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30.転性聖女の遠足準備
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「アキ、リュックサックとスコップの準備をしてください」
「りょ」
「えーと、後は何が必要かな・・・・・・?」
薬草を栽培すると決めた翌日、私達は森に行く準備をしていた。
今回は、先日の様な単純な採取では無く、栽培するために植えなおすことを視野にした採取が目的だ。
根の先端まで傷つけないように掘り起こす為のスコップや、乾燥させずに運ぶための湿らせた布など、思いつく道具をリュックサックに詰め込んでいく。
「アキ、他に何か必要なものはありますか?」
「お弁当?」
「あ、忘れてました。
あの子達のお昼ごはんも兼ねて作りましょうか」
朝から畑に出ている三姉妹のご飯の用意が未だだったことだし、5人分のお弁当を作るとしましょうか。
何だか最近、主婦業が板についてきた気がする。
・・・・・・いやいや、私は男として生きてきた方が長いんだぞ。
それに、今生は主婦と言う程歳はとっていない!
家事に追われて老け込んで来てしまったのだろうか。
まぁ、気を取り直して、子供達が冷めてからもおいしく食べられる様に、またパンケーキでも焼くとしよう。
「かーさま、荷物詰め終わった」
「ありがとうございます、アキ」
パンケーキを焼いていると、アキが両手に二人分のリュックサックを持って厨房にやってくる。
どうやら、荷物の準備が終わったようだ。
ありがたく受け取るとしよう。
「ぐえっ!?」
片手で受け取ると、その予想に反した重量を一気に受けて転倒してしまう。
軽々しく持っているアキの姿に油断したのがいけなかった。
女の子らしからぬ悲鳴が出てしまったし恥ずかしい。
いや、心情的には男性のつもりだから別に良い筈なんだけれども恥ずかしいものは恥ずかしい。
「かーさま、大げさ」
私が笑いをとるためにわざと転んだと思っているのか、アキはニコニコと笑っている。
私のリュックサックを片手で拾い上げると、お弁当が出来るまで待っていると言って戻っていった。
私に腕力が無いのもいけないのだが、アキはあの華奢な体の何処にそれだけの力があるのだろうか。
いや、それよりも、あんな重いリュックサックを背負って森に行くのか?
帰りには薬草の重量も増えるのに?
無理無理。
またベルに初めて会ったときの様に、アキに運んでもらう事になってしまう。
そうなるくらいなら、初めからお小遣いをあげる代わりに子供たちに手伝って貰おうかな。
「ハルママー、おはよー。
いい匂いがしているけど、パンケーキ?」
パンケーキの匂いに釣られたのか、丁度いいタイミングでベルがやってきた。
いつの間にか厨房にまで来ているが、こちらが返事をする前に、家に上がってくるのは如何なものだろうか。
「おはようございます。ベルも食べますか?」
「食べる食べる!」
「それと、勝手に人の家に上がるのは駄目ですよ?
私だからまだしも、他の人にやったら大問題です」
「あはは、それぐらい分かってるよー。
ハルママにしかしないもん」
笑顔でとんでもない事をのたまっていますよ、この子。
分かっててやっているなんて尚悪いわと突っ込みを入れたいところだが、他人様に迷惑をかけていないなら、まぁいいか。
取りあえず信頼されていると言うことにしておこう・・・・・・
「そういえば、今日って暇ですか?」
「うーん、ギルドでお使いとか私が出来る様な依頼があったらやる感じかな」
「でしたら、私と森まで薬草採取に行きませんか?
今ならお小遣いとして小銀貨3枚とお弁当のパンケーキがつきますよ」
「え、そんなに貰えるの!?やるやる!
急いで準備してくるから待っててね!」
ベルは私の提案を聞くや否や、準備をしに家に走って帰っていった。
お小遣いとして提示した小銀貨3枚と言えば、ベルが前回の薬草採取で手に入れた金額の倍額だ。
ベルにとっては願っても居ない待遇だろう。
私としても、今後は畑で幾らでも薬草が採取できるようになるのならば、初期投資として安いくらいだ。
Win-Winの関係と言って良いだろう。
あとは三姉妹にも声をかければ十分な薬草が確保できるかな。
「アキ、ロロたちも誘いに行きましょうか」
「うん」
たまには森とか普段行かない場所に行くのも子供達の良い気晴らしになるだろう。
荷物もちとしての働きも期待してますけど!
―――
さて、出発の時刻となったわけですが・・・・・・
「ちょっと、多くないですか?」
集合場所である自宅の前には、私とアキ、ベル、三姉妹そしてヘンリー。
そこまでは良い。
ヘンリーは三姉妹を誘うときに付いて来ると言っていた。
彼の事だから、女子供だけで森に行く事を心配して護衛してくれるつもりなのだろう。
だが、何で他のクランメンバーも全員居るのだろうか。
そもそも、森に行く事すら話していないはずなのに。
「ねぇ、アルフ、どうして此処に居るんです?」
「いや、ベルがパンケーキが食べられるって言っていたんだが・・・・・・」
「シエナは?」
「ベルがお金が沢山貰える簡単な仕事があるからおいでって・・・・・・」
やっぱりベルの仕業か!
