23 / 24
意味と持論と信条と心情
しおりを挟む
授業はいつも通り終わり、今日も放課後は勉強会。
「今日も勉強していくわよ。明日はいよいよ小テスト当日。気を抜かないで」
「ふはぁい」
「星くん。気の抜けた返事をしない。退学したくないんでしょ」
「……………はい」
星は相変わらずやる気がなさそうだが、それでも勉強会に参加している。
それだけ退学したくないということだろう。
オレも白銀の勉強を邪魔しないようそれなりに問題集を解いていく。
「とりあえず明日の小テストを乗り越えればひと段落だわ。だから、今日は特に本気で取り組むのよ星くん」
「……………それにしても、この勉強会ってどこまで意味があるんだ?」
星がいきなり勉強会の意味について七瀬に訊ねる。
「いまさら何言ってるの?学力を向上させるには、日々の積み重ねあるのみよ」
「俺みたいなやつは、どう足掻いたって結局結果は同じなんじゃねえか?」
弱気な発言をする星。
「それはあなたの努力次第よ。努力しないと、行動しないと何も変わらないわ」
「けどよ……………」
勉強会の意味が分からず、星のやる気もさらに下がっている。
結果が保証されていない努力は、本当に結果がでるかどうかわからないから揺らいでいるんだろう。
「それでも、やるしかないのよ。やっておけばよかったと後悔したくないでしょう?」
「………そうだな。一応やるだけのことはやってみるけどよ……………」
やるとは口にしたものの、歯切れが悪く、やはりやる気のない星。
「星くんのことだけど、どう思う?」
白銀がオレに訊ねてくる。
「どうって何が?」
「星くんが小テストで退学するのかしないのかってこと」
星の学力は勉強会のおかげで間違いなく上がっている。
問題は、どの程度上がっているか。
上がってはいても、それがほんの僅かだったらほとんど意味がない
星の言う通り、意味のない勉強会になってしまう。
「九条くんは、星くんは退学すると思う?」
「さぁな」
そんなことオレにわかるはずがない。
「けどな、星は勉強会に意味がないとぼやいていたが、意味は自分で見出すものだ。これで結果が出ず退学になったら意味のない勉強会になるし、生き残れば意味のある勉強会になる。要は自分次第で物事の意味は有りにも無しにもなる、ということだ」
意味があったかどうかは結果次第で大きく変わる。
「例えば、人生に意味なんてあるのか、と訊ねる人間がいる。生きる意味が分からないと嘆く人間がいる。しかし、意味がわからないのは当たり前なんだ。旅行に行った人間がその旅行が楽しかったのかどうかが分かるのは、旅行が終わって家に帰ってくつろいで振り返っている時だ。つまり、その旅行がどうだったのかわかるのは、終わった後だ。要は、終わってみるまで意味があるかはわからない。意味があるのかどうか訊くのではなく、意味あるものにするために、今を全力で生きる。オレたちにできるのはそれだけだ」
人生を生きる途中のオレたちは、まだ結果が出ていない勉強会状態。
意味があるのか当然わからない。
死ぬ間際になって初めてわかるんじゃないだろうか。
つまるところ、人生とは意味が分からず意味不明なものなのだ。
「……………深いね。私はそこまで考えて生きてなかったよ。九条くんのこと感心しちゃった」
「これまでやってきたことを、過去を嘘にしないために今を生きるんだ」
「………………それが九条くんの持論?」
「信条だ」
こういう考え方をしていると心が揺らがない。
悩むことがなく楽でいい。
「私も九条くんのこと見習おうかな」
「だが、それは一般論だ」
「……………え?」
予想だにしていなかったオレのセリフに白銀が呆気にとられる。
「結果が保証されていない、意味が分からない状態では心が揺らいでしまうのも事実。当然、結果は保証されている方がいい。結果が分からないことをするのは不安と緊張があるものだ。どうせなら安心したい。やらずに後悔するぐらいなら、やって後悔する方がいい、という言葉があるが、オレに言わせれば、やっておいて後悔するぐらいならやらない方がいい」
「お、おぉ………………ん?」
白銀はどう反応していいのかわからなくなっていた。
「ならばどうするのが正解か。意味あるものにして後悔しないためにはどうすればいいのか」
オレの心情を話し伝える。
「それは、結果を保証させるんだ。意味を有りに確定させて、未来を確定させるんだ。意味は結果によって左右される。ならば、結果が出るように誘導するんだ。この勉強会で言えば、星が100パーセント退学せず生き残れる状況を作り未来を確定させる」
意味があるかどうかは後になってわかると言うならば、未来を自分で作ればいい。
そうすれば必ず意味があるようになる。
悩む必要も後悔する必要もない。
「………九条くんには何が見えてるの?………いやーーーーーこれまで、何を見てきたの?」
オレは何も答えず無言で悲しく笑みを浮かべる。
上手く笑えているだろうか?
いや、きっと不格好で渇いた笑みになっているだろう。
その表情だけで、何かは伝わったはず。
「……………難しい話でほとんどわからなかったけど、一つだけ聞かせて。結果を保証する、星くんを100パーセント退学しない状況を作るって、そんなことできるの?」
「さぁ、どうだろうな」
今のところその必要性は感じられない。
このままいけば小テストはなんとかクリアできそうだ。
だが保険はあるに越したことはないだろう。
万が一の事態が起きたら、結果はわからないからな。
「今日も勉強していくわよ。明日はいよいよ小テスト当日。気を抜かないで」
「ふはぁい」
「星くん。気の抜けた返事をしない。退学したくないんでしょ」
「……………はい」
星は相変わらずやる気がなさそうだが、それでも勉強会に参加している。
それだけ退学したくないということだろう。
オレも白銀の勉強を邪魔しないようそれなりに問題集を解いていく。
「とりあえず明日の小テストを乗り越えればひと段落だわ。だから、今日は特に本気で取り組むのよ星くん」
「……………それにしても、この勉強会ってどこまで意味があるんだ?」
星がいきなり勉強会の意味について七瀬に訊ねる。
「いまさら何言ってるの?学力を向上させるには、日々の積み重ねあるのみよ」
「俺みたいなやつは、どう足掻いたって結局結果は同じなんじゃねえか?」
弱気な発言をする星。
「それはあなたの努力次第よ。努力しないと、行動しないと何も変わらないわ」
「けどよ……………」
勉強会の意味が分からず、星のやる気もさらに下がっている。
結果が保証されていない努力は、本当に結果がでるかどうかわからないから揺らいでいるんだろう。
「それでも、やるしかないのよ。やっておけばよかったと後悔したくないでしょう?」
「………そうだな。一応やるだけのことはやってみるけどよ……………」
やるとは口にしたものの、歯切れが悪く、やはりやる気のない星。
「星くんのことだけど、どう思う?」
白銀がオレに訊ねてくる。
「どうって何が?」
「星くんが小テストで退学するのかしないのかってこと」
星の学力は勉強会のおかげで間違いなく上がっている。
問題は、どの程度上がっているか。
上がってはいても、それがほんの僅かだったらほとんど意味がない
星の言う通り、意味のない勉強会になってしまう。
「九条くんは、星くんは退学すると思う?」
「さぁな」
そんなことオレにわかるはずがない。
「けどな、星は勉強会に意味がないとぼやいていたが、意味は自分で見出すものだ。これで結果が出ず退学になったら意味のない勉強会になるし、生き残れば意味のある勉強会になる。要は自分次第で物事の意味は有りにも無しにもなる、ということだ」
意味があったかどうかは結果次第で大きく変わる。
「例えば、人生に意味なんてあるのか、と訊ねる人間がいる。生きる意味が分からないと嘆く人間がいる。しかし、意味がわからないのは当たり前なんだ。旅行に行った人間がその旅行が楽しかったのかどうかが分かるのは、旅行が終わって家に帰ってくつろいで振り返っている時だ。つまり、その旅行がどうだったのかわかるのは、終わった後だ。要は、終わってみるまで意味があるかはわからない。意味があるのかどうか訊くのではなく、意味あるものにするために、今を全力で生きる。オレたちにできるのはそれだけだ」
人生を生きる途中のオレたちは、まだ結果が出ていない勉強会状態。
意味があるのか当然わからない。
死ぬ間際になって初めてわかるんじゃないだろうか。
つまるところ、人生とは意味が分からず意味不明なものなのだ。
