50 / 57
秘密の花園
しおりを挟む
「殿下。いつもマリアを送って頂きありがとうございます。この度の学園の騒動…恥ずかしながら解決の旨を使者の方に本日伺い騒動の事を知りました。マリアったら私達に何も話さなくて…殿下。前回の夜会に続きマリアを救って頂きありがとうございます」
ユシン様に家まで送ってもらうと、馬車がつくなりお母様が慌てて玄関先まで駆けてきてユシン様に深々と頭を下げる。
「この度の件は私自身の事ではマリアを巻き込んでしまった事です。謝るとしたらこちらの方です。すぐにご報告すべきでしたが、色々と処理をしていた為に遅くなり申し訳ありません」
「いえ。この様な事をすぐ把握出来ず本当に親としてお恥ずかしい事です。今、所用で出ています主人ももうすぐ帰って来ますので主人からも是非お礼を述べさせて下さい」
お母様はうっすら涙を浮かべて私の方を見る。
その顔を見てズキリと胸が痛む。
キャルラロル侯爵家の夜会の後からは以前に比べて色々心配してくれていることは分かっていたけど、学園での事は何故だか両親には知られたくなかった。
いつかは知られてしまう事だとは思っていたけど、いざ知られてしまうと心苦しさが半端ない。
私の気まずさに気づいたのかユシン様は私の頭をポンポンと軽く叩く。
「じゃあ。マリアの部屋でもお邪魔させてもらうかな。マリア。部屋に行っても?」
ユシン様は意味深な笑みを浮かべる。
なに?その笑みは…
「婚約者の部屋に入るのは問題ないですよね。義母上」
すかさずユシン様はお母様に問う。
「ええ。えぇ…殿下の事は信頼しておりますので…」
お母様の返答に思わず私は大きく息を吐く。
「…何もないですよ」
私はそれだけ言うとお母様の後ろに控えていたレイシアと共にユシン様を部屋へと案内する。
「お茶の用意をしてまいります」
部屋に着くなりレイシアはそう言って扉を全開にした状態で部屋を出て行く。
年頃の男女部屋に残して茶を入れに行く?
ちょっ…レイシア。侍女失格じゃない???
「夜会の後、お前を送った後に一度入ったが、ゆっくり見れなかったからな。意外と物がないんだな」
慌てる私を他所にユシン様は部屋に入るなり周りを見渡してポツリと呟く。
「我が家に無駄な事に使うお金はありませんから」
この部屋で唯一目立つ本棚には学園に入る前に使っていた参考書等が並んでいる。
ユシン様はその本棚に近づくと、参考書をジッと見つめてフッと笑う。
「参考書ばかりだな。かなり頑張っていたのが分かる」
「それくらいしかできなかったので…」
ユシン様は一冊の参考書を手に取ると、本棚に寄りかかってペラペラと見始めた。
あっそこは…ダメっっ…
そう思った瞬間、本棚がクルリと回転した。
「うわっっ」
急な事にユシン様はバランスを崩して膝をついて、私は咄嗟に本棚の回転を止める。
本棚が回転した裏側の本棚には参考書とは異なる本がズラリとならんでいる。
「この本は?」
ユシン様は立ち上がると一冊取りだしてページをめくり始めるとピタッと動きを止めた。
終わった……
お金のない我が家。
昔から交流がある領地の大工にこっそり頼んで廃材を使って作った秘密の本棚。
コツコツと集めてきた私の秘密のバイブル。
表向きは参考書が並んでいる本棚だけど、その裏にあるのは…
「深い口づけを繰り返すとスカートの中に手が滑り込んでくる。「ダメですっ」咄嗟に止めるがマモールはその手を止めない。」
「口に出して読まないで下さい」
ユシン様は私をチラリと見てから別の本にも手をかける。
「美しい身体のラインを優しく撫でると、メイデルは恥じらいながらも…」
「だから、止めてくださいっっ」
そう。そこにあるのは男女の教科書。
いや。いたって純愛ストーリーの恋愛本。
「お前は…こんなのが好きだったのか?キスひとつで躊躇うお前が?」
ユシン様は顎に手を当てて本棚にある本をじっと見つめる。
そして興味津々と言った形で何冊か出して眺める。
そんな興味持たなくても…
「んっ?男色物?」
ユシン様はその中の一冊で手を止めると驚いたように私を見る。
呆れられた?