ベルも良かれと思って皆を呼んで回ったんだろうけど。
・・・・・・まぁ、別に皆で行っても良いけどね。
「りょ」
「えーと、後は何が必要かな・・・・・・?」
薬草を栽培すると決めた翌日、私達は森に行く準備をしていた。
今回は、先日の様な単純な採取では無く、栽培するために植えなおすことを視野にした採取が目的だ。
根の先端まで傷つけないように掘り起こす為のスコップや、乾燥させずに運ぶための湿らせた布など、思いつく道具をリュックサックに詰め込んでいく。
「アキ、他に何か必要なものはありますか?」
「お弁当?」
「あ、忘れてました。
あの子達のお昼ごはんも兼ねて作りましょうか」
朝から畑に出ている三姉妹のご飯の用意が未だだったことだし、5人分のお弁当を作るとしましょうか。
何だか最近、主婦業が板についてきた気がする。
・・・・・・いやいや、私は男として生きてきた方が長いんだぞ。
それに、今生は主婦と言う程歳はとっていない!
家事に追われて老け込んで来てしまったのだろうか。
まぁ、気を取り直して、子供達が冷めてからもおいしく食べられる様に、またパンケーキでも焼くとしよう。
「かーさま、荷物詰め終わった」
「ありがとうございます、アキ」
パンケーキを焼いていると、アキが両手に二人分のリュックサックを持って厨房にやってくる。
どうやら、荷物の準備が終わったようだ。
ありがたく受け取るとしよう。
「ぐえっ!?」
片手で受け取ると、その予想に反した重量を一気に受けて転倒してしまう。
軽々しく持っているアキの姿に油断したのがいけなかった。
女の子らしからぬ悲鳴が出てしまったし恥ずかしい。
いや、心情的には男性のつもりだから別に良い筈なんだけれども恥ずかしいものは恥ずかしい。
「かーさま、大げさ」
私が笑いをとるためにわざと転んだと思っているのか、アキはニコニコと笑っている。
私のリュックサックを片手で拾い上げると、お弁当が出来るまで待っていると言って戻っていった。
私に腕力が無いのもいけないのだが、アキはあの華奢な体の何処にそれだけの力があるのだろうか。
いや、それよりも、あんな重いリュックサックを背負って森に行くのか?
帰りには薬草の重量も増えるのに?
無理無理。
またベルに初めて会ったときの様に、アキに運んでもらう事になってしまう。
そうなるくらいなら、初めからお小遣いをあげる代わりに子供たちに手伝って貰おうかな。
「ハルママー、おはよー。
いい匂いがしているけど、パンケーキ?」
パンケーキの匂いに釣られたのか、丁度いいタイミングでベルがやってきた。
いつの間にか厨房にまで来ているが、こちらが返事をする前に、家に上がってくるのは如何なものだろうか。
「おはようございます。ベルも食べますか?」
「食べる食べる!」
「それと、勝手に人の家に上がるのは駄目ですよ?
私だからまだしも、他の人にやったら大問題です」
「あはは、それぐらい分かってるよー。
ハルママにしかしないもん」
笑顔でとんでもない事をのたまっていますよ、この子。
分かっててやっているなんて尚悪いわと突っ込みを入れたいところだが、他人様に迷惑をかけていないなら、まぁいいか。
取りあえず信頼されていると言うことにしておこう・・・・・・
「そういえば、今日って暇ですか?」
「うーん、ギルドでお使いとか私が出来る様な依頼があったらやる感じかな」
「でしたら、私と森まで薬草採取に行きませんか?
今ならお小遣いとして小銀貨3枚とお弁当のパンケーキがつきますよ」
「え、そんなに貰えるの!?やるやる!
急いで準備してくるから待っててね!」
ベルは私の提案を聞くや否や、準備をしに家に走って帰っていった。
お小遣いとして提示した小銀貨3枚と言えば、ベルが前回の薬草採取で手に入れた金額の倍額だ。
ベルにとっては願っても居ない待遇だろう。
私としても、今後は畑で幾らでも薬草が採取できるようになるのならば、初期投資として安いくらいだ。
Win-Winの関係と言って良いだろう。
あとは三姉妹にも声をかければ十分な薬草が確保できるかな。
「アキ、ロロたちも誘いに行きましょうか」
「うん」
たまには森とか普段行かない場所に行くのも子供達の良い気晴らしになるだろう。
荷物もちとしての働きも期待してますけど!
―――
さて、出発の時刻となったわけですが・・・・・・
「ちょっと、多くないですか?」
集合場所である自宅の前には、私とアキ、ベル、三姉妹そしてヘンリー。
そこまでは良い。
ヘンリーは三姉妹を誘うときに付いて来ると言っていた。
彼の事だから、女子供だけで森に行く事を心配して護衛してくれるつもりなのだろう。
だが、何で他のクランメンバーも全員居るのだろうか。
そもそも、森に行く事すら話していないはずなのに。
「ねぇ、アルフ、どうして此処に居るんです?」
「いや、ベルがパンケーキが食べられるって言っていたんだが・・・・・・」
「シエナは?」
「ベルがお金が沢山貰える簡単な仕事があるからおいでって・・・・・・」
やっぱりベルの仕業か!
ベルも良かれと思って皆を呼んで回ったんだろうけど。
・・・・・・まぁ、別に皆で行っても良いけどね。
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