「……………深いね。私はそこまで考えて生きてなかったよ。九条くんのこと感心しちゃった」
「これまでやってきたことを、過去を嘘にしないために今を生きるんだ」
「………………それが九条くんの持論?」
「信条だ」
こういう考え方をしていると心が揺らがない。
悩むことがなく楽でいい。
「私も九条くんのこと見習おうかな」
「だが、それは一般論だ」
「……………え?」
予想だにしていなかったオレのセリフに白銀が呆気にとられる。
「結果が保証されていない、意味が分からない状態では心が揺らいでしまうのも事実。当然、結果は保証されている方がいい。結果が分からないことをするのは不安と緊張があるものだ。どうせなら安心したい。やらずに後悔するぐらいなら、やって後悔する方がいい、という言葉があるが、オレに言わせれば、やっておいて後悔するぐらいならやらない方がいい」
「お、おぉ………………ん?」
白銀はどう反応していいのかわからなくなっていた。
「ならばどうするのが正解か。意味あるものにして後悔しないためにはどうすればいいのか」
オレの心情を話し伝える。
「それは、結果を保証させるんだ。意味を有りに確定させて、未来を確定させるんだ。意味は結果によって左右される。ならば、結果が出るように誘導するんだ。この勉強会で言えば、星が100パーセント退学せず生き残れる状況を作り未来を確定させる」
意味があるかどうかは後になってわかると言うならば、未来を自分で作ればいい。
そうすれば必ず意味があるようになる。
悩む必要も後悔する必要もない。
「………九条くんには何が見えてるの?………いやーーーーーこれまで、何を見てきたの?」
オレは何も答えず無言で悲しく笑みを浮かべる。
上手く笑えているだろうか?
いや、きっと不格好で渇いた笑みになっているだろう。
その表情だけで、何かは伝わったはず。
「……………難しい話でほとんどわからなかったけど、一つだけ聞かせて。結果を保証する、星くんを100パーセント退学しない状況を作るって、そんなことできるの?」
「さぁ、どうだろうな」
今のところその必要性は感じられない。
このままいけば小テストはなんとかクリアできそうだ。
だが保険はあるに越したことはないだろう。
万が一の事態が起きたら、結果はわからないからな。
0
お気に入りに追加
2
あなたにおすすめの小説
小さなことから〜露出〜えみ〜
サイコロ
恋愛
私の露出…
毎日更新していこうと思います
よろしくおねがいします
感想等お待ちしております
取り入れて欲しい内容なども
書いてくださいね
よりみなさんにお近く
考えやすく
クラスメイトの美少女と無人島に流された件
桜井正宗
青春
修学旅行で離島へ向かう最中――悪天候に見舞われ、台風が直撃。船が沈没した。
高校二年の早坂 啓(はやさか てつ)は、気づくと砂浜で寝ていた。周囲を見渡すとクラスメイトで美少女の天音 愛(あまね まな)が隣に倒れていた。
どうやら、漂流して流されていたようだった。
帰ろうにも島は『無人島』。
しばらくは島で生きていくしかなくなった。天音と共に無人島サバイバルをしていくのだが……クラスの女子が次々に見つかり、やがてハーレムに。
男一人と女子十五人で……取り合いに発展!?
百合ランジェリーカフェにようこそ!
楠富 つかさ
青春
主人公、下条藍はバイトを探すちょっと胸が大きい普通の女子大生。ある日、同じサークルの先輩からバイト先を紹介してもらうのだが、そこは男子禁制のカフェ併設ランジェリーショップで!?
ちょっとハレンチなお仕事カフェライフ、始まります!!
