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社交デビューのパーティーから帰宅するとお母様は知らせを聞いて顔面蒼白になっていた。
「すまない。カロリーナ」
「なんて事…こんな事になるなら早く他の婚約者を決めておくべきでしたわ…」
この状態に頭を抱える両親に私は笑みを向ける。
私の事を大切に思ってくれる優しい両親の元に産まれて良かった。
心からそう思う。
「大丈夫ですわ。私は伯爵家の娘としていつかはどなたかと婚約を結ばなければいけません。第2王子であるとは…想像はしていませんでしたが、家のプラスとなる婚約となるようにこれから尽力致しますわ」
「カロリーナ…」
そう。どんな理由があれ、私の婚約は家にとってプラスのものでなくてはならない。
第2王子の人となりは問題はあるけど、王家と繋がりを持つのは悪い事ではない。
お父様とお母様は私の言葉に申し訳なさそうにする。
そんな2人を見てギュッと胸が締め付けられるけど気づかないフリをする。
2人は私の本当の想いを知っているものね…
両親の前では心配かけずと気丈に振る舞うけど、そんな私を見て両親の不安げな表情は晴れるどころか険しくなる。
それと比例するかの様に徐々に強くなる胸の締め付けに耐えられ無くなって私は早々に自室に戻る。
部屋に戻り一息付くものの、胸の締め付けは強くなっていく。
その胸の締め付けとリンクして頭に浮かぶのは幼い頃、結婚を誓った大好きな幼馴染みの姿…
アロン…
アローン・ハウル。
私より2つ年上のこの国で1番大きなハウル商会の嫡男。
私はクローゼットの奥に仕舞い込んだ小さな赤い箱を久しぶりに取り出すと、中にしまってあるネックレスをギュと胸元で握りしめる。
ハウル商会現当主。アロンの父親であるエルドは、私のお父様ボルンと学友でお互い気が合うらしくずっと親しくしている。
そして、我が家の領地の綿花や鉱山物を取引してくれている仕事仲間でもあった。
ハウル商会はこの国を担う商会であるけど、堅苦しい爵位などは持たず、あくまで一国民として…平民として自由に商売をして成長している。
その資産はこの国の王家を遥かに超えると言われているが、出しゃばる事なく真っ当な生活をして権力などに屈せず商業のみに力を注いでいる。
王家もハウル商会には警戒しつつも変に手を出さず、良質な物を多く扱うハウル商会をお抱えとして様子を見ている。
私が幼い頃からアロンは父親に付いてよく屋敷に出入りしていた。
お父様達が仕事の話し合いをする際、私とアロンはよく2人で遊んだ。
アロンは金髪、碧眼で物語の王子様の様に美しい男の子だった。
優しくて、物知りで、できないことなど何一つない完璧な男の子。
私は気づいた時には既にアロンに恋をしていた。
アロンの為に自分も色々な事を積極的に学習して、自分自身を磨いた。
アロンと過ごした時間は私にとっては全てが大切なものだった。
「すまない。カロリーナ」
「なんて事…こんな事になるなら早く他の婚約者を決めておくべきでしたわ…」
この状態に頭を抱える両親に私は笑みを向ける。
私の事を大切に思ってくれる優しい両親の元に産まれて良かった。
心からそう思う。
「大丈夫ですわ。私は伯爵家の娘としていつかはどなたかと婚約を結ばなければいけません。第2王子であるとは…想像はしていませんでしたが、家のプラスとなる婚約となるようにこれから尽力致しますわ」
「カロリーナ…」
そう。どんな理由があれ、私の婚約は家にとってプラスのものでなくてはならない。
第2王子の人となりは問題はあるけど、王家と繋がりを持つのは悪い事ではない。
お父様とお母様は私の言葉に申し訳なさそうにする。
そんな2人を見てギュッと胸が締め付けられるけど気づかないフリをする。
2人は私の本当の想いを知っているものね…
両親の前では心配かけずと気丈に振る舞うけど、そんな私を見て両親の不安げな表情は晴れるどころか険しくなる。
それと比例するかの様に徐々に強くなる胸の締め付けに耐えられ無くなって私は早々に自室に戻る。
部屋に戻り一息付くものの、胸の締め付けは強くなっていく。
その胸の締め付けとリンクして頭に浮かぶのは幼い頃、結婚を誓った大好きな幼馴染みの姿…
アロン…
アローン・ハウル。
私より2つ年上のこの国で1番大きなハウル商会の嫡男。
私はクローゼットの奥に仕舞い込んだ小さな赤い箱を久しぶりに取り出すと、中にしまってあるネックレスをギュと胸元で握りしめる。
ハウル商会現当主。アロンの父親であるエルドは、私のお父様ボルンと学友でお互い気が合うらしくずっと親しくしている。
そして、我が家の領地の綿花や鉱山物を取引してくれている仕事仲間でもあった。
ハウル商会はこの国を担う商会であるけど、堅苦しい爵位などは持たず、あくまで一国民として…平民として自由に商売をして成長している。
その資産はこの国の王家を遥かに超えると言われているが、出しゃばる事なく真っ当な生活をして権力などに屈せず商業のみに力を注いでいる。
王家もハウル商会には警戒しつつも変に手を出さず、良質な物を多く扱うハウル商会をお抱えとして様子を見ている。
私が幼い頃からアロンは父親に付いてよく屋敷に出入りしていた。
お父様達が仕事の話し合いをする際、私とアロンはよく2人で遊んだ。
アロンは金髪、碧眼で物語の王子様の様に美しい男の子だった。
優しくて、物知りで、できないことなど何一つない完璧な男の子。
私は気づいた時には既にアロンに恋をしていた。
アロンの為に自分も色々な事を積極的に学習して、自分自身を磨いた。
アロンと過ごした時間は私にとっては全てが大切なものだった。
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