でも…
でも…
隠していたけどこれは私のバイブルだ。
自分が落ちて行った時に現実逃避させてくれて、心を留めさせてくれたなくてはならない活力なのだ。
負けられない戦いがここにある。
「…男女関係ありません。全ての物語に愛があるのです。
ただただその…エロいわけではありません。
愛の延長線上のその行為があるのです。
どれもいじめられていた頃に私を救ってくれた私の宝物なんです。」
ユシン様は私の言葉に一瞬驚いた表情をみせるが、すぐに笑みを浮かべる。
「愛の延長線上…そうか…じゃあ実際経験してみるか?」
「イヤイヤ…物語と現実は違います。」
「そんな違いはないと思うが…」
「……引かないのですか?」
「別に引いたりするような事じゃないだろう。逆にこういう事に興味あるとは…男としては嬉しいというか…では俺たちもこの物語のようにこれから愛をより深めて行こうな」
そう言いながらユシン様は満面の笑みを浮かべるとジワリジワリと私に近づいてくる。
私は咄嗟にジワジワと後ろに下がる。
ちょっ…
「いい雰囲気のところ、申し訳ありません。旦那様がお帰りになりました」
レイシアの言葉と共に、私の部屋にお父様とお母様がやってくた。
た…助かった…
お父様がその後ユシン様に色々と話して頭を下げたりしていたけど、内容は全く頭に入ってこない。
迂闊だった…
この本達はどうしよう…
……まぁ。バレちゃったしこのままでいっか。
でも、自分も少し書いてる事…下町の本屋で数冊置いてもらって小遣い稼ぎしているのだけどそれは絶対に秘密にしよう。
ユシン様に家まで送ってもらうと、馬車がつくなりお母様が慌てて玄関先まで駆けてきてユシン様に深々と頭を下げる。
「この度の件は私自身の事ではマリアを巻き込んでしまった事です。謝るとしたらこちらの方です。すぐにご報告すべきでしたが、色々と処理をしていた為に遅くなり申し訳ありません」
「いえ。この様な事をすぐ把握出来ず本当に親としてお恥ずかしい事です。今、所用で出ています主人ももうすぐ帰って来ますので主人からも是非お礼を述べさせて下さい」
お母様はうっすら涙を浮かべて私の方を見る。
その顔を見てズキリと胸が痛む。
キャルラロル侯爵家の夜会の後からは以前に比べて色々心配してくれていることは分かっていたけど、学園での事は何故だか両親には知られたくなかった。
いつかは知られてしまう事だとは思っていたけど、いざ知られてしまうと心苦しさが半端ない。
私の気まずさに気づいたのかユシン様は私の頭をポンポンと軽く叩く。
「じゃあ。マリアの部屋でもお邪魔させてもらうかな。マリア。部屋に行っても?」
ユシン様は意味深な笑みを浮かべる。
なに?その笑みは…
「婚約者の部屋に入るのは問題ないですよね。義母上」
すかさずユシン様はお母様に問う。
「ええ。えぇ…殿下の事は信頼しておりますので…」
お母様の返答に思わず私は大きく息を吐く。
「…何もないですよ」
私はそれだけ言うとお母様の後ろに控えていたレイシアと共にユシン様を部屋へと案内する。
「お茶の用意をしてまいります」
部屋に着くなりレイシアはそう言って扉を全開にした状態で部屋を出て行く。
年頃の男女部屋に残して茶を入れに行く?
ちょっ…レイシア。侍女失格じゃない???