※この物語はフィクションであり実在の人物・団体・法律とは一切関係ありません。
表紙画像はAIイラストです。下着が生成できないのでビキニで代用しています。
サンタクロースが寝ている間にやってくる、本当の理由
フルーツパフェ
大衆娯楽
クリスマスイブの聖夜、子供達が寝静まった頃。
トナカイに牽かせたそりと共に、サンタクロースは町中の子供達の家を訪れる。
いかなる家庭の子供も平等に、そしてプレゼントを無償で渡すこの老人はしかしなぜ、子供達が寝静まった頃に現れるのだろうか。
考えてみれば、サンタクロースが何者かを説明できる大人はどれだけいるだろう。
赤い服に白髭、トナカイのそり――知っていることと言えば、せいぜいその程度の外見的特徴だろう。
言い換えればそれに当てはまる存在は全て、サンタクロースということになる。
たとえ、その心の奥底に邪心を孕んでいたとしても。
スライム10,000体討伐から始まるハーレム生活
昼寝部
ファンタジー
この世界は12歳になったら神からスキルを授かることができ、俺も12歳になった時にスキルを授かった。
しかし、俺のスキルは【@&¥#%】と正しく表記されず、役に立たないスキルということが判明した。
そんな中、両親を亡くした俺は妹に不自由のない生活を送ってもらうため、冒険者として活動を始める。
しかし、【@&¥#%】というスキルでは強いモンスターを討伐することができず、3年間冒険者をしてもスライムしか倒せなかった。
そんなある日、俺がスライムを10,000体討伐した瞬間、スキル【@&¥#%】がチートスキルへと変化して……。
これは、ある日突然、最強の冒険者となった主人公が、今まで『スライムしか倒せないゴミ』とバカにしてきた奴らに“ざまぁ”し、美少女たちと幸せな日々を過ごす物語。
特殊部隊の俺が転生すると、目の前で絶世の美人母娘が犯されそうで助けたら、とんでもないヤンデレ貴族だった
なるとし
ファンタジー
鷹取晴翔(たかとりはると)は陸上自衛隊のとある特殊部隊に所属している。だが、ある日、訓練の途中、不慮の事故に遭い、異世界に転生することとなる。
特殊部隊で使っていた武器や防具などを召喚できる特殊能力を謎の存在から授かり、目を開けたら、絶世の美女とも呼ばれる母娘が男たちによって犯されそうになっていた。
武装状態の鷹取晴翔は、持ち前の優秀な身体能力と武器を使い、その母娘と敷地にいる使用人たちを救う。
だけど、その母と娘二人は、
とおおおおんでもないヤンデレだった……
第3回次世代ファンタジーカップに出すために一部を修正して投稿したものです。
💚催眠ハーレムとの日常 - マインドコントロールされた女性たちとの日常生活
XD
恋愛
誰からも拒絶される内気で不細工な少年エドクは、人の心を操り、催眠術と精神支配下に置く不思議な能力を手に入れる。彼はこの力を使って、夢の中でずっと欲しかったもの、彼がずっと愛してきた美しい女性たちのHAREMを作り上げる。
男女比の狂った世界で愛を振りまく
キョウキョウ
恋愛
男女比が1:10という、男性の数が少ない世界に転生した主人公の七沢直人(ななさわなおと)。
その世界の男性は無気力な人が多くて、異性その恋愛にも消極的。逆に、女性たちは恋愛に飢え続けていた。どうにかして男性と仲良くなりたい。イチャイチャしたい。
直人は他の男性たちと違って、欲求を強く感じていた。女性とイチャイチャしたいし、楽しく過ごしたい。
生まれた瞬間から愛され続けてきた七沢直人は、その愛を周りの女性に返そうと思った。
デートしたり、手料理を振る舞ったり、一緒に趣味を楽しんだりする。その他にも、色々と。
本作品は、男女比の異なる世界の女性たちと積極的に触れ合っていく様子を描く物語です。
※カクヨムにも掲載中の作品です。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる