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疑い①

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「なんでこんな答えになる?」
「素直に解いたらこの答えになりました。」
「素直?」
「これをこうしてこうやってこうする…」
「あーもういい。それのどこが素直なんだよ…ややこしい」

ややこしい?
これ以外にどうこれを解く?

「これをこうしてこうするだけで良いんだよ。」

これをこうする…
はっ?これだけで良いの?

うわっっマジだ答え合ってる…
何この魔法みたいな解き方…

私の苦労はなんだったの?

ちょっとユシン様の印象変わるわ…
ヤバくて
性格悪くて
ロクでもなくて
バカな人だけど天才…


「皆様。遅くなりました。」
私がユシン様に勉強を教えてもらい解き方に感動しているとキュアもやってきました。

「キュア。遅かったね。委員会は大丈夫だったかい?」
ユア様がキュアに駆け寄っていく。

その姿をみて私の胸は締め付けられる。


私が来た時はユア様は席から一歩も動く事など無かった…。
微動だにしなかった。

やはり…当たり前だけどユア様はキュアが大切なのね。
本当にこの恋心どうにかならないかしら。


「ユア様…お待たせしました…大丈夫です。
もう全て終わりましたわ。」

キュアはそう言ってほほえみましたが、明らかにいつもと違います。


元気がありません。
どうしたのでしょうか?

ユア様も心配そうな顔をされています。


「キュアどうしたの?元気ないようだけど…」

私と別れるまではいつも通り元気なキュアでした。
委員会で何かあったのでしょうか?

キュアは私に顔を向けるとなんだか苦しそうな顔をします。


えっ?
私?
何かしました?


しばらくするとキュアは頭を振ります。

「早く委員会を切り上げたくて頑張りすぎちゃった。
少し疲れちゃっただけよ。心配しないで。」

「そ…そう…」
私がそう言うとキュアは目を瞑りニッコリ微笑んでいつもの顔に戻る。

「ユア様。そういえばお伺いしたいことがありましたの。」
「本当に大丈夫?キュア。無理しないで」
「大丈夫ですわ。ユア様のお顔を見たら元気100倍です‼︎」

あっ…いつものキュアだ。

私はホッとする。
元気のないキュアなんて今まで見たことがない。

いつも元気で明るいキュア。
令嬢らしくないと言われればそうかもしれないけどそんなキュアはみんなに愛されている。

いつも通りイチャつくキュアとユア様。
そんな2人をいつもの様に眺めていると今日はなんだかキュアと何度も目が合う。

その度キュアは少し悲しそうな顔をして私から目を逸らす。

一体どうしたというのだろう?



隣にいるユシン様も2人を微妙な顔で眺めてる。

ユシン様は私の視線に気付いてか私の方を見ると深くため息を吐く。


そして、

“オマエヤッチマッタナ…”

口パクでそう言う。




やっちまった?
なんの事でしょうか?


そのあと、しばらく経ったあと今日は解散となりましたが、私の中にはモヤモヤが消えません。

キュアの私を見る悲しそうな顔。
ユシン様のやっちまったと言う言葉。

私…何かしましたか?

いや。していない。
断言出来る。
していない。

何も。

……たぶん…。

あー悩んでいても仕方ない。
明日、直接キュアに確認しましょう。

そうしましょう。

悩むのは嫌いです。


******
翌朝。

教室に行くといつも通りにキュアがいた。

「キュア。おはよう」
私がいつもの様に元気に挨拶をする。

「あぁ…マリア。おはよう」
そう言ってキュアは私から目を逸らす。

いつもなら私より元気に挨拶してくれるのに…

やっぱりキュアは元気ない?
いや…私になんかよそよそしい?

「…今日はユア様の教室まで行かないの?」
私のその言葉にキュアがビクリとする。

私とキュアは女子クラス2組。
ユア様とユシン様は男子クラス1組になります。
中庭を挟んで教室があります。

キュアとユア様が付き合う様になり毎朝逢いに行くのは日課になっていました。

「そうね。行きましょうか」

んっ?乗る気で無い?
いつもの元気はどうしたのでしょうか…
なんだか不安になって来ます。

うーん。
いつ切り出しましょうか…
こういうのは苦手です。


2人で無言で廊下を進む。
するとキュアが急に泣き出した。

エッ…エッ…どうした?
どうした急に…

私は初めて見るキュアの泣き顔に焦る。

「どっ…どうしたの?キュア?わ…私?私なにかした?」

「っんっっ…ごめんなさい。マリア…わ…私…図書館でのマリアの様子を見ちゃって…マリア…ユア様の事が好きなんじゃ…」

えっ…

「ずっと前…好きな人いるって…それって…ユア様のことじゃないかって…」


えぇ……

ど…どうしよう……

「違うわっっ」

違うとは言ったものの…どうしたらいい?



「わ…私が好きなのはユシン様だからっっ」


私は咄嗟に答えた。

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