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12.転性聖女の娘の登録試験3
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「アキッ!」
グスタフさんの四肢に集中したマナに不安を覚え、
ついついアキに注意を促そうと叫んでしまった。
じょ、助言は反則ではないですよね。
アキはと言えば、呼ばれたと思ったのか此方を見て首を傾げている。
アキさん、飛んでるんですから前見て前。
あれ、もしかしてアキの集中力を奪うだけで助言は邪魔だったのでは?
「これで終わっとけ!」
そんなやり取りをしている中、
グスタフさんは容赦なく剣を振り下ろしてくる。
「溜めた気を爆発させ放つ練気剣、受けきれるかな?」
アッシュさんが技について解説してくれる。
あのマナが気とか言われるやつなんですね。
それより、子供に技を使うなんて大人気ないですよ!
後で文句を言ってやる!
「んんっ!」
振り下ろされた剛剣を何とかナイフで受けたアキだったが、
空中に居た事もあり大きく吹き飛ばされてしまう。
剣が振り下ろされた地面は、剣先から数メートルに
わたって抉れており、その凄まじさが伺える。
吹き飛ばされたアキは、水を撒き散らしながら
此方に飛ばされてきている。
このまま観客に突っ込んでは危ないと思い、
私はアキを受け止めるために前方に走った。
ぶつかる直前に腰を低くして衝撃に備えていると、
アキは器用に空中で回転しながら水流を使って勢いを殺し、
私の胸にソフトランディングしてきた。
「ただいま」
「お、おかえりなさい」
アキの気の抜ける言葉に、間の抜けた返答をしてしまった。
「また行ってくる」
そう言うと、アキは再び水流を使って
グスタフさんに向かって飛んでいった。
私の助けなど要らなかった様だ。
なのに私は水でびちゃびちゃだ。服が肌に張り付いて気持ちが悪い。
うう、なんか周りからジロジロ見られている気がする。
恥ずかしいし魔法で温風を起こして乾かそう。
アキは再びグスタフさんから数メートルの距離まで近づくと、
今度は何本もの水晶ナイフを両手に構える。
その全てのナイフの刀身が仄かに黒い光を湛えている。
あれ、それ私のナイフじゃ……いつの間に持って行ったんだ、
もしかして、さっき飛ばされてきたとき?
「エアシュート」
アキはそれら全てをグスタフさんの各所に同時に射出した。
「学習しねぇな、その程度じゃ当たらねえよ」
グスタフさんは剣で捌き切れない分のナイフは籠手や
具足で弾いて全てのナイフを受けきる。
だが、ナイフに込められた呪いの魔法が発動し、
腕、足を拘束する。
「てめぇ、何しやがった!だが、これくらいで!」
グスタフさんは呪いで拘束された手足を無理やり動かし、
再び剣を構えなおした。
なんていう馬鹿力というか、精神力と言うべきか、
2メートル近くあるファングボアでも容易に鎮圧できた拘束の中、
無理やりにでも動けるとは、この人は筋肉お化けかな?
「この程度じゃ終わりじゃねぇぞ!打ってこい!」
「ううん、終わり」
アキは自分の水晶ナイフを地面に突き立て、
器用に柄の部分の上に乗っかった。
何をしているんだろうか、この子は。
すると、アキの手の平の上に見覚えのある雷の球が現れ、
バチバチと音を立て始めた。
私直伝の戦い方ってこれか!
アキが水流で飛び回った所為で辺りは水浸しになっており、
電気が良く流れそうだ。電気ショック漁の要領ね……
「サンダーボール」
アキがグスタフさんの方に雷の球を放り投げる。
呪いで動きが鈍ったグスタフさんでは避けられないだろう。
仮に避けられたとしても、水が無いところまでは
逃げる事は不可能だ。
「ぐおおおおおおおおおお!」
「あわわわわわわわわわわ!」
グスタフさんが苦悶の表情を浮かべ声をあげる中、
私も足元に強烈な痛みを感じて声を上げてしまう。
なにこれ!なにこれ!滅茶苦茶痛い!
よくよく考えてみると、アキを受け止めるために
水浸しの地面の上に来てしまっていた。
靴のゴム底の絶縁を貫通して電気が流れてくるとか、
どれだけ強い電気を放ったんですか、アキ。
どれだけ痛い思いをしていただろうか、
グスタフさんが膝をつき倒れたのを確認した支部長が
試合終了を告げる。
「試合終了、挑戦者の勝ちだ。
やるなお嬢ちゃん、驚いたぜ」
「おー」
アキは気の抜ける感じの勝ち鬨をあげる。
本当に勝ってしまうとは、アキは私が思っていたより
遥かに強いようだ。
保護者としての吹いて飛ぶようなプライドはズタズタだが、
子供が周囲に認められるのは嬉しいものだ。
「凄いれすねー。流石れすねー」
「よもやこれ程とは。雷魔法まで使えるとはね」
アキへ賞賛の言葉がかけられる傍らで、
私は自身に治癒魔法を使っていた。
試合の結果とはいえ、アキが傷つけてしまった相手なので
グスタフさんにも治癒魔法をかけておこう。
これ位の傷なら完全に治せるので
どうかアキを許してあげて下さい。
「め、女神か……」
意識を取り戻したらしきグスタフさんが
何か背筋が凍りそうな事を口走っているが無視しておこう。
まだ戦っても居ないのにとても痛い思いをしたものの、
見事にアキが登録試験を突破してくれた。
これで他の町に行っても冒険者ギルドを利用できる。
もう、私の登録試験はやらなくても良いかな。
グスタフさんも戦える状態では無いし、試験も中止だろう。
「よし、次はこっちのお嬢ちゃんの番だな」
え、支部長さん、やる感じです?
