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ユシンside④
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「キャルラロル侯爵今日はお招きありがとうございます。」
なんとか意味不明な気持ちを抑えてマリアを連れて今日の夜会のホストであるキャルラロル侯爵に挨拶にいく。
キャルラロル侯爵夫妻は一瞬だけ俺とマリアを見定める様な目を向けるとすぐに笑みを浮かべる。
笑っているが、かなりどす黒い物を背負っているな…
よっぽど俺との婚約が通らなかった事…俺とマリアの婚約が気に入らないのだろう。
「ユシン王子婚約おめでとうございます。そして、本日は我が家の夜会にお越し頂きましてありがと御座います。」
「うちの娘も是非王子にと思っていたのですが、残念ですわ。」
「キャルラロル侯爵令嬢にはもっと素晴らしいお相手がいるでしょう」
嘘めいた2人の笑みに難のない言葉を返して微笑んでおく。
キャルラロル侯爵と侯爵夫人は、俺には愛想良くしているが、明らかにマリアに対して嫌悪の目を向けている。
俺が気付かないとでも思っているのか?
近くにいる事に虫唾が走り早々とキャルラロル侯爵夫妻から離れるとマリアの顔色が明らかに悪くなっている。
慣れない夜会の雰囲気に酔ったのだろう。
「大丈夫か?少し休むか?」
俺が声を掛けるとマリアは明らかに驚いた顔を向ける。
「なんでそんなに驚く?」
「いえ…いつものユシン様と違いすぎて…」
「……」
お前だっていつものマリアと違いすぎだぞ…
調子が狂ってしまうのは俺のほうだ。
そう口が出そうになるが、抑える。
「ここは公の場だからな。私も色々弁えてる」
「…少し休ませて頂きたいです。」
顔を少し赤らめて素直なマリアを連れて風通しの良いテラスまで連れて行く。
ここなら人目もあるし何かあったとしても大丈夫だろう。
「何か飲み物でも持ってこよう。ここを絶対に動くな…とにかく何もするなよ。」
俺はそれだけマリアに言うと1人飲み物を取りに会場の中へと戻る。
「マスクル…マリアの護衛を。」
「かしこまりました。」
途中、私の護衛として姿を隠しているマスクルに小声で合図をしてマリアの元へと向かわせる。
マスクルは俺の幼馴染。
従者のレックスの双子の弟で密偵兼護衛を主としている俺が頼れる人物の1人だ。
マスクルがマリアの元へ向かったのを確認してから俺は飲み物がある会場の奥へと進む。
すると、キャルラロル侯爵が近づいてきて満面の笑みで俺に話しかけてくる。
「ユシン殿下。夜会は楽しまれていますか?」
「ああ…久々の夜会ですが、婚約者と共に楽しませて頂いていますよ」
あえて婚約者を強調して笑みを向けるとキャルラロル侯爵は微かに苦い顔をする。
「婚約者様は大変美しい方でしたね。確か…男爵令嬢とか。」
「ああ。」
「身分違いの相手だと殿下は苦労されるのではないですか?」
「マリアにそんな心配はない。私には勿体ない程の女性だよ。」
「それはそれは…失礼を…」
話しながらキャルラロル侯爵は俺をテラスから離す様に誘導してくる。
俺はチラリとテラスの方に目を向けるが、キャルラロル侯爵が上手い具合に俺からテラスが見えない様に隠している。
明らかに何かあるな…
気付かないふりをしてキャルラロル侯爵の言葉に適当に相槌を打ちながらもテラスの方に注意を向けていると、マリアの護衛に付いているマスクルがこちらに視線を向けて俺に合図をしてくる。
親子で共謀しているのか?
キャルラロル侯爵家は腐ってるな…
俺を足止めさせてマリアに危害を加えるとは救いようのない。
俺はテラスを隠す様に立っているキャルラロル侯爵を力いっぱいに押し退けるとそのまま足早にテラスに向かう。
「殿下っっ」
キャルラロル侯爵がよろめきながらも俺を止めようと手を伸ばすが、払いのけて睨みを効かせると、キャルラロル侯爵はビクリと跳ねて固まる。
「何をやっている?」
テラスに行くと想像を超える状態だった。
マリアを肩に担いでテラスから庭へ向かおうとする男を筆頭に4人の男がマリアを囲っている。
マリアの頬は赤く腫れ上がっている。
…こいつらは何をしているんだ。
怒りが俺を支配する。
「ユ…ユシン様…これは…」
キャルラロル侯爵令嬢が焦りながら俺に近づいてくる。
俺に気づいた男達はマリアを投げ捨てて暗闇に向かって逃げ出そうとする。
「マスクルっっ」
俺がそう叫ぶとマスクルは暗闇に消えていく男達を追いかける。
それと同時に俺は近づいてくるキャルラロル侯爵令嬢を跳ね除けて男に投げ捨てられたマリアを支える。
「大丈夫か?マリア。遅くなってしまいすまなかった。」
そう言うとマリアはホッとした顔を俺に向ける。
弱々しい女性の顔…
思わずマリアを支える手に力がはいる。
「キャルラロル侯爵…キャルラロル侯爵令嬢…これはどういう事かな?」
思った以上に低く怒りに満ちた声がでた。
苛立ちが抑えられない。
「あっ…わ…私は…その子が連れ去られそうになっていたから助けようと…ねぇ。」
「第4といえど私は王子だ。この様な場所に来る時は必ず護衛が付いている。私が何があったか知らないとでも?」
誤魔化そうとするキャルラロル侯爵令嬢に向けて冷たく言うとキャルラロル侯爵令嬢は顔を真っ青にしてその場に崩れる。
俺の後ろに立つキャルラロル侯爵も青い顔をして呆然とその場に立ち尽くす。
「今日のことはまた日を改めて沙汰を下す。逃げるなよ。」
俺は2人を交互に見てからキャルラロル侯爵に向かって冷たくそう言うと、マリアを抱き上げる。
タダで済むと思うなよ。
俺を欺こうとしてマリアを傷つけようとした事を生涯後悔すればいい。
「今日はもう帰ろう。お前とダンスをしてみたかったけどな。またの機会だな。」
自然とそんな言葉が口から出た。
自分でもびっくりするくらいの甘く優しい声だった。
なんとか意味不明な気持ちを抑えてマリアを連れて今日の夜会のホストであるキャルラロル侯爵に挨拶にいく。
キャルラロル侯爵夫妻は一瞬だけ俺とマリアを見定める様な目を向けるとすぐに笑みを浮かべる。
笑っているが、かなりどす黒い物を背負っているな…
よっぽど俺との婚約が通らなかった事…俺とマリアの婚約が気に入らないのだろう。
「ユシン王子婚約おめでとうございます。そして、本日は我が家の夜会にお越し頂きましてありがと御座います。」
「うちの娘も是非王子にと思っていたのですが、残念ですわ。」
「キャルラロル侯爵令嬢にはもっと素晴らしいお相手がいるでしょう」
嘘めいた2人の笑みに難のない言葉を返して微笑んでおく。
キャルラロル侯爵と侯爵夫人は、俺には愛想良くしているが、明らかにマリアに対して嫌悪の目を向けている。
俺が気付かないとでも思っているのか?
近くにいる事に虫唾が走り早々とキャルラロル侯爵夫妻から離れるとマリアの顔色が明らかに悪くなっている。
慣れない夜会の雰囲気に酔ったのだろう。
「大丈夫か?少し休むか?」
俺が声を掛けるとマリアは明らかに驚いた顔を向ける。
「なんでそんなに驚く?」
「いえ…いつものユシン様と違いすぎて…」
「……」
お前だっていつものマリアと違いすぎだぞ…
調子が狂ってしまうのは俺のほうだ。
そう口が出そうになるが、抑える。
「ここは公の場だからな。私も色々弁えてる」
「…少し休ませて頂きたいです。」
顔を少し赤らめて素直なマリアを連れて風通しの良いテラスまで連れて行く。
ここなら人目もあるし何かあったとしても大丈夫だろう。
「何か飲み物でも持ってこよう。ここを絶対に動くな…とにかく何もするなよ。」
俺はそれだけマリアに言うと1人飲み物を取りに会場の中へと戻る。
「マスクル…マリアの護衛を。」
「かしこまりました。」
途中、私の護衛として姿を隠しているマスクルに小声で合図をしてマリアの元へと向かわせる。
マスクルは俺の幼馴染。
従者のレックスの双子の弟で密偵兼護衛を主としている俺が頼れる人物の1人だ。
マスクルがマリアの元へ向かったのを確認してから俺は飲み物がある会場の奥へと進む。
すると、キャルラロル侯爵が近づいてきて満面の笑みで俺に話しかけてくる。
「ユシン殿下。夜会は楽しまれていますか?」
「ああ…久々の夜会ですが、婚約者と共に楽しませて頂いていますよ」
あえて婚約者を強調して笑みを向けるとキャルラロル侯爵は微かに苦い顔をする。
「婚約者様は大変美しい方でしたね。確か…男爵令嬢とか。」
「ああ。」
「身分違いの相手だと殿下は苦労されるのではないですか?」
「マリアにそんな心配はない。私には勿体ない程の女性だよ。」
「それはそれは…失礼を…」
話しながらキャルラロル侯爵は俺をテラスから離す様に誘導してくる。
俺はチラリとテラスの方に目を向けるが、キャルラロル侯爵が上手い具合に俺からテラスが見えない様に隠している。
明らかに何かあるな…
気付かないふりをしてキャルラロル侯爵の言葉に適当に相槌を打ちながらもテラスの方に注意を向けていると、マリアの護衛に付いているマスクルがこちらに視線を向けて俺に合図をしてくる。
親子で共謀しているのか?
キャルラロル侯爵家は腐ってるな…
俺を足止めさせてマリアに危害を加えるとは救いようのない。
俺はテラスを隠す様に立っているキャルラロル侯爵を力いっぱいに押し退けるとそのまま足早にテラスに向かう。
「殿下っっ」
キャルラロル侯爵がよろめきながらも俺を止めようと手を伸ばすが、払いのけて睨みを効かせると、キャルラロル侯爵はビクリと跳ねて固まる。
「何をやっている?」
テラスに行くと想像を超える状態だった。
マリアを肩に担いでテラスから庭へ向かおうとする男を筆頭に4人の男がマリアを囲っている。
マリアの頬は赤く腫れ上がっている。
…こいつらは何をしているんだ。
怒りが俺を支配する。
「ユ…ユシン様…これは…」
キャルラロル侯爵令嬢が焦りながら俺に近づいてくる。
俺に気づいた男達はマリアを投げ捨てて暗闇に向かって逃げ出そうとする。
「マスクルっっ」
俺がそう叫ぶとマスクルは暗闇に消えていく男達を追いかける。
それと同時に俺は近づいてくるキャルラロル侯爵令嬢を跳ね除けて男に投げ捨てられたマリアを支える。
「大丈夫か?マリア。遅くなってしまいすまなかった。」
そう言うとマリアはホッとした顔を俺に向ける。
弱々しい女性の顔…
思わずマリアを支える手に力がはいる。
「キャルラロル侯爵…キャルラロル侯爵令嬢…これはどういう事かな?」
思った以上に低く怒りに満ちた声がでた。
苛立ちが抑えられない。
「あっ…わ…私は…その子が連れ去られそうになっていたから助けようと…ねぇ。」
「第4といえど私は王子だ。この様な場所に来る時は必ず護衛が付いている。私が何があったか知らないとでも?」
誤魔化そうとするキャルラロル侯爵令嬢に向けて冷たく言うとキャルラロル侯爵令嬢は顔を真っ青にしてその場に崩れる。
俺の後ろに立つキャルラロル侯爵も青い顔をして呆然とその場に立ち尽くす。
「今日のことはまた日を改めて沙汰を下す。逃げるなよ。」
俺は2人を交互に見てからキャルラロル侯爵に向かって冷たくそう言うと、マリアを抱き上げる。
タダで済むと思うなよ。
俺を欺こうとしてマリアを傷つけようとした事を生涯後悔すればいい。
「今日はもう帰ろう。お前とダンスをしてみたかったけどな。またの機会だな。」
自然とそんな言葉が口から出た。
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