【本編完結】はい、かしこまりました。婚約破棄了承いたします。

53.

サムル殿下の噂が出始めてから数日後。

単なる会話の一コマでしかなかったサムル様の噂話は、あれから日に日に大きな噂となり、今ではどこへ行っても耳にする様になって来た。

噂が広がるのは本当にあっという間。

決していい噂ではなく、明らかに悪意を感じる噂の数々。
きっとサムル王太子殿下本人の耳にも届いているに違いない。



私がマルク様の婚約者としてマサラ王妃の陰謀に巻き込まれる事をお父様は危惧していた。

そして、その際の私の協力者としてアロンの名前を上げた。

アロンはサムル様の学友…傘下としてこの噂話に対して動いているはず…


私も何か協力ができることがあれば力になりたい。


現時点、まだ私は巻き込まれるという所には至っていないけど、たとえ今後例の作戦が上手くいって、私がマルク様の婚約者でなくなったとしてもマルク様が次期国王になることだけはなんとしてでも阻止したい。マルク様はどんなに繕ったところで国王の素質なんて皆無だから。

国の為、国民の為にこの国次期国王はサムル王太子殿下であるべき。実際にサムル様にお会いしてかなりイメージとは異なる方ではあったけど、その気持ちは変わらない。


そして、そのサムル殿下の噂話と並行して出てきている噂に対しては怒りにも似た感情が湧き出てきている。

横暴。自分勝手。そんなイメージを持たれているマルク様第2王子が、実は裏で養護園や孤児を保護している修道院などに毎月、自身の収益から莫大な寄付をしていたというものだ。


はい？？？
ぜぇぇぇぇったいにあり得ない。


王子教育を疎かにして“乱れた性活”を送っているような人ですよ？
そんな慈悲の気持ちなんて持ち合わせてなんかいるはずがない。


でも、そのマルク様の噂の出どころがどうやら王城の上層部から流れているらしいので、信じるてしまう人も少なくない。

マサラ王妃の悪意を…計画を…ビンビン感じてしまう。


横暴さは義兄サムル殿下を思っての演技だとか、自分勝手に見える行動も、実は裏を返せば相手を思っての行動とか…

ちょっと考えれば無茶苦茶な内容なのにどうやってかそれが真実であるかのような噂が流れてきている。

そんな噂を流す人も流す人だけど、信じる人もどうかと思ってしまう。




そして、その2つの噂に混じって学園内ではマルク様とエリー様の恋仲の噂。私がエリーさんに対して酷い仕打ちをしているという噂がじわじわと広がり始めている。



本当にどこへ行ってもどんなところでも噂話というものは人の心をくすぐる様…


サムル王太子殿下がマキタイ王国への属国を目論んでる噂。
マルク様が心広く、実は有能だという噂。
私がエリーさんに酷い仕打ちをして、そんなエリーさんをマルク様が救って、2人が恋仲になっているという噂。

それぞれバラバラな噂ではあるけど、噂の人物が全て揃っているこの学園では皆がこの3つの噂を好奇な目で見ている。


私はただその噂に対して何を答えるでもなく口を閉じるだけ。
余計なことは言わない。


これからどう動くべきか…
どうしたらいいか…

アロン達ときちんと相談して決して間違えないようにしないと。

これらの噂は凶となるか吉となるか…