「夜会の後、お前を送った後に一度入ったが、ゆっくり見れなかったからな。意外と物がないんだな」
慌てる私を他所にユシン様は部屋に入るなり周りを見渡してポツリと呟く。
「我が家に無駄な事に使うお金はありませんから」
この部屋で唯一目立つ本棚には学園に入る前に使っていた参考書等が並んでいる。
ユシン様はその本棚に近づくと、参考書をジッと見つめてフッと笑う。
「参考書ばかりだな。かなり頑張っていたのが分かる」
「それくらいしかできなかったので…」
ユシン様は一冊の参考書を手に取ると、本棚に寄りかかってペラペラと見始めた。
あっそこは…ダメっっ…
そう思った瞬間、本棚がクルリと回転した。
「うわっっ」
急な事にユシン様はバランスを崩して膝をついて、私は咄嗟に本棚の回転を止める。
本棚が回転した裏側の本棚には参考書とは異なる本がズラリとならんでいる。
「この本は?」
ユシン様は立ち上がると一冊取りだしてページをめくり始めるとピタッと動きを止めた。
終わった……
お金のない我が家。
昔から交流がある領地の大工にこっそり頼んで廃材を使って作った秘密の本棚。
コツコツと集めてきた私の秘密のバイブル。
表向きは参考書が並んでいる本棚だけど、その裏にあるのは…
「深い口づけを繰り返すとスカートの中に手が滑り込んでくる。「ダメですっ」咄嗟に止めるがマモールはその手を止めない。」
「口に出して読まないで下さい」
ユシン様は私をチラリと見てから別の本にも手をかける。
「美しい身体のラインを優しく撫でると、メイデルは恥じらいながらも…」
「だから、止めてくださいっっ」
そう。そこにあるのは男女の教科書。
いや。いたって純愛ストーリーの恋愛本。
「お前は…こんなのが好きだったのか?キスひとつで躊躇うお前が?」
ユシン様は顎に手を当てて本棚にある本をじっと見つめる。
そして興味津々と言った形で何冊か出して眺める。
そんな興味持たなくても…
「んっ?男色物?」
ユシン様はその中の一冊で手を止めると驚いたように私を見る。
呆れられた?
でも…
でも…
隠していたけどこれは私のバイブルだ。
自分が落ちて行った時に現実逃避させてくれて、心を留めさせてくれたなくてはならない活力なのだ。
負けられない戦いがここにある。
「…男女関係ありません。全ての物語に愛があるのです。
ただただその…エロいわけではありません。
愛の延長線上のその行為があるのです。
どれもいじめられていた頃に私を救ってくれた私の宝物なんです。」
ユシン様は私の言葉に一瞬驚いた表情をみせるが、すぐに笑みを浮かべる。
「愛の延長線上…そうか…じゃあ実際経験してみるか?」
「イヤイヤ…物語と現実は違います。」
「そんな違いはないと思うが…」
「……引かないのですか?」
「別に引いたりするような事じゃないだろう。逆にこういう事に興味あるとは…男としては嬉しいというか…では俺たちもこの物語のようにこれから愛をより深めて行こうな」
そう言いながらユシン様は満面の笑みを浮かべるとジワリジワリと私に近づいてくる。
私は咄嗟にジワジワと後ろに下がる。
ちょっ…
「いい雰囲気のところ、申し訳ありません。旦那様がお帰りになりました」
レイシアの言葉と共に、私の部屋にお父様とお母様がやってくた。
た…助かった…
お父様がその後ユシン様に色々と話して頭を下げたりしていたけど、内容は全く頭に入ってこない。
迂闊だった…
この本達はどうしよう…
……まぁ。バレちゃったしこのままでいっか。
でも、自分も少し書いてる事…下町の本屋で数冊置いてもらって小遣い稼ぎしているのだけどそれは絶対に秘密にしよう。
1
あなたにおすすめの小説
側妃の条件は「子を産んだら離縁」でしたが、孤独な陛下を癒したら、執着されて離してくれません!
花瀬ゆらぎ
恋愛
「おまえには、国王陛下の側妃になってもらう」
婚約者と親友に裏切られ、傷心の伯爵令嬢イリア。
追い打ちをかけるように父から命じられたのは、若き国王フェイランの側妃になることだった。
しかし、王宮で待っていたのは、「世継ぎを産んだら離縁」という非情な条件。
夫となったフェイランは冷たく、侍女からは蔑まれ、王妃からは「用が済んだら去れ」と突き放される。
けれど、イリアは知ってしまう。 彼が兄の死と誤解に苦しみ、誰よりも孤独の中にいることを──。
「私は、陛下の幸せを願っております。だから……離縁してください」
フェイランを想い、身を引こうとしたイリア。
しかし、無関心だったはずの陛下が、イリアを強く抱きしめて……!?
「離縁する気か? 許さない。私の心を乱しておいて、逃げられると思うな」
凍てついた王の心を溶かしたのは、売られた側妃の純真な愛。
孤独な陛下に執着され、正妃へと昇り詰める逆転ラブロマンス!