グスタフさんの四肢に集中したマナに不安を覚え、
ついついアキに注意を促そうと叫んでしまった。
じょ、助言は反則ではないですよね。
アキはと言えば、呼ばれたと思ったのか此方を見て首を傾げている。
アキさん、飛んでるんですから前見て前。
あれ、もしかしてアキの集中力を奪うだけで助言は邪魔だったのでは?
「これで終わっとけ!」
そんなやり取りをしている中、
グスタフさんは容赦なく剣を振り下ろしてくる。
「溜めた気を爆発させ放つ練気剣、受けきれるかな?」
アッシュさんが技について解説してくれる。
あのマナが気とか言われるやつなんですね。
それより、子供に技を使うなんて大人気ないですよ!
後で文句を言ってやる!
「んんっ!」
振り下ろされた剛剣を何とかナイフで受けたアキだったが、
空中に居た事もあり大きく吹き飛ばされてしまう。
剣が振り下ろされた地面は、剣先から数メートルに
わたって抉れており、その凄まじさが伺える。
吹き飛ばされたアキは、水を撒き散らしながら
此方に飛ばされてきている。
このまま観客に突っ込んでは危ないと思い、
私はアキを受け止めるために前方に走った。
ぶつかる直前に腰を低くして衝撃に備えていると、
アキは器用に空中で回転しながら水流を使って勢いを殺し、
私の胸にソフトランディングしてきた。
「ただいま」
「お、おかえりなさい」
アキの気の抜ける言葉に、間の抜けた返答をしてしまった。
「また行ってくる」
そう言うと、アキは再び水流を使って
グスタフさんに向かって飛んでいった。
私の助けなど要らなかった様だ。
なのに私は水でびちゃびちゃだ。服が肌に張り付いて気持ちが悪い。
うう、なんか周りからジロジロ見られている気がする。
恥ずかしいし魔法で温風を起こして乾かそう。
アキは再びグスタフさんから数メートルの距離まで近づくと、
今度は何本もの水晶ナイフを両手に構える。
その全てのナイフの刀身が仄かに黒い光を湛えている。
あれ、それ私のナイフじゃ……いつの間に持って行ったんだ、
もしかして、さっき飛ばされてきたとき?
「エアシュート」
アキはそれら全てをグスタフさんの各所に同時に射出した。
「学習しねぇな、その程度じゃ当たらねえよ」
グスタフさんは剣で捌き切れない分のナイフは籠手や
具足で弾いて全てのナイフを受けきる。
だが、ナイフに込められた呪いの魔法が発動し、
腕、足を拘束する。
「てめぇ、何しやがった!だが、これくらいで!」
グスタフさんは呪いで拘束された手足を無理やり動かし、
再び剣を構えなおした。
なんていう馬鹿力というか、精神力と言うべきか、
2メートル近くあるファングボアでも容易に鎮圧できた拘束の中、
無理やりにでも動けるとは、この人は筋肉お化けかな?
「この程度じゃ終わりじゃねぇぞ!打ってこい!」
「ううん、終わり」
アキは自分の水晶ナイフを地面に突き立て、
器用に柄の部分の上に乗っかった。
何をしているんだろうか、この子は。
すると、アキの手の平の上に見覚えのある雷の球が現れ、
バチバチと音を立て始めた。
私直伝の戦い方ってこれか!
アキが水流で飛び回った所為で辺りは水浸しになっており、
電気が良く流れそうだ。電気ショック漁の要領ね……
「サンダーボール」
アキがグスタフさんの方に雷の球を放り投げる。
呪いで動きが鈍ったグスタフさんでは避けられないだろう。
仮に避けられたとしても、水が無いところまでは
逃げる事は不可能だ。
「ぐおおおおおおおおおお!」
「あわわわわわわわわわわ!」
グスタフさんが苦悶の表情を浮かべ声をあげる中、
私も足元に強烈な痛みを感じて声を上げてしまう。
なにこれ!なにこれ!滅茶苦茶痛い!
よくよく考えてみると、アキを受け止めるために
水浸しの地面の上に来てしまっていた。
靴のゴム底の絶縁を貫通して電気が流れてくるとか、
どれだけ強い電気を放ったんですか、アキ。
どれだけ痛い思いをしていただろうか、
グスタフさんが膝をつき倒れたのを確認した支部長が
試合終了を告げる。
「試合終了、挑戦者の勝ちだ。
やるなお嬢ちゃん、驚いたぜ」
「おー」
アキは気の抜ける感じの勝ち鬨をあげる。
本当に勝ってしまうとは、アキは私が思っていたより
遥かに強いようだ。
保護者としての吹いて飛ぶようなプライドはズタズタだが、
子供が周囲に認められるのは嬉しいものだ。
「凄いれすねー。流石れすねー」
「よもやこれ程とは。雷魔法まで使えるとはね」
アキへ賞賛の言葉がかけられる傍らで、
私は自身に治癒魔法を使っていた。
試合の結果とはいえ、アキが傷つけてしまった相手なので
グスタフさんにも治癒魔法をかけておこう。
これ位の傷なら完全に治せるので
どうかアキを許してあげて下さい。
「め、女神か……」
意識を取り戻したらしきグスタフさんが
何か背筋が凍りそうな事を口走っているが無視しておこう。
まだ戦っても居ないのにとても痛い思いをしたものの、
見事にアキが登録試験を突破してくれた。
これで他の町に行っても冒険者ギルドを利用できる。
もう、私の登録試験はやらなくても良いかな。
グスタフさんも戦える状態では無いし、試験も中止だろう。
「よし、次はこっちのお嬢ちゃんの番だな」
え、支部長さん、やる感じです?
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