶句した。

マルク様は、何事かと目を見開いてモーメント侯爵を見つめる。

ハリストン公爵とマサラダ公爵は全く顔色を変えない。
キャスティン侯爵は一瞬顔を歪めるけど、すぐに何もないような表情に戻る。

さすがだな…

私はチラリとアロンの方を見ると、アロンは私の視線に気づいて軽く頷いた。

ちょうどその時、謁見室の扉が開き国王陛下と何知れず顔でマサラ王妃が入ってきた。

謁見室にいる私達は国王陛下に対して深く頭を下げる。



「この度は急に皆に集まってもらい感謝する。私がこの国を留守にしている間に色々問題が起きたようで…」

国王陛下は謁見室にいる皆を見渡してから、その視線をサムル王太子殿下に持って行く。

「全容を知るというサムルに関係すると言うそなた達をお集めてもらった。私も全てを把握できていない。さて、何から話し合おうか?」

そう言って国王陛下は玉座に座る。
その姿を見て、マサラ王妃もサッと腰掛けると、サッと扇子を広げて口元を隠した。

その間、マサラ王妃は一才表情を変えない。

モーメント侯爵が拘束されて出てきて、今がどんな状況か少なからず分かっているはずなのに…

無表情のその表情かおになんだか恐怖を感じる…


「父上っっ。では私の話を先にっっ」

重い空気の中、一番最初に声を上げたのはマルク様だった。
この空気の中、声を上げられるのはある意味すごいと思う…


「マルクか…では聞こう」

マルク様は、国王の返答を聞き次第、後ろにいるエリーさんの肩を組んで私の方を指差す。


「父上っっ。わたくし、マキシマス王国第二王子、マルク・マキシマスは悪女カロリーナ・ミスドナとは婚約を破棄し、このエリー・ココットと新たに婚約を結ぶ事をお許しいただきたいっっ」


その自信はどこから?
といった感じにマルク様は何の疑いもなく、こうする事が当たり前とでも言うように自信満々に述べる。

指を差された私は表情を変えずにただ、マルク様を見つめる。
ちょっと笑いそうになるけど、我慢して無の境地で見つめ続ける。

エリーさんは明らかに面倒臭そう…いえ。困った表情をしている。


「婚約を破棄と…」

国王はマルク様とエリーさんをジッと見てから私の方に視線を移す。

「この婚約は、マルクが最初に望んだものだ。それをお主自ら破棄すると?」

「はい。カロリーナには色々騙されました。私は、学園に行きカロリーナの本性を目の当たりにしました。カロリーナは誰でも平等である学園内で自身より身分の低いものを軽視し、時にいたぶる最低最悪の悪女でした。こんな女を王族に迎え入れるなどあってはならぬ事ですっっ」


自身より身分の低いものを軽視?
それはマルク様自身では?
自分のことは棚上げですか?


マルク様の言葉に、隣にいるお父様はワナワナと怒りに震えている。


「ふむ…カロリーナ嬢。マルクがこう申しておるが、何か意見はあるか?」

「はい。全て身に覚えがないことでございます」

私は深々と頭を下げて凛とした態度を崩さない。


頭を上げてからアロンを見ると力強くコクリと頷く。
そして、エリーさんの方を見ると肩を組まれているマルク様に気づかれない程度にガッツポーズをとる。


さぁ。やってやろうじゃない。
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