※ 以下のタイトルにて、ベリーズカフェでも公開中。
【側妃の条件は「子を産んだら離縁」でしたが、陛下は私を離してくれません】
永遠の十七歳なんて、呪いに決まってる
鷹 綾
恋愛
永遠の十七歳――
それは祝福ではなく、三百年続く“呪い”だった。
公には「名門イソファガス家の孫娘」として知られる少女キクコ。
だがその正体は、歴史の裏側で幾度も国を救ってきた不老の元聖女であり、
王家すら真実を知らぬ“生きた時代遺産”。
政治も権力も、面倒ごとは大嫌い。
紅茶と読書に囲まれた静かな余生(?)を望んでいたキクコだったが――
魔王討伐後、王位継承問題に巻き込まれたことをきっかけに、
まさかの王位継承権十七位という事実が発覚する。
「……私が女王? 冗談じゃないわ」
回避策として動いたはずが、
誕生した新国王アルフェリットから、なぜか突然の求婚。
しかも彼は、
幼少期に命を救われた“恩人”がキクコであることを覚えていた――
年を取らぬ姿のままで。
永遠に老いない少女と、
彼女の真実を問わず選んだ自分ファーストな若き王。
王妃になどなる気はない。
けれど、逃げ続けることももうできない。
これは、
歴史の影に生きてきた少女が、
はじめて「誰かの隣」を選ぶかもしれない物語。
ざまぁも陰謀も押し付けない。
それでも――
この国で一番、誰よりも“強い”のは彼女だった。
壊れていく音を聞きながら
夢窓(ゆめまど)
恋愛
結婚してまだ一か月。
妻の留守中、夫婦の家に突然やってきた母と姉と姪
何気ない日常のひと幕が、
思いもよらない“ひび”を生んでいく。
母と嫁、そしてその狭間で揺れる息子。
誰も気づきがないまま、
家族のかたちが静かに崩れていく――。
壊れていく音を聞きながら、
それでも誰かを思うことはできるのか。
さようならの定型文~身勝手なあなたへ
宵森みなと
恋愛
「好きな女がいる。君とは“白い結婚”を——」
――それは、夢にまで見た結婚式の初夜。
額に誓いのキスを受けた“その夜”、彼はそう言った。
涙すら出なかった。
なぜなら私は、その直前に“前世の記憶”を思い出したから。
……よりによって、元・男の人生を。
夫には白い結婚宣言、恋も砕け、初夜で絶望と救済で、目覚めたのは皮肉にも、“現実”と“前世”の自分だった。
「さようなら」
だって、もう誰かに振り回されるなんて嫌。
慰謝料もらって悠々自適なシングルライフ。
別居、自立して、左団扇の人生送ってみせますわ。
だけど元・夫も、従兄も、世間も――私を放ってはくれないみたい?
「……何それ、私の人生、まだ波乱あるの?」
はい、あります。盛りだくさんで。
元・男、今・女。
“白い結婚からの離縁”から始まる、人生劇場ここに開幕。
-----『白い結婚の行方』シリーズ -----
『白い結婚の行方』の物語が始まる、前のお話です。
私に告白してきたはずの先輩が、私の友人とキスをしてました。黙って退散して食事をしていたら、ハイスペックなイケメン彼氏ができちゃったのですが。
石河 翠
恋愛
飲み会の最中に席を立った主人公。化粧室に向かった彼女は、自分に告白してきた先輩と自分の友人がキスをしている現場を目撃する。
自分への告白は、何だったのか。あまりの出来事に衝撃を受けた彼女は、そのまま行きつけの喫茶店に退散する。
そこでやけ食いをする予定が、美味しいものに満足してご機嫌に。ちょっとしてネタとして先ほどのできごとを話したところ、ずっと片想いをしていた相手に押し倒されて……。
好きなひとは高嶺の花だからと諦めつつそばにいたい主人公と、アピールし過ぎているせいで冗談だと思われている愛が重たいヒーローの恋物語。
この作品は、小説家になろう及びエブリスタでも投稿しております。
扉絵は、写真ACよりチョコラテさまの作品をお借りしております。
旦那様。私が悪女ならば、愛人の女は何になるのかしら?
白雲八鈴
恋愛
我が公爵家主催の夜会の最中。夫が愛人を連れてやってきたのです。そして、私を悪女という理由で離縁を突きつけてきました。
離縁して欲しいというのであれば、今まで支援してきた金額を全額返済していただけません?
あら?愛人の貴女が支払ってくれると?お優しいわね。
私が悪女というのであれば、妻のいる夫の愛人に収まっている貴女は何なのかしら